税理士の副業は可能?副業の例や注意点を解説。

組織づくり

税理士の副業は可能?副業の例や注意点を解説。

働き方改革が広まり、副業を解禁する企業も増えてきました。税理士業界も例外ではなく、副業をしている方も増えてきています。閑散期だけでも副業を検討している税理士の方も多いのではないでしょうか。本記事では、税理士に適した副業や、副業のメリット・デメリット、副業の注意点などについて詳しく解説していきます。

副業の定義とは

副業とは、一般に副次的に行う仕事を言います。
厚生労働省の「モデル就業規則」によると、副業とは労働者が「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事すること」とあります。
副業には、自らが事業主となるものや請負、委託などの契約に基づくものなどさまざまな形態があります。
副業をする場合に、気をつけなければならないこととして次のことが挙げられます。

  • 秘密保持義務 (業務上の秘密を守る)
  • 競業避止義務 (企業に不利益な競業行為を禁ずる)
  • 誠実義務 (使用者の名誉・信用をき損しない)

「兼業」とは一般に本業である仕事とは別に仕事を持つことで、副業に比べ別の仕事の事業性が高いと言えます。
最近では、正・副という位置づけではなく、どちらも本業である複数の仕事という意味で「複業」という用語もよく使われます。「兼業」「副業」「複業」については、これらに厳密な定義はなく、共通点としては「一人で複数の種類の仕事をしている」ことが挙げられます。
判例などを勘案すると、現況では一般的には企業として副業・兼業などを認める方向にあります。

税理士業において、副業で留意すべき点はどんな点でしょう?(参考:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和2年9月改訂)

税理士も副業は可能?

会計事務所においても、職員は一般の企業同様、副業が認められているところはありますが、事務所が副業を禁止している場合には副業はできません。
副業などのルールの取り決めのない小規模な会計事務所の場合には、所長や役員の許可を得て副業することになります。
税理士の副業について深掘りする前に、税理士の種類を確認しておきましょう。
税理士には3つの種類があり、副業をするにあたってはこの税理士登録の種類により変わります。

開業税理士
いわゆる、会計事務所の所長に当たります。
独立開業して、自らの名前などがついた会計事務所などを運営する税理士です。
職員を雇い、自分以外の税理士(下記、所属税理士)を雇うことがあります。
社員税理士
税理士法人を運営する税理士です。
社員という名称ですが、位置づけとしては「役員」にあたります。代表社員である社員税理士のもとで、他の税理士(下記、所属税理士)を雇うことがあります。
所属税理士
開業税理士や税理士法人に雇用される税理士です。
所属税理士は、「使用者の承諾を得た上で、顧客からの直接受注が可能」です。

開業税理士は経営者の立場、社員税理士は役員の立場ですので、就業規則が適用されません。副業が可能かどうか注意が必要なのは、税理士法だけでなく労働基準法と就業規則の適用を受ける所属税理士になります。
所属税理士については、自ら委嘱を受けて「税理士業務」をする場合は、「その都度、あらかじめ、その使用者である税理士又は税理士法人の書面による承諾を得なければならない。」とされています。(引用:税理士法施行規則第1条の2-2

開業税理士は、副業ととらえるより売上の種類を増やすこととなります。
社員税理士は「個人として」税理士法人の業務の範囲に属する業務をすることが税理士法により禁じられています。

働き方改革の影響もあり、会計事務所の繁忙期以外に副業をする税理士も増えてきました。当然のことではありますが、副業にあたっては前述の秘密保持義務だけでなく、税理士法に記載されている義務や禁止事項も再確認しておきましょう。

脱税相談等の禁止(税理士法第36条)
「税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。」
信用失墜行為の禁止(税理士法第37条)
「税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」
秘密を守る義務(税理士法第38条)
「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなった後においても、また同様とする。」

(引用:税理士法 | e-Gov法令検索

税理士の副業の種類

税理士の副業と言うと、多岐にわたります。一般的によく見られるケースをみてみましょう。

 

 

税務業務

最も多い副業は、自宅やクライアント先などで税理士の独占業務(税務代理、税務書類作成、税務相談)です。本業とは別に、クライアントから依頼された税務業務を請け負います。
クライアントの獲得方法として、口コミによる紹介やクラウドソーシングなどが挙げられます。この場合は、本業との関連性が高く、今のスキルを存分に活かせます。
留意点としては、使用者の許可を得ている場合においても、競業避止義務、誠実義務などへの配慮は怠らないようにしなければなりません。

メディア露出

税理士の副業として、TV、新聞、雑誌、Web上などのメディアに税務の専門家として出演することが考えられます。
メディア関係者とのつながりが求められる場合もありますが、税理士Youtuberなど個人でWeb発信し、収入を得ることも可能です。Webから雑誌・新聞、そしてTV出演などとエスカレーションする場合もあるでしょう。
メディア露出は、本業の認知につながる「広告宣伝」ツールにもなります。

予備校講師

税理士を目指す学生に、税務知識や受験ノウハウを教える講師業なども税理士の副業として考えられます。新たな会計ルールや税制改正について予習する機会も増えるため、税理士自らの税務知識が深まることにもつながります。
また、セミナー講師などは本業の事務所の宣伝効果もあります。
ただし、効果的な授業にするためには、授業の準備やアフターケアも必要となり、さらに授業時間が決められているため、時間管理が上手くないと通年の講師は難しいかもしれません。

記事執筆

税理士がクラウドソーシングサイトなどに登録し、税務記事などの執筆依頼を受けることも副業として可能です。多くは、一般向けの税務記事となりますので、税務知識だけではなく、文章構成能力や読み手の興味を引く工夫が必要です。
ただし、ある程度の知名度や文章力がないと副業として成立するような単価が得られない可能性もあるため注意が必要です。記事の執筆にも、メディア露出と同様、税理士自身の認知につなげられる点や広告宣伝ができる点などのメリットがあります。

→案件を受けるためには、魅力的なプロフィールの作成が欠かせません。「税理士プロフィール作成ワークシート」を税理士としての経歴や強みの棚卸しにぜひ、ご活用ください。

税理士の副業の探し方

口コミなどでオファーを待つ時間を要さずとも副業を探す方法として、3つが挙げられます。
一つの仕事から次々と連鎖的に仕事が広がっていく可能性があるので、自分に合っていると思う方法を試すのもよいでしょう。

クラウドソーシング
インターネット上で注文を取りまとめた企業が、登録した個人などに業務を委託する形態です。原則として発注側が業務内容や納期を決定し、受注側はその業務を納期までに納品します。
受注者の報酬からは原則として取りまとめ企業の支払手数料が差し引かれます。
オンラインで完結でき、業務量をある程度調節できる裁量度の高い形式とも言えます。
スキル販売系サイト
スキルやサービスを売りたい人と、それを買いたい人をサイト上でマッチングする形態です。税理士はコンサルティングやアドバイザリー業務的なスキルなどを「出品」し、希望者が購入する形式が多いです。インターネットで完結する場合もあれば、電話、面談などのケースもあります。
エージェント
仲介業者を介して、業務を受託する場合もあります。税理士に特化したサイトなどへの登録により、案件を受託し、エージェントには紹介手数料を支払うという形態です。
いずれの場合においても、本業と副業の関連性の強いものであるため、税理士としてのスキルアップは可能です。

税理士が副業するメリット

税理士が副業するメリットは、収入面はもちろん、先に挙げたように本業におけるスキルアップなどが挙げられます。それぞれについて見てみましょう。

収入の柱が増える

本業では扱わない特定の案件に絞り込むなどをした場合、希少性や専門性によっては収入の柱として期待できる場合もあります。
収入増については即効性を期待するのではなく、育てて待つという姿勢をとったほうがよいです。

本業にいい影響を与える

税理士が副業を考える場合のメリットとして期待できるのは本業へのよい影響です。副業関連で、新たな業界、業種の人と接点を持つことができたり、初めは副業として知り合ったクライアントが本業のクライアントになったりと、交流の輪が広がる可能性があります。
前述のようにメディアへの露出などによる宣伝効果が、本業へのオファーにつながることも期待できます。

税理士が副業するデメリット

税理士が副業する場合、やり方によってはデメリットが目立つ場合もあります。
本業や税理士自身へのマイナスの影響は次のとおりです。

本業に支障をきたすことも

副業が忙しすぎると、本業に割く時間が減ってしまい、支障をきたす事態も想定されます。
心身ともに疲れてしまい体調を崩してしまう可能性も否めません。
平日に本業をこなし、平日の夜や休日に副業をすることになると、ワーク・ライフ・バランスに片寄りが生じ、本業にも副業にも良い影響はありません。
長期的にある程度のプライベートが確保できるようにコントロールする必要があります。

平日に副業を行うことが難しい

税理士事務所も税務署などに合わせ、営業日を平日とするところが大半です。
このため、副業にあてる時間が限られ、クライアントとのアポイント調整が難しくなることもあります。
副業でも本業と同じような緊張感が続くようであれば、時間管理をし直して、副業を細く長く続けられるようにしなければ身体が持ちません。

税理士が副業をする際の注意点

以上、税理士の副業について述べてきましたが、実際に副業に着手するにあたり、最低でも次の2点は確認して進んでください。

所属税理士の方は就業規定を確認

副業は税理士業務はもちろん、その他の副業でも勤務する事務所があらかじめ認めていないとできません。事務所の就業規則や税理士法などを再確認しておきましょう。

仕事の性質上、本業の執務時間に副業の連絡をしなければならないときなどもありますが、今まで培ってきた信頼を損ねない努力が必要です。本業でのコミュニケーションを円滑にし、誤解のないように進めます。仮に、隠れて副業をしそのことが明るみに出てしまった場合には、税理士法に抵触するばかりか、信用を回復させるには今までの何倍もの努力が必要となることもあります。

周囲の理解を得る

副業をすると、少なからず周りに影響が出ることを心得ておきましょう。
例えば、自宅で副業をする場合には、作業スペースが必要となりますし、家族と過ごす時間が減ることによって、配偶者の負担が大きくなることも予想されます。
そのため、勤務先はもちろんのこと、プライベートにおいても副業の影響を考え、事前にしっかり相談することが重要です。周囲にある程度認められるまで継続することが大切です。

本業やプライベートとのバランスを重視して副業をしよう

副業を始めるにあたって、本業に支障がないよう配慮するとともに、周囲の協力が必要です。
実際に副業を始めてからわかる難しさもありますが、副業のメリットをうまく活かすことができれば、本業にも私生活にもいい影響を与えることができます。

→副業を行う場合は、本業の税理士業務の業務効率化も必要になってくるかと思います。マネーフォワードでは、税理士の方向けにお役立ち資料を数多くご用意しておりますので、ぜひ自事務所の業務にご活用いただけますと幸いです。

よくある質問

副業の定義とは何ですか?

副業として法で厳密に規定されるものではありませんが、一般に本業のある人が副次的に行う仕事をいいます。

税理士も副業は可能ですか?

所属税理士においては、使用者の承諾を得た上で、税理士業務を直接受注できます。それ以外の副業については、原則として勤務する事務所の許可を得なければなりません。

税理士の副業の探し方にはどんなものがありますか?

クラウドソーシング、スキル販売系サイト、エージェントなど、口コミ以外でも探すことができます。

【監修】税理士・CFP 岡 和恵

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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