税理士が顧客獲得するための準備や集客方法とは?顧客管理方法も解説。

税理士が顧客獲得するための準備や集客方法とは?顧客管理方法も解説。
税理士として独立し、事務所運営を安定して行っていくためには顧客の獲得は欠かせません。また、事務所の売上を向上させていくにも新たな顧問先を獲得していく必要があります。では、着実に顧客を獲得していくにはどのようにすればよいのでしょうか。本記事では、顧客獲得をするための準備から開拓方法、顧客管理のノウハウまで解説していきます。

税理士が顧客獲得するための準備とは

税理士が独立開業して顧客を獲得するためには、ターゲットである顧客層から「選ばれる税理士」になる必要があります。自らの武器となる強みや克服すべき弱みを把握する「自己分析」だけでなく、下図のように「競合分析」として同業他社の調査や、ターゲット層へのアプローチ方法の検討が重要です。
税理士が顧客獲得するための準備

自己分析をする

独立開業にあたっては、まず自己分析を行うことから始めましょう。

税理士試験や実務経験を通じ、自らが培ってきた知識や経験を整理することで、開業税理士としての強みと弱みを把握しましょう。たとえば相続をはじめとする資産税のノウハウが豊富なのであれば、資産税に特化した税理士事務所や資産税業務を前面に押し出した集客を目指すこともひとつの選択肢となります。

税理士業界以外の経験を活かすことが差別化につながるケースもあります。金融機関で融資業務に携わった経験があれば、資金調達に関するプロとして起業時の創業融資や借り換えの支援も可能となるでしょう。また、IT業界での勤務経験があれば、税理士業務と組み合わせることで、顧問先のバックオフィス業務の効率化をコンサルティング業務としてメニュー化することもできます。それ以外にも、飲食業や医療機関、文化芸術など、税理士業務とは畑違いに見える実務経験を上手く自身のサービスに昇華できれば、同業者との差別化もしやすくなります。

なお自己分析の際には、自らの強みだけでなく、弱みにも目を向けなければなりません。特定の税法に関する知識や経験不足に加え、営業スキルや人脈の狭さなど、経営者としての能力に関しても分析を行い、必要な能力が不足している場合にはそれをカバーする努力が必要です。

すべての弱みを克服するのではなく、ときには弱みを切り捨てて強みを伸ばすことに注力すべきケースもあります。たとえばM&Aや国際税務などの特定の分野における知識が不足している場合、これらのスキルを引き上げることの必要性は事務所としての業務内容によって異なります。業務内容の一環として必要不可欠な知識であれば弱みを克服しなければなりませんが、そうでなければ業務内容から外し、強みとなるスキルの強化に集中する方が効果的なケースもあるでしょう。

税理士をはじめ、中小企業や個人事業主の大半が強みだけでなく弱みを抱えていますが、弱みの克服以上に「自社の強みをどう活かすか」に焦点を当てて業績を伸ばしています。税理士業務は多岐にわたっているため、すべての知識を網羅するのではなく、優先順位をつけて取捨選択をし、まずは自らの強みをしっかりと発揮できる体制を構築しましょう。

同じ地域の他の税理士を調査する

インターネット環境の整備やオンライン化が進む昨今においても、「いざというときには直接会って話せる税理士」というニーズは根強く残っており、近隣の税理士事務所を希望する顧客は非常に多いです。

そのため独立開業にあたっては、同じエリアで活動している他の税理士事務所の業務内容や料金体系について事前に調査することをお勧めします。また、他の税理士を知ることで業務内容の差別化に役立つだけでなく、同業者との比較を通じ、自己分析だけでは気づきにくい自らの強みを発見することにもつながります。

近年では中小企業や個人事業主の数は減少傾向であるのに対し、税理士登録者数は増加しているため、税理士同士の顧客の奪い合いが発生しやすい市場環境となっています。競争相手となり得る他の税理士事務所を知ることは必要不可欠であり、同業者の調査を通じて差別化を図ることで「選ばれる税理士事務所づくり」に取り組みましょう。

顧客にアプローチする方法を考える

自己分析や競合相手となる他の税理士事務所の調査を行い、無事に自らの事務所を開業しても、実際に集客活動を行わなければ事務所の存在すら認知してもらうことができません。独立開業後に顧客を獲得するためには、事務所の概要や業務内容、自らの強み、サービスの価値などの情報をターゲットとなる顧客層へ発信する必要があります。

なお情報発信において利用すべき媒体は、ターゲット層の属性や事務所としての業務内容によって異なります。20~30代の比較的若い年齢層へ訴求する場合にはWeb営業やSNS集客も有効ですが、法人顧客や高齢者向けの資産税業務を行う場合にはチラシ営業の方が効果的なケースもあります。

顧客獲得のための情報発信を行う際には、自身の業務内容に基づくターゲット像を具体的にイメージし、それらの潜在顧客に訴求するための最適な媒体を選ぶようにしましょう。

税理士の顧客獲得・開拓方法

税理士事務所が行う集客は、下図のような方法が一般的です。
税理士の顧客獲得・開拓方法
ただしこれらを闇雲に実施すれば時間やコストを浪費することにつながりかねないため、具体的な顧客獲得までのルートを想定し、そのために必要な手段を効率的に講じるようにしましょう。

ホームページの作成

インターネットの普及に伴い、税理士業界においてもWebサイトやSNSを活用した集客が増加しています。

特に事務所ホームページを作成している税理士は非常に多く、ホームページを通じて業務内容やコンセプト、料金体系など、不特定多数の人へさまざまな情報を届けることが可能です。ホームページ以外にも、ブログやSNSなどの媒体を併用することも有用でしょう。

ただし、いずれの媒体においても、作成すれば自動的に集客効果を発揮するというものではなく、定期的な更新や見込み客に対して有益な情報を発信し続ける必要があります。ホームページをはじめとするWeb集客を実践する場合には、こまめな運用を心がけましょう。

チラシを作成する

税理士事務所を開業するにあたり、事務所周辺の中小企業や個人宅など、特定の見込み客に対してピンポイントで情報発信を行う場合にはチラシ営業も効果的です。事務所所在地や連絡先などの基本情報だけでなく、自らの強みや業務内容など、ターゲット層へ訴求したい情報をチラシに掲載しましょう。

チラシについては自分で作成する方法と、外部の業者へ委託する方法があります。自分で作成する方がコストは少なく済みますが、闇雲に情報を詰め込めばかえって読みづらくなり、読み手の反応率も低下してしまう恐れがあります。

チラシ営業を行う場合には、できるだけターゲット像を明確にし、チラシを通じて訴求したい内容が一目見て伝わるようなレイアウトを心掛けましょう。

知人や顧客に紹介してもらう

税理士業界においては、既存顧客や金融機関、提携する他士業からの紹介による集客方法も根強く残っています。特に既存の顧問先から紹介を受けるということは、自らのサービスに対して顧問先から一定の評価を得られていることの裏付けでもあるため大変喜ばしいことです。

紹介による集客については、紹介元との関係性が良好であるほど成約しやすいメリットがある一方、料金面や業務内容などの理由から契約を希望しない場合に断りづらくなるというデメリットがあります。望まない業務を受注することは税理士と顧客の双方にとってマイナスとなるため、知人や顧客から紹介を受けた場合でも、互いに納得できる条件の下で契約を締結するようにしましょう。

顧客を断ることもある?

時間やお金は有限であることから、依頼を受けたすべての仕事を無条件で受け入れるべきではありません。相手側にサービスに見合った報酬を支払う意思がない場合や、自分自身に十分な知見がなく、業務遂行に支障が出るような場合など、お断りすべき案件もあるでしょう。

また税理士業界特有の事例として、節税志向ではなく脱税や粉飾決算を望む依頼者も少なからず存在します。このような案件に安易に関わってしまうと、税理士法違反により懲戒処分の対象となるリスクもあるため、くれぐれもご注意ください。

特に開業当初は収入が不安定な場合が多く、「売上の確保」が最優先になってしまいがちです。開業後は「来る者は拒まず」の精神状態に陥ってしまうことが多く、本来は受注すべきでない案件を引き受けてしまう失敗談も少なくありません。望まない業務を受注することでキャパシティを埋めてしまえば、本来行うべき集客活動を十分に行うことができず、いつまでも希望する業務を獲得できないジレンマに陥ってしまいます。開業当初は「仕事をお断りする」という決断に抵抗を感じる人も多いでしょうが、獲得すべき業務を受注するために最適な意思決定を行いましょう。

税理士の顧客管理方法

税理士事務所として抱える顧問先の数が増えるほど、日常業務の管理体制を整備する必要性も高まります。特に税理士業務においては、管理不足によるミスや漏れが顧問先に追徴税額が賦課されるリスクにもつながるため、万全な顧客管理を徹底してください。

税理士事務所では顧問先の資料回収や入力作業、巡回監査などの一連の業務が担当者である職員任せとなっているケースも多く、業務の属人化に陥りやすい傾向にあります。そのようなリスクを軽減するためにも、エクセルやITツールを活用して事務所内の業務進捗を「見える化」することをお勧めします。

また顧問先からの資料はPDFによって回収し、クラウドストレージへの保存を義務付けるなど、業務フローを標準化することによって属人化の防止に取り組みましょう。

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上記のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお申し込みください。

着実に顧客獲得をして、事務所運営を安定させよう

税理士事務所の経営を安定させるには、顧客獲得のための活動は手当たり次第に行うのではなく、計画的に営業活動を行うことによって営業スキルを磨く必要があります。特に開業当初は予算が限られているケースも多いため、集客に投じた費用に見合った成果が得られなければ、資金ショートを起こしてしまうリスクも高くなります。

自己分析や競合分析、集客時に用いるべき最適な媒体を事前に検証し、自らの事務所の経営ビジョンに合った営業活動を戦略的に実践しましょう。

よくある質問

顧客獲得のために準備すべきことは

顧客獲得のためには自らの強みや弱みを把握するための「自己分析」や、周辺の税理士事務所を調査する「競合分析」を行い、差別化の方法を探る必要があります。また見込み客へ訴求するための媒体も検討しましょう。

税理士事務所の顧客獲得方法は?

既存顧客や金融機関などの紹介ルートだけでなく、事務所ホームページを活用したWeb集客も増加しています。一方でターゲット層によってはチラシ営業が効果的なケースもあるため、有効に使い分けを行いましょう。

顧客管理はどのように行うべき?

業務の属人化やミスの発生リスクを軽減するためには、エクセルやクラウドストレージなどのITツールの活用が有効です。業務の「見える化」を行い、業務フローを標準化することで健全な顧客管理を実践しましょう。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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