- 更新日 : 2025年2月20日
単式簿記とは?メリットデメリットや複式簿記との違いを解説
単式簿記とは取引ごとに記録する簿記のスタイルのことです。たとえば「10月30日 家賃 150,000円」のように、日付と取引内容について記載します。単式簿記にはどのようなメリットやデメリットがあるのか、複式簿記とは何が違うのか、また、具体的な書き方についてわかりやすく解説します。
目次
単式簿記とは
単式簿記とは、一つの取引において一つの記録をする簿記方法のことです。「いくらお金が増えたのか、いくら使ったのか」という事実だけに焦点を当てて記帳するため、簿記に対する特別な知識がなくても記帳しやすいとされています。たとえば、家計簿やお小遣い帳などの個人的なお金の記録は、単式簿記で行われることが一般的です。
そもそも簿記とは、お金の流れを管理する帳簿を記録することです。簿記に対して「難しい」や「複雑そう」といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、帳簿をつけてお金を管理できれば、問題なく簿記ができています。
なお、白色申告では、単式簿記でも複式簿記でも問題ありません。一方、青色申告は複式簿記に限定されています。複式簿記を選択すると帳簿づけが複雑になりますが、後述する青色申告によるメリットを受けられます。
単式簿記の歴史
簿記、つまりお金の流れを帳簿によって管理するようになったのは、古代ローマ時代にさかのぼるといわれています。当初は「お金が入った」「お金を使った」だけに注目した単式簿記でしたが、14世紀以降になってからヴェネチアの商人により、取引の原因と結果をあわせて記載する複式簿記が使われるようになったようです。
なお、一般的には単式簿記から複式簿記が誕生したとされていますが、元々複式簿記があり、簡便化したものとして単式簿記が生まれたという説もあります。複式簿記を簿記の元祖とする説によると、単式簿記の登場は18世紀後半のイギリスで、それまでは資本金勘定と損益勘定をまとめて記載していたものを、単一視点の単式簿記として記載するようになったようです。
単式簿記の書き方
単式簿記では、お金の流れのみに注目し、収入と支出、その時点での残高を1行に記します。たとえば、現金出納帳では以下のように記載します。
| 日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| 10月1日 | 繰越 | 100,000 | ||
| 10月3日 | 売上 | 40,000 | 140,000 | |
| 10月4日 | 支出 | 50,000 | 90,000 | |
| 10月7日 | 普通預金 | 60,000 | 30,000 |
複式簿記と単式簿記の違い
複式簿記は「仕訳」という形で記録する簿記方法です。仕訳とは、取引の原因と結果に着目し、勘定科目をセットとして記帳することを指します。
単式簿記と比べると伝えられる情報が多くなりますが、記載に手間がかかる点がデメリットです。しかし近年では、複式簿記の帳簿作成をサポートするソフトウェアも増えてきています。上手に活用すれば、わずかな時間で複式簿記による帳簿作成を完了でき、経理の負担を大きく削減できます。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 10月3日 | 預金 | 40,000 | 売上 | 40,000 | オンライン |
| 10月4日 | 仕入 | 50,000 | 現金 | 50,000 | A会社から |
単式簿記のメリット
単式簿記を採用することには、次のメリットがあります。
- 簡単に収支を記録できる
- 会計に対する高度な知識は不要
それぞれのメリットについて解説します。
簡単に収支を記録できる
単式簿記は、シンプルなルールでお金の流れを記録できます。いつお金が動いたか、どういった名目でお金が入ったのか・出て行ったのかだけを1行に記載すればよいため、わずかな時間で帳簿づけが終わります。
また、収入と支出を簡単に計算できるのも単式簿記のメリットです。たとえば、「10月1日~10日までの収入、支出を知りたい」ときには、該当する日付の収入欄・支出欄をそれぞれ縦に合算すれば簡単に数字を導き出せます。
会計に対する高度な知識は不要
単式簿記は、会計についての高度な知識がなくても利用できる簿記方法です。どういった名目でお金が入ったのか、出て行ったのかだけを記録すればよいため、会計関連の資格や実務経験のない方でも利用できます。
また、複式簿記では「勘定科目」についての理解が求められますが、単式簿記では細かな点の理解までは不要です。なお、勘定科目とは取引内容を分類するときに用いる科目のことで、財務諸表を作成するときにも使われます。
単式簿記のデメリット
単式簿記には次のデメリットがあります。
- 青色申告特別控除が適用されない
- 経営状況を把握しにくい
それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
青色申告特別控除が適用されない
青色申告特別控除の適用を受けるには、青色申告事業者として登録し、なおかつ不動産所得や事業所得を複式簿記で記帳するなどの条件を満たすことが求められます。そのため、単式簿記で帳簿を作成している場合は、青色申告特別控除は適用されません。
青色申告特別控除が適用されると、控除額が最大65万円となるだけでなく、青色申告事業者として家族への給与を経費計上したり、赤字を翌年以降に繰り越して所得から差し引いたりといったメリットもあります。税務面・経理面でのメリットを増やしたいなら、複式簿記を検討してみましょう。
経営状況を把握しにくい
単式簿記はお金の出入りのみに注目した帳簿作成方法のため、収支しかわかりません。家計簿やお小遣い帳のように収支のみを把握したいときには適していますが、収入・支出の目的ごとの増減や、手元資金・預金の動きなどを把握したいときには適切とはいえません。
簿記方式の種類と書き方を確認しておこう
単式簿記は書き方がシンプルで、お金の流れにのみ注目した簿記方法のため、家計簿やお小遣い帳などの個人的な会計業務に適しています。
しかし、勘定科目ごとに分けて記載するわけではないため、収入・支出の用途別の増減把握には適さない方法です。また、手元資金としてどの程度あるのか、預金・現金のどちらが動いたのかなどを把握したいときにも、単式簿記は適していません。
一方、複式簿記は単式簿記と比べると伝えられる情報が多くなりますが、その分、帳簿づけに時間がかかります。会計ソフトを導入するなど、経理業務を簡便化する方法もあわせて検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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