
個人や法人が納税額を確定させるために、申告手続きを行う確定申告。確定申告の際に、一定の条件を満たしている場合、生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除といった各種の保険料控除が受けられる制度が整えられています。その年の1月から12月に払い込んだ各種保険料の一定額が、所得税と住民税の対象となる所得から控除され、結果として税負担が軽減される制度です。
生命保険料控除について
生命保険料控除は、全部で15種類ある所得控除のうちの1つです。1月から12月の1年間で払込んだ生命保険料の金額に応じて、契約者(保険料負担者)の年間総所得金額から一定の金額を差し引いて、税率を掛ける前の所得を低くすることにより、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。
生命保険料の税額控除は、平成22年度において生命保険料控除制度が改正され、平成24年1月1日以降に結んだ契約については、改正後の新制度が適用されています。平成23年12月31日までの契約については、改正前の旧生命保険料控除制度がそのまま適用されます。
旧制度では、「一般生命保険料控除」と、「個人年金保険料控除」の2つのみでした。新制度では、この2つに加え、新たに「介護医療保険料控除」が設けられ、控除の対象が拡大しました。
旧制度での控除範囲は「死亡した際の保障」と「個人年金保険」を対象にしていましたが、新制度では「生存保障」である介護や医療に対しての保障も控除の対象になったということになります。
各項目の控除額は若干減りましたが、合算した際の控除額は増えることになりました。
対象となる保険の範囲は以下となっています。
旧制度(平成23年12月31日までの契約)
・一般生命保険料控除
・個人年金保険料控除
新制度(平成24年1月1日以降の契約)
・一般生命保険料控除
・介護医療保険料控除
・個人年金保険料控除
契約したタイミングによって新旧それぞれの制度が割り当てられるため、人によっては、新旧2つの制度が適用される生命保険の契約を保有している場合もあります。
新契約の場合の控除額については、「一般の生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」それぞれ最高額は4万円(住民税は2万8000円)で、合計12万円(住民税は7万円)となっています。
旧契約の場合の控除額については、「一般の生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2種類で、最高額はそれぞれ5万円(住民税は3万5,000円)で、合計10万円(住民税は7万円)となっています。
生命保険料控除の計算式は以下となっています。
保険に加入している人には、保険会社より10月頃に「生命保険料控除証明書」が送付されます。これは、その年に保険料を支払ったことを証明するものですので、大切に保管してください。確定申告で保険料控除を受ける場合には、この保険料控除証明書を添付する必要があります。
生命保険料控除について詳しく知りたい方は「確定申告の生命保険料控除について」も参考にしてください。
地震保険料控除について
地震保険料控除とは、平成19年(2007年)1月より新たに創設され、支払った保険料の金額に応じて所得税と住民税の軽減される制度を言います。
地震保険は火災保険に付帯して契約するため、火災保険に入ることが前提になりますが、地震保険料控除の対象となるのは地震保険に関する保険料に対してのみになります。
また、控除の対象となる保険料は「常時住宅として使用している建物および家財」に対しての地震保険料となっています。つまり、普段生活している家に対しての地震保険料のみが対象となるため、別荘に付保した地震保険料があった場合、その分は控除の対象外となるので注意しましょう。
地震保険料控除の制度により、以下の表の通り、所得税においては最高5万円、住民税においては最高2万5,000円が総所得金額などから控除されます。
地震保険料控除についても、生命保険料控除と同様に、保険に加入している人には、年末が近づくと保険会社から「保険料控除証明書」が届けられます。確定申告で保険料控除を受ける場合には、この保険料控除証明書を添付する必要があります。
社会保険料控除について
社会保険料控除とは、「しっかりと健康保険や年金を納めている人に対しての税制面での優遇」といった考えのもと整えられた制度です。
社会保険料控除は、納税者本人やその本人と同一生計の配偶者やその他の親族にかかる社会保険料を支払ったときに控除されるもので、1月から12月までの1年間に支払った社会保険料の全額が所得控除の対象になります。給与所得者や年金受給者であれば、給料支給時や年金支給時に天引きされているので、とくに申告の必要はありませんが、自身で支払っている場合は、申告しなければ控除の対象とならないので注意しましょう。
社会保険料控除が認められているものは、主に以下の通りです。
1.健康保険、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
2.国民健康保険の保険料又は国民健康保険税
3.高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
4.介護保険法の規定による介護保険料
5.雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
6.国民年金基金の加入員として負担する掛金
7.厚生年金基金の加入員として負担する掛金
8.国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金、納付金又は納金
(出典:社会保険料控除|所得税|国税庁)
(注)業種によっては、さらに控除できる項目がある場合もあります。
自営業者の人や退職して再就職していない人が、自身で支払っている場合は、国民年金の保険料や国民年金基金の掛金を支払ったことを証明する領収書や証明書を、確定申告の際に添付する必要があります。
参考URL:
・No.1130 社会保険料控除|所得税|国税庁
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