個人経営の確定申告

この記事では、個人経営者で確定申告が不安な方や、これから個人経営を始めたい方向けに、確定申告について解説しています。
確定申告といっても、税金の種類によって方法はさまざまです。
まずは「個人経営とは?」という疑問から、かかる税金の種類を知っていけば、確定申告での不安を減らすことができるでしょう。
目次
個人経営ってどんな人?他との違いは?
個人経営とは、1人で事業を経営している人を意味します。
個人経営での確定申告の方法を理解するには、会社員と会社経営者を比較することから始めましょう。それぞれの違いを明確にすることで、わかりやすくなります。
個人経営と会社員の違い
個人経営と会社員の違いは、雇用契約の有無です。
個人経営は、自分で事業を行っているので雇用契約はありません。
事業で得た収入や経費は、自分で確定申告を行うことになります。
一方で、会社員は会社との雇用契約があります。
会社員が得た収入は給与・賞与(ボーナス)と呼ばれ、会社が確定申告を行ってくれます(年末調整のこと)。給与・賞与以外の収入が無ければ、通常は会社員が自分で確定申告を行う必要はありません。
個人経営と会社経営者の違い
個人経営には、確定申告の観点から以下の2種類に分かれます。
- 個人事業主:税務署に「個人事業の開業届」を提出して活動している人
- 法人の経営者:法人を設立してその法人の代表として活動している人
会社経営者は、個人事業主ではなく、法人の経営者と同じ意味になります。
個人事業主は、主に所得税の確定申告を行います。
それに対して会社経営者は、主に法人税の確定申告を行います。会社経営者自身に対する給与・役員報酬は、年末調整によって確定申告を行います。
個人経営の税金は何種類?
個人経営にかかる税金を解説していきます。
税金の種類に加えて、その税金が国税(国に納める税金)か地方税(地方自治体に納める税金)かも確認しましょう。これを知っておけば、申告書の提出先や相談窓口に迷わなくなります。
個人事業主の場合
個人事業主にかかる税金は、主に以下の4種類です。
- 所得税(国税)
- 住民税(地方税)
- 個人事業税(地方税)
- 消費税(国税と地方税)
この4種類をそれぞれ解説していきます。
所得税
所得税は、前年の所得に対して課税されます。
個人事業主は前年の所得について、2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。
住民税
住民税は、個人の1年間の所得に対して課税されます。
所得税の確定申告をすれば、住民税についても確定申告を行ったことになります。住民税の計算は自治体が行います。
個人事業税
個人事業税は、個人事業主が行っている事業に対して課税されます。
所得税の確定申告をすれば、個人事業税についても確定申告を行ったことになります。個人事業税の計算は自治体が行います。
消費税
消費税は物やサービスの消費に対して課税されます。
消費税の納税義務がある個人事業主は、消費税の確定申告を行う必要があります。
申告期限は3月31日ですが、所得税の確定申告と一緒に申告することが一般的です。
法人の場合
法人が支払う税金は、主に以下の5種類です。
- 法人税(国税)
- 地方法人税(国税)
- 法人住民税(地方税)
- 法人事業税(地方税)
- 消費税(国税と地方税)
この5種類をそれぞれ解説していきます。
法人税
法人税は、法人の所得に対して課税されます。
申告期限は、決算後2カ月以内です。さらに一定の理由があり届け出をした場合は期限を1カ月延長することができます。
地方法人税
地方法人税は、法人の所得に対して課税されます。
法人税の確定申告を行うと、地方法人税の確定申告も行ったことになります。
法人税の申告書に地方法人税も含まれているためです。
法人住民税
法人住民税は、法人の所得に対して課税されます。
個人の場合と違い、法人は法人住民税の確定申告を行う必要があります。
法人住民税の確定申告は、都道府県と市町村に対して行います。
つまり、申告書は都道府県用で1つ、市町村用で1つの合計2つを作成します。
なお、東京23区の場合は1つの申告書でまとめて申告できます。
法人事業税
法人事業税は、法人の行っている事業に対して課税されます。
法人事業税の確定申告は、法人住民税の確定申告と一緒に行うことになります。
理由は、法人事業税の申告書が、法人住民税(都道府県用)と同じ申告書のためです。
東京23区の場合も同様です。
消費税
消費税は物やサービスの消費に対して課税されます。
消費税の納税義務がある法人は、消費税の確定申告を行う必要があります。
消費税の確定申告は決算後2カ月以内に行う必要があり、法人税の確定申告と一緒に申告することが一般的です。
申告期限について法人税は延長することができますが、消費税は延長できません。
個人経営の確定申告は?計算方法は?
確定申告の大きな流れは以下の通りです。
STEP1:年間の取引をまとめて決算を確定させる
STEP2:申告書と添付書類を作成する
STEP3:申告書を提出して、納付する。または還付を受ける
個人事業主でも法人でも、決算を確定させ申告書を作成するという流れは変わりません。
それぞれを掘り下げて解説していきます。
個人事業主の確定申告と計算方法
個人事業主の確定申告の流れは以下の通りです。
STEP1:年間の取引をまとめて決算を確定させる
STEP2:所得税の申告書と添付書類を作成する
STEP3:消費税の申告書と添付書類を作成する(※)
STEP4:申告書を提出して、納付する。または還付を受ける
(※納税義務がある場合に限る)
所得税の確定申
所得税の確定申告は所得10種類のうち「事業所得」を計算することになります。
「事業所得」は、個人事業として活動した収入から経費を差し引くことで計算します。
「事業所得」の申告方法は以下の3つの方法があります。
上記表の補足として、令和2年分(2020年)以降は青色申告特別控除が65万円から55万円になります。
引き続き、65万円の控除を受けるためには、「e-Taxによる申告(電子申告)」または「電子帳簿保存」のどちらかを行う必要があります。
3つの方法の違いは、「帳簿の正確さ」です。
「帳簿の正確さ」に伴って、控除額の大きさも違ってきます。
控除65万円の青色申告は、青色申告決算書の中に損益計算書(≒収支の情報)と貸借対照表(≒残高の情報)が含まれているため、一定以上の正確な帳簿を作成しなければなりません。
一方で、現金主義による青色申告と白色申告は、貸借対照表(≒残高の情報)は求められていません。
消費税の確定申告
消費税の納税義務がある個人事業主は、消費税の確定申告が必要になります。
消費税の確定申告では、所得税用に取引をまとめた帳簿を使って、消費税を集計します。
計算方法は一般課税と簡易課税の2通りがあります。
一般課税と簡易課税では、仕入・経費の消費税(仕入控除税額のこと)の計算方法が違います。
一般課税は仕入・経費の消費税を集計するのに対して、簡易課税は集計しません。
簡易課税では売上の消費税に対してみなし仕入率を乗じることで、仕入・経費の消費税を決定します。売上の消費税だけを集計すれば良いので、一般課税よりも簡単な計算です。
法人の確定申告と計算方法
法人の確定申告の流れは以下の通りです。
STEP1:年間の取引をまとめて仮決算を行う
STEP2:税金以外の決算を確定する
STEP3:消費税の申告書と添付書類を作成する(※)
STEP4:法人税・法人住民税・法人事業税の税額を確定する
STEP5:決算を確定させ、決算書類を作成する
STEP6:法人税の申告書と添付書類を作成する
STEP7:法人市民税・法人事業税の申告書を作成する
STEP8:各申告書を提出して、納付する。または還付を受ける
(※納税義務がある場合に限る/個人の確定申告も同様)
法人税の確定申告
法人税の確定申告に必要な書類は以下の通りです。
・法人税の申告書(別表のこと)
・法人事業概況説明書
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
・勘定科目内訳明細書
まずは、上記STEP1~STEP4までの手順で、決算を確定させ決算書類を作成します。
次に法人税の申告書を作成します。
法人税の申告書は、別表という19種類の書類から構成されます。
別表は会社の状況によって記入する書類が違ってきます。
最後に法人事業概況説明書を作成します。
消費税の確定申告
消費税の納税義務がある法人は、消費税の確定申告が必要になります。
消費税の確定申告では、法人税用に作成した帳簿・決算書類を使って、消費税を集計します。具体的には、売上の消費税(預かっている消費税)と仕入や経費の消費税(支払った消費税)を集計します。
計算方法は、個人事業主の場合と同様で一般課税と簡易課税の2通りがあります。
個人経営が確定申告でやりがちなミスは?こんな場合は気を付けて!
個人経営の方がやりがちなミスを解説していきます。
事前に把握して、確定申告のときに困らないようにしましょう。
個人事業主で自分の給与を費用として確定申告を行ってしまった
<状況>
個人事業主として毎月40万円ほどの利益があり、そのうち20万円を自分の給与として事業用の口座から出金していた。帳簿は表計算ソフトを使って作成し、出金の際には給与として記帳していた。
<原因>
原因は、間違っていることに気がつかない環境です。
表計算ソフトを使って帳簿を作成するのは悪いことではありません。
しかし、表計算ソフトは会計ソフトやツールではないため、間違っている場合でもエラーや警告で知らせてはくれません。
<対策>
すぐにできる対策は、給与を事業主貸という勘定科目に変更することです。
事業主貸とは、事業用の資金を個人用に移す場合に使う勘定科目です。
根本的に解決するための対策は以下の2つがあります。
・税理士に対策を依頼する
・会計ツールを導入する
税理士に対策を依頼する場合は、それなりのコストが発生しますが、プロに任せるため間違いは起きません。
クラウド型の会計サービスであるMoney Forwardクラウドを使うことで自動仕訳が行われます。間違っている仕訳は入力できないようになっており、経理の知識がなくても大半のミスを防ぐことができます。
貸借対照表の合計が一致しない
<状況>
青色申告で確定申告を行うため、添付書類の貸借対照表を作成しようとしている。
表計算ソフトを使って帳簿を作っているが、一致するはずの貸借対照表の合計欄が一致しない。
<原因>
このミスの主な原因は以下の2つです。
・仕訳金額の入力を間違っている
・集計漏れが発生している
仕訳では、借方と貸方という2つの項目に勘定科目と金額を入力します。このとき金額は、どちらも同じ金額を入力します。金額を間違うと、貸借対照表の合計が一致しないというミスが生じます。
また、1つでも勘定科目が集計から漏れてしまうと、貸借対照表の合計が一致しないというミスが生じます。
<対策>
対策は主に以下の2つです。
・確定申告の相談窓口を使う
・会計ツールを導入する
確定申告の時期になると、税務署や自治体が確定申告の相談窓口を設けます。
そこでは、指導員の方に確定申告の作成を指導してもらえます。
また、クラウド型の会計サービスであるMoney Forwardクラウドを導入することで、上記の原因2つを防ぐことができます。
日常の営業関連の仕訳は、自動仕訳機能によって入力する必要がなくなります。
さらに集計はMoney Forwardクラウドが行うので集計漏れの心配はありません。
クラウド型の確定申告ツールが、個人経営のあなたには合っているかもしれません
個人経営をされている方、以下のような悩みを抱えていませんか?
・売上の分析ができていない
・経理や確定申告を自分で行っているが、時間がかかりすぎている
・確定申告の相談窓口で時間をかけたくない
これらは、Money Forwardクラウドを導入することで解決できます。
売上の分析は、タイムリーな経理を行うことで可能になります。
Money Forwardクラウドでは、銀行口座や請求書作成機能と連動して、売上の自動仕訳を行います。分析レポート機能でグラフを使って分析することもできますし、毎月行うような仕訳は自動仕訳と学習機能で対応でき、自分で行う必要がなくなります。
また、Money Forwardクラウドには会計機能だけでなく、申告書作成機能も付いています。
上記の悩みを解決する手段として、Money Forwardクラウドの導入を検討してみてはいかがでしょうか。導入手順は以下の画像の通りです。
個人経営の方が持つ、経理や確定申告の悩みを、ツールが解決してくれます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。