• 作成日 : 2022年7月16日

個人事業主の事業承継の手続きは?必要書類や税金対策も解説!

個人事業主の事業承継の手続きは?必要書類や税金対策も解説!

「この事業を次世代まで継続させたい」と考える個人事業主が行わないといけないのが、後継者への事業承継です。事業承継の際には、廃業届や開業届、青色申告承認申請書の提出、屋号の引き継ぎなど、数多くの手続きがあります。所得税などの税金関連についても確認が必要です。生前贈与で事業承継を考えている場合にも、注意すべきことがあります。

また、事業承継には、子どもなど親族に事業を譲るという方法だけでなく、M&Aによる譲渡という方法もあります。こちらについてもチェックしておきましょう。

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個人事業主の事業承継の方法は?

個人事業主の事業承継方法には以下のようなものがあります。

  • 売買(M&Aなど)
  • 贈与
  • 相続

売買(M&Aなど)

子どもなどの家族に事業承継するのではなく、第三者に事業を売却するM&Aという方法があります。事業を売却すると、元の経営者は金銭が受け取れる点がメリットです。

反対にデメリットは、承継先を見つけるのが難しい場合がある点です。

ただし、売却の相手先を自分で見つけられないという場合には、M&A仲介サイト、仲介会社に依頼するという方法があります。

贈与

贈与で事業承継するケースもあります。この場合の贈与先は「家族・親族」や「第三者」です。多くが「生前贈与」で手続きされます。

生前贈与のメリットは、先代が元気なうちに事業承継できるため、技術や経営に関するノウハウを十分に引き継げる点といえるでしょう。

デメリットは、事業用資産に贈与税がかかるという点です。

相続

経営者が亡くなった場合、相続で事業承継することになります。遺言書があれば問題ありませんが、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議から始めないといけません。その場合、事業承継に時間を要し、取引先等に迷惑がかかるおそれもあります。

なるべく遺言書を残し、誰に事業を引き継ぐか、はっきりさせておきましょう。

個人事業主の事業承継の流れ・手続きは?

個人事業主の事業承継の流れについて見ていきましょう。大きく以下の流れで手続きを進めます。

  1. 先代の廃業手続き
  2. 後継者の開業手続き

なお、こちらでご紹介するのは、先代(個人事業主)が生存している間に事業承継する場合についてです。

先代の廃業手続き

個人事業主が事業承継する場合、まずは先代の廃業手続きが必要です。具体的には以下の手続きが必要です。

  1. 廃業届を提出する
  2. 青色申告の取りやめ手続きを行う
  3. 事業廃止届出書を提出する
  4. 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書を提出する(予定納税をしていた場合)
  5. 給与支払事務所等の廃止届出書を提出する(従業員を雇っていた場合)
  6. 事業廃止申告書を提出する

後継者の開業手続き

先代の廃業手続きを行った後、後継者の開業手続きが必要です。以下の流れで手続きを行います。

  1. 開業届を提出する
  2. 必要に応じて青色申告承認申請書等を提出する

その他、場合によっては以下の手続きも必要です。

  • 許認可等が必要な場合は再申請する
  • 資産の引き継ぎ手続きを行う
  • 取引先等の引き継ぎを行う

 

個人事業主の事業承継に必要な書類は?

個人事業主が事業承継をする場合、先代・後継者はそれぞれ以下の書類を準備し、所定の役所等に提出する必要があります。

【先代が準備する書類】

  • 廃業届出書
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 事業廃止届出書(課税事業者の場合)
  • 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
  • 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員を雇っていた場合)

個人事業主の廃業についてはこちらもご覧ください。

【後継者が準備する書類】

  • 開業届
  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書
  • 雇用に関する書類
  • 消費税簡易課税制度選択届出書(必要に応じて)

廃業届出書

廃業届は事業廃止から1か月以内に提出しましょう。提出先は税務署となります。廃業届を提出する前に、税金の申告や納付手続きは完了させておきましょう。

所得税の青色申告の取りやめ届出書

現在、青色申告をしている場合は、廃業届と共に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出します。

事業廃止届出書

現在、消費税課税事業者であれば、事業廃止届出書の提出が必要です。こちらも税務署に提出します。

所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請

先代の廃業に伴い、所得税が予定納税額以下となることが予想されます。予定納税額の減額のため、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」の提出が必要です。こちらも税務署に提出します。

なお、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」は次のような場合に提出できます。確認しておきましょう。

  • その年6月30日の現況による申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合
  • その年10月31日の現況による申告納税見積額が既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる場合

参考:[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁

開業届

個人事業主の事業承継の場合、後継者が「開業届」を提出しなければなりません。事業開始から1か月以内の届け出が必要です。提出先は税務署となっています。

また、先代から屋号を引き継ぐ場合には、その旨を開業届に記載する必要があります。商号が登記されている場合には、法務局で「名義変更」の手続きも必要です。

開業届についてはこちらの記事を参考にしてください。

所得税の青色申告承認申請書

青色申告を希望する場合には、所得税の青色申告承認申請書も提出してください。事業開始から2か月後までに提出することと決められていますが、開業届と共に税務署に提出するとよいでしょう。

所得税の青色申告承認申請書についてはこちらもご覧ください。

青色事業専従者給与に関する届出書

後継者が自分の配偶者などに事業を手伝ってもらう場合、青色事業専従者給与に関する届出書を提出しておくと、配偶者に支払った給与を経費扱いにできます。

雇用に関する書類

配偶者などではなく、他人を従業員(事業所と常用的使用関係にあるアルバイト・パートを含む)として雇用する場合には、「雇用契約書」などの雇用に関する書類も準備する必要があります。また、業種、従業員数によっては社会保険への加入が義務付けられますので、それらの書類も必要です。

参考までに「常時5人以上の従業員の使用で、社会保険の強制適用事業所とされる業種」をご紹介します。

  • 製造業
  • 建設業
  • 鉱業
  • 電気ガス事業
  • 運送業
  • 小売業
  • 卸売業
  • 金融業
  • 保険業
  • 不動産業

など

また、従業員を雇用し、給与を支払うのであれば「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。必要に応じて「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出してください。

消費税課税事業者選択届出書

後継者の課税売上高が1,000万円以下であれば自動的に免税事業者となりますが、あえて「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、課税売上高1,000万円以下であっても消費税が課税されます。

2023年10月からインボイス制度が始まります。もし、適格請求書を発行したいというのであれば、消費税課税事業者となる必要があります。免税事業者のままでいるか、課税事業者になるか、メリット・デメリットを考慮して決めましょう。

消費税簡易課税制度選択届出書

消費税課税事業者で年間の課税売上高が5,000万円以下であれば「消費税簡易課税制度」を利用できます。利用したい場合には、消費税簡易課税制度選択届出書を提出してください。

ただし、消費税課税事業者になるのであれば、簡易課税よりも通常課税のほうが消費税負担を抑えられる場合もあります。

個人事業主の事業承継にかかる税金の種類は?

個人事業主が事業承継を行う際にかかると想定される税金には次のようなものがあります。

  • 贈与税
  • 相続税
  • 消費税
  • 所得税

贈与税

先代が生前に親族や第三者に無償で事業承継した場合に発生します。負担するのは後継者です。課税方法には以下の2通りがありますので確認しましょう。

【暦年課税】
1年間(1月~12月)に発生した贈与に対して課税。年間110万円を超えた部分に対して課税されます。

【相続時精算課税】
60歳以上の人から18歳以上の子・孫に対して贈与する際に選択できます。2,500万円までは贈与税を納めずに贈与を受けられる制度です(2,500万円を超えると、一律20%の税金がかかります)。

相続税

経営者(先代)が亡くなり、事業承継する場合に発生します。負担するのは相続を受けた後継者です。贈与税について相続時精算課税を選択している場合、贈与時の価額+相続財産の価額をもとに相続税額を計算し、すでに納めている贈与税相当額を控除して相続税額を算出します。

消費税

消費税課税事業者である場合にのみ発生する税金です。事業承継の方法によって扱い方が異なりますので要確認です。

【経営者(先代)が生前に事業承継する場合】

  • 先代:廃業までの課税売上に対して消費税を納税する
  • 後継者:前々年の課税売上高が1,000万円を超えない場合は課税されないため、2年間は課税なし

【相続で事業承継する場合】
課税売上も引き継がれるため、先代の時代の売上高+後継者の売上高に対して消費税が課せられる

所得税

M&Aなどで事業承継した場合、前経営者に対して課せられます。課税対象は「売却代金-経費」です。売却翌年の確定申告で納税します。

個人事業主の事業承継でおすすめの節税対策は?

個人事業主の事業承継でおすすめの節税対策を紹介します。

個人版事業承継税制

青色申告を行っていた事業者の後継者で円滑化法の認定を受けた人が2019年1月1日~2028年12月31日の間の贈与・相続で「特定事業用資産」を取得した場合、以下の猶予・免除が受けられます。

  • その青色申告に係る事業の継続等、一定の要件のもと、その特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額の納税猶予
  • 後継者の死亡等、一定の事由により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納税免除

ただし、猶予・免除を受けられる後継者は、2019年4月1日から2024年3月31日までに「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出し、確認を受けた人に限られます。

また、「特定事業用資産」とは、前経営者(先代)の事業の用に供されていた以下の資産で、贈与又は相続等の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたもののことです。

  1. 宅地等(400㎡まで)
  2. 建物(床面積800㎡まで)
  3. 2以外の減価償却資産で以下のもの
  • 固定資産税の課税対象とされているもの
  • 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの
  • その他一定のもの(一定の貨物運送用及び乗用自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産

生命保険

相続の際にかかる税金の負担を抑えたいのであれば、経営者(先代)の生命保険の受取人を後継者にしておくという方法もあります。保険金で相続税等を支払うということです。

ただし、生命保険をかけると保険料を支払い続けなければなりません。経営者に金銭的負担が生じる点はデメリットといえるでしょう。

生前贈与

個人事業主が生前に贈与という形で事業継承しておくと、後継者は2年間、消費税負担がなくなるというメリットがあります。

代替わりの前に事業承継の方法を決定しておきましょう

今から代替わりについてどうすればいいのか悩んでいるという経営者の方は多いことでしょう。事業承継を行う際は、さまざまな書類の作成、そして税金の支払いなど煩雑な手続きがいくつも生じます。

いざという時に慌てなくて済むように、どのような形で事業承継を行いたいのか、後継者をどう選ぶかなど、少しずつ考えておきましょう。

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よくある質問

事業承継にはどのような方法がありますか?

贈与、M&A、相続という方法があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が事業承継を行う際に発生すると考えられる税金は?

贈与税、相続税、消費税、所得税などが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が贈与で事業承継する際、先代が提出する書類とは?

廃業届出書、所得税の青色申告の取りやめ届出書、事業廃止届出書、所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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