Zoomを導入した税理士の働き方。オンラインだからこそできることやメリットは?

業務効率化

Zoomを導入した税理士の働き方。オンラインだからこそできることやメリットは?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの税理士の方がテレワークを導入したのではないでしょうか。その結果、税理士にとって「オンライン」は身近な存在へと変化し、Web面談ツール「Zoom」を導入した税理士事務所も増加してきています。そこで本記事では、Zoomを導入するメリットや完結できる税理士業務、導入するにあたって準備するものについて紹介していきます。

Zoomを導入するメリット

オンライン面談を行う場合において、代表的なツールとしてZoomが挙げられます。

新型コロナウイルス感染症の影響により、税理士業務に関しても従来のクライアントと直接対面してコミュニケーションをとる方法に加え、Zoomを用いたオンライン上での対応が急速に普及しました。

特にオンライン面談用のツールを活用することによって、下図のようにさまざまなメリットが期待できるため、Zoom導入の効果を十分に検証し、具体的な活用方法を模索しましょう。
 

 

スピーディーな対応が可能になる

Zoomなどのオンライン面談用のツールを活用することで、業務効率の向上が期待できます。税理士業務ではクライアントからの税務相談や質問対応に割く時間も多く、中にはメールや電話ではスムーズに意思疎通が図れず、リアルタイムで資料を共有しながら対応する方が効率的なケースも少なくありません。

そのような場合において、クライアントを直接訪問しなくても、Zoomを活用することで質問や相談を受けた際に直ちに必要な情報を共有することが可能です。

またZoomを利用することで移動時間を考慮しなくて済むため、お互いに気軽にコミュニケーションをとることができ、明瞭かつスピーディーな対応が可能となることから顧客満足度の向上にも貢献します。

特定の業務をオンラインで完結することができる

税理士業務の中にはオンラインで業務が完結するものもあり、事務所内にZoomを導入することで業務時間の短縮にもつながります。

具体的な業務内容については後ほど詳しく紹介しますが、Zoomの機能を活用し、オンラインで業務を完結できる仕組みを構築することで、税理士としてのキャパシティ拡大にも役立てることが可能です。

特に税理士業務では定型業務も数多く存在するため、Zoomの導入によってそれらの業務を効率化できれば、事務所としての労働生産性アップにも効果的です。

移動時間を要さない

Zoomなどのオンライン面談では、クライアントを直接訪問することなく、PCやタブレット端末、スマートフォンなどの電子機器さえあればいつでもどこでもコミュニケーションをとることができるため、移動時間の削減が可能です。特に税理士業務においては、定期的に顧問先のもとを訪問する月次監査が基幹業務のひとつとなるため、それらをZoomで対応できれば、日常業務における移動時間の大幅な短縮が見込めます。

また完全にオンライン対応へ切り替えることが難しい顧問先でも、毎月の訪問のうち、確定申告時期のような繁忙期についてZoomでの対応へと移行できれば、事務所の労働環境の改善としても有益です。Zoomの活用によって移動時間が削減されれば、それによって捻出された時間を他の業務に充てることができるため、事務所としての売上アップやサービスの向上にも貢献します。

コストの削減

Zoomを活用することでクライアントを訪問する必要がなくなるため、電車などの公共交通機関の利用料やガソリン代のような移動コストを削減することが可能です。

また移動の手間がなくなることで職員の労働効率を高めることができるため、残業時間の削減や事務所の労働生産性向上に向けた施策としても効果が期待されます。

なおZoomを導入するメリットは、クライアントだけでなく、事務所内部の労働環境にも及ぶこととなります。クラウド型会計ソフトやオンラインストレージなどと組み合わせて導入することで、リモートワークが可能となり、職員にとって働きやすい職場環境を実現しやすくなります。税理士事務所としての労働環境の改善が実現できれば、職員の定着率アップにも貢献し、採用コスト削減にも役立ちます。

感染症対策

クライアントを直接訪問することなくリモート対応に移行することで、直接的な接触機会が減少するため、感染症のリスクを減らすことができます。新型コロナウイルス感染症だけでなく、繁忙期である確定申告時期にはインフルエンザなども流行しやすいため、事務所内部で感染症がまん延すれば業務が大幅に遅延してしまいます。

そのようなリスクを避けるうえでも、Zoomの導入によってクライアントとの接触機会を減らすだけでなく、万が一に備えて事務所に出勤しなくてもリモートワークで対応できる環境を整えておくことが重要です。

ターゲットを全国に拡大できる

Zoomなどのオンライン面談のツールを導入することで、オフラインでは物理的に対応ができなかった遠方のクライアントともコミュニケーションをとることができます。それによってこれまでの税理士業界で主流となっていた「地域密着型」の事務所経営に限らず、税理士は自らの強みを活かして全国の見込み客をターゲットとして捉えることが可能となりました。

またZoomのようなオンラインツールの普及で、税理士としての方向性によっては、事務所としての拠点の在り方にも変化が生じる可能性があります。Zoomなどのオンラインツールを活用し、税理士業務においてクライアントの訪問や事務所への来所を前提としないのであれば、都心のような交通の便が良い地域に事務所を構える必要もなくなります。

今後独立開業を行う場合には、業務で活用するツールに関して事前に検討したうえで、事務所の開業地についても慎重に選定しましょう。

オンラインで完結できる税理士業務

税理士業務においてZoomを導入することで、業務フローの一部をオンライン化できるだけでなく、業務内容によってはオンライン上で業務を完結させることが可能です。

オンラインで対応可能な業務領域を拡大できれば、オフラインで行うよりも業務スピードや業務効率を高めることができるため、業務内容を精査し、Zoomの活用によって改善できる業務がないかチェックしましょう。
 

 

相談業務

Zoomのようなオンライン面談のツールを活用することで、事務所にいながらクライアントや職員とWeb面談やWeb会議を実施することが可能です。

また単にコミュニケーションをとるだけでなく、Zoomでは画面共有機能も用意されています。さまざまな資料や会計ソフトの画面をクライアントや職員と共有しながら打ち合わせを行うことで、オフラインと変わらないクオリティで面談や会議を実施できます。

このようなZoomの機能を活用すれば、顧問先以外のクライアントに対しても質の高い質問対応が可能となるため、スポットでの税務相談やセカンドオピニオンとしての相談業務などのサービス拡大にもつながります。

月次監査業務

Zoomについてはスポットの相談業務だけでなく、税理士の基幹業務である月次監査業務にも活用できます。顧問先を訪問することなくコミュニケーションがとれ、さらに画面共有機能によって顧問先と会計データや資料を見ながら状況報告ができるため、訪問時と同等のサービスを提供することも可能です。

またZoomを用いて必要な情報を収集するだけでなく、クラウドストレージなどのサービスを併用することで、資料回収についてもオンラインで完結できます。確定申告や決算手続きなどの下準備をオンラインで実施することで、税務申告業務のボトルネックとなりがちな資料回収や情報収集をスピーディーに行うことができ、申告手続き完了までの工数短縮にも貢献します。

新規オンライン商談で気をつけるポイント

Zoomなどのオンラインツールを活用する場合、その目的や運用方法を精査することなく、闇雲に導入しても期待する効果は得られません。

場合によっては事務所としてのサービスの質の低下や、事務所内の業務効率の悪化を招きます。その結果、顧客満足度や労働生産性が下がってしまうおそれもあります。

また近年では新規顧客獲得のための商談についてもオンラインで実施される機会もあるため、まずは下図のようなポイントを整理し、オンライン商談としてZoomを効果的に活用するための環境づくりに努めましょう。
 

 

商談前に商談先の課題感を把握しておく

直接見込み客のもとを訪問するオフラインでの商談に比べ、オンライン商談ではPC内の情報は共有できるものの、職場環境などを通じてさまざまな情報を得ることが難しくなります。そのため、オンライン商談では商談前に適切な準備を講じておくことが重要であり、必要な情報はできる限り事前に入手することを心掛けましょう。

特に見込み客が持つニーズについては、大まかな内容でも構わないので、あらかじめ把握しておくことで事前準備もしやすくなります。新規オンライン商談の問い合わせフォームを充実させ、見込み客の会社名や業種などの基本情報だけでなく、現在感じている課題や問い合わせに至った経緯などについても、入力欄を設置することをおすすめします。

事前に自社の強みやアピールポイントを分析する

見込み客が持つ課題やニーズを把握できれば、それらに対して税理士として的確なサービスを提供できる点をアピールすることが重要です。商談前に自分自身の強みやアピールポイントを分析し、商談相手のニーズや相談内容と照らし合わせることで、商談をスムーズに進めることができます。

なお現状の税理士業界においては、中小企業や個人事業主の減少や税理士登録者数の増加などの要因によって、競合他社と差別化を図ることが重要です。Zoomの導入するかどうかにかかわらず、税理士としての強みや市場環境を十分に分析し、差別化の方向性を模索することをおすすめします。

商談相手の悩みや相談内容を明確にする

実際にオンライン商談を実施する場合には、税理士としての強みやサービス内容を一方的に発信するのではなく、まずは商談相手が抱える課題や相談内容を丁寧にヒアリングしましょう。

相手が商談を通じて知りたい情報を明らかにすることを意識したうえで、専門家として提供できる価値を伝えることが重要です。質問すべき項目をまとめたヒアリングシートを事前に用意しておくと、オンライン商談をスムーズに進行しやすくなります。

なお問い合わせフォームに記載された内容については、オンライン商談の際に再度質問してしまうとしっかりと読んでいないという印象を与えてしまいかねないため、ヒアリングの際には誤解を招くことのないように注意しましょう。

丁寧な対応を心がける

同じ空間を共有するオフラインでの商談に比べると、オンライン商談の場合には集中力が持続しづらく、商談相手と信頼関係を構築することが難しくなる傾向にあります。
オンライン商談を実施する場合には、せっかくの顧客獲得につながる商談の機会に相手に不快な印象を与えないように、言葉遣いや態度にはより一層注意しなければなりません。

またオンライン商談の場合、基本的にはお互いの上半身しか写っておらず、対面で会話をするよりも表情やボディランゲージの情報は伝わりにくくなります。オフライン形式での商談に比べ、不自然ではない程度に声の抑揚やリアクションを少し大きくすることを意識しましょう。

商談後のフォローを徹底する

オンライン商談の場合には画面のみの情報に限定されるため、非言語コミュニケーションの機能が低下し、オフラインで商談を行うケースと比較して正確な情報を伝えにくいと考えられます。

商談中は相手が表向きの発言しかできていない可能性もあるため、商談後はお礼の電話やメールに加え、疑問点や不安に感じる点がないか確認するなど、丁寧なアフターフォローを行いましょう。

またオンライン商談では相手の印象に残りにくいという注意点もあるため、商談相手のニーズに合った情報を定期的に発信するなど、商談後に接点を持ち続けることも効果的です。

Zoomの機能を使いこなせるようにしておく

せっかく十分な営業スキルを備えていたとしても、オンライン商談を実施するにあたってZoomを使いこなしていなければ、相手にマイナスの印象を与えかねません。不慣れなうちは操作方法で手間取ってしまうケースも多いため、事前に資料を準備するだけでなく、Zoomの使い方や画面共有などの機能についてあらかじめシミュレーションを行いましょう。

特に税理士事務所でZoomを導入する場合には、職員との会議をZoomによって開催するなど、まずは事務所内で積極的に活用し、職員も含めた事務所全体のITリテラシーを高めるように心掛けましょう。

ネットワークが安定している環境を確保する

事前準備を完璧に行ったとしても、商談中に通信トラブルが発生してしまえば商談自体がストップしてしまいます。オンライン商談を行う場合には、インターネット環境が安定した場所を確保することはもちろんのこと、不測の事態にも慌てることがないよう、通信トラブルが発生した場合には電話に切り替えるなど、具体的な対処方法についても事前に検討しましょう。

またオンライン商談の場合には、「音質が悪く、何を言っているのかわかりづらい」「周囲の雑音が大きい」などの理由で、商談相手に不快感を与えてしまうケースも少なくありません。事前に通信機器をチェックするだけでなく、会議室など閉鎖的な空間を準備するといいでしょう。さらに、周囲の声が入ってしまわないように、事務所内でもオンライン商談のスケジュールをあらかじめ共有するなど、商談時に快適なコミュニケーションがとれるように工夫しましょう。

Zoomの導入で低コストかつスピーディーな働き方を

税理士業界においてもZoomの活用が進んでおり、それに伴って業務の見直しを行っている税理士事務所も多いです。

Zoomを導入することによって、以下のようなメリットが期待できます。

  • スピーディーな対応が可能になる
  • 特定の業務をオンラインのみで完結できる
  • コストの削減
  • 移動時間を要さない
  • 感染症対策
  • 業務エリアやターゲットを全国に拡大できる

さらにZoomの画面共有機能に加え、クラウドストレージを活用することによって、税務相談業務や月次監査業務、税務申告に必要な情報収集や資料回収をオンラインで完結させることが可能です。

ただしオンラインで商談を実施する場合には、「商談相手の悩みや相談内容を明確にすること」や「丁寧な対応を心掛けること」「Zoomの機能を使いこなせるようにしておくこと」など、いくつかの注意点があります。

中にはオンライン特有の注意事項も存在するため、オフラインとの違いを正しく理解し、Zoomのメリットを十分に発揮できるような環境づくりに努めましょう。

よくある質問

税理士がZoomを導入するメリットは?

Zoomの導入により、スピーディーな対応が可能になる点や移動コストを削減できるというメリットが期待できます。さらにZoomを活用すれば業務エリアを全国に拡大できるため、売上アップにも貢献するでしょう。

オンラインで完結する税理士業務は?

Zoomの画面共有機能を活用することで、スポットの税務相談などはZoomで完結できます。またクラウドストレージなどを併用すれば、月次監査業務や税務申告に必要な資料回収もオンラインで行うことが可能です。

オンライン商談を行う場合の注意点は?

オフラインでの商談に比べ、非言語コミュニケーションが難しいため、丁寧なヒアリングやアフターフォローが重要です。また快適に商談を進めるためには、通信環境の整備や周囲の雑音が入らないような工夫が必要です。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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