【シーン別】税理士が押さえるべき面談のポイントを解説!

【シーン別】税理士が押さえるべき面談のポイントを解説!
税理士の方は、さまざまな場面でお客様とお話しする機会があるかと思います。顧客満足度をあげるためにも、その時間を有意義にすることは欠かせません。そこで本記事では、初回面談や月次の面談、Zoom面談のシーン別に面談のポイントについて解説していきます。

税理士が初回面談で聞くべきこと

税理士が経営者と初回面談を行う際には、下図のようなポイントを意識したうえでヒアリングを行いましょう。
 

 
初回面談は顧問先獲得に向けた大きなチャンスであるため、成約することばかりに意識が集中しがちですが、契約前に十分なコミュニケーションを取らなければその後の信頼関係の構築にも悪影響を及ぼします。

ヒアリングすべき内容をしっかりと踏まえ、お互いにとって納得のいく形で成約できるように取り組みましょう。

ビジネスへの考えをしっかり聞く

顧問契約を締結する前の初回面談の段階では、まず経営者を理解することが重要です。経営者としての考え方や経営理念、今後のビジョンなどを事前にヒアリングすることによって、税理士は自らのサービス内容と合致しているか慎重に検討しましょう。

また事前に経営者の考え方や人間性、事業内容を把握することは、契約後のトラブルを回避するためにも非常に重要です。特に開業して間もない税理士の場合には、目先の売上獲得を優先するあまり、本来締結すべきでない顧問契約を締結してしまい、かえって事務所全体の収益性低下を招くケースもあります。

お互いにとって望まない契約を締結することがないよう、初回面談用のチェックリストなどをあらかじめ作成し、確認すべき内容を漏れなくヒアリングするように徹底してください。

期待していることを事前に聞く

初回面談においては、経営者が税理士に求める「期待値」を確認することが必要不可欠です。

一般的な顧客対応では、クライアントが持つ「期待値」を超えることによって顧客満足度の向上へとつながります。そのため「税理士が提供するサービス内容」と「経営者の期待値」の間にズレがあれば、業務を通じて次第に満足度が低下することが懸念されるでしょう。

特に税理士業務に馴染みのない経営者の場合には、以下のように税理士の業務内容に誤解があるケースも多いです。

  • 税理士に頼めば必ず税金が安くなる
  • 経理や請求事務など、バックオフィス全体を丸投げできる
  • 社会保険手続きや給与計算、補助金申請まで代行してもらえる

クライアント側が税理士業務に対して間違った認識を持っている場合には、これらの誤解を解くことで過度な期待値を下げる必要があります。

初回面談において「期待値コントロール」を行うことによって、税理士は自らの「サービス内容」と「経営者の期待値」をすり合わせることが可能となり、契約後の認識の不一致によるトラブルを防ぐことが可能です。

税理士の初回面談で伝えるべきことは料金とサービス内容

初回面談の際には基本的には経営者に対するヒアリングを重点的に行うことが望ましいですが、税理士側も「料金」や「サービス内容」に関しては詳細な説明を行わなければなりません。

料金体系に関しては税理士事務所で異なり、毎月の顧問料に含まれるサービス内容も事務所によってさまざまです。顧問料に決算報酬まで含まれているケースもあれば、細かな業務でもその都度追加料金が発生する事務所もあるでしょう。

事務所の料金設定に関して誤解を持ったまま顧問契約を締結してしまうと、契約後にトラブルへと発展するリスクが高まり、結果的に顧問税理士に対する不信感へつながる可能性も考えられます。

特に経営者が他の税理士からの変更を希望しているケースでは、既存の税理士事務所の料金体系についてもヒアリングし、自らの事務所との違いについて正確に伝えるように心掛けましょう。

また料金と同様に、税理士は自らのサービス内容についてもきちんと説明を行わなければなりません。

近年では税理士業務も多岐にわたっており、それに伴って顧客のニーズも多様化しつつあります。税理士事務所によってクライアントへ提供するサービス内容には多少なりとも差異がある場合も多く、税理士を変更する場合には既存の税理士と同様のサービスが受けられる保証はありません。

そのため税理士事務所ごとのサービスの違いが「潜在的なスイッチングコスト」となるケースも多く、クライアントが期待するサービスが提供できなければ顧客満足度の低下につながるリスクも高まってしまいます。

したがって初回面談の際には税理士は自らが提供できるサービス内容について具体的に説明し、経営者との認識のズレを事前に解消することが重要です。また税理士が専門外となる業務についても、他士業や人脈を活用して多方面からサポートが可能である旨を伝えることで、経営者へ安心感を与えることも可能でしょう。

このように初回面談の際には税理士と経営者の間に「情報の非対称性」が存在することを認識し、できる限りそれらの差を埋められるように丁寧な説明を行うなど、税理士には誠実な対応や細やかな配慮が求められるのです。

税理士の月次の面談(月次訪問)を有意義にする

税理士がクライアントと顧問契約を締結する場合には、定期的に顧問先と面談の機会を設けるケースが一般的です。

月次訪問の際には、主に下図のようなポイントを意識して顧問先とのコミュニケーションを図ることをお勧めします。
 

 

顧問先の現状や課題を知る

税理士にとって月次訪問は「顧問先との定期的なコミュニケーションの場」として有効活用することが重要です。

記帳内容の正確性を維持することはもちろん、試算表に基づいて直近の業績を報告し、顧問先の現状や課題を経営者と共有することが求められます。税理士にとっても試算表だけでは把握しきれない数字の裏側にある原因を理解し、専門家の立場から的確なアドバイスを行わなければなりません。

また「債権の回収遅延」や「労働生産性の低下」など、ときには顧問先の経営者が把握していない問題点にいち早く税理士が気づくこともあります。そのような数字に表れるさまざまな予兆を察知し、それらをクライアントと共有することも税理士としての重要な責務です。

また経営者だけでなく顧問先の経理担当者とも定期的なコミュニケーションを取り、記帳指導や経理業務フローの改善提案を行うことで顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

単に専門的な知識を有するだけでなく、定期的に顧問先のもとを訪れる税理士だからこそきめ細やかなサービスが可能となり、それによってクライアントとの信頼関係が構築されるのです。

プラスアルファの価値を提供する

経営者という立場では自らの悩みを第三者に打ち明けることは容易ではなく、さまざまな困難や不安を抱え込んでしまうケースもあります。そのような孤独な立場に陥りやすい経営者にとっては、顧問税理士が身近な相談相手となることも多いでしょう。

経営者から事業に関する課題や問題点についての相談を受け、税理士として適切なサポートを行うことによって次第に信頼関係が構築されます。また従来の税理士業務以外にも経営・財務コンサルティング、事業承継、資金調達支援などの幅広いサービスを提供することによって、顧問先からの期待値を超えやすくなるでしょう。

さらに顧問先が抱える経営上の悩みだけでなく、ときには経営者のプライベートな相談に応じるケースもあり、それらに対して誠実に対応することによって顧客満足度が高まることとなります。

税理士のWeb面談のポイント

近年のITツールの発展に伴い、税理士業務においてもZoomなどによってWeb面談を活用する機会が増えつつあります。

しかしWeb面談への十分な理解や経験が不足していることでさまざまなトラブルが発生し、クライアントの信頼を損なってしまう可能性もあるでしょう。

そのような結果に陥ることがないよう、Web面談を導入する場合には下図のようなポイントに注意して対策を行ってください。
 

 

事前準備をしっかりする

Web面談の場においては、相手にストレスを与えないようにスムーズな進行を行うことが重要です。

実際にクライアントと会って直接話す場合とは異なり、Web面談では予期せぬトラブルに見舞われるケースが多く、それらの不測の事態から円滑にリカバリーできなければ面談全体のクオリティが低下してしまうリスクもあります。

したがって新たにWeb面談を導入する場合には事務所の通信環境を整え、まずは事務所内のミーティングをZoomで行うなど、OJT方式でテスト導入を行うことも効果的でしょう。事前準備を通じてスムーズな話の振り方や画面共有の方法、打合せ内容に関する議事録作成など、Web面談に適応した「ファシリテーション能力」を習得しておくことが必要不可欠です。

また実際にクライアントとWeb面談を行う場合には、紙媒体ではなくオンライン上での資料共有が必要な場合も多いため、オンラインストレージなどのITツールを活用したインフラ整備を行うことも重要です。

Web面談に関しては事前準備によって回避できるトラブルも多いため、スムーズな進行による円滑な業務遂行のためにも万全の対策を講じましょう。

セキュリティリスクに対処する

税理士が扱う情報には顧問先に関する重要な内容も多く、オンラインツールに慣れていないことによって思いがけず顧客情報が流出してしまうリスクも大きいです。

使用するITツールの選定や不正アクセスへの対策だけでなく、Web面談での画面共有時に誤って他の顧客に関する重要事項が映ってしまうリスクや、事務所職員の会話など周囲の音声が相手に聞こえてしまう可能性も考えられます。

したがってWeb面談を行う際には応接スペースなどを利用して周囲の音が混入しないように対策するとともに、他のクライアントに関する情報など画面共有してはならないデータは事前に閉じておくように徹底しましょう。

シーン別のポイントを押さえて、有意義な面談に

税理士業務においてはさまざまなクライアントと面談する機会があり、近年では面談の際に用いる媒体も多様化しています。

税理士業務においてはクライアントとのコミュニケーションを通じて信頼関係を醸成することが一般的であるため、面談が持つ役割や重要性は非常に大きいといえるでしょう。質の高い面談を行うことで顧客満足度が高まる一方で、不十分な説明や対応の甘さが原因で信頼関係が崩れてしまうリスクもあります。

それぞれの面談のシーンに応じて最適なアプローチ方法も異なるため、税理士は面談ごとの目的やポイントを正しく理解したうえで丁寧な対応を心掛けましょう。

よくある質問

初回面談を行う際の重要なポイントは?

経営者が持つ税理士への期待値を把握することが重要です。それらを自らの業務内容と照らし合わせ、ニーズに合致しているか検討してください。また料金や業務内容について誤解がないように丁寧な説明を行いましょう。

月次訪問の際に意識すべきことは?

記帳内容の確認だけでなく、試算表を通じて顧問先の現状や課題を把握し、経営者と共有することが大切です。ときには経営者も気づいていない予兆が見つかるケースもあり、適切な対応が満足度の向上へとつながります。

Web面談を導入する場合の注意点は?

通信環境の整備やWeb面談に適応したファシリテーション能力を習得しましょう。また重要情報を扱う税理士は画面共有のミスや周囲の音声によって顧客情報が流出しないよう、細心の注意を払わなければなりません。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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