公認会計士が独立を成功させるためにすべき準備とは?

独立・開業

公認会計士が独立を成功させるためにすべき準備とは?
難関の公認会計士試験に合格した方のなかには、独立を考えている方も多くいらっしゃると思います。しかし、いざ独立を目指す際には、どのような準備をすればよいのでしょうか。本記事では、公認会計士が独立するための準備や心構えなどについて解説していきます。

公認会計士が独立を成功させるためにすべき準備とは

最初に、公認会計士が独立を成功させるためにすべき準備について解説します。

キャリアプランを検討する

独立を考え始めたら、まずキャリアプランの検討が必要です。

独立後の会計士の仕事は、大きく分けて公認会計士業務と税理士業務があります。独立してから「思っていたのと違った」とならないよう、独立後にどのような仕事をしていきたいのか、またどのようなキャリアを積みたいのかを明確にする必要があります。

その上で、例えばアドバイザリー業務をしたいと思ったら、その経験を積むためにファーム内のFASへの異動を検討するのも一手です。税理士業務をしたいと思ったら、その経験を積むためにファーム内の税務部門への異動、あるいは税理士事務所・税理士法人への転職などを、独立前にしておくのがよいでしょう。

自分の強みを見極める

自分の強みが何かを見極めるのも、独立前の準備として重要です。

独立すれば、ほかの公認会計士事務所と競争し、顧客を獲得していかなくてはなりません。税理士業務を提供するなら、ほかの会計事務所・税理士事務所もライバルになってきます。多くのライバルと競争しながら顧客を獲得するためには、自身の強みや得意分野を売りにして差別化を図ることが必要です。

自分の強みを見極めるにあたっては、事務所を設立するエリア、ターゲット層、自身のサービス内容などをもとに、他社にはない強みをイメージします。それと同時に、その強みをWebページやブログ、SNSなどで発信し、事務所をブランディングしていくことについても考えなくてはなりません。

人脈をつくる

独立するにあたっては人脈も必要になってきます。独立すると、分からないことが出てくることがあるものです。その際、相談できる人が身近にいれば心強いでしょう。公認会計士協会内には、さまざまな会合があります。独立前にこうした会にも積極的に参加して、多くの公認会計士と面識をつくっておくことをおすすめします。

また、監査法人内で人脈をつくっておくことも大切です。クライアントとの信頼関係をしっかりとつくっておけば、独立後に案件や、公認会計士を探している新しいクライアントを紹介してもらえることもあります。上司や同僚、後輩との信頼関係ができていれば、独立後に非常勤の仕事や、監査法人では受けられない案件などを紹介してもらえる可能性もあるでしょう。

資金を貯める

独立するということは、新規事業を立ち上げることを意味します。新規事業の立ち上げには、いうまでもなく資金が必要です。

どの程度の資金が必要かは、現在の手持ちの資金と、開業後の収支をシミュレーションして考える必要があります。開業後最初の段階で年収がある程度減少しても、持ちこたえられるだけの資金を用意しておかなくてはなりません。

資金は貯蓄をし、自己資金として準備できるのが一番です。しかし、それでは足りない場合は、資金調達を検討します。

例えば、資金調達の選択肢のひとつとして、日本政策金融公庫からの融資があります。日本政策金融公庫では、公認会計士や弁護士などの士業向けに、開業資金をサポートするローン事業を行っています。

民間金融機関より低金利で、保証人や担保も原則として必要ありません。ただし、融資の審査を受けるためには、事業計画書の提出が必要です。

オフィス・備品をそろえる

独立開業するためには、オフィスと備品が必要です。オフィスは自宅を使うか、どこかに借りるかの選択肢があります。借りる場合は、開業当初は費用が安価なレンタルオフィス、シェアオフィス、あるいはコワーキングスペースなどの利用も検討するとよいでしょう。

備品は、一般的に以下のようなものが必要になります。

  • PC ……出先でも使える軽量タイプのノートPCがよい
  • 電話 ……ビジネスフォンは高価なため、人を雇わないうちは携帯電話・スマートフォンでよい
  • デスク・チェア ……デスク以上に、長時間座っても疲れないようチェアにこだわるのがおすすめ
  • 会計ソフト ……会計事務所向けの製品・サービスを使用
  • 税務申告ソフト ……税務申告ソフトも近年ではクラウド型が普及している

自身の経営理念や将来像を定める

独立にあたっては、どのような事務所にしたいのか、自身の経営理念や将来像を定めることが必要です。大きな選択肢として、サービス提供から運営までを自分一人で行うのか、それとも従業員の雇用や専門家とのチームをつくるなどしながら事務所の規模を拡大していきたいのかの2つがあります。

どちらにするかで必要となる開業資金やオフィスの規模などが変わるため、それに見合った準備をする必要があるでしょう。

また、経営理念は顧客からの信頼を得るためにも重要です。顧客や従業員にどのような価値を提供するかを、しっかりと考えて決めましょう。

公認会計士が独立するときの心構え

公認会計士が独立し、事業を興すにあたって必要な心構えをみていきましょう。

独立する目的を意識する

心構えとしてまず必要なのは、独立する目的を常に意識することです。独立する目的は人それぞれでしょう。しかし、「独立したい」と考えるようになったきっかけがあるはずです。それを明確にしておくことが大切です。

監査法人に勤務して、マネージャーより下の職階にいるときは、与えられた監査業務を的確にこなすことが求められます。それに対して独立すれば、事業を自分で切り開いていかなくてはなりません。

開業当初は、事業がなかなか軌道に乗らないこともあるかもしれません。そのようなときにも、独立の目的がはっきりしていれば、前を向いて進むモチベーションが生み出され、良い結果につながります。

自分で仕事を取ることを意識する

次に、自分で仕事を取ることを意識するのも、独立にあたっての心構えとして重要です。

独立すれば、それまで勤務先から得ていた毎月の給料がなくなります。自分に仕事を与え、指示する人もいなくなるため、仕事は自分で取らない限り、収入が得られません。

仕事を取るために必要なのは、まず営業力です。受注につながりそうな人にターゲットを絞り、積極的にアプローチしていく必要があるでしょう。また、独立するということは、自分が経営者になるということです。取ってきた仕事からどれだけの利益が出るのか、常に経営者目線で考える必要があります。

独立すれば、自分の好きなように仕事ができ、仕事が軌道に乗れば数千万円の年収を得られる可能性もあります。成功をイメージしながら積極的かつ前向きに取り組むことが重要です。

公認会計士が独立すべきタイミングはいつ?

公認会計士が独立すべきタイミングはいつなのでしょうか?一般的に「30歳代中盤」で独立する人が多いといわれています。

監査法人で働いて、独立するに足りる、ひと通りの知識・スキルを身につけるためには、シニアインチャージやマネージャーを経験するまでの4年~8年の期間が必要といわれています。公認会計士試験合格者の平均年齢は26歳程度ですから、合格してすぐ監査法人に入社し、7年間勤務したとすれば、平均年齢は「33歳」になるわけです。

実際に、日本公認会計士協会の調査によれば、監査法人を退職し、転職した人の年齢は、「30歳以下」(37%)と「35歳以下」(35%)が最多です。退職時点での監査法人での実務経験年数は、「10年以下」が1位で35%、「5年以下」が2位で29%となっています。
参考:組織(企業)内の会計専門家に関するアンケート調査結果(中間報告)について|日本公認会計士協会

準備をしっかりして、独立を成功させよう

公認会計士の独立にあたっては、オフィスや備品などの準備が必要です。しかし、それと同じくらい、考えや気持ちを整理することも重要となってきます。独立の方法やプロセスは、人によってさまざまです。独立したいと思ったら、自分の強みややりたいことを大事にし、それに合わせて準備していくことが大切です。

なお、税理士登録をし、会計事務所・税理士事務所としての開業を考える方に向け、『事務所開業の手引き』を作成しました。興味がある方は、ぜひダウンロードして参考にしてください。

よくある質問

公認会計士が独立を成功させるためにすべき準備は?

キャリアプランを検討する、自分の強みを見極める、人脈をつくる、資金を貯める、オフィス・備品をそろえる、自身の経営理念や将来像を定める、などがあります。

公認会計士が独立するときの心構えは?

独立する目的を常に忘れずに、自分で仕事を取ることを意識することが大切です。

公認会計士が独立すべきタイミングは?

独立に足る知識・スキルを身につけるには、監査法人での5年以上の実務経験が必要とされるため、「30歳代中盤」での独立が一般的です。

【監修】公認会計士 福留 聡

福留聡税理士事務所代表、監査法人パートナー、MFクラウドプラチナメンバーで日米の公認会計士及び税理士資格を有し、法定監査、IPO支援、決算支援、IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。

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