公認会計士がより良いキャリアを築くためには?

独立・開業

公認会計士がより良いキャリアを築くためには?

公認会計士の方の多くは、監査法人からキャリアをスタートしますが、その後のキャリアは幅広く、人によってさまざまです。公認会計士として自ら望む働き方を実現するためには、キャリアについて理解しておく必要があります。そこで本記事では、公認会計士のキャリアの考え方から、主なキャリアプランについて解説していきます。

公認会計士のキャリアの考え方

最初に、公認会計士のキャリアの考え方をご紹介します。

まず、監査法人からキャリアをスタートし、その後キャリアチェンジする場合には、監査法人での過ごし方がポイントとなってきます。監査業務以外にIPO準備やIFRS導入、内部統制構築などのアドバイザリー業務を経験しておけば、キャリアチェンジの際に選択肢の幅が広がります。

次に、キャリアチェンジで転職するにあたっては、10年~20年後の目標や希望を設定し、その目標に到達するためのキャリアパスを逆算したうえで、転職先を決めることが重要です。将来の目標として例えば「独立開業したい」「企業のCFOになりたい」「コンサルティングファームの一線で活躍したい」などさまざまなものがあります。しかし、それらの目標には一度の転職では到達できないことが多いため、キャリアパスを考慮する必要があるのです。

もちろん、転職先を決める際には、年収や勤務時間などの労働条件、あるいは「税務を勉強してみたい」などの希望も重要な検討課題となってきます。目標を見据えたキャリアパスと直近の条件・希望の両方を考え合わせることが、公認会計士のキャリアを考える際には必要です。

公認会計士の主なキャリアプラン

それでは、公認会計士の主なキャリアプランとして具体的にどのようなものがあるかを見ていきましょう。

独立開業

公認会計士の方のなかには、独立開業を志向される方も多いのではないでしょうか。独立すれば、自分の裁量で好きなように仕事ができるうえ、年収も1千万~3千万円 、あるいはそれ以上と、勤務するより高くなる可能性があります。

公認会計士の独立は、公認会計士なら無試験でできる税理士登録をし、公認会計士・税理士のダブルライセンスで行うことが一般的です。大企業の監査業務の獲得が難しい個人事務所では、中小企業・個人事業主の税務業務を顧客獲得の入口にする必要があるからです。

また、独立を考える公認会計士のほとんどは、独立前に会計事務所・税理士法人へキャリアチェンジし、税務業務の知識・実務を身につけます。

税理士法人、会計事務所

税理士法人・会計事務所での業務は、税理士として携わる税務業務が主なものです。税務業務とは具体的には、納税者の代わりに税務申告を行う税務代理、税務書類の作成代行、および税務に関する指導やアドバイスとなります。

ただし、近年では税務業務だけでなくコンサルティングも行う会計事務所も増えています。公認会計士としての能力を発揮するには、そのような会計事務所を選ぶのがよいでしょう。

顧客の獲得や育成が重要な課題となる会計事務所へ勤務すれば、営業力やコミュニケーション能力も身につきます。会計事務所勤務後のキャリアプランは、前述のとおり独立開業、あるいは一般事業会社・コンサルティング会社などへの転職などが選択できます。

一般事業会社

一般事業会社で公認会計士は、特に上場企業、M&Aやグローバル展開する企業の経理・財務部門、内部監査室、経営企画室などでニーズがあります。企業の成長を組織の一員としてバックアップする一般事業会社での勤務は、企業を第三者的に評価する監査業務と比較して、やりがいを感じられる方も多いのではないでしょうか。

一般事業会社での勤務はワークライフバランスをとりやすいのが大きなメリットだといえます。監査法人や会計事務所、コンサルティングファームのように顧客の都合でスケジュールが左右されることが少ないからです。

一般事業会社は、業界によって業務内容が大きく異なります。どの業界で働くかは、自分の適性も考慮して慎重に選択しましょう。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームには、戦略系や総合系などさまざまな種類があります。そのなかで会計士が転職しやすいのは、M&AやIPO準備支援などを扱う会計・財務系のコンサル(FAS)や、事業再生コンサルです。監査法人で培った知識や経験をそのまま活かしやすいため、会計士の転職先として人気となっています。

コンサルティングファームへの転職のメリットは、会計コンサルタントとしての専門性が高まることです。ほかの会計士との差別化が可能となり、独立した場合にも役立ちます。

その一方、顧客の都合でスケジュールが組まれることが多いため、労働時間はどうしても長くなりがちです。ワークライフバランスをとりたい人は、注意する必要があるでしょう。

ベンチャー企業

ベンチャー企業も公認会計士の転職先として人気です。IPOをめざすベンチャーなら、上場企業として必要とされる体制を作り上げ、監査法人や証券会社のチェックを受けなければなりません。そのため、内部統制監査や法定監査を熟知している公認会計士は、強いニーズがあります。

また、IPO後のベンチャー企業は、四半期ごとの決算・監査・開示や、株主などへの説明・報告、内部統制、内部監査など、上場企業として果たさなければならない義務が多くあります。そのため、公認会計士をCFOやCFO候補として迎えたいというニーズもあります。

ただし、ベンチャー企業は管理体制がまったく整っていないケースも多いです。会計・財務だけでなく、人事や総務、法務などさまざまな業務を一手に引き受ける可能性もでてきますので注意しましょう。

公認会計士としてより良いキャリアを築くためには

公認会計士としてより良いキャリアを築くためには、どうすればよいかを解説します。

将来像を考える

より良いキャリアを築くためにまず重要なのは、将来像を考えることです。自分がどうなりたいかの将来像を明確に設定し、その将来像に近づくための行動を常にしていく必要があります。

行動にあたっては、計画を立てる必要もあるでしょう。計画は、到達したい将来像から逆算して立てていくことが重要です。

資格取得後も勉強を続ける

より良いキャリアを築くために次に必要なのは、資格取得後も勉強を続けることです。勉強を続けることが、自身の可能性を広げていくことにつながります

公認会計士の資格を取得した方なら、試験のための勉強には慣れていることでしょう。しかし、キャリアを築いていくために必要なのは、試験のための勉強ではありません。業務やキャリアに必要と思われる知識がでてきたら、その都度自主的に勉強し、身につけていくことが必要です。

一つの選択肢にとらわれすぎない

一つの選択肢にとらわれすぎないことも、より良いキャリアを築くためには大切です。自身の将来像を明確にすることは前述のとおり必要です。しかし、それによって視野が狭くなり、可能性を減らしてしまうのはよくありません。

可能性は一つではありません。状況次第でそれまでは思っても見なかった、より魅力的な可能性が浮上してくることもあります。目標に向かって進みつつも、「ほかの可能性が存在するかもしれない」ということは、常に念頭に置いておくとよいでしょう。

公認会計士がキャリアを築くうえで持っていると良いスキル

公認会計士がキャリアを築いていくうえで持っていると良い知識・スキルを以下で紹介します。

TOEIC

グローバルなM&A案件を扱うコンサルティングファームや、グローバル展開する日系企業へ転職しようという場合には、英語力が必要となってくることがあります。その場合のTOEICの点数は、一般には600~700点が歓迎条件とされますが、800点以上を取っていれば、ほかの会計士との差別化が図れるでしょう。

ただし、これは英語力が必要とされないキャリアでは使わないこともあります。

IFRSの知識

国際財務報告基準(IFRS)の知識も、キャリアを築くうえで役立つことがあります。IFRSは、EU加盟国では上場企業に対して義務付けられ、そのほかにも世界120ヵ国以上で採用される会計基準です。日本でも、グローバル展開している企業のIFRS導入例が増えています。

ただし、これもキャリアによっては必要とされないこともあります。

ITスキル

近年では公認会計士にとってもITスキルは欠かせないものとなっています。多くの企業がIT化を推し進めているからです。企業の経理や経営企画で使用されるITツールへは精通しておくことが必要でしょう。コンサルティング業務をするなら、コンサル用のITツールも使いこなせなければなりません。

税務スキル

税務スキルは前述のとおり、特に独立開業する場合には必須といえます。中小企業や個人事業主の顧客を税務顧問となる形で獲得しなければならないからです。

資金調達スキル

資金調達スキルも、公認会計士がキャリアを築くうえで役立つ局面が多くあります。創業まもなく運転資金が必要なベンチャー企業のCFOをめざすなら、必要不可欠といえるでしょう。独立開業した場合でも、融資・補助金の申請スキルがあれば、顧客獲得に役立ちます。

公認内部監査人(CIA)

企業を取り巻く経営環境が激変し、多くの企業が重要性を認識するようになっている内部監査。公認内部監査人(Certified Internal Auditor:CIA)は、内部監査人の能力の証明を日本内部監査協会(IIA-Japan)が行う国際資格です。

公認不正検査士(CFE)

公認不正検査士(Certified Fraud Examiner:CFE)は、一般社団法人 日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)により認定される、不正の防止・発見・抑止の専門家であることを示す国際資格です。不正対策の専門性をアピールでき、公認会計士にとしての付加価値を高められます。

公認情報システム監査人(CISA)

公認情報システム監査人(Certified Information Systems Auditor:CISA)は、情報システムコントロール協会(ISACA)により認定される、情報システムの監査について専門的な知識を有することを認定する国際資格です。情報システム・内部監査部門へのキャリアアップに役立ちます。

システム監査技術者

システム監査技術者は、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」の試験区分の一つです。経営方針に対してシステムが正しく機能しているか、あるいはどのようなリスクがあるかなどを評価・報告するシステム監査人としての専門性をアピールできます。

自分の望むキャリアを描こう

以上で見てきたとおり、公認会計士は多くが監査法人からキャリアをスタートするものの、その後のキャリアはさまざまな選択肢があります。自分がどうなりたいかの将来像をはっきりさせ、そこから逆算して立てた計画に基づいて、行動していきましょう。

よくある質問

公認会計士のキャリアの考え方は?

監査法人勤務時代に幅広い業務を経験しておくこと、および将来の目標・希望を設定し、そこから逆算して転職を考えていくことが重要です。

公認会計士の主なキャリアプランは?

独立開業、税理士法人・会計事務所、一般事業会社、コンサルティングファーム、ベンチャー企業などがあります。

公認会計士がキャリアを築くうえで持っていると良いスキルは?

TOEIC、IFRSの知識、ITスキル、税務スキル、資金調達スキルなどがあるでしょう。

【監修】公認会計士 福留 聡

福留聡税理士事務所代表、監査法人パートナー、MFクラウドプラチナメンバーで日米の公認会計士及び税理士資格を有し、法定監査、IPO支援、決算支援、IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。

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