監査法人を辞めたい。公認会計士が活躍できる転職先の 選択肢とは

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監査法人を辞めたい。公認会計士が活躍できる転職先の 選択肢とは

「監査法人が激務でつらい」「仕事が単調でやりがいを感じにくい」「キャリアチェンジを検討しているが、なんとなく不安」など、公認会計士を取り巻く不安はさまざまです。監査法人でこのまま出世していくことが正しいのか、あるいは辞めて別のキャリアを検討したほうがよいのか悩んでいる方も多いでしょう。本記事では、公認会計士のよくある悩みごととキャリアの選択肢をご紹介します。

公認会計士のよくある悩みごと3選

最初に、公認会計士のよくある悩みごとを3 つご紹介します。

1.監査法人の仕事が激務で残業が多くつらい

公認会計士のよくある悩ごとの一つに、監査法人の仕事が激務で残業が多いことが挙げられます。監査法人の仕事が激務になるのは、以下のような背景があるといわれています。

上場企業の不適切会計が増加している

近年、上場企業の不適切会計が増加しています。東京商工リサーチによれば、2008 年に集計を開始して以来、最多だったのは2019 年度の74 社・78 件。2020 年度は48 社・50 件と減少したものの、2021 年度は54 社・55 件とふたたび増加に転じています。不適切会計の内容は、

  • 経理や会計処理ミスなどの「誤り」……26 件
  • 子会社で不適切会計処理などの「粉飾」……16 件
  • 着服横領 ……13 件

となっています。

それに伴い、監査法人に対して厳格な審査が求められるようになり、監査の手続きが増加しています。

優秀な人材は仕事が絶えず多めに割り振られる

優秀な人材は仕事が絶えず多めの業務が割り振られるため、さらに激務になる傾向があります。せっかく早く仕事を終わらせても、また新たな仕事を任されるため、結果として残業が長時間になってしまいます。

繁忙期と閑散期の差が激しい

繁忙期と閑散期の差が激しいことも、公認会計士の仕事が激務になる背景として挙げられます。日本では3 月決算の企業が多く、5 月上旬くらいまでは各種契約書や請求書・領収書・通帳などのチェックや経営者・監査役とのディスカッションがあり、その後に計算書類・有価証券報告書監査となるため、4~6 月はどうしても激務になります。4~6 月以外の時期は閑散期となるものの、四半期決算やクライアントの支店・子会社訪問、内部統制の業務フロー確認などもあるため、1 年を通して忙しい状態になりがちです。ワークライフバランスをとるのは難しいといえるでしょう。

2.監査の仕事が単調でつまらないと感じてしまう

次に公認会計士の悩みごととして挙げられるのは、監査の仕事が単調でつまらないと感じてしまうことです。監査業務は高度な専門知識が求められはしますが、「監査手続き」の詳細はファームの方針で決定されています。自身で手続きを考える裁量の余地がなく、自分自身の付加価値を生み出しにくいため、どうしても「単調でつまらない作業」と感じてしまいがちです。公認会計士が行う単調な作業として、以下の例が挙げられます。

  • 監査基準委員会報告書を完璧に守り、体裁を重視する必要があるため、大量の文書化作業が生じる
  • クライアントへの資料の提出依頼と、提出された資料のチェックが繰り返し生じる
  • 決算書類の誤字・脱字チェック
  • プレゼンテーションで使用する資料や監査調書の形式を整える

3.クライアントから感謝されにくく、やりがいを感じにくい

クライアントから感謝されにくく、やりがいを感じにくいことも、公認会計士の悩みごととして大きいでしょう。監査法人の仕事がクライアントから感謝されにくい第1 の理由は、監査法人が修正事項を見つければ見つけるほど、一般に売上や利益が下がるためです。売上や利益が下がるのでは、クライアントも感謝したい気持ちにはなかなかならないでしょう。第2 の理由は、監査業務は仕事の熱量に比例して、クライアントの業務に支障を生じさせるためです。監査法人が監査の仕事を頑張れば、内部統制のヒアリングや資料の追加請求、あるいは提出された資料についての質疑応答などが生じます。それにより、クライアントの仕事量が増え、通常業務に支障を来す結果となります。これらの理由から、監査法人に対してはクライアントから感謝の言葉をかけてもらいにくいのです。感謝の言葉がもらえないのでは、やりがいを感じることも難しくなってしまいます。

公認会計士の登録直後は監査法人を辞めないほうがよい

上記のような悩みから「監査法人を辞めよう」と決意した場合には、次に「それでは実際にいつ辞めるのか」が問題となってきます。辞めるタイミングは、公認会計士それぞれの悩みの深さや、監査法人での職務の状況により決まってきますが、「公認会計士の登録直後は辞めないほうがいい」といえます。公認会計士の登録は、2 年間の実務経験と3 年間の実務補修・修了考査合格後に行うため、監査法人での勤務も4 年目となっているのが一般的です。4 年目ともなれば監査業務もひと通りを経験し「最低限の業務経験を積んでいる」といえる状態にはなっています。この公認会計士の登録直後は、監査法人を辞める一つのタイミングであるといえます。しかし、公認会計士の登録直後に監査法人を辞めるのは、非常にもったいないといえます。公認会計士の登録後には、シニアスタッフへポジションアップし、現場を取り仕切る「インチャージ」というポジションを任されることが一般的です。インチャージを任されると、単に調書を作成するだけでなく、周りのスタッフに対して指示を出したり、スタッフが作成した調書のレビューを行ったりもしなくてはなりません。さらに案件によっては、インチャージが監査計画や監査資料の作成までを一括して管理する場合もあります。インチャージを経験すれば、案件の全体を俯瞰しながら管理する、中間管理職レベルの能力が身につきます。転職市場での市場価値が高まるため、インチャージを経験するメリットは非常に大きいといえます。もしも監査法人を辞めるのであればインチャージの業務をひと通り経験したあとの方がよいでしょう。

監査法人を辞めたあとの公認会計士のキャリア選択

監査法人を辞めたあとの公認会計士のキャリア選択に、どのようなものがあるかを見ていきましょう。

一般事業会社

監査法人を辞めたあとの公認会計士のキャリアとして人気を集めているのは、一般事業会社です。一般事業会社には大企業・上場企業、中小企業、ベンチャー企業などの選択肢があります。公認会計士が一般事業会社へ転職した場合の業務内容は、以下のようなものとなります。

  • 経理部門 企業の内部での財務諸表や有価証券報告書の作成
  • 経営企画部門 予算策定や予実管理、経営計画書の作成

人手が足りないベンチャー企業などへ入社した場合には、上記の業務以外に人事や労務など、管理業務全般を担うこともあります。公認会計士が一般事業会社へ転職した場合のメリットは、以下のとおりです。

  • 会計処理に関する専門性や、監査法人で経験した社内外の調整能力を存分に活かせます。決算の監査法人対応も問題なくこなせるほか、監査法人勤務時代に他社の事例を知っているため、経理部のさまざまな困りごとにも対応できます。
  • 内部統制監査のポイントへの理解度の深さや、他社事例の知識を活かし、社内の内部統制強化
    に貢献できます。
  • 開示資料の作成や、IR の対応など、開示業務において活躍できる場面が多くあります。

FAS(ファイナンシャリー・アドバイザリー・サービス)

FAS(ファイナンシャリー・アドバイザリー・サービス)も公認会計士の転職先として人気です。公認会計士のFAS での業務内容はM&A 業務が中心で、具体的には以下のようなものとなります。

  • M&A における戦略の立案や策定から、契約締結までの全プロセスのサポート
  • 買収候補企業のデューデリジェンス(財務などの精査や分析・調査など)、バリュエーショ
    ン(適正価格)の算出
  • M&A で必要となる資金の調達に関するアドバイス

上記のほか、事業再生のサポートや不祥事の予防、財務関連の専門業務なども担当することがあります。

公認会計士がFAS へ転職するメリットは、以下のとおりです。

  • FAS の提供サービスの一つである、業績不振や資金不足に陥った企業に向けてのアドバイザリー業務については、業務内容が会計・監査の実務と親和性があるため、未経験でも即戦力になりやすいことが挙げられます。
  • 近年、M&A や事業再生の案件が増加しており、監査法人時代の経験を活かせる転職先として
    会計士から人気の業種です。
  • 業務の多くで臨機応変な対応が求められるため、監査法人時代と比較して、自分で考える裁量の余地が増えます。監査法人時代に業務を「単調」と感じていた人にとっては、自分自身の付加価値を生み出しやすく、より大きなやりがいを感じられるでしょう。

税理士法人

税理士法人へ転職する公認会計士も多くいます。税理士法人での仕事内容は、以下のようなものとなります。

  • 各種税務書類の作成(貸借対照表や損益計算書などの決算書)
  • 税務代理(税務署に提出する税務申告書の作成や、税務官庁との交渉など)
  • 税務相談、税務コンサルティングなど

公認会計士が税理士法人へ転職するメリットは、以下のとおりです。

  • 監査業務より税務業務のほうがクライアントとの距離が近く、より身近な存在としてクライア
    ントへのアドバイスが可能となります。より大きなやりがいを感じられる人も多いでしょう。
  • 公認会計士の資格があれば、税理士試験を受験せずに税理士登録が可能です。税務
    業務の経験を積んでおけば、税理士として独立開業する選択肢が生まれます。

まとめ

公認会計士が監査法人を辞めたいと思う理由は、「激務で残業が多くつらい」「監査の仕事が単調でつまらないと感じてしまう」「クライアントから感謝されにくくやりがいを感じにくい」などがあります。もしも公認会計士を辞める場合に、登録直後のタイミングは、せっかくにインチャージ経験ができなくなるため、あまりおすすめできません。

監査法人を辞めたあとのキャリアとしては、一般事業会社やFAS、税理士法人などが挙げられます。転職先は、自分が将来どうなりたいかを見据えたうえで慎重に決めましょう。マネーフォワードでは、税理士登録までの情報収集から書類申請まで複雑な「税理士登録」の手順を分かりやすく解説した、税理士登録のハンドブックを無料で配布しております。税理士登録の際の煩雑な手続きを簡素化するためにご活用ください

 

また、独立・開業を検討している方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。

よくある質問

公認会計士が監査法人を辞めたいと思う理由は?

監査法人の仕事が激務で残業が多く辛いこと、監査の仕事が単調でつまらないこと、クライアントから感謝されにくくやりがいを感じにくいことなどがあるといわれています。

監査法人を辞めないほうがよいケースは?

せっかくのインチャージ経験ができなくなるため、公認会計士の登録直後は辞めないほうがよいでしょう。

監査法人を辞めたあとのキャリアの選択は?

一般事業会社、FAS、税理士法人などがあります。

【監修】マネーフォワード クラウド 会計事務所担当

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