税理士の方の中にはリスティング広告で集客をしてみたいと思っている方も多くいらっしゃると思います。しかし、リスティング広告は適切に運用しないと、成果が上がらずコストだけかかることもあります。そこで本記事では、リスティング広告の仕組みから、成果を上げるためのポイントまで詳しく解説していきます。
目次
税理士がリスティング広告で集客をするには
リスティング広告を活用して集客活動を行うためには、まずは概要や仕組みについて正しく理解しなければなりません。闇雲に広告を掲載したとしてもターゲットとなる顧客層に情報が届かなければ、広告費用に見合った成果を上げることは難しくなります。
リスティング広告の仕組みを理解し、効果的な広告戦略を展開することによって収益拡大に取り組みましょう。
リスティング広告とは
リスティング広告とは「検索連動型広告」とも呼ばれており、ユーザーがGoogleやYahoo!などの検索エンジンを用いて検索したキーワードに連動し、表示されるWeb上の広告をいいます。なおリスティング広告は検索結果の画面上にテキスト形式で表示され、基本的には画像や動画を表示できません。
リスティング広告によってユーザー自らが検索したキーワードに基づいてテキスト広告が表示されるため、検索内容に関心を持つユーザーに絞って広告宣伝を行うことができ、より精度の高い集客活動を展開することが可能です。
リスティング広告の仕組みとは
リスティング広告の料金体系としては「クリック課金制」が用いられており、単に検索結果の画面に表示されるだけでは費用は発生せず、実際にユーザーが広告をクリックするたびに広告主に費用負担が生じます。
キーワードによってクリック時に発生する費用(クリック単価)は異なり、競合の多いキーワードほどクリック単価は高騰するためご注意ください。ただし広告主は1回のクリックに対して支払うことができる上限額(上限クリック単価)を設定することで、自らの広告費用をコントロールすることが可能です。
なおリスティング広告の掲載順位については、以下の算式によって求められる「広告ランク」が高いものから順番に表示されます。
*広告ランク=広告の品質×上限クリック単価
「広告の品質」についてはGoogleやYahoo!のアルゴリズムによって評価され、「入札したキーワードと広告内容の関連性」や「リンク先のWebサイトの品質評価」「入札したキーワードのクリック率」などの指標によって総合的に判断されます。一方で「上限クリック単価」については広告主が任意で設定でき、クリック時に支払っても良いと考える金額が大きいほど上位に表示されやすい「オークション方式」が採用されています。
したがって「広告の品質」あるいは「上限クリック単価」のいずれかを高めることで、リスティング広告の掲載順位を引き上げることが可能です。
税理士がリスティング広告を運用するメリット
税理士事務所がリスティング広告を活用することによって、下図のようなメリットが期待できます。
これらのリスティング広告の特性を踏まえたうえで、事務所のビジョンやターゲットとなる顧客層と照らし合わせながら、効果的な広告戦略を構築しましょう。
低予算で広告を出稿できる
テレビ・新聞などのマスメディア広告やインターネット上のバナー広告のような媒体の場合、広告を掲載するだけで費用が発生するケースが一般的です。
それに対してリスティング広告の場合は広告掲載に関しては費用が発生せず、実際にクリックにつながった場合にはじめてコストが生じます。そのため成果と広告費用が連動しやすく、広告主としても広告戦略のマネジメントがしやすいというメリットがあります。
またリスティング広告では広告費の予算を1日単位で設定でき、最低出稿金額の制約もないため、各自の広告予算に合わせた自由度の高い運用が可能となります。したがって初期のうちは低予算からテスト運用を開始し、リスティング広告の効果を見極めながら必要に応じて予算規模を拡大するなどの戦略が現実的です。
成果が出るまでの期間が比較的短い
リスティング広告を開始することによってただちにユーザー側の検索画面へ表示されるため、配信開始から成果に結びつくまでの「即効性」に優れているという特徴があります。
一般的に広告の出稿までの所要期間が短いほど早期の集客効果が期待できるため、顧客数の少ない独立開業直後の広告戦略として活用されるケースも多いです。当然ながら出稿することによるクリック数や問い合わせ件数の増加が確約されるものではありませんが、「効果的な運用ができれば早期の集客効果が得られる」という点は大きなメリットといえます。
費用対効果をリアルタイムで把握できる
リスティング広告では集客効果の即効性が高いだけでなく、期待する成果に結びつかない場合にも早期に軌道修正がしやすいというメリットがあります。一般的なチラシ広告や看板広告では、広告掲載を開始してから少しずつ視認されるため、問い合わせなどの成果として結びつくまでには一定の期間を要することとなります。即効性が低く、成果につながるまでに期間も長い媒体については費用対効果の測定が困難であり、広告の効率性を高めるための改善活動が難しいという側面があります。
リスティング広告の場合、「表示回数」や「クリック率」「コンバージョン率」などの広告の実績をアカウント画面にてリアルタイムで確認できるため、それらのデータをもとに広告内容の改善を繰り返し、より精度の高い広告戦略を展開することが可能です。
なおコンバージョン率とは、クリックによって目的ページにたどり着いたユーザーのうち、広告主が掲げる「問い合わせ」や「成約」などの成果に至った割合を表します。
ターゲットを絞った広告展開が可能
マスメディア広告や看板広告などの媒体の場合には、不特定多数に対して広告宣伝を行うため、広告の効率性は低いと考えられます。またチラシ広告などを行う場合にも、エリアや業種などを絞ったうえでランダムに配布するケースが一般的であるため、必ずしも配布先がニーズを持ち合わせているとは限りません。
それに対してリスティング広告の場合には、ユーザー側の「検索」という行動に連動して表示され、さらにあらかじめ検索ワードを指定して配信するため、特定のニーズを持ったユーザーに対してピンポイントで訴求しやすいというメリットがあります。ただし効果的なリスティング広告によってターゲットを絞った集客活動が可能となる一方で、設定したキーワードや掲載する広告内容が不十分な場合には、かえって見込み客へ広告が届きにくくなるおそれもあるためご注意ください。
税理士がリスティング広告を運用するデメリット
リスティング広告にはさまざまなメリットが期待される一方で、効果的な運用ができなければ十分な成果が得られず、むしろ資金繰りを悪化させる要因になってしまいます。したがって下図のようなリスティング広告のデメリットについてもしっかりと理解し、自らの広告戦略として最適な媒体かどうか十分に検討したうえで実行しましょう。
競合が多い場合は成果が出にくい
リスティング広告における「クリック単価」はキーワードごとに入札額が異なっており、一般的に競合が多いほどクリック単価も高騰する傾向にあります。
税理士業界の場合には「確定申告」や「税務調査」「相続税」などのキーワードに人気が集中する可能性が高く、広告を配信しても十分な成果が得られないリスクも高まります。また競合他社よりも上位に広告を掲載するためには「上限クリック単価」を引き上げて入札する必要があり、事務所としての広告費用の負担も増加します。十分なコンバージョン率が得られない場合には、事務所全体の資金繰りを圧迫するおそれもあるためくれぐれもご注意ください。
広告を避けるユーザーの存在
広告内容に関わらず、リスティング広告をクリックすることに抵抗を感じるユーザーは少なくありません。実際にリスティング広告として最上部に表示される広告よりも、通常の検索結果に表示されるWebページの方がクリック率は高いといわれています。
そのため事務所の広告戦略としてリスティング広告を選択する場合には、検索内容に関心があるユーザーでも一定数は広告を敬遠する可能性があることを念頭に置いたうえで実行しましょう。なおSEO対策を併用することで、リスティング広告による即効性の高さと、SEOによる長期的かつ安定的な集客効果の両方を追求することも可能です。
調整や改善が欠かせない
リスティング広告では同じ広告内容を長期間にわたって掲載し続けていると、次第に集客効果が減少するといわれています。さらにユーザー側のニーズも時間とともに変化する可能性があるため、広告主として定期的な調整や改善活動が欠かせません。
また効果的なリスティング広告を展開するためには、現状のデータを正しく分析し、キーワード設定や掲載内容などの見直しを行うことで広告の精度を高める必要があります。そのため一度リスティング広告を出稿すれば自動的に集客効果が発揮されるものではなく、掲載期間を通じて一定のコストや労力を費やすことが求められます。
知名度向上や潜在的ニーズの掘り起こしには不向き
リスティング広告については特定のターゲット層に訴求することに長けている一方で、事務所全体の知名度や認知度向上には多額の広告予算が必要となるため不向きとされています。
またリスティング広告の仕組みとして、ユーザー側の「検索」という行動がトリガーとなるため、見込み客自身が気づいていない潜在的なニーズを掘り起こすための戦略としては十分な成果が得られないでしょう。そのためこれらの広告宣伝効果を目的とする場合には、マスメディア広告やチラシ広告、SNS、SEO対策などの広告戦略を検討し、目的達成のための最適な方法を選択することが重要です。
税理士がリスティング広告で成果を上げるためのポイント
リスティング広告を効果的に運用するためには、下図のように成果を上げるまでのアプローチ方法を段階的に検証することが重要です。
多くのユーザーの目に留まるだけでなく、その後の行動へとつなげることが目的であるため、広告の性質やターゲット層のニーズなどを多角的に分析し、広告の有効性を高めましょう。
キーワード選定をしっかり行う
リスティング広告においては「キーワードの選定」が極めて重要です。リスティング広告を活用する場合には、クリック数を稼ぐことではなくコンバージョン数を伸ばすことが目的となるため、「税理士が求めるニーズを持ったユーザーのみがクリックする広告」が理想形となります。
それに対して的確なキーワードを設定できない場合には、クリック数とコンバージョン率にギャップが生じる可能性もあり、結果的に広告費用の負担ばかりが増加する要因となってしまいます。キーワード設定を行う際には、まず大前提として税理士のサービスを求めるユーザーの視点に立って考えなければなりません。自らの事務所のサービスに関心のある見込み客が使いそうな検索ワードを想定し、リスティング広告のキーワードとして設定することが重要です。
ただし「税理士」や「相続税」「確定申告」など、競合が多いキーワードほどコンバージョン率は低下するため、需要と競合数のバランスを加味したうえでの判断が求められます。
キーワードを検討する場合には、Googleの「キーワードプランナー」や「ラッコキーワード」などのツールを活用することも可能です。キーワードによってリスティング広告の成果は大きく左右されるため、自らの強みやサービス内容、顧客ニーズ、競合他社などを分析し、最適なキーワードを検証しましょう。
遷移先の内容と一致した広告見出しや説明文を作成する
広告とリンク先のWebページの訴求内容がずれている場合には、求める情報がないと判断され、早々に離脱するユーザーが増加してしまいます。したがって広告のコンバージョン率を高めるためには、リスティング広告によって検索画面に表示されるテキスト広告の訴求内容と、遷移先のLP(ランディングページ)やホームページなどの掲載内容を合わせることが重要です。
リスティング広告では掲載するテキストの文字数に制限があるため、詳細内容は遷移先のページに任せ、広告文では端的でわかりやすい内容を追求することをおすすめします。
また遷移先のLPの内容についてもブラッシュアップが欠かせません。ビジュアルやテキスト、コピーライティングの質を高めることで、リスティング広告のコンバージョン率向上にもつながります。
広告表示オプションを設定する
リスティング広告には「広告表示オプション」という機能があり、通常のテキスト広告では掲載しきれないプロフィールや連絡先などの情報を掲載できます。「広告表示オプション」を活用することで掲載できる情報量が増えるため、税理士事務所としての訴求力向上が期待できます。
たとえばGoogle広告では、以下12項目のオプション内容が用意されています。
- 住所表示オプション
- アフィリエイト住所表示オプション
- コールアウト表示オプション
- 電話番号表示オプション
- サイトリンク表示オプション
- 構造化スニペット表示オプション
- 価格表示オプション
- 画像表示オプション
- アプリリンク表示オプション
- リードフォーム表示オプション
- プロモーション表示オプション
- 販売者評価表示オプション
参考:広告のフォーマットと機能|Google 広告
参考:広告表示オプション(自動)について|Google 広告
税理士の場合、事務所の連絡先を掲載できる「電話番号表示オプション」や、元々の遷移先とは別のリンク先も併せて提示できる「サイトリンク表示オプション」がおすすめです。
これらの広告表示オプションを活用し、クリック率やコンバージョン率を高めるための工夫を講じましょう。
コンバージョンのハードルを下げる
リスティング広告を運用する際には、ユーザーにとって「行動に移しやすいゴール」を設定することが重要です。
たとえ広告の内容やリンク先のLPが魅力的だったとしても、有料相談などの「予約」や「購買」をゴールとして設定してしまうと、コンバージョンのハードルは途端に高くなってしまいます。またリスティング広告を始めたばかりの段階ではコンバージョン数が不足しており、十分なデータが集まらないことでPDCAサイクルを回すことも難しくなります。
したがってまずはユーザーにとって行動に移しやすい無料相談や資料請求などをゴールとして設定することで、リスティング広告のコンバージョン率を高めることをおすすめします。
税理士のリスティング広告で適切な見込み客にアプローチするコツ
リスティング広告ではユーザーのクリックで広告費用が発生するため、効率的な運用を追求するためには「無駄なクリック」を削減することが極めて重要です。
下図のような方法を用いて顧客層以外への広告配信を削減し、ターゲット層に対してピンポイントで広告を配信することで、税理士事務所としてのコンバージョン率を高めることができます。
地域配信設定の活用
リスティング広告では、広告を配信する地域を設定できます。
特に顧問業務を中心に扱う税理士事務所の場合には、事務所の周辺エリアに限定して顧問先を募集するケースも多いです。そのような場合に地域を絞らずに広告を配信するとターゲット層に訴求できないだけでなく、営業区域外からのクリックや問い合わせが発生してしまい、広告費用がかさむ原因になります。
したがって特定の地域で集客活動を行う場合には、配信地域を絞ることで適切なユーザーに照準を合わせ、効率的なアプローチを行いましょう。
広告スケジュールの活用
リスティング広告では広告の配信や停止について、曜日や時間帯を指定することも可能です。たとえば土日休みの税理士事務所の場合、広告スケジュールによって土日の配信を停止していないと休業日に問い合わせが来てしまう可能性もあり、顧客と税理士の双方にとってマイナスとなる可能性があります。
広告スケジュールによって配信する曜日や時間帯を営業時間内に設定することで効率的な広告配信が可能となり、事務所としての機会損失の防止や費用対効果の向上へとつなげることができるのです。
外注を検討する
リスティング広告の一連のプロセスについては、専門的なノウハウを有する広告代理店などの外部業者へ委託することも可能です。キーワードの選定や広告テキスト・LPの作成、出稿後のデータ分析および改善活動など、広告の運営を他者に任せることで税理士自身は本業に集中できるというメリットがあります。
しかし広告代理店は玉石混淆であり、士業に対する十分な理解が必要であることから、適切な業者選びは容易ではありません。また委託費用としては年間で100万円程度が最低ロットとなるため、税理士事務所としての広告予算をシミュレーションしたうえで活用しましょう。
税理士はリスティング広告を上手に活用して集客をしよう
オンライン環境の整備に伴い、税理士のサービスをインターネット上で検索する機会も増加しています。そのため税理士がリスティング広告を上手に活用することで、効果的な集客活動が可能となります。
リスティング広告ではターゲット層にピンポイントで広告を届けるための工夫や、費用対効果の向上を追求するためのPDCAサイクルの推進が欠かせません。事務所としての広告戦略やターゲット層、入札するキーワードなどを丁寧に検証し、リスティング広告の効率性を高めていきましょう。
よくある質問
リスティング広告のメリットは?
リスティング広告は予算に応じた出稿が可能であり、クリックされるまでは費用が生じないことから低予算で実行できます。また出稿後ただちに検索画面に表示されるため、集客効果の即効性が高いこともメリットです。
リスティング広告のデメリットは?
競合が多いキーワードを選定した場合、十分な成果が得られない可能性があります。またクリック率やコンバージョン率などを分析して改善を行うことが必須であり、時間や労力を要するというデメリットがあります。
リスティング広告の効率性を高める方法は?
無駄なクリックを削減するために地域配信設定や広告スケジュールを活用し、見込み客に対して集中的に配信することが重要です。また予算によっては、ノウハウを有する外部の広告代理店へ委託することも有効です。