税理士の将来性。今後の税理士に求められることとは?

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税理士の将来性。今後の税理士に求められることとは?

税理士資格は取得が難しい国家資格であり、社会的信用も高いため、税理士になれば安定というイメージがあります。その一方で近い将来、税理士業務はAIに代替されるといわれるなど、税理士業界の将来に不安を感じる方もいるのではないでしょうか。では実際、税理士の将来性はどうなのか。本記事で詳しく解説していきます。

税理士の将来性

下図のとおり税理士を取り巻く環境は近年大幅な転換期を迎えており、業界全体の将来性を危惧する声も多いです。

 

 

特に「AIやRPAの普及」や「中小企業数の減少」「税理士の高齢化」などの環境変化は、業界に携わる人々にとってはネガティブなイメージに捉えられがちです。しかし、これらの現状を客観的に理解すれば、将来的にも税理士業務自体が淘汰される可能性は極めて低く、むしろ捉え方によってはビジネスチャンスと考えることも十分に可能です。先入観に基づいて判断するのではなく、これらの現状を客観的に踏まえることで、税理士業界の将来性を正しく評価するように努めましょう。

将来性が危惧される理由

税理士業界の将来性を不安視する声があるのは事実であり、それらの主張は「AIやRPAの発展」や「中小企業数の減少」などの外的要因を根拠としているケースが一般的です。これらの意見については、テクノロジーの進歩に伴って既存の税理士業務の必要性が薄れるとともに、クライアントとなる中小企業数が減少することで価格競争が激化し、ますます収益性が低下することを危惧したものといえます。

ただし税理士業界に対するネガティブな意見の大半は、「従前の税理士業務から脱却しないことに対する危機感」を表しています。実際には時代の流れによって変化する顧客ニーズを的確に察知し、それに合わせて税理士が自らのサービス内容をカスタマイズすることが重要です。「税理士の在り方」が変わることはあっても、税理士としての存在価値が失われることはありません。既存の税理士業務にとらわれるのではなく、今後の税理士業界を見据えて「税務会計の専門家としてどのように顧客へ貢献できるか」という観点から税理士資格の有用性を適切に判断しましょう。

AIが税理士に与える影響とは?

税理士業界では「税理士の仕事はAIによって代替される」という説は広く知られており、それによって「税理士=将来性のない資格」というイメージが構築され、ますます業界の将来性に対する不安が拡大しています。この説は、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授が発表した論文が根拠となっていますが、実際には税理士業務全体ではなく、「データ入力」や「税務申告代行」などの特定の業務内容を指したものです。

すでにAIを活用した会計ソフトやRPAは税理士業界においても浸透しつつあり、実際に自動仕訳機能や税務申告書への連動などによって税理士事務所の職員が担う業務を一部代替しています。ただし、AIが代替可能な業務としては一定のルールに基づく作業が中心であり、個々のクライアントの事例を過去の判例や立法趣旨と照らし合わせて結論を導き出すような、柔軟性や専門性が必要な業務は行えません。今後の税理士業界においては、単純業務をAIに任せることで入力や仕訳作業を自動化し、それによって捻出したマンパワーをより高付加価値な業務へ投入することが重要となります。

これまで単純業務に時間や労力を奪われていた税理士ほど、AIを活用することでそれらの業務から解放され、自らの高度な知識や経験を存分に発揮できる環境を整備しやすくなります。今後は税理士業務の多様化がますます促進され、各々の税理士は自らの専門性を活かしたサービス展開によって差別化が可能となります。

税理士が置かれている現状

昨今の税理士業界では税理士試験の受験者数が年々減少する一方、税理士登録者数は過去60年以上にわたって増加しています。開業税理士の場合には定年がなく、自らが健康である限りは働き続けることが可能です。

これらの背景から業界全体の高齢化に拍車がかかり、税理士の平均年齢は60歳を超えるといわれており、近年では後継者問題に頭を悩ませている税理士も多いとされています。高齢化する税理士業界の現状はしばしばネガティブなイメージを持たれがちですが、若手税理士にとっては大きなビジネスチャンスと捉えることもできます。

同年代の経営者に選ばれやすいだけでなく、AIやITツールに対する抵抗感が小さく、SNSやYouTube、オンラインサービスなどの媒体を有効活用することでベテラン税理士との差別化もしやすくなります。希少性が高いことで差別化が容易となるケースも多いため、税理士業界の現状を客観的に理解し、自らにとってチャンスとリスクのどちらに該当するのか冷静に分析するように心掛けましょう。

税理士へのニーズの変化

現在の税理士業界では税理士の高齢化やAIやRPAの普及による高付加価値業務へのシフトなどの変化が着実に進んでおり、クライアントが持つ「税理士に対するニーズ」も変容しつつあります。特に従来の税理士業務において大きなウエイトを占めていた「記帳代行」や「申告書作成」などの業務はAIによる代替が進むことで、余力を活かして新たな業務領域へ進出する税理士が増加すると見込まれます。そのような税理士事務所が増加すればクライアント側が要求する業務水準も自然と高まるため、単なる会計や税務手続きの代行業務ではなく、専門家としての知識や経験を活かした業務へのニーズが拡大していきます。

具体的には「事業承継」や「国際税務」などの高度な判断が必要となる税務や、経営に関連して専門的なアドバイスを行う「コンサルティング業務」へのニーズが高まると予想されます。税理士は変化する顧客ニーズを踏まえて自らの業務領域や事務所の方向性、具体的なサービス内容を検討する必要があり、より付加価値の高い業務への移行が求められます。

今後の税理士に求められること

税理士が増加する一方で中小企業や個人事業主の減少傾向が継続するのであれば、業界内での競争が激化するものと見込まれます。そのような業界で税理士として長く活躍を続けるためには、自らの競争力や事務所の収益性を高めて他の税理士との差別化を図ることが極めて重要です。

具体的には下図のような流れにより、事務所の高付加価値業務への取り組みを推進することが望ましいです。

 

 

AIやRPAの活用

減少する中小企業や個人事業主の数とは対照的に税理士数が増加している現状を加味すると、税理士として活躍し続けるためには他の税理士事務所との差別化が必要不可欠です。AIやRPAを活用することで単純業務に割く時間や労力を削減し、より付加価値の高い業務へと注力するための体制づくりが求められます。

一般の事業会社でも単純業務削減へのニーズは大きいため、顧問先に対するIT導入コンサルティング業務についても大きな需要があります。すでに会計ソフトやレジシステム、グループウェア、勤怠管理、経費精算システムの導入などのバックオフィス業務の効率化サポートを行う税理士もおり、顧問業務とは別にスポットでのサービス提供を行うケースも多いです。このようにコンサルティングによって顧問先の業務効率化を実現できれば必然的に顧客満足度も高まるため、長期にわたる良好な関係性構築によって自らの事務所経営を安定させることにもつながります。

高付加価値業務への取り組み

今後の税理士業務においては、ITツールやAI、RPAなどのテクノロジーを活用することで単純業務を効率化または自動化し、それによって捻出した時間を高付加価値業務に充てることが必要です。具体的には「経営コンサルティング」や「財務コンサルティング」「DXコンサルティング」など多岐にわたっており、サービス内容によってはさらに細分化されます。一般的には既存の税理士業務との親和性が高い業務を選択するケースが多く、これまで培ってきたノウハウを応用することで自らの強みを醸成することが効果的です。

税理士は自らが培ってきた知識や経験、今後の事務所のビジョンを踏まえたうえで着手する高付加価値業務の内容を検討し、収益化に必要なスキルの向上に努めなければなりません。事務所の収益の柱へと育てるまでには一定の期間を要するため、税理士業界における顧客ニーズの変化を考慮した上で早めに行動するよう心掛けましょう。

専門性を高める

近年では大企業だけでなく中小企業にも着実にグローバル化の流れが押し寄せており、税理士に対して「国際税務」に関する知識が求められるケースも増えています。このような国際税務に関連したサービスを展開する場合には、現地の言語への理解はもちろんのこと、「移転価格税制」や「IFRS(国際財務報告基準)」などの専門的な知識が必要不可欠です。

また少子高齢化が進む日本においては、「相続」への対応や経営者層の高齢化に伴う「事業承継」への問題が拡大しています。相続については仮想通貨などの「デジタル資産」のように多様化する財産への対応が必要なケースが増えると予測され、事業承継については「M&A」や「事業承継税制」などへの深い理解が必須となります。このように時代の流れに伴い、税理士に対するニーズや必要とされる専門的な知識も拡大する傾向にあります。税理士は一度身につけた知識や経験に満足するのではなく、時代やニーズの変化に合わせて新たなスキルを積極的に習得し続けなければなりません。

将来を見据えて「税理士としてどのような知識やノウハウが必要とされるのか」を検証し、自らの専門性を高めるための自己研鑽に努めましょう。

数十年後の将来も税理士として活躍するために

AIやRPAなどのテクノロジーの進歩だけでなく、高齢化社会やグローバル化、デジタル化など、中小企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。その中で税理士に対するニーズも着実に移り変わっており、今後も税理士として業界内での競争に勝ち抜くためにはそれらの変化に柔軟に対応し、他の税理士との差別化を図ることが必要不可欠です。

そのためには自分自身が置かれている市場環境を客観的に把握し、顧客ニーズの変化を踏まえた上で自らの専門性を高め、高付加価値業務へ積極的に取り組みましょう。

よくある質問

税理士業界の現状と将来性は?

AIやRPAの普及、中小企業数の減少、税理士の高齢化など税理士業界の将来を危惧する声も挙がっています。ただしこれらの環境変化を活かして差別化を図ることで、税理士としての活躍の場を広げることも可能です。

税理士へのニーズは変化している?

AIやRPAなどの普及によって単純業務の自動化が促進されるため、税理士にはより高度で専門的な役割が求められるでしょう。具体的にはコンサルティング業務や事業承継、国際税務などへの需要が高まっています。

今後の税理士に求められることは?

AIやITツールを活用することで捻出した時間や労力を高付加価値業務へ注力することが必要です。付加価値の高い業務ほど高度なスキルや実績が必要なため、顧客ニーズを把握し、専門性の向上に取り組みましょう。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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