財務コンサルティングの業務とは?税理士が行うメリットも解説。

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財務コンサルティングの業務とは?税理士が行うメリットも解説。
テクノロジーの発展もあり、税理士の業務は会計業務や税務申告だけに限られず、顧問先が抱えているさまざまな課題を解決することも求められるようになってきました。そんな変化の中にある税理士業界で生き残っていくには、新たな価値提供をしていく必要があるのではないでしょうか。本記事では、税理士の業務と親和性がある財務コンサルティングについて、解説していきます。

財務コンサルティングとは

財務コンサルティングとは、企業の「お金」に焦点を当て、企業の成長や発展を支援することによる「キャッシュフローの最大化」を目的に、クライアントに対して会計や財務の観点からアドバイスを行う業務を指します。税理士事務所やコンサルティングファームなどが行う財務コンサルティングでは、下図のような業務内容が一般的です。

 

クライアントのニーズに基づいて「経営・投資戦略の立案」や「事業再生」「法規制への対応支援」などを行い、主に資金繰りなどの資金戦略の観点からクライアントへのアドバイスを実施します。近年では中小企業におけるM&Aの拡大によって企業価値算定や財務デューデリジェンスの需要が着実に高まっており、M&Aアドバイザリーに特化した事業展開を行うケースも多いです。

いずれの業務内容においても、財務コンサルティングではクライアントが直面するさまざまなターニングポイントに対して専門家として培った知識やノウハウを駆使し、経営者が最適な意思決定を行うための有益な情報提供が求められます。特に財務や会計分野に関する専門的な知識や実践的なノウハウが必須となるため、税理士または公認会計士、中小企業診断士などの有資格者、金融機関やコンサルティングファームでの勤務経験者が活躍しやすい環境といえます。

税理士の財務コンサルティング業務

日頃から財務や会計業務に深く携わっている税理士にとっては、財務コンサルティングとの業務関連性も高いため、事務所としての業務領域を拡大する際の選択肢として採用されるケースも多いです。単に業務間の親和性が高いというだけでなく、毎年顧問先の税務申告を代行する税理士だからこそ見出せる付加価値も大きいです。日常の会計業務や決算書などの財務諸表作成を通じて顧問先の経営状況やキャッシュフローを正確に把握しているため、より的確で効果的なアドバイスが可能です。

さらに経営者との定期的なコミュニケーションによって信頼関係が構築されており、顧問先が抱える悩みや課題などの潜在的なニーズを察知しやすくなります。ただし税理士が財務コンサルティング業務を行う場合、何の弊害もなくスムーズに従事できるとは限りません。財務コンサルタントとして活躍するためには、従来の「過去会計」から「未来会計」を意識した考え方へと軸足をシフトすることが必要です。

毎月の試算表作成や税務申告手続きのように、一般的な税理士事務所が行う税務会計業務は顧問先の「過去の実績」に基づいた業務が大半です。財務コンサルティング業務では今後のさらなる成長に向けたクライアントの財務戦略をサポートする必要があるため、過去の実績を踏まえた上で「将来の行動を決定する」という重大な役割が求められます。コンサルタントとして活躍するためには、単に顧問先の決算書を分析して課題や問題点を指摘するだけでなく、それらを改善するためには「どのような行動が必要なのか」という具体的な解決策についても検証し、提案しなければなりません。財務コンサルティング業務を行う場合には、従来の税理士業務よりもさらに一歩踏み込み、顧問先の数字の裏側を深く分析したうえで将来に向けた的確なアドバイスを行うよう心掛けましょう。

税理士が財務コンサルティングを行うメリット

税理士が既存の顧問先に対して財務コンサルティングを行う場合、財務諸表には表れない経営者のニーズや課題まで把握しているケースも多いため、より一層的確なアドバイスが可能になります。財務コンサルティング業務によって顧問先に対するサービスの幅が広がることで、他の税理士事務所との差別化が促進され、顧客満足度の向上が期待できます。通常の税理士業務に加えて財務コンサルティング業務を提供することで客単価の向上に貢献するだけでなく、財務コンサルティングを経由して顧問契約へとつながる可能性も考えられます。特に専門性の高いコンサルティング業務では十分な成果を上げることでクライアントからの評価を得やすく、業務完了後も「顧問契約によって継続的に支援を受けたい」という要望に発展するケースもよくあります。

このように税理士事務所としてサービスの幅が広がることでフック商材が増加し、クライアントを多角的にサポートすることで「事務所の収益最大化」や「顧客満足度の向上」などのメリットが生まれます。自らの事務所としてより専門的で付加価値の高い業務に取り組むことで、事務所全体のスキルアップにも役立ちます。顧問先への貢献度が高まれば職員のモチベーションアップにもつながるため、事務所内の離職率を低減させる効果も期待できます。

財務コンサルティングができる税理士になるには

財務コンサルティングは税理士資格さえあれば誰でも容易に活躍できる業務ではなく、一般的には下図のようなスキルや知識が求められます。

 

長期にわたって継続する「税務顧問業務」とは異なり、財務コンサルティング業務では定められた期間内にクライアントが求めるゴールへ確実に到達しなければなりません。クライアントによるコンサルタント選びに際しては、「M&A」や「事業再生」「資金調達支援」などの具体的な相談内容に対する知識や経験値がより重視される傾向にあります。財務コンサルティング業務に従事する場合には必要となるスキルや知識を習得し、さらに実績を積み重ねることでコンサルタントとしての地位を確立しましょう。

財務コンサルティングに求められるスキル

顧問契約に基づいた「継続取引」が前提となる一般的な税理士業務とは異なり、財務コンサルティングは有期の「スポット契約」であるケースが大半です。短期間でクライアントのニーズに応じた成果を上げなければならないため、求められるスキルも多岐にわたります。クライアントが抱える課題やニーズを正確に掴むための「ヒアリング能力」や、複雑な物事を整理して考えるための「論理的思考力」は必須といえます。自らの提案内容をクライアントへ正しく伝え、理解を得るための「プレゼンテーション能力」や「交渉力」、計画を滞りなく実行するための「リーダーシップ」「マネジメント力」も重要です。

コンサルティング業務においては複数人でチームを組んで業務にあたるケースも多いため、これらのスキルを加味してチーム編成を行うと良いでしょう。

財務コンサルティングに必要な知識

財務コンサルティング業務に従事する場合には高度な財務会計の知見はもちろんのこと、クライアントの事業内容や業界に関する深い知識を要するケースも多いです。財務コンサルティング業務については、「資金調達支援」や「M&Aアドバイザリー」「事業再生」「投資計画の策定」などさまざまな業務内容に細分化されます。専門家として従事する業務内容によって求められる知識やノウハウは異なるため注意が必要です。例えば「資金調達支援」であれば融資審査に関するノウハウが必要であり、「M&Aアドバイザリー」の場合には企業価値の算定やデューデリジェンスへの正しい知識は欠かせません。不動産や株式などの投資戦略に関するコンサルティングを専門に扱うのであれば、それらの分野に対する深い知識が求められます。

近年では中小企業に関しても海外進出などの国際化の流れが進んでいるため、財務面でそれらのコンサルティングを行う場合には現地の税制や会計基準への理解に加え、語学力も必要不可欠です。

顧問先以外に対して財務コンサルティング業務を展開する場合には、ホームページやSNSなどによる集客活動が必要です。短期的な成果が求められるコンサルティング業務では過去の支援実績などの「経験」が特に重視されるため、集客活動の際にはターゲット層に対して信頼の根拠となる実績を訴求するように意識しましょう。

財務コンサルティング業務へ新たに進出する場合には、具体的に取り扱うサービス内容を吟味し、必要な知識や実績を重点的に習得するように心掛けましょう。

税理士が財務コンサルティングに取り組むために

近年では中小企業の数が減少している反面、税理士事務所や税理士法人の数は増加していることから、今後税理士業界の競争はますます激化することが見込まれます。既存の税理士業務だけでなく、さらなる付加価値業務を展開することで、他の税理士と差別化を図ることが有効な戦略となります。

ただし税理士が既存の顧問業務に加えて新たな業務領域へ進出するためには、十分な時間や労働力を捻出しなければなりません。特に財務コンサルティングのような付加価値業務の場合、専門家として従事するためには税理士および職員のスキルアップや実務経験の蓄積が必要不可欠です。

付加価値業務に必要なリソースを捻出するためには、まず既存業務の効率化に取り組みましょう。日頃の業務フローを見直し、ボトルネックとなる業務があれば積極的に改善活動を行い、冗長する業務を削減するだけでなく、ITツールまたはAIの導入によって単純作業を自動化させ、税理士や職員をそれらの業務から解放することも効果的です。また、属人化しやすい税理士業務の標準化を図り、「製販分離体制」を構築することも検討しましょう。仕訳入力や決算手続きについてはパート職員や経験の浅い職員が担い、経営相談や提案業務は経験豊富な有資格者が行うなど、スキルや習熟度に応じて業務を割り振ることで通常業務を効率化し、付加価値業務に充てる時間を確保できます。

業務の幅を広げるにあたり、新たな人材の雇用や設備投資など、初期投資の負担が増加するほど経営上のリスクも高まります。まずは自らの事務所における既存業務を見直し、改善活動を行うことで「労働力の余剰」を生み出す余地がないかチェックしましょう。

財務コンサルティングもできる選ばれる税理士になろう

日頃から決算書などの財務諸表に精通し、顧問先とのコミュニケーション機会の多い税理士にとって、財務コンサルティングは親和性の高い業務といえます。しかし税理士業界では中小企業数の減少に対して税理士事務所の数は増加傾向にあり、十分な競争力を維持しないと今後の低価格競争に巻き込まれる可能性もあります。このような市場環境の変化を鑑みると、他の税理士事務所との差別化のためには既存業務よりもさらに専門性の高い付加価値業務へのシフトが求められます。

必要に応じてITツールやAIを活用することで業務効率化を図り、クライアントに対して財務コンサルティングのような付加価値を提供することで事務所としての「強み」を醸成しましょう。

よくある質問

財務コンサルティングとは?

「投資戦略の立案」「事業再生」「M&A」などの案件に対し、財務面に関してサポートを行う業務をいいます。専門的な知識を要するため、税理士や公認会計士、コンサルティングファームが従事するケースが多いです。

税理士が行うメリットは?

通常業務において決算書などの財務諸表を扱う税理士にとって、既存業務との親和性が高いというメリットがあります。また業務の幅が広がることで顧客満足度を向上させ、客単価を引き上げる効果も期待できるでしょう。

業務に必要なスキルや知識は?

「論理的思考力」や「交渉力」に加え、スポット業務として成果を上げるための「マネジメント力」が必要です。また専門家として「経営計画の策定」や「M&Aアドバイザリー」などに関する知識や実績が必要でしょう。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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