税理士が自宅開業するメリットとデメリットとは?注意点も解説

独立・開業

税理士が自宅開業するメリットとデメリットとは?注意点も解説

税理士が独立開業する際の事務所形態の1つに自宅開業があります。他の選択肢として、賃貸オフィスやレンタルオフィスもあるため、どの形態がよいのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。今回は税理士の自宅開業にフォーカスし、メリットとデメリットから、自宅開業をする際の注意点まで詳しく解説していきます。

税理士が自宅開業するメリット

開業税理士は事務所を設置する義務があり、税理士登録をする際に「税理士事務所の設置に関する書類」を提出します。税理士登録にあたり、税理士事務所として継続的に税理士業務を行う場所として次の提出が求められます。

  • 建物の登記事項証明書
  • 建物の管理責任者等からの税理士事務所同意書(建物が居住用である場合)
  • 税理士事務所設置に関する誓約書(管理組合等からの同意を得られない場合の念書)
  • 事務所設置間取図

後述しますが、賃貸の建物や集合住宅において開業をする場合には、顧客が共用部分を利用することになるため、事務所設置の同意書や誓約書が必要です。今まで居住用としていた家について、正しい図面をもとに事務所レイアウトの提出も必要となります。

税理士事務所を自宅で開業するメリットとして、費用、利便性、家事との両立などの面から見ていきましょう。

初期費用が抑えられる

開業にあたって発生する必要経費のうち、固定費の筆頭に挙げられるのが事務所の賃貸料です。自宅開業であれば新たに賃貸契約をする必要がないため、敷金や礼金といった初期費用も月々の家賃であるランニングコストが生じません。

持ち家をリフォームする場合などには初期費用が必要ですが、当初は必要最低限のデスクやチェアといった什器類だけで乗り切ることも可能です。自宅での開業は必要最低限の手続きだけで済み、開業までの準備期間の短縮にもつながります。

通勤しなくてよい

職住近接は、自宅と職場の距離が近いことを言いますが、自宅開業の場合は職住一体に近いものがあります。自宅開業における大きなメリットとして、時間と費用などが挙げられます。

通勤時間の節約
顧客面談に代わって、最近はオンラインを活用した顧客との課題共有やヒアリングが本格化してきています。顧客訪問の大半がオンラインとなれば、移動時間という大きな時間が短縮可能です。

短期間で終わらせる必要のある作業、締切を控えている業務など、通勤時間に充てるはずだった朝の時間を有効活用できます。通勤時間の節約により、作業効率の上がる午前中を確保できるのが強みです。

自宅開業なら平日にプライベートのスケジュールが入った場合でも、業務に支障のない範囲で融通をきかせることが可能です。子どもがいる家庭では、保育園や習いごとの送り迎えにあわせて仕事を調節したり、病院の付き添いなどを平日に持ってきたりすることも自分の判断次第となります。

このように通勤時間の節約は、ワークライフバランスの充実にも結びつきます。子育てや介護が必要な世代にとって、時間のゆとりができることは精神的な安定にもつながります。

交通費等の節約、感染症予防
自宅開業においては、交通費等の「職と住」の移動費用も節約できます。例えば、自宅が駅から遠くても電車やバスの時間を気にする必要はなく、交通費に充てるはずだった費用を他の費用にあてがうこともできます。

交通手段として車を利用している場合には、事務所近辺での駐車場の確保やその費用なども考慮する必要があるため、自宅開業による交通費関連の削減は小さくありません。

さらに自宅開業は公共交通機関を使わないことから、感染症予防の点で優れていると言えます。ただし、自宅の感染症予防については事務所だけでなく、手洗いを徹底するなどの配慮が必要です。

総務省が毎年実施している労働力調査によると、2021年において現職の雇用形態についている理由のうち、「自分の都合のよい時間に働きたいから」は33%、「家事・育児・介護との両立」は11%、「通勤時間の短さ」は5%という結果が出ています。この3つの回答を合わせると全体の約半数となっています。

これは経済的な面よりも、働きやすさや時間を意識して雇用関係を結んでいる割合が高いことを表しています。自宅開業は下記の働きやすさをどれも満たしており、この調査上では理想に近いものがあると言えます。

 

 

税理士が自宅開業するデメリット

自宅開業のメリットをいくつか挙げてきましたが、反対にデメリットはどのようなものがあるでしょうか?次に、自宅開業における「スペースの確保」や「時間の使い方」についてデメリット要素を考えます。

お客様を招きづらい

税理士にとって顧客との直接面談が必要なケースはあり、面談場所を税理士事務所にするケースもあります。自宅開業の場合には、面談スペースを確保しても廊下や手洗いといった共有スペースに顧客が立ち入ることがあります。自宅であるため、いつも顧客を迎える準備ができているとは限りません。このように、自宅開業では顧客を招きづらい状況も多々発生します。面談場所や日にちを変更してもらったり、顧客が可能であればオンライン面談に切り替えたりするなど臨機応変に対応して乗り切る手段もありますが、あまり頑なに自宅事務所を拒む理由もありません。顧客に住宅事情がわかってもらえるように、日頃からの顧客とのコミュニケーションを円滑にしておくことが大切です。

仕事のメリハリがつきづらい

子育てや介護に限らず、自宅開業ではプライベートのスケジュールが立てやすくなることの裏返しで、逆に仕事とプライベートのメリハリがつかないことがデメリットとなります。繁忙期などに、うまく仕事とプライベートの気持ちの切り替えができず、十分リラックスできないことも考えられます。

長時間にわたって自宅での作業が続くと、閉塞感を感じてしまったり、運動不足になったりします。さらに長時間労働による疲労が蓄積すると、集中力が低下して生産性の低下を招きます。自律的に仕事を進めることができる能力を身につけなければなりません。気分転換や、モチベーションを保つための方法をいくつか準備しておきましょう。

プライバシーの確保が難しい

税理士事務所を開業するにあたって、多くの場合、名刺やホームページなどを準備します.その際、自宅の住所を載せる必要があるため、自宅開業の場合はプライバシーの確保が難しい場合があります。もともと住居用として建てられている執務室には、事務所用に水回りなどを増設しない限り、家族への配慮も必要です。一人暮らしでの自宅開業ではない場合、事前に家族と話し合いをして、どこまで協力が得られるか、どのような状況になったら事務所を借りるかなどを決めておくのがよいでしょう。

顧客来訪の頻度や、利便性、独立性などを勘案し、自宅から事務所を分離することが効率化につながる場合もあります。自宅に事務所があることが資料の電子化や管理ツール導入遅延の原因になってはなりません。プライバシーを確保するとともに、自宅開業であっても取り組めるデジタル化には積極的であるべきです。

税理士が自宅開業する際の注意点

税理士が自宅で開業するにあたって、メリット・デメリットを見てきましたが、当初は自宅でと考えている方に自宅開業の注意点をまとめておきます。

セキュリティ対策をしっかりする

税理士は、顧客が安心してデータを預けられる体制を構築してこそ成り立つ職業とも言えます。顧客から託されたデータや資料は高度な機密情報であるため、管理責任を明確にして保護しなければなりません。特に自宅開業の場合には、プライベートとの共存でもあるため、キャビネットや引き出しなどの施錠、細かく裁断できるシュレッダーの利用などのセキュリティ対策を講じるとともに、事故などが発生した場合の対応についても明確にしておくべきです。特に、外部に持ち出すノートパソコンについては、紛失や盗難に備えてリモートデスクトップや仮想デスクトップにするなどの対策を施すことをおすすめします。

顧客に不利益が生じないよう、契約の際に個人情報の取り扱いや利用目的、返還等について明記した合意書を取り交わすなど徹底しましょう。

基本的なセキュリティ対策としていくつか挙げておきます。

  • Wi-Fiルーターに接続する端末を管理する
  • 最新バージョンのOSを使う
  • ウィルス対策の実施
  • パスワードの強化し、使いまわししない
  • ウェブ会議などの初期設定確認
  • 外出先でも公衆Wi-Fiをなるべく利用しない

「個人情報保護法」は、個人情報を取り扱うすべての事業者に適用されます。令和4年4月からは個人の権利利益を害するおそれが大きい漏えい等の事態が発生した場合等には、個人情報保護委員会への報告ならびに本人への通知の義務化が実施されます。セキュリティは、問題がない場合には特に評価されませんが、問題が発覚したときに重大な信用問題へと発展しかねません。デジタル時代における重要なチェックポイントです。

賃貸の場合、契約内容を確認する

今まで居宅として賃借していた自宅の一部を事務所として利用する場合、建物によっては事務所使用が禁止されている場合があります。先述のとおり、税理士登録にあたっては、建物が居住用である場合には建物の管理責任者等からの税理士事務所同意書が求められます。同意が得られない場合には、「税理士事務所設置に関する誓約書」により、「問題が生じた場合には自己の責任において対処し、貴会に迷惑をかけないこと」を誓約することになります。

顧客を抱えた状態で、執務場所に問題が発生すると顧客への影響も懸念されますので、安心して業務できる環境を確保したいものです。

自宅開業にあたっては賃貸契約書の内容を確認したり、不明な点は不動産会社に確認したりするほうが賢明です。持ち家においても集合住宅の場合には、管理規約などを確認しておきましょう。不特定多数の人の出入りや、騒音などいわゆるマナーに関するクレームはプライベートにも影響します。

自宅開業のメリット・デメリットを検討しよう

自宅開業により、事業を小さく始めることはリスク回避にもつながり、スタート時点では良く感じるかもしれません。開業時の不安を自宅という場所が和らげる効果もあります。しかしながら、開業当初は自宅でも、後に事務所が必要になるケースは多いです。家族でない従業員を置くようになったらどうか、家族が一人増えたらどうかなど、周囲への配慮からは逃れられません。税理士事務所開設の一つの選択肢である自宅開業ですが、自分にとってのメリットとデメリットを洗い出して、経営者としての答えを見つけるようにしましょう。

よくある質問

税理士が自宅開業するメリットはなんですか?

メリットとしては、事務所開設にかかる初期費用や家賃などのランニングコストが抑えられること、通勤時間の節約でより時間が確保でき、交通費が抑えられること、感染症リスクが低減できることなどが挙げられます。

税理士が自宅開業するデメリットはなんですか?

デメリットとしては、住宅事情によってはお客様を招きづらいこと、仕事とプライベートのメリハリがつかないこと、プライバシーの確保が難しいことなどが挙げられます。

税理士が自宅開業する際の注意点はなんですか?

税理士は顧客からの情報を保護する必要があるため、セキュリティ対策を物理的、システム的に実施しなければなりません。また、特に自宅が賃貸の場合には、事務所設置の可否について確認することが求められます。

【監修】税理士・CFP 岡 和恵

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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