公認会計士が独立後に身につけたい集客と営業の方法とは?

公認会計士が独立後に身につけたい集客と営業の方法とは?

公認会計士が独立した際の課題のひとつに、顧客獲得のための集客や営業が挙げられます。どんなに優れた公認会計士であっても、そのサービスを提供する顧客を獲得できなければ、事業の継続は困難です。この記事では顧客の心をつかみ、契約を獲得するために役立つ営業や集客の方法についてご紹介していきます。

独立した公認会計士が行う集客・営業の方法6選

独立した公認会計士が行う集客・営業方法ですが、主に以下の集客・営業方法があります。

公認会計士業務は、上場企業、上場準備企業が中心になります。そのため、WEB等の間接的な集客よりも同業の公認会計士(監査法人のパートナー、社外役員している公認会計士、会計顧問の公認会計士等)、証券会社やファンド等からの直接的な紹介が中心になり、人的ネットワークの構築が必要になります。

一方で、税理士業務は、中小企業、個人事業主を中心に広く対象になるため、既存顧問先や他士業からの紹介、士業紹介サービスだけでなく、ホームページ、インターネット広告、ブログなどを活用し、間接的な集客も重要となります。

 

公認会計士が行う集客・営業の方法

集客方法①顧問先などからの紹介

既存顧問先(税務顧問先等)からの紹介は、既存顧問先が複数会社を保有していたり、新規設立する場合、既存会社の顧問として一定の評価を得ていれば顧問先自身の別会社を紹介してもらえる可能性は高くなります。また、既存顧問先が知人の経営者の会社を紹介してくれる可能性もあります。

顧問先からの紹介のメリットとしては、コストがかからないこと、また紹介者から信用を得られていることがわかります。一方でデメリットは、顧問先からの紹介だと、断りづらいことが挙げられます。

集客方法②ほかの士業からの紹介

弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士など、他士業が顧問先を紹介してくれます。たとえば司法書士、行政書士は、会社設立手続業務を行いますので、設立したての会社の紹介があります。

また、弁護士、社会保険労務士は顧問先の会社を紹介してくれます。

ほかの士業からの紹介してもらうことのメリットとしてはコストがかからないこと、一方デメリットとしては、紹介してもらうには各士業とのネットワーキングや各士業からの信頼関係の構築が前提となることが挙げられます。

なお同業である公認会計士からは、自身が独立性やリスク等の観点から受嘱できない場合に次のような案件を紹介してくれることもあります。

  • 会計コンサルティング
  • 会計監査業務
  • 社外役員
  • CFO

思わぬ案件の獲得もありますので、同業の付き合いも大切にしましょう。

集客方法③ホームページ

ご自身でホームページを作成し、問い合わせを増やすことで顧客を獲得できます。ホームページは自身をPRする営業ツールとなりますので、自身のプロフィールの充実、これまでの実績(顧客数、実績、成果など)をPRしましょう。
さらにSEO対策を施し特定のキーワードで検索上位になればホームページから問い合わせは増加し、集客につなげることができます。

ホームページは、自身の強力な営業ツールになりえますが、顧客数や実績など、自身の明確な強みがないと、集客に結びつきません。

専門家としての強みの見つけ方、魅力的なプロフィールの作成については、下記記事をご覧ください。

集客方法④士業紹介サービス

税理士、公認会計士など、士業紹介サービス会社からの紹介も、顧客獲得方法のひとつになります。たとえば、税理士紹介会社の有名なサービスに「税理士ドットコム」等があり、相当数の士業紹介サービス会社があります。

士業紹介サービス会社からの紹介は、紹介手数料として年間顧問料の1年分の50~100%弱程度を紹介会社に支払わないといけないデメリットがあります。しかし顧客との契約関係が1年以上継続するなら紹介手数料も回収できます。また、開業当初は営業基盤がない場合が多いため、紹介会社を利用することで早期に一定数の顧客を獲得でき、獲得した既存顧問先からの紹介も期待できるので利用してみる価値はあると思います。

集客方法⑤インターネット広告

インターネット広告は、インターネットのウェブサイト(Google、Yahoo! JAPAN等の広告等)やメールを使用し、企業が製品やサービスのマーケティングのために行う宣伝活動に活用します。そのなかで、リスティング広告は、検索結果への表示のみであれば費用は生じず、ユーザーがクリックするごとに費用がかかるクリック課金制が多いです。この場合のコスト計算は広告費=クリック単価×クリックされた回数となります。

費用対効果は、キーワードや配信の時間帯、地域などの設定によって大きく変わってきます。各項目をどのように設定するかが費用対効果を高めるためのポイントになります。

インターネット広告のメリットは、即効性があることが挙げられ、デメリットは広告運用と制作のスキルが必要で、そのコストがかかること、また受注確度に波があることなどが挙げられます。

集客方法⑥ブログ

ブログは、ワードプレス、アメブロなどのブログサービスを利用して情報発信を行い、問い合わせを獲得する方法です。最近は、テンプレートも充実しているため、誰でも簡単に始めることができます。コンテンツを考える能力や、効果を上げるにはSEOライティングの知見が必要になるなど、本業とは別のスキルが求めらるため、継続してコンテンツを配信していくことは意外に大変なものです。

しかし、ホームページ同様、コンテンツが充実してくれば強力な営業ツールになる可能性は十分にあるので、検討してみてはいかがでしょうか。

公認会計士の集客・営業のポイント

公認会計士の集客・営業は、ターゲット層により有効な方法が異なるので、まずは公認会計士業務、税理士業務のどちらをメインに行うかを考えます。ターゲットが決まったら、そのターゲット層に対し、自身の能力を客観的に整理してアピールする必要があります。

ターゲット顧客を明確にしてニーズをつかむ

個人または法人、公認会計士業務または税理士業務、新規開業、企業規模など、ターゲット層を明確にし、どのようなニーズがあり、どのようなサービスを提供できるのかを検討します。

税理士業務
税理士業務でいうと個人は所得税や、相続税の税務サービスなどが中心になり、法人は法人税の税務サービスなどが中心になります。ご自身が対応できるサービスにより、ターゲット層を絞り込んでいくということもできます。

また、個人は単発契約が中心、法人は継続顧問契約が前提になり、報酬相場は法人のほうが相対的に高くなる傾向にあります。税理士業務は、中小企業や個人が中心になり、他士業等からの直接の紹介以外にWEB集客が有効になります。

公認会計士業務
公認会計士の業務は、会計コンサルティング、会計監査業務、社外役員、CFO等業務など、主に上場企業、上場準備企業など、比較的大規模な会社が対象となります。報酬相場は、公認会計士業務が税理士業務と比較して相対的に高く、営業手法も公認会計士業務は同業の公認会計士、証券会社、ファンド等金融機関からの直接の紹介が中心になります。

強みや差別化をわかりやすく伝える

自身の強みや差別化ポイントを整理し、各集客施策や、対面営業においてターゲット層に対して、わかりやすく伝える工夫を行います。

ほかの公認会計士や税理士に比べて、自分の事務所の強みがなければクライアントを獲得することはできません。つまり、各公認会計士、税理士は、ほかの事務所やサービスとの差別化、ブランディングが必要となります。

具体的には、以下のような自身の強みがあり、他社と差別化できると有利になりますので自身の強みを整理してみましょう。

税理士業務
・安い税務報酬で税務サービスを提供できる(ほかの事務所と比較して作業効率化や安価な人件費で記帳する)
・英語や国際税務等海外案件が得意
・税務調査の対応が得意
・組織再編税制や連結納税など、難解な税務が得意
・相続税が得意
・特殊な業界の税務サービスに特化している
公認会計士業務
・多数のIPO実績がある
・英語、IFRS、USGAAP等海外案件が得意
・多数の上場会社や上場準備会社の社外役員をしている

集客営業がうまくいかないとき

すでに集客や営業を十分に行っているが、うまくいっていない場合は、どうすればよいのでしょうか。ここからは、その改善方法についてご紹介します。

まずは戦略を計画(Plan)し、それを実行(Do)。その結果や成果を評価(Check)します。もしも思うような成果が出ない場合は、集客方法に問題があるのか、失注しやすいポイントは何かなど、うまくいかない原因を分析し、その対策を考え立てたら改善(Act、Action)していきます。このPDCAサイクルを繰り返して課題解決を図ることが大切になります。

 

集客営業がうまくいかないときはどうする?

集客方法の見直し

営業活動や施策は打っているけれどなかなか成果が出ないとき、そもそもターゲット層に対して行っている集客方法が適切ではない可能性があるため、見直しを行います。また、インターネット広告は費用がかかり、ブログなどの集客方法には継続が前提となるものもあるため、効果の上がらないものについては継続か中断かの判断が必要になります。以下、状況別に集客方法を見直すポイントをご説明します。

顧問先などからの紹介
一定数の顧客数がないとあまり期待はできないため、まずは顧客数増加に努めたほうがよいでしょう。
ほかの士業からの紹介
士業のネットワーク拡大のために士業交流会に参加する、自身からほかの士業に案件を紹介するなどを積極的に行う必要があります。
ホームページ
ホームページの内容(強み、サービス内容、ターゲット層、報酬体系等)を見直すことが必要となるでしょう。
士業紹介サービス
士業紹介サービスからの紹介が少ない場合は、掲載する士業紹介サービスを増やす、掲載されているプロフィールを見直す等が必要となるでしょう。
インターネット広告
まずはキーワードや広告ページ、配信の時間帯、居住地域などの設定を見直しましょう。見直しても効果がない場合は、思い切ってやめることも選択肢です。
ブログ
効果が出るまでに時間がかかるので、長く続けることが大切です。そのうえで効果が長い期間ない場合は、コンセプトや内容を見直す必要があるでしょう。

失注ポイントの見直し

集客や営業で業務を失注しやすいポイントを見直し、対策を立てます。顧問先、ほかの士業からの紹介や、士業紹介サービスなどは直接の紹介ですが、紹介以外の場合、通常、会社は2~3社から相見積もりを取り、サービス内容と費用のバランスを見ながら比較するのが一般的です。ここで仕事を獲得できなかった場合は、価格かサービス内容の問題のほかに、営業した際のコミュニケーション方法がよくなかったのか、もしくは自身の強みのアピール不足で、よい印象を与えられなかったことなどが考えられます。こうした失注したポイントを探っていくことが大切です。

また、ホームページ、インターネット広告、ブログなどのWEB集客で、閲覧またはクリックはされるけれど問い合わせが増えない場合はもっと顧客を惹きつけられるように内容を見直す必要があります。そもそもサイトへの閲覧またはクリックされる数が増えない場合は、SEO対策を強化したりするといった改善を試してみるとよいでしょう。WEB集客では、アクセス解析ツールを活用し、こうしたデータを細かく分析しながら結果を評価(Check)し、改善策(Act)を見出していくことが大切です。

コミュニケーションの見直し

問い合わせは多いけれど、最終的に仕事を請け負うまでに至らない場合は、コミュニケーションに問題があることが考えられます。公認会計士のなかには、初対面の人に怖い(相談しにくい)印象を抱かせる人もいます。ターゲット層によっては相談しやすい専門家が好まれることもありますので、話し方や立ち振る舞いについて今一度見直しをしてみましょう。印象については、なかなか自分ではわからない部分もあるため、第3者からアドバイスをもらうことも有用です。

税理士業務
特に税理士業務は、中小企業や個人が主なターゲット層になります。そのなかで通常の税務については親しみやすく、話しやすい専門家が、国際税務や連結納税など難解な税務では理論的に話せる専門家が好まれる傾向があります。
公認会計士業務
公認会計士業務は、上場企業、上場準備企業など、大規模な会社からの仕事が多く、国際税務や連結納税など難解な税務同様、理論的に話せる専門家が好まれる傾向があります。このように、ターゲット層により求められるコミュニケーション能力や人が異なることも頭に入れておくとよいでしょう。

プロフィールの見直し

プロフィールが、ターゲット層に対してしっかりとアピールできる内容になっていることも重要です。たとえば、公認会計士業務は、上場企業、上場準備企業を意識し、IFRS導入コンサルティングの実績や社外役員経験、IPO準備企業が上場を果たした実績など、求められる仕事を想定した内容をプロフィールに入れ込むことが大切です。また税理士業務では、組織再編税制や連結納税など難解な税務が得意なことや、特殊な業界の税務に精通していることがわかる実績などをプロフィールに入れるとよいでしょう。

そのほかにも英語能力(TOEIC点数、海外駐在経験、米国公認会計士等海外の資格)は、税理士業務、公認会計士業務ともに活かせる強いアピールになります。ターゲット層は何を求め、何を依頼したいのか、その観点から顧客が依頼したくなるようなプロフィールを充実させることが、顧客獲得につながるはずです。

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よくある質問

ほかの士業との関係づくりにはどんな方法がある?

士業交流会に参加する、同業の士業から他士業を紹介してもらう、ホームページで提携士業募集を行うなどの方法があります。

まずどの集客方法を優先して行うべき?

コストがかからないホームページの作成、ブログを行いつつ、士業紹介サービスは通常成功報酬払いのため、必要に応じて利用すると成長も早いでしょう。

はじめは悪い条件の業務も受注すべき?

いきなり実績のない独立したての公認会計士に、よい条件の業務を依頼する可能性は低いため、はじめは悪い条件の業務も受嘱して経験値、実績を上げることも大切です。実績をある程度積んできたら、自身で作成した報酬体系より条件が悪い業務はできるだけ受注しないように努めるとよいでしょう。

【監修】公認会計士 福留 聡

福留聡税理士事務所代表、監査法人パートナー、MFクラウドプラチナメンバーで日米の公認会計士及び税理士資格を有し、法定監査、IPO支援、決算支援、IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。

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