税理士のプロフィールはホームページを制作する際や、税理士紹介サービスに登録する際に不可欠です。しかしいざプロフィールを書こうとすると、何をどのように書けば良いのか分からず、筆が進まないことがあります。この記事ではそのような税理士のお悩みに対し、魅力的なプロフィールの作成手順をお伝えしていきます。
これからプロフィールを作成する方も、すでにあるものをブラッシュアップする方もぜひご一読ください。
目次
税理士のプロフィールの目的
まずはなぜ税理士にとってプロフィールが重要なのか、作成の目的について確認していきます。
共感と信頼で問い合わせを獲得する
プロフィールを作成する目的は「顧客の獲得」です。顧客を獲得するにはまず問い合わせてもらう必要があり、税理士紹介サービスなどでは数ある税理士の中から自分を見つけてもらわなければいけません。インターネットなどの媒体では、顧客は「どんな税理士か」を確認したうえで、問い合わせのアクションを取ります。「話を聞いてもらえそう」「信頼できそう」といった共感や信頼を伝え、顧客に問い合わせのアクションをとってもらうことがプロフィールの役割です。
そもそも顧客は税理士の違いが分からない
プロフィールを作成するうえで意識したいのが、顧客は「税理士が何をしてくれるのかが分からない」という点です。「税理士ごとの違いが分からない」「どの税理士に頼めば良いのか分からない」、顧客からは税理士がみんな同じで無色透明に見えているということを念頭に置きましょう。詳しくは後述しますが、サービス内容や差別化のポイントをきちんと伝えることで、顧客の問い合わせのしやすさが上がります。
税理士のプロフィールの項目
プロフィールの作成に入る前に、主なプロフィールの項目について確認しましょう。税理士のプロフィールは主に以下の構成で作られることが多いです。
【プロフィールの主な構成】
- キャッチコピー
- 対応可能な地域
- 得意分野や得意業種
- リード文(概要や特徴)
- 詳しい紹介(経歴、得意なサービスや分野の詳細など)
- コンタクト
- ・経歴
- ・得意なサービスの詳細
- ・得意業種の詳細
- ・住所
- ・電話番号
- ・HPアドレス
- ・mail
STEP1 メインとなる顧客の姿をイメージする
プロフィールの目的について確認したところで、実際にプロフィールを作成していきます。
分かりやすいようにSTEP1~STEP4に段階を分けて書きましたが、これらは各ステップの内容が関係しあうため、1→2→3→4の順だけでなく、ときには3→2に戻って書き直すこともあります。
何度か推敲を繰り返して完成させましょう。
STEP1ではまずメインとなる顧客の像をイメージします。開業したてで特定の顧客像のイメージがない場合は、かつて担当した顧客をイメージしましょう。
顧客を具体的にイメージし、彼(彼女)に伝わる言葉を考えるのが目的です。
イメージするにあたり、次のような要素を書き出していきます。
【顧客イメージの要素】
- 名前
- 性別
- 年齢
- 職業(事業内容)
- 悩み(どんな相談が寄せられたか)
プロフィールの読み手が受け取りやすい言葉の選び方、気になっている事柄など、この顧客像をもとに想定していきます。例えば、20代の起業したばかりの青年と、40代の経営者では会計や経営に関する知識や経験が異なります。起業したての人をターゲットにしたい場合には、会社設立に関する案内を厚くした方が訴求が強くなる可能性があります。
また、事業主が「初歩的なことを聞くと怒られるかな」と考える場合もあるので、どんな人でも優しく接する雰囲気の文体にすると不安が解消されるでしょう。このように「誰にプロフィールを届けたいか」を具体的にイメージしていきます。
STEP2 今までの生い立ち~経歴を書き出す
次に税理士自身の生い立ちや経歴を書き出していきます。ここでも共感や信頼を得るために、経歴は差し支えない範囲で具体的に書いていきましょう。
【経歴に書く内容】
- 出身地
- 出身の高校や大学
- 勤務した会社や仕事の内容(税理士業務に関係があるとなお良い)
年表形式よりもストーリー形式の方が好まれやすい傾向がありますが、年表形式はシンプルで読みやすく、少ないスペースで表現しやすいメリットがあります。
ストーリー形式はやや長くなりますが、過去→現在→未来へと話が進むので、読み手に税理士のバックグラウンドを理解してもらい、これからの取引や受けるサービスのイメージをしてもらいやすいメリットがあります。過去の経験や感じたこと、そして文体から人柄が出ると非常に魅力的になります。また、経歴を踏まえた自身の強みや「このような人に価値提供することが得意です」と明記することで、問い合わせの獲得にもつながりやすくなります。
年表形式の例
- 2010年 〇〇銀行にて法人向け融資を担当
- 2012年 〇〇銀行を退職し、税理士試験に専念
- 2014年 □□税理士事務所に勤務
- 2017年 △△税理士事務所を開業
ストーリー形式の例
2010年に大学を卒業したのち、〇〇銀行に就職し法人向け融資を担当しました。
多くの経営者とお会いし、融資の話のなかで経営相談も多くされました。しかし私自身に肝心の経営知識がなく、お力になれなかったのが非常に歯がゆかったです。
「中小企業の社長の力になりたい」
次第にそう考えるようになり、ついに一念発起して銀行を辞めて税理士試験に挑戦しました。
その後□□税理士事務所での下積みを経て、この△△事務所を開業しました。中小企業の力になる税理士像に近づけるよう、日々努力してまいります。
銀行勤務の経験のおかげで融資の通し方は熟知しております。資金調達に自信がありますので、ぜひご相談ください。
STEP3 業務内容と差別化を考える(税理士の特徴)
次に業務内容と差別化について考えていきます。差別化はSTEP1のメインとなる顧客像とも関連するので、必要に応じてSTEP1~STEP3を行ったり来たりします。
どんな業務を誰に届けたいか
「顧客は税理士の仕事をよく知らない」という前提のもと、提供する業務を具体的に書き出していきます。業務内容も想定する顧客にとって分かりづらい場合には、説明を加えるのも有効です。
【業務内容の説明の例】
月次業務:貴社が作成した帳簿を毎月拝見し、会計や税務の処理で誤りがないか確認します。毎月の業務成績を振り返り、相談事があれば丁寧にお伺いして解決策をご提案いたします。将来に向けて大きな心配事が起きないようにする、定期健診のようなものとお考えください。
また、それぞれの業務内容については顧問料に込みなのか、オプション料金なのかを明記し、料金体系を明確にすると問い合わせ時点での顧客の不明点を解消できます。
差別化を考える
「差別化」つまり「他の税理士と違うところ」を考えます。差別化といっても大きな違いである必要はなく、他と比較してどのような違いがあるか、分かりやすく伝えることを意識しましょう。比較の軸はさまざまですが、次のようなものが挙げられます。
【主な差別化の軸】
- 料金(他より安い)
- 地域(地域密着やクラウド会計で全国対応可能など)
- 得意分野・業種(実績はどれくらいあるか)
- 特定の専門性(経理コンサルに強い、株価計算が得意など)
- 経歴
- 人柄
料金は分かりやすい差別化ですが、安すぎても顧客が不安になりますし、価格競争で消耗する恐れがあります。低価格を打ち出す場合にはなぜ低価格で提供できるか、といった点も明記すると安心されるでしょう。
今までの仕事でうれしかったこと、顧客に喜ばれたことを書き出す
「差別化といってもなかなか思い浮かばない」という場合もあると思います。そのような場合には自身の体験を振り返ります。
【差別化に役立つ体験】
- 顧客に喜ばれた体験
- 悔しくて成長につながった経験
- 困難だったがやり遂げた案件
- 前職の経験で活用されていると思うこと
このように体験を振り返ると差別化ポイントが出てくるはずです。繰り返しになりますが、差別化は必ずしも専門性で優れている必要はありません。人柄やレスポンスの早さなど、知識以外の部分でも差別化ポイントになります。
顧客のベネフィットを意識する。
税理士の顧問業務は主に税務に関して、「問題を解決する」「問題が起きないようにしておく」ことが中心です。顕在化した問題を抱えていない人にとっては価値が伝わりづらいことがあります。プロフィールには「顧問料をもらう代わりにこんな得(ベネフィット)をさせられる」というメッセージを含めると、問い合わせにつなげやすくなります。ベネフィットは具体的な数字をつけるとイメージしやすく、顧客の事例として紹介する方法もあります。
【ベネフィットの例】
- 個人事業主は3万円以上の節税が可能
(白色申告の個人事業主を青色申告に対応することで65万円×5%(所得税)=32,500円の節税) - 経理事務から解放されて本業にあてる時間が20時間アップ
- 5,000万円以上の資金調達実績あり
STEP4 媒体に応じて順序、ボリュームを調整して書き出す
ここまで必要な情報の整理ができたら、媒体に応じて書き出していきます。プロフィールをHPに掲載するか、税理士紹介サイトに掲載するかなどで文章のボリュームは異なりますが、おおむね次のような構成が考えられます。
【プロフィールの主な構成】(再掲)
- キャッチコピー
- 対応可能な地域
- 得意分野や得意業種
- リード文(概要や特徴)
- 詳しい紹介(経歴、得意なサービスや分野の詳細など)
- コンタクト
- ・経歴
- ・得意なサービスの詳細
- ・得意業種の詳細
- ・住所
- ・電話番号
- ・HPアドレス
- ・mail
キャッチコピーはここまで検討してきた税理士や事務所の特徴、顧客に届けたいメッセージを一言で表します。ここでもメインとなる顧客を強くイメージして言葉を紡ぎましょう。税理士紹介サイトなどでは、得意分野や得意業種が一覧で表示されます。この一覧表示された得意分野と得意業種の内容と、「詳しい紹介」に記載する内容を一致させると読み手によりメッセージが伝わりやすくなります。例えば、「飲食店が得意」と一覧に書いたのであれば、詳しい紹介の欄には「開業以来、50社の飲食店の成長を見守ってきました」などの一文を加えてみましょう。
プロフィール写真は必要、できればプロに撮ってもらう
以上でプロフィール文章が一通り出来上がりました。ここで用意したいのが、税理士自身の写真や事務所のロゴです。まだ会ったことのない問い合わせ客にとって、税理士の見た目は大きな判断材料になります。特に、税理士紹介サイトでは各税理士が縦並びにずらりと表示されるので、そこで魅力のない写真が表示されると、クリックされる可能性も下がってしまいます。
まず興味を持ってもらうために、専門家として頼もしく映る写真を用意しましょう。なるべくプロに撮影してもらうのがおすすめで、クラウドソーシングであれば1万円程度で依頼できます。プロフィール写真のほかに事務所のロゴもあれば望ましいですが、用意が難しい場合にはプロフィール写真だけでも十分です。
プロフィール作成のワークシートを無料公開中!
税理士のプロフィール作成のポイントを次のように案内してきました。
- STEP1 メインとなる顧客の姿をイメージする
- STEP2 今までの生い立ち~経歴を書き出す
- STEP3 業務内容と差別化を考える
- STEP4 媒体に応じて順序、ボリュームを調整して書き出す
マネーフォワードでは上記のポイントを押さえたプロフィール作成のワークシートをご用意しました。ワークシートの順序に合わせて書き込んでいくだけで、プロフィール作成に必要な要素を用意できます。これからプロフィールを作る方や、すでにあるものをより良くしたい方はぜひご利用ください。
よくある質問
特に差別化が思いつきません
差別化は料金、地域、得意分野・業種、専門性、経歴、人柄などさまざまな軸があります。一度経歴や経験を書き出すとどこかで差別化のポイントが見つかるでしょう。
キャッチコピーはどう作れば良い?
キャッチコピーはプロフィール作成の最後に考えるとうまくいきます。自らの強みや顧客像のイメージを書き出した後のほうが、情報が整理できているはずです。
プロフィールの作成が進みません
文章が書きなれていないことで、プロフィールの作成が進まないことがあります。他の士業のプロフィールなどをいくつか読んで、上手な人の文章の構成を参考にしてみましょう。