税理士の在宅勤務(テレワーク)。在宅勤務環境の整え方を詳しく解説!

組織づくり

税理士の在宅勤務(テレワーク)。在宅勤務環境の整え方を詳しく解説!
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令されたことで多くの企業がテレワーク(在宅勤務)に勤務形態を移行しました。税理士は、税理士法において「2ヶ所事務所」が禁じられていますが、日本税理士会連合会が在宅勤務は2ヶ所事務所に該当しないことを発表し、税理士の在宅勤務は認められています。
(参考:税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)〜新型コロナウイルス感染防止対応版〜

では、税理士が在宅勤務を行う上で業務の効率化に効果的な環境の整え方やメリット、デメリットはどのようなものでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

税理士が在宅勤務する際の作業環境整備

税理士がテレワークを導入する場合、まずは効率的に働くことができるように、作業環境を整備しなければなりません。税理士業務の場合にはデスクワークが大半となるので、机や椅子、部屋の明るさ、室温にも気を配りましょう。

下図のとおり、自宅等でテレワークを行う場合の作業環境整備に関するポイントが厚生労働省によってまとめられていますので、実際にテレワークを実施する際にはご参考ください。

税理士業務の場合、顧問先からの証憑や個人情報を紙で預かる場合もあります。このような重要性の高い資料については安全な保管スペースを用意し、万が一にも紛失することがないよう、管理体制を整えてください。

現状のコロナ禍では、テレワークの導入や業務フローの変更に対して、顧問先の理解や協力を得やすい環境であると考えられます。そのような状況を活用し、テレワークの導入にあたって従来の紙媒体での資料収集を撤廃し、完全にデータ化することも視野に入れると良いでしょう。

税理士が在宅勤務する際のIT環境の整備

税理士がテレワークを導入する場合には、IT環境の整備が必要不可欠です。特に職員を雇用している税理士事務所の場合には、顧問先だけでなく、事務所内の情報共有やコミュニケーション環境も整えなければなりません。テレワーク環境の整備に関しては、ハード面とソフト面に分けて準備を進めましょう。
税理士が在宅勤務する際のIT環境の整備

テレワークの環境整備~ハード編~

税理士業務ではパソコンの利用が欠かせないため、テレワークの導入にあたっては、ノートパソコンやインターネット環境の整備が必須です。

職員を雇用している場合には、パソコンやスマートフォンなどの端末を事務所から支給するか、私物を使用させるかを検討しなければなりません。事務所支給の場合、職員数が多いほどコストはかかりますが、必要なソフトのインストールやセキュリティ対策を講じた状態で使用させることが可能となります。

一方で、私物の場合には事務所のコストは下がる反面、必要なソフトが正常に起動しない場合やセキュリティ面に不安が残るケースもあります。このような背景から、税理士事務所がテレワークを導入する場合には、事務所がパソコンやスマートフォンなどのテレワーク端末を支給するケースが一般的です。

税理士業務においては、過去の顧問先の資料や証憑などを確認しながら作業を進めることもあります。それらの書類が事務所に紙媒体で保管されている場合には、テレワーク導入にあたり、すべてのデータ化を行うなどの準備が必要になります。このような紙媒体からの脱却作業が進まず、テレワーク自体も断念せざるを得ない税理士事務所も多いのが現状です。テレワークに関しては、急遽実施するのではなく、導入に向けて必要なプロセスを精査し、スケジュールを組んで計画的に準備を進める必要があります。

テレワークの環境整備~ソフト編~

税理士業務では、事務所によってさまざまなソフトウェアを使用しています。会計ソフトや勤怠管理システムだけでなく、テレワーク導入にあたっては顧問先や職員間でのチャットや、Web会議を行うためのコミュニケーションツール、進捗管理ツールも必要です。

税理士事務所の中には毎月の巡回監査や申告手続きに際し、総勘定元帳など大量の書類を印刷する場合があります。しかし、テレワークでは印刷環境が整っていないケースが一般的であるため、テレワーク推進のためにはペーパーレス化が必須です。そのためには新たなツールの導入やチェック体制の変更など、業務フローの抜本的な改革が必要な場合もあります。

具体的なソフトに関しては、クラウド会計やオンラインストレージ、コミュニケーションツールなどのクラウドサービスを活用する場合、テレワーク端末にインストールすることなく使用できます。一方で、インストール型のソフトウェアを使用する場合には、テレワーク用の端末に直接インストールが必要となり、正常に動作するよう、パソコンのスペックや容量にも注意しなければなりません。

税理士が在宅勤務するメリット

税理士がテレワークを導入することでさまざまなメリットがあります。
下図のように「業務効率化」や「コスト削減」だけでなく、「優秀な人材を雇用しやすい」といった人材難に苦しむ税理士業界にとって非常に価値の高い効果も期待できます。
税理士が在宅勤務するメリット

業務の効率化

税理士業界に限らず、テレワークを導入することで通勤や移動時間がなくなり、空いた時間を有効に活用できます。それによりさらに付加価値の高い業務に注力でき、税理士事務所としての顧客満足度の向上にも貢献するでしょう。

また事務所の職員としても、無駄な時間を削減することで労働時間の短縮につながり、ワークライフバランスの実現や税理士試験への勉強時間の確保もしやすくなります。職員の労働環境が改善することは、残業時間が増加傾向にある税理士事務所にとって大きなメリットとなります。

コスト削減

テレワーク環境の整備はさまざまなコストの削減に貢献します。ペーパーレス化を促進すれば、印刷用紙や複合機に関する消耗品コストの削減が可能です。通勤や移動が減少することで交通費やガソリン代が節約でき、さらに事務所の水道光熱費の減少にもつながります。テレワーク導入によって労働環境が改善され、人材が定着すれば採用コストの削減も期待できます。

このようにテレワーク環境の導入を進めることで、複合的なコスト削減が可能となります。

事業継続性の確保

現在の新型コロナウイルス感染症拡大のみならず、事業を営むうえでは地震や台風などの自然災害により外出が困難な場合や、事務所が一時的に使用できないリスクも想定しなければなりません。事業継続性とは、事故や災害などの不測の事態が発生した場合においても、事業の継続や早期の再開が可能であることを指します。

そのような非常事態に備え、出社することなく業務を継続できる環境を整えておくことは、「事業継続性の確保」という観点において非常に重要です。テレワーク環境を整備することは、税理士事務所としての「事業継続性の確保」への貢献も期待されています。

優秀な人材の確保

テレワークを導入することで、自宅で都合の良い時間帯に仕事ができる環境を整備することが可能です。育児や介護などでまとまった勤務時間の確保が困難な人や遠隔地に居住する人も採用できるようになるため、優秀な人材を確保しやすくなります。

特に税理士事務所ではパート職員を雇用するケースが多く、仕訳入力や申告手続きなど、重要な業務に携わっているケースも珍しくありません。さらに税理士業務は顧客ごとに異なる対応も多いことからマニュアル整備が進みにくく、業務が属人化しやすいことも特徴とされています。

かねてから育児や介護、配偶者の転勤などの理由でやむなく離職するケースも多いため、税理士事務所におけるテレワーク導入の背景には、定着率アップへの期待も大きいです。

税理士が在宅勤務するデメリット

税理士がテレワークを導入する場合には、メリットだけでなくデメリットについても正しく理解しなければなりません。以下のデメリットを踏まえ、実施すべきかどうか検討しましょう。
税理士が在宅勤務するデメリット

メリハリがつきにくい

家で仕事をすることは通勤や移動時間が削減される反面、プライベートとのメリハリがつきにくく、業務効率が悪化するリスクがあります。

特に小さい子どもがいる家庭では、まとまった業務時間を確保することが難しい場合もあります。効果的なテレワーク実施に関しては、各職員の「仕事場」としての環境整備の可否に依存する面も少なからずあります。

セキュリティリスクが高まる

顧問先の財務状況や従業員の個人情報など、税理士業務で扱う情報の重要性から考えれば、テレワークによって仕事場が分散することでセキュリティに対する不安は高まります。

テレワーク環境を構築する際には、情報漏えいや不正アクセス、ウイルス感染などのリスクへのセキュリティ対策は必ず行いましょう。具体的には各テレワーク端末に直接データを保存するのではなく、事務所のサーバーやクラウド上のデータにアクセスできるネットワーク環境を整え、テレワーク端末には一切の情報が残らないような対策も有用です。

また紛失のリスクを減らすため、紙媒体で書類を持ち帰る機会はできる限り削減しましょう。もし書類を持ち帰るケースが想定される場合には、施錠できるスペースへの保管を義務付けるなど、書類の扱いに関してあらかじめ職員への指導を徹底してください。

コミュニケーション不足に陥りやすい

コミュニケーションの減少についてもテレワークのデメリットとして挙げられます。チャットやWeb会議でやり取りを交わすことはあっても、直接会って挨拶や雑談をする機会が失われることで、職場の人間関係が希薄化してしまうことには注意が必要です。

勤務時間が異なる場合には、情報共有や確認事項に対する回答が遅れ、業務自体がストップしてしまう可能性もあります。このような状況が続くことで、業務効率の低下だけでなく、ミスやトラブルに発展するリスクも高まります。

スムーズに意思疎通が図れないなどのコミュニケーション不足によって、顧問先との信頼関係が損なわれる可能性もあります。そのようなリスクを軽減するためにも、文字だけのコミュニケーションに頼るのではなく、Web会議で顔を合わせて会話する機会を定期的に設けるなどの対策を講じましょう。

在宅勤務を行う場合の注意点

日本税理士会連合会では、税理士法に基づき、税理士事務所がテレワークを実施する場合の注意事項を公表しています。

特に税理士登録をしていない使用人等が自宅で税理士業務の補助業務を行う場合には、税理士や税理士法人による適切な「監督下」にあることが義務付けられています。適切な「監督下」とは、税理士による職員のシステムログインやログアウト履歴の確認、業務状況の共有や指示、税務署類の電子送信を不可とするなどの制限により、一定の制御が行われている状態を指します。

顧問先の資料等を自宅に持ち帰る場合には、守秘義務を遵守できる保管場所の確保が求められています。そのため、紙媒体で書類を保管する場合には、職員が施錠できる保管場所を用意し、厳重に保管しなければなりません。

税理士法を遵守するだけでなく、事務所をさまざまなリスクから守るためにも、テレワークを導入する場合には、職員向けに独自のガイドラインを策定することをおすすめします。特にテレワークを実施するための職場環境や対象となる業務、頻度、実施場所、報告義務などを明記し、ガイドラインに沿った行動を徹底させるようにしてください。

効果的な在宅勤務環境を整える

税理士が効果的なテレワークを実施することで、業務効率化やコスト削減など、さまざまなメリットが期待できます。しかしその一方で、セキュリティへの不安やコミュニケーションの不足などを解消できなければ、トラブルが増え、顧客からの信頼を損なうリスクがあることも知っておかなければなりません。

在宅勤務のメリットを活かし、税理士事務所としての生産性を高めるためには、安全かつスムーズに働くことができる環境を整備するよう心掛けましょう。

よくある質問

テレワークのメリットは?

通勤や移動時間が削減されることによる業務効率化や、ペーパーレス化などによるコスト削減が期待されます。また働きやすい環境が整備されるため、優秀な人材を雇用しやすくなるというメリットもあります。

テレワークのデメリットは?

家で仕事をするためメリハリがつきにくく、セキュリティへの不安も高まります。また対面でコミュニケーションをとる機会が減少することで、業務効率の低下やトラブルに繋がるリスクもあります。

税理士がテレワークを行う際の注意点は?

税理士登録をしていない使用人等の場合、税理士による適切な監督下にあることが義務付けられています。また顧問先から書類を持ち帰る際には、施錠などによって守秘義務を遵守できる保管場所の確保が必要です。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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