税理士試験に合格した人や税理士試験が免除になった人などが「税理士」として活動していくためには、「税理士会」に登録しなければなりません。税理士会の登録には「登録費用」がかかり、その後、税理士としての資格を維持していくためには「年会費」を払う必要があります。では、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
この記事では、税理士会に関わる費用について解説していきます。
目次
税理士として活動していくためにかかる年会費はいくら
「税理士」を名乗るためには税理士登録が必要です。登録の要件として、租税か会計に関する2年以上の「事務経験」が求められます。税理士試験に合格か、試験免除になったとしても、2年以上の事務経験がないと税理士登録は認められません。これらの要件を満たして初めて、税理士登録が可能となります。
税理士として活動するには税理士会への登録が必要
税理士として活動するには、日本税理士会連合会に備わる税理士名簿に登録する必要があります。税理士として、税理士名簿に登録できるのは次の要件を満たす人です。
- 税理士試験に合格した者
- 試験科目の全部について税理士試験を免除された者
- 弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む)
- 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む)
(参考:税理士の登録 | 国税庁)
これらの人は、それぞれ登録申請に際して提出を求められる書類が異なります。
日本税理士会連合会の指導の下、全国に15の税理士会があり、税理士登録申請書の提出先は、各税理士会と日本税理士連合会になっています。
まずは自分がどこの管轄となるかを確認しましょう。
登録時の費用としては、主に次のものがあります。
【全国共通】
- 登録免許税:6万円
実際には、領収済通知書を用いて銀行等で先に支払った領収書が必要となります。
- 登録手数料:5万円
日本税理士会連合会会則により、登録手数料を各税理士会の指定する方法で納付します。
【税理士会】
- 入会金:4万円
各税理士会によって異なる場合があります。
- 会館建設費:2万円
税理士会によってさまざまです。
- 税理士制度発展募金:1万円
税理士会によってさまざまです。
【諸費】
各税理士会および支部によってさまざまです。
- 登録研修時テキスト代等:1万円程度
- 各税理士協同組合連合会費用等:数千円(出資金・税理士関係法規集など)
- 名札代:実費(任意:税務署内税理士名札代)
ここまでの登録費用として約20万円となりますが、さらに書類取得のためにも費用がかかります。
- 写真3枚
- 住民票の写し
- 登記されていないことの証明書(東京法務局発行のもの)
(成年被後見人、被保佐人、被補助人として登記されていないことを証明するもの、300円/通)身分(身元)証明書(本籍地の市区町村発行のもの)
(成年被後見人、被保佐人とみなされる者及び被補助人に該当しないこと、破産宣告又は破産手続き開始決定の通知を受けていないことなどを証明するもの、1事項につき200円)在職証明書に係る印鑑登録証明書(試験合格者及び試験免除者)その他、登録申請時に面接調査がありますので交通費等も必要になります。
参考
日本税理士連合会 全国の税理士会
日本税理士連合会 税理士登録の手引き
税理士資格を維持するために年会費を払う必要がある
晴れて税理士となり税理士証票を取得した後は、その資格を維持するために年間費用がかかります。
税理士登録をすると、各税理士会の特定の地域ごとに設置される組織である支部「税理士会支部」にも自動的に所属することになります。税理士登録後に発生する資格維持のための費用は、各税理士会とその下部組織である支部に支払う会費などになります。
【税理士会】
- 税理士会年会費:8万円程度。
地域によって異なりますが、8万円強となります。
【税理士会支部】
- 税理士会支部年会費:3.6~6万円(各支部により異なる)
3.6万円の支部や6万円の支部など支部によって差があります。
税理士会に所属するメリット
税理士会に所属するメリットとしては、「税理士」を名乗った上で仕事ができることです。
税理士名簿に税理士として登録されることで、年齢や性別に関係なく生涯働き続けることができます。自分のライフプランに合わせて、独立開業したり故郷に戻って仕事をしたりすることも可能になります。
また、地域ならではの情報を得ることができます。地域に根ざした税理士と親しくなったり、情報交換によって税理士としての経験値を積んだり、仕事に結びつくことが少なくありません。
さらに地域の税務署職員とのつながりが増えるなど、置かれた環境下で仕事がしやすくなるのは大きなメリットだと言えます。
税理士登録をしないという選択もある
税理士資格は保有していても、税理士登録をしないという選択肢もあります。
税理士登録は試験に合格後、税理士の独占業務を遂行する場合に行うものであり、すぐに税理士を名乗り仕事をする必要のない場合は登録をする必要はありません。
また、税理士資格をキャリア形成における一つの節目と考え、税理士登録せずにさらなる高みをめざすという選択肢もあります。税理士としてだけでなく、社会保険労務士や行政書士などとのダブルライセンスを目指したり、IT導入やシステム更改における課題を解決するコンサルタントとして力を発揮したりするなど多くの可能性があります。
税理士資格は、試験合格後には失われることはなく、いつでも税理士登録をする事ができるため、税理士事務所に所属を決めた時など必要になった際に登録をするという方も増えているようです。
そのため、本当に資格維持のための費用が活かされるものかどうかを熟考するべきでしょう。
他の士業の年会費と比較すると
税理士と他の士業の年会費を比較してみましょう。ここでは、公認会計士、弁護士、社会保険労務士と比較してみます。
資格 | 年会費 | 備考 |
---|---|---|
公認会計士 | 12万円~12.6万円 | 普通会費72,000円と地域会会費(地域により異なる)の合計額 |
弁護士 | 50万円~110万円 | 日本弁護士連合会約18万円と各弁護士会(地域により異なる)の合計額 |
社会保険労務士 | 7万円~10万円 | 地域差がある |
税理士 | 10万円~15万円 | 税理士会と支部会の合計額(地域差あり) |
これらの士業の中では、弁護士会会費が一番高いこととなります。
したがって、この比較からは税理士の年会費が特に高いとは言えません。
税理士の資格維持に10万円~15万円の年会費がかかる
税理士として活動するには、計算能力の高さや、扱う数字から依頼者の状況を読み取る力、さらに経営者に信頼されるだけの常識や知見がバランスよく兼ね備わっていることが求められるでしょう。
そのうえで、税理士の独占業務である「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」を遂行するためには、税理士資格が必要になります。
資格維持には10万円~15万円の年会費がかかりますが、税務という重責を負う士業には避けては通れない負担だと言えるでしょう。
よくある質問
税理士登録時の費用はどのくらい?
会費以外の登録時の費用としては、20万円~25万円程度(地域によって異なる)となります。
税理士の資格維持のための年間費用はどのくらい?
全国に15ある税理士会とその支部への会費が年間10万円~~15万円程度かかります。
税理士登録をしないとどうなる?
税理士業務はできませんが、武器として就職や転職の際には資格をアピールできます。