
今回お話を伺ったのは、ホームスチール税理士事務所の中村先生です。中村先生は、大手会計事務所での勤務を経て独立に至ります。経営心理学を活かした「コミュニケーション」と「フットワークの軽さ」を武器に、少数精鋭で着実な成長を遂げています。
33歳で独立へ踏み切った中村先生が、いかにして「紹介だけで顧問先が増え続ける仕組み」を築いたのか。等身大の言葉で語っていただきました。
目次
1. 大手から20代で独立した理由
まず初めに、中村先生が税理士を目指されたきっかけと、これまでの経歴を教えてください。
もともとは理系で建築士を目指していたのですが、大学受験の際に挫折し、文系の経営学部へ進みました。「周りに負けたくない」という一心で、文系の中で数字を扱う武器として簿記を始めたのがきっかけです。
大学在学中に税理士試験の科目合格を果たし、新卒で大阪の大手会計事務所に入所しました。そこでは約400人規模の組織ならではの、研修講師や営業といった幅広い経験を積ませていただきました。
大手事務所で順調にキャリアを積まれていた中で、なぜ独立を決意されたのでしょうか?
一番の理由は、自分の手で「ゼロからイチ」を作りたいという経営への意欲です。前職は非常に良い環境でしたが、歴史ある組織ゆえに、経営層に加わるには50代後半まで待つという「年功序列」の側面がありました。
「もっと早く経営に携わりたい」「自分が思う理想の組織を形にしたい」という想いが強くなり、待つよりも自分でリスクを取って作る道を選びました。
2. 「経営心理学」を武器に伴走者の地位を確立
独立にあたり、多くの人が「事務所独自の特徴の打ち出し方」に不安を感じますが、中村先生はいかがでしたか?
もちろん不安はありました。税理士法人に勤務していた20代の頃、初めて担当を持たせていただいたのですが、百戦錬磨の経営者に対して、若手の自分が知識や経験だけで勝負することには限界があると思い知らされたんです。
その時の実体験から、単なる税務会計の枠を超えた「フットワークの軽さ」や、感情に寄り添うような「コミュニケーション」の重要性を痛感しました。それが、現在の私の強みである「伴走」スタイルを確立する原点になっています。
具体的に、どのようなアプローチで差別化を図ったのでしょうか?
独立前に「経営心理学」の資格を取得しました。これは単なるコーチングではなく、ビジネスに特化した心理学です。名刺に記載することで、「これは何の資格ですか?」という会話のきっかけになり、そこから「数字だけでなく、経営者の悩みに寄り添う」という自分のスタイルを伝えることができます。
私は、税理士を「先生」ではなく「社外の役員」や「気軽に相談できるパートナー」と定義しています。今の時代、税法への簡単な質問はAIに聞いてしまえば、一定の解答を得られると思うんです。
だから、聞かれた質問にこちらが答えるという関与だけではなく、経営者の頭の中を整理し、納得した意思決定を行えるようにサポートすることを意識しています。この伴走スタイルこそが、私にとっての最大の提供価値だと考えています。
3. ネットワークを広げる「GIVE」の精神と一貫した強み
開業後、どのようにして顧問先を獲得していかれたのでしょうか?
初期はいろいろな交流会へ誘っていただいたら、まずは顔を出すようにしていました。ただ、交流会で「自分の売り込み」をしたことは一度もありません。意識したのは、相手の話を徹底的に聞くこと。そして、「自分にできることであれば、先に提供する(ギブする)」というスタンスです。
自分にできない案件があれば信頼できる方を紹介したり、保険の方であれば「税金の相談があれば無料で対応しますよ」と声をかけたりしています。地道ですが、「中村なら相談しやすい」という安心感を広めることが、結果として一番の近道でした。現在も、ありがたいことに広告などは一切使わず、月1〜2件ペースでご紹介をいただいています。
サービス内容や料金設定についても、独自の工夫をされていると伺いました。
「松竹梅」のように関与度合いを変えた3つのプランを用意しています。特徴的なのは、「面談頻度」によってプランを分けている点です。最低でも3ヶ月に1回は面談を行うことを条件とし、年一回の確定申告のみといった依頼は基本的にお受けしていません。
「うちは決して安くはないですが、コミュニケーションを重視し、いつでも相談できる環境を求める方には最適なサービスです。」と明確に伝えるようにしています。料金表をあらかじめ提示することで、お客様にも安心感を持っていただき、ミスマッチも防げています。
4. AI・クラウドのフル活用で付加価値の最大化へ
事務所の運営において、ITツールはどのように活用されていますか?
会計ソフトは「マネーフォワード クラウド会計」をメインに使っています。以前の職場で他社ソフトも経験しましたが、実務経験のあるスタッフが違和感なく扱える「複式簿記に基づいた操作性」が決め手でした。また、クラウドならではの連携機能により、記帳代行の工数を大幅に削減できています。
最近ではAIの活用も進んでいるそうですね。
はい。お客様からの質問へのドラフト作成や、自分の考えの壁打ちにAIを活用しています。自分の視点だけでは見落としがちな観点を補うツールとして非常に優秀で、リサーチの時間を短縮し、より本質的なアドバイスに時間を割けるようになりました。
5. 独立を目指す方へのメッセージ
今後の事務所の展望について教えてください。
正直なところ、規模を拡大していくかどうかについては模索しています。ただ、どんなにテクノロジーが進化しても、経営者と対話し、価値を提供できる「人」の重要性は変わりません。無理な拡大を目指すのではなく、スタッフ全員が高い価値を提供でき、かつ幸せに働ける組織。そんな「少数精鋭のプロフェッショナル集団」を追求していきたいですね。
最後に、独立を検討している読者へメッセージをお願いします。
公認会計士や税理士の資格を持っているなら、失敗してもなんとかなります。迷いがあるならぜひ挑戦してみて欲しいです。
その際、まずは「自分の特徴」を知ることから始めてみてください。コミュニケーションが武器になるのか、それとも圧倒的な専門性で勝負するのか。自分の幹となるスタイルを意識しておくだけで、戦略を立てる第一歩になります。
取材協力:ホームスチール税理士事務所
代表 中村 圭吾 様
