「地方×クラウド」で“選ばれる”存在へ。地方開業から軌道に乗せた、自然体の事務所経営術

「地方で独立して、本当にお客さんは集まるのか」。そんな不安を抱えながら一歩を踏み出せない若手税理士の方も少なくありません。
今回お話を伺ったのは、広島県庁から税理士法人を経て独立された、三宅一之税理士事務所の三宅一之氏です。2023年10月の開業当初は「コネなし・顧客ゼロ」からのスタート。しかし、「地方×クラウド会計」という強みを活かした戦略で、わずか半年で「やっていける」という確信を掴んだと言います。
「税理士という仕事は、実は非常に成功しやすいビジネス」と語る三宅先生に、地方開業における集客のコツや、自分らしいライフスタイルを守るための働き方について、等身大の言葉で語っていただきました。

目次

1. 広島県庁から税理士法人を経て独立開業へ。「頑張らざるを得ない環境」を求めた原点

三宅先生は広島県庁のご出身という、少し珍しいキャリアをお持ちですね。安定した公務員という立場から、なぜあえて独立を前提に税理士を目指されたのでしょうか?

キャリアをスタートした広島県庁では、予算や人事の仕事に関わり、非常に充実していました。職場の方々も優秀で環境には恵まれていましたが、良くも悪くも年功序列の世界。「大きなミスさえしなければ給与は上がり、定年まで安泰」という未来が見えていました。

しかし、20代半ばだった当時の自分は、その「安定」が逆に怖くなったんです。このままの環境にいたら、10年後、20年後の自分は頑張りきれない、情熱のない人間になってしまうのではないか。そう思ったら、急に焦りが込み上げてきました。

私は、自分を追い込まないとスイッチが入らないタイプ。だから「人生をより良くするためには、頑張らざるを得ない環境に身を置こう」と決意しました。自分がなんとかしないといけない、という厳しさが、今の自分には必要だと思ったんです。

その後、税理士法人での実務経験を経て、登録と同時に独立されました。実務への不安や、組織を離れることへの抵抗はありましたか?

県庁を辞めて税理士法人に転職したときは、まだ一科目も合格していない状態でした。ただ、県庁という大きな組織を辞めるという決断を一度経験していたので、新しい環境に飛び込むことへの心理的ハードルは、少し低くなっていたのかもしれません。

公認会計士や税理士の方が独立を考える際、よく「実務経験が足りない」と悩まれますよね。私もそうでしたが、正直やってみないとわからない。ネットで調べたり、先輩に聞いたりしながらも、まずはやってみて、徐々に軌道にのせていくしか無いのでは無いかと思います。

2. 顧客ゼロからのスタート。「営業マン」として動いた半年間

2023年10月に開業された際、最初のお客様はどのように獲得されたのでしょうか?

本当にゼロからのスタートでした。紹介してくれる知人もいなかったので、戦略的に税理士紹介システムを徹底的に活用しました。

当時は広島県内の案件だけを待っていては仕事を獲得することもできなかったため、エリアを限定せず、沖縄から東京まで、全国の案件に片っ端から応募していました。今、自分のホームページに「南はニュージーランドまで」と書いているのですが、これは前職からのご縁で海外に移住された方を担当していたからで、物理的な距離は関係ないという姿勢を打ち出したかった部分もあります。

営業経験がない中でのアプローチは大変だったのではないですか?

当時は「自分は税理士ではなく営業マンだ」と思っていましたね。特にこれといったアピールポイントもなかったため、とにかく「誰よりも早くアプローチすること」を徹底しました。

システムから通知が来たら、すぐに電話する。一番に接点を持ってコミュニケーションを取れれば、そこで信頼関係の第一歩が築けます。結果として、他と比較される前に「三宅さんにお願いします」と言っていただけるケースが多くありました。

順調な滑り出しに見えますが、精神的なプレッシャーはありましたか?

営業には慣れていなく苦労していた部分もあります。個人事業主の方は不規則な生活リズムの方も多く、深夜の2時や3時に通知が届くこともありました。そういったこともあったので、当時は「失注する夢」を何度も見ていたんです。ようやく決まりかけた契約が白紙になる夢を見て、深夜に目を覚ましてはメールを確認する……。自分自身では精神的なプレッシャーを感じているつもりはありませんでしたが、実は心理的な負荷はかなり大きかったのかもしれません(笑)

でも、その時期を乗り越えて半年ほど経った頃、売上予測が立ってきたことで、ようやく「あ、これでやっていけるな」と心から思えるようになりました。

3. 「地方×クラウド」というブルーオーシャン。ITを武器に選ばれる理由を作る

現在、お客様の半数以上が広島県内の方だと伺いました。オンライン中心から、地域密着へシフトされたのですか?

意図的にシフトしたというより、自然にそうなっていきました。全国対応を経験して分かったのは、地方において「クラウド会計に精通した若手税理士」がいかに稀少かということです。

私は、ホームページの力は全くないのですが、「広島×税理士」だと結構上に出てくるんですね。これは、クラウド会計のベンダーのページで掲載されていることが大きかったようです。「地元の税理士がいいけれど、クラウドもしっかり使いたい」というニーズは、地方には確実に存在しており、そこで見つけていただきやすかったのだと思います。

若さやITスキルが、そのまま差別化になっているのですね。

そうですね。東京のような激戦区では当たり前のスキルかもしれませんが、地方ならそれだけで「選ばれる理由」になります。私は現在、お客様のITリテラシーに合わせて連絡ツールを使い分けています。基本はメールやチャットワークですが、一社だけ「Microsoft Teams」を希望される先があるので、そのために毎朝ログインして確認しています。

お客様の使い慣れたツールにこちらが合わせる。そういった柔軟な姿勢も、喜んでいただけているようです。ただ社内の効率化のために、ツールを増やしすぎて負担にならないよう、ちょうどいいバランスを考えている最中です。

4. 少数精鋭の組織運営。スタッフの「得意」を活かし、実務を仕組み化する

現在は2名のスタッフを雇用されています。拡大路線は考えていらっしゃいますか?

闇雲に拡大したいという強い思いはありません。今は経験豊富なスタッフにも恵まれ、私一人では手が回らなかった申告書の下書きや実務を任せられるようになり、精神的にも余裕が出てきました。

スタッフを採用して一番嬉しかったのは、単純に自分が楽になることではなく、「この仕事なら、あのスタッフに任せられる」と判断できるようになったことです。

代表としての役割も変わってきましたか?

はい。以前はすべてを自分で抱え込んでいましたが、今は実務の多くを信頼できるスタッフに任せ、自分は最終チェックとお客様とのコミュニケーションに専念できています。最近は、スタッフにとっても「これなら自分でもできる」という成功体験を積んでもらえるような業務の振り方を意識しています。ルーチン業務は正確にこなす仕組みを作ることで、事務所全体のクオリティの安定を目指しています。

5. 「オンライン×自由」がもたらした、自分らしいライフスタイル

オンライン面談を主軸にしたことで、ライフスタイルにはどのような変化がありましたか?

とにかく「時間の裁量」が持てるようになったことが大きいです。全てのお客様のもとへ訪問していたら、移動だけで半日潰れてしまいます。慣れない道を運転して車をぶつけ、心までへこむこともありましたし(笑)。

今は、スタッフが休みの日は自宅で仕事をしており、好きな時間に休憩を取ることもできます。自分の体調やリズムに合わせて働く場所や時間を選べるという自由は増えましたね。

その自由は、仕事への責任感と表裏一体ですよね。

おっしゃる通りです。自由だからこそ、自分の決断がすべて売上やスタッフの生活に直結します。でも、その適度な緊張感があるからこそ、県庁時代に恐れていた「頑張りきれない自分」にならずに済んでいる。今の自分にとっては、非常に心地よいバランスです。

6. 独立を迷うあなたへ。「失敗しても、何度でもリスタートできる」という勇気

独立を検討している若手の会計士・税理士の中には、あと一歩が出ない方も多いです。

私が開業して間もない頃、悩んで参加した税理士会の集まりで、60~70代の開業税理士の先輩にアドバイスを求めたところ「三宅くん、若いから大丈夫だよ」と言われたことがありました。その時は正直「なんて無責任な……」と思いましたが(笑)、今ならその言葉の真意がわかります。特に地方の税理士業界では「若い」というただそれだけで十分な武器になります。

また税理士という資格があれば、もし独立に失敗したとしても、求人はいくらでもあります。所属税理士として戻ることも、社員税理士として誰かと一緒にやることもできる。最初から強力なセーフティネットを持って挑戦していることになります。

独立は、それほど「怖いこと」ではないと。

はい。私の妻も税理士なのですが、独立していて不幸そうな税理士はあまり見たことがないねという話をしたことがあります(笑)。

税理士業務は、初期投資もそこまでかからず、一度顧問契約を結んでいただいたらストック収入になる、「成功しやすいビジネスモデル」だと言えます。もし少しでも「独立したい」という気持ちがあるのなら、ぜひ挑戦してもらいたいなと思います。

取材協力:三宅一之税理士事務所
代表 三宅 一之 様

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