監査法人出身の公認会計士が、税務未経験の壁を突破し、開業1年で急成長できた理由とは?

公認会計士が独立・開業を検討する際、様々な不安やお悩みがあると思います。
「監査の経験しかない自分に、個人の確定申告や中小企業の税務顧問が務まるのか?」
「間違った申告をしてしまったらどうしよう」
「最初に顧問先を獲得する時にすべきことってなんだろう?」
そんな不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本日は、その壁を「仕組み化」と「IT活用」によって突破し、開業からわずか1年足らずでスタッフ7名体制へと急成長を遂げたSoNiC会計事務所様に、具体的な実務習得のプロセスと事務所経営の戦略について、余すことなく語っていただきました。

目次

1. 監査法人から渡豪を経て独立開業へ「人生は実験」を掲げた独立の原点

まず初めに、出水先生のこれまでのご経歴について教えていただけますか?

出水 祐介 様(以下、出水):
キャリアのスタートは有限責任監査法人トーマツです。そこで3年半ほど、主に上場企業の監査業務に従事していました。

仕事自体は充実していましたが、それ以上に個人的な想いとして「英語を話せるようになりたい」「海外で働きたい」という気持ちが日に日に強くなっていきました。社内制度を使って駐在を目指す道もありましたが、順番待ちの時間がもどかしく、「自分の人生なんだから、自分で掴みに行こう」と決意し、退職してワーキングホリデービザでオーストラリアへ渡りました。

監査法人を辞めてワーキングホリデーというのは、かなり思い切った決断ですね。

出水:
そうですね。現地では語学学校に通った後、羊の工場やBARで働くなど、会計とは全く無縁の生活を送っていました。

でも、そこで組織に属さずに自分の力で生活を切り開く経験をしたことで、「自由」であることの重要性に気づいたんです。誰かに雇用されるのではなく、自分の足で立ち、自由に生きる。「人生は実験だ」と思えば、どんな挑戦も怖くないと思えるようになりました。

帰国後、様々な選択肢がある中で「独立」を選ばれたのはなぜですか?

出水:
帰国後は独立しながら一度コンサルティング会社で働きましたが、「やはり自分でやるしかない」という想いが消えませんでした。

最初は「自分一人が食べていければいい」くらいの感覚でしたが、ありがたいことにお客様が増え、一人では手が回らなくなってきました。そこで人を採用し始め、気づけば開業から1年弱で7名体制にまで拡大していました。

2. 「税務未経験」からの立ち上げと、実務の習得について

公認会計士として独立する場合、税務ではなく「コンサルティング」で勝負する道もあったかと思います。なぜあえて未経験の「税務」をサービスに加えようとされたのですか?

出水:
まず第一に、「クライアントとの接点を持つための『入り口』として最適だったから」です。税務をきっかけにお客様と伴走していき、お客様に適したサポートをどんどん広げていくイメージを持っていました。

そしてもう一つ、正直にお話しすると、オーストラリアから帰国直後の私には「コンサルティング」だけで食べていくだけの実績や看板もありませんでした。「何ができるんですか?」と問われた時に、実績のないコンサルタントにお金を払う経営者はいません。

しかし、「税務」であれば、個人事業主や小規模法人にとって必ず発生するニーズであり、入り口として非常にアプローチしやすいのです。まずは「税務」という入り口から信頼を獲得し、そこから融資や補助金のサポート、財務コンサルティング領域へ広げていく。これが、実績ゼロからスタートする私にとって最も現実的かつ戦略的な選択でした。

とはいえ、監査と税務は別物です。実務の壁をどのように乗り越えられたのでしょうか?

出水:
基本的な部分は本を読み進めていました。その際に、自分のクライアント様が該当しそうな論点を集中的に習得するという手法をとっておりました。

やはり、網羅的にインプットしようとすると忘れていってしまうので、実務で該当しそうな箇所からの吸収することを心がけました。また、先輩税理士にも相談できる機会があったことはとても貴重でした。より実務で細かい壁が出てきた際には、本にもYoutubeにも載っていないような情報を取得できる機会として相談をしておりました。

不安はありましたが、「走りながら型を作る」というスタンスで乗り越えました。公認会計士試験や修了考査で税務の基礎知識はあるものの、実務は未経験でした。そこで私は、「全てを完璧に覚えて始める」のではなく、「直面した課題をその場で解決しながら、自分の血肉にする」というプロセスを徹底しました。

  • 1. ピンポイントでの学習: 網羅的に勉強するのではなく、実務でぶつかった論点を中心に、専門書や国税庁のサイトで徹底的に調べることでインプットの速度を上げる。
  • 2. 先輩の知見を借りる: 教科書に載っていない「実際に現場で発生する疑問」については、税理士会の先輩や知人の税理士に電話をして直接教えを乞う。

その中でも特に効果的だった工夫はありますか?

出水:
「知識の資産化(マニュアル化)」を徹底したことです。初めて直面する業務は、調べる時間もかかるので工数が二倍かかってしまいます。しかし、そこで得た知見を自分だけのものにせず、すぐにマニュアルに落とし込むことで中長期で活きてきていると今実感しています。

実務の中で、監査法人での経験や公認会計士としてのスキルが活きたと感じる瞬間はありますか?

出水:
監査業務をおこなっていたころは、若かったにも関わらず大企業の代表と打ち合わせをする機会がありました。その際に、議事録などを見ながら大企業へのビジネスの理解やそれがどのように決算書に表れるのかを考える機会を得たことは今でも大きな財産として活用できております。

大企業の監査経験から、お客様がスタートアップの企業様へ変化していったとしても根本となる経営の基礎はあまり変わらないと考えています。だからこそ、今でも経営に関する本を読むなどといったインプットも欠かさずおこなっています。

3. 交流会での集客を中心に3ヶ月で30件の顧問先獲得を達成

そもそも開業当初、事務所としてどのようなサービスや強みを売りにしようと考えていたのですか?

出水:
当初からターゲットは明確で、「スタートアップ・ベンチャー企業」に特化しようと決めていました。私自身が独立したばかりのチャレンジャーであり、変化の激しい環境を好む気質が、顧問先との波長が合うと考えたからです。

そこで掲げた最大の売りが、事務所名『SoNiC』の由来でもある「レスポンスの早さ」です。成長スピードの速いスタートアップ経営者にとって、相談に対する回答が数日後になるのは致命的です。だからこそ、「即レスする」というスピード感をサービスの中核に据えました。

複雑な質問に対してすぐに回答することは難しいと思いますが、後ほど〜までに返信する旨を伝えるだけであっても、顧問先とのコミュニケーションを維持するために重要であると捉えています。

開業当初、顧客ゼロの状態からどのように最初のクライアント獲得されたのですか?

出水:
最初はとにかく「足で稼ぐ」しかありません。異業種交流会や名刺交換会といったリアルな場に積極的に参加し、そこで出会った経営者の方々に名刺を配りまくりました。交流会では、交流会を開催している方にも出会うことができるので、フットワークの軽さを活かして週に6回近く参加するようにいたしました。

その後、知り合いが増えたタイミングで紹介を増やすことができたことも大きく、本格的な集客を開始して3ヶ月で30件獲得することができました。イベント等を通じて認知を広げたことが活きてきたと感じています。

Webサイトも一応作りましたが、あくまで名刺代わりの信頼担保用です。ノーコードツールを使って自分で作った簡易的なものでしたが、初期段階ではそれで十分でした。

強みでもある「スピード」へのこだわりの根底には、どのようなミッションがあるのでしょうか?

出水:
私の事務所のミッションは「事業を絶対に潰させない」ことです。

会計士・税理士は、単なる記帳代行屋さんではありません。経営者の孤独に寄り添い、共に走り、最悪の事態を防ぐセーフティネットでなければならない。だからこそ、お客様の不安や疑問に対して即座に反応し、安心を届けることを何よりも大切にしているんです。

4. 今後の展望と、独立を目指す方へのメッセージ

開業から1年で急成長されていますが、今後はどのような事務所を目指されていますか?

出水:
今後はさらに「組織化」を突き詰めていきたいと考えています。

マニュアル経営を徹底し、私がいなくても事務所が高品質なサービスを提供し続けられる仕組みを作ることが目標です。属人性を排除し、組織としてお客様をサポートできる体制を整えることで、より多くの企業の成長を支援していきたいと考えています。

最後に、これから独立を目指す公認会計士の方へメッセージをお願いします。

出水:
伝えたいことは2つあります。

まず、「失敗してもなんとかなる」という感覚は大事だと思います。会計士の資格を持っているからこそ、監査法人に戻ることもできます。チャレンジはしやすい環境ですし、そういった感覚を持った上で自分で決断すると良いのではないかと思います。

また、独立する場合は常にアンテナを貼って動くことをおすすめします。独立を全く考えてない人が3年間監査法人で働くのと、これから独立しようとずっと思いながら3年間働くのとでは、3年後の景色が全然違うと思います。それを意識するのは非常に大事なことだと思います。

取材協力:SoNiC 会計事務所
代表 公認会計士・税理士 出水 祐介 様
有限責任監査法人トーマツを経て、オーストラリアへ渡豪。帰国後、顧客ゼロ・税務未経験ながら独立開業。「音速のレスポンス」と「IT効率化」を武器に、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に支持を集める。現在は税務顧問を中心に、会計および税務に関する専門的なアドバイスを提供している。

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【監修】事務所開業の学校 編集担当

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