税理士試験に合格し、実務経験を積む中で「いつかは自分の事務所を持ちたい」と考える方は多いでしょう。しかし、税理士として独立をするということは、一人の「経営者」になることを意味します。
成功している開業税理士には、どのような共通点があるのでしょうか。本記事では、独立に向いている人の特徴と、これからの時代に求められる新しい適性、そして今から始めておくべき準備について解説します。
目次
税理士で独立に向いている人の4つの特徴
独立して軌道に乗る税理士には、専門知識の深さ以外にも共通したマインドセットがあります。まずは、「独立に向いている人」の4つの特徴を見ていきましょう。
コミュニケーション能力が高く、「聞く力」がある人
税理士に最も求められるのは「聞く力(ヒアリング能力)」です。
「コミュニケーション能力」というと、流暢に話すスキルを想像しがちですが、顧客の言葉の端々から本質的な課題や不安を引き出す、ヒアリング聞く力が特に重要になります。
特に、資金繰りや従業員の問題などの悩みを抱えがちな経営者との対話から、共感しながら解決策を提示できる人は、顧問先から絶大な信頼を得ることができます。
決断力・行動力がある人(自己責任で動ける)
組織に属していれば、最終的な責任は上司や会社が負ってくれる場合が多いですが、独立すればすべての責任は自分にあります。
正解のない問題に対して、「これで行こう」と決断し、即座に行動に移せるかどうかが重要です。指示待ちではなく、自ら課題を見つけ、失敗を恐れずに仮説検証を繰り返せるマインドを持つ人は、変化の激しい経営環境でも生き残ることができます。
営業やマーケティング活動に抵抗がない人
どれほど優秀な税理士でも、顧客がいなければ事務所は成り立ちません。「税理士=先生」として、事務所に座って待っていれば仕事が来るという姿勢では、独立後の顧客獲得が難しいでしょう。
独立に向いている人は、自分自身を商品と捉え、売り込むことに抵抗がありません。「誰に、どのような価値を提供できるか」を明確にし、交流会への参加やWeb発信など、日々の営業活動を継続できる人が成功をつかみます。
知的好奇心が強く、勉強し続けられる人
税制は毎年改正されますが、学ぶべきは税務だけではありません。顧問先の業界動向、最新の補助金情報、労務管理、そして後述するIT知識など、経営者をサポートするための知識は多岐にわたります。
「勉強は試験で終わり」ではなく、知的好奇心を持って新しい知識を吸収し続けられる人は、常に付加価値の高いサービスを提供し続けることができます。
これからの時代に求められる「新しい適性」とは?
従来の資質に加え、AIやクラウド技術が進化する現代においては、新たな「適性」が求められています。
「正確な記帳と申告」が最大の価値だった時代は、テクノロジーの進化によって変わりつつあります。これからの税理士に求められるのは、AIやクラウドが代替できない領域で価値を発揮する力です。
ツールが進化しても、それを使いこなし、顧客の利益に変えるのは「人」です。ここでは、AIやクラウド技術が進化する現代において求められる、新たな適性について解説します。
ITリテラシーが高く、新しいツールを柔軟に取り入れられる人
今や税理士業務においてIT活用は避けて通れません。クラウド会計ソフトはもちろん、チャットツールやWeb会議システムを使いこなし、顧問先とスムーズに連携できる能力が必須です。
「ITは苦手だから」と避けるのではなく、新しいツールが出たらまずは触ってみる柔軟性がある人は、業務スピードが格段に上がり、顧問先(特に若手起業家)からの支持も集めやすくなります。
業務効率化(仕組み化)への意識が高い人
一人、あるいは少人数で事務所を回す場合、時間は最も貴重なリソースです。 「自分が頑張ればなんとかなる」という根性論ではなく、「どうすればこの作業をなくせるか」「どうすれば自動化できるか」を常に考えられる経営者視点が重要です。
API連携による明細の自動取得や、定型業務のマニュアル化など、業務フローを「仕組み化」できる人は、自身の時間を高付加価値業務に充てることができ、収益性を高められます。
コンサルティング・提案業務へシフトできる人
AIやクラウドの普及により、これからの時代に求められるのは、作成された数字をもとに「未来の話」ができる税理士です。 「なぜ利益が出ているのか」「資金繰りを改善するにはどうすべきか」といった経営助言や、MAS(経営支援)業務にも強みが持てる人は、AI時代でも代替されないパートナーとして重宝されるでしょう。
独立に向いているか不安な人が、今からすべき準備
「自分にできるだろうか」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、適性は準備と訓練で補うことができます。独立を見据えて、今からできる準備を始めましょう。
なお、以下の記事では税理士の独立準備をステップごとに詳しく解説しています。事例や必要な資金まで網羅したガイドとなっているので、ぜひ参考にしてください。
資金計画と事業計画の策定
まずは、開業資金と当面の運転資金をシビアに見積もりましょう。事務所の家賃、システム導入費、広告宣伝費など、具体的に数字に落とし込むことで、「いつまでにいくら必要か」が明確になります。
また、「どのような事務所にしたいか(ターゲット顧客、提供サービス、価格設定)」という事業計画を練ることは、自分の強みを再確認する作業でもあります。
人脈作りと自分の「強み(専門性)」の明確化
独立直後の顧客獲得ルートとして、知人や元同僚からの紹介は非常に強力です。今のうちから社外の勉強会に参加したり、他士業との繋がりを作ったりしておきましょう。
同時に、「飲食業に強い」「相続専門」「IT導入支援が得意」など、自分のタグ(強み)を明確にしておくことで、紹介を受けやすくなります。
効率的な業務フローの構築(クラウドシステムの選定)
開業当初から、クラウドシステムを前提とした業務フローを構築することをおすすめします。
例えば、「マネーフォワード クラウド」のようなシステムを導入すれば、銀行口座やクレジットカードとのデータ連携により、記帳入力の手間を大幅に削減できます。最初から効率的なフローを組んでおくことで、少人数でも多くの顧問先に対応でき、開業初期から高収益な体質の事務所を作ることが可能です。
まとめ
税理士として独立し成功するためには、コミュニケーション能力や行動力といったマインドに加え、IT活用や効率化への高い意識が不可欠です。
特に、開業時のシステム選定は、その後の事務所経営を左右する重要な決断です。まずはクラウド会計ソフトに触れ、未来の事務所の姿をイメージすることから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
税理士として独立に向いている人の特徴は何ですか?
主に次の特徴が挙げられています。「聞く力」がある人: 流暢に話すことよりも、顧客の悩みや本質的な課題を引き出すヒアリング能力が重要です。決断力・行動力がある人: 正解のない問題に対し、自己責任で決断し、即座に行動に移せる姿勢が求められます。営業・マーケティングに抵抗がない人: 「先生」として待つのではなく、自分を商品と捉えて積極的に売り込める人が成功します。知的好奇心が強く、勉強し続けられる人: 税務だけでなく、業界動向やIT知識など、経営者を支えるための知識を常にアップデートできる人です。
ITや新しいツールが苦手なのですが、問題ありませんか?
今後の税理士業務において、IT活用は避けて通れません。 「苦手だから」と避けるのではなく、新しいツール(クラウド会計ソフト、チャットツール等)をまずは触ってみる柔軟性を持つことが重要です。ITリテラシーを高めることで業務スピードが上がり、若手起業家などからの支持も得やすくなります。
独立したいけれど不安です。今からできる準備はありますか?
はい、適性は準備と訓練で補うことができます。まずは以下の3点から始めてみましょう。資金・事業計画の策定: 開業資金や運転資金をシビアに見積もり、ターゲットやサービス内容を明確にする。人脈作りと強みの明確化: 勉強会への参加や、「飲食業に強い」「IT支援が得意」などの自分の強み(タグ)を作る。効率的な業務フローの構築: 開業当初からクラウドシステム(「マネーフォワード クラウド」など)を導入し、効率的な仕組みを考えておく。
開業時のシステム選びで気をつけることはありますか?
最初から「クラウドシステム」(「マネーフォワード クラウド」など)を前提とした業務フローを組むことをおすすめします。 銀行口座やクレジットカードとのデータ連携を活用することで、記帳入力の手間を大幅に削減できます。少人数でも多くの顧問先に対応できる、高収益な事務所体質を作ることが成功への鍵となります。
