定款の基礎知識

定款とは、会社を設立する上で必ず作成しなければならない書類です。定款は利害関係者による紛争をあらかじめ予防する効力を持つことから、記載事項などが厳格に定められています。そのような法的効力を持つ定款とは、一体どのような根拠をもとに作成されているのでしょうか?

今回は、定款を作成する予定の方に向けて、定款とは何かという説明から、定款作成のポイントや作成例についてまとめました。

定款とは

定款とは会社組織を成立させるための規約をまとめた書類です。会社で勤務する従業員は、就業規則にしたがって仕事を行ないます。就業規則では勤務体系や残業時間に関する「労働時間」や「服務規程」、「休暇制度」といったさまざまな規則が定められています。

従業員が就業規則にしたがい仕事を行なうことと同様に、会社という組織そのものは「定款」にしたがって運営されます。
つまり、定款とは会社組織を編成するためのルールをまとめた文書であり、定款がなければ会社という組織を作ることができないとも言えます。そのため、定款は会社を設立するために必要な書類となるのです。

このように会社という組織を作るうえで必要となる定款ですが、作成しただけでは法的な効力がありません。定款が法的な効力を発生させるためには公証人による「認証」を受ける必要があります。公証人による認証を受けた定款は、会社設立前だけでなく設立後も、適法か違法かを判断する指針として会社組織を統括する規則となります。

定款は公証人による認証を受けないと法的な効力が発生しないため、公証人による認証を受けていない定款を以て会社設立した場合は設立無効となり、株主などから無効原因として提訴される恐れがあります。

会社設立までの流れ

定款作成・認証の流れ

定款に関する法的根拠まとめ

定款の作成に関する法的根拠は、会社法によって定められています。「定款とは何か」「定款とはどのように作成されるべきなのか」「定款とは誰をどのように拘束するのか」といった疑問はすべて、会社法で解決することができます。

定款に関する会社法条文

会社法定められている内容
第26条定款の作成者
第27条定款への「絶対的記載事項」
第28条定款への「相対的記載事項」
第29条定款への「任意的記載事項」
第30条定款の認証
第31条定款の保存方法

会社法の第26条から第31条までが「定款の作成」としてまとめられていますが、第295条のように第26条から第31条以外でも定款に触れている箇所があります。

定款作成の目的と具体的な記載事項

定款を作成することによって会社を設立するという目的を果たす以外に、定款作成にはどのような役割や目的があるか、また具体的にはどのような事項を定款へ記載する必要があるのかを解説します。

定款作成の目的は、会社設立のための事前準備

定款を作成することは、会社を設立するための事前準備であると考えることができます。会社を設立することには、以下2つの側面があります。

・会社という実体を形成する
・法人という人格を与える

会社という実体を形成するためには、出資金(資本金)を確定し会社財産を形成したり、経営の意思決定を行なう取締役会などの機関を設計したりすることが挙げられます。出資額や機関設計を書面に記録したものが定款となり、定款を作成することによって会社の根幹を形成する規則をまとめることとなります。

定款を作成したあとは、公証人による認証が必要となります。定款を作成しただけでは法的な効力が伴わないため、株主や第三者から提訴されたとしても対抗することができません。公証人によって認証された定款があることによって、対抗手段としての法的根拠を主張することが可能となります。

さらに公証人によって認証された定款を以て法人登記することで、法人格が与えられることになり、会社が設立することになります。

定款作成のための具体的な記載事項

このように、定款が本来の目的を果たすためには、定款へ記載する事項が重要な意味を持つようになります。

定款へ記載する事項は、以下の3つに大別されています。

・絶対的記載事項
・相対的記載事項
・任意的記載事項

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。定款の絶対的記載事項が欠けていたり、絶対的記載事項に違法性があったりすると、定款全体の効力が無効となります。絶対的記載事項は以下の5項目です。

・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所

1.目的
事業活動を行なう主旨を確立するために記載するものです。目的物が存在する場合は製造や販売、輸入などで表現しますが、目的物が存在しない「サービス」が事業活動となる場合は、「役務の提供」と表現します。

2.商号
会社名を指します。英文表示でローマ字(A~Z、a~z)を使用する必要がある場合は、あらかじめ記載するようにします。
会社設立後にローマ字の会社名を追記することも可能ですが、商号変更登記の申請が必要になるだけでなく、登録免許税として本店所在地1件につき3万円が必要になります。

また、必ず「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」という文字を使用しなければなりません。「有限会社」は会社法が改正される以前に認められていた文字であり、会社法が改正された現在は、上記4種類の会社設立のみが認められています。

3.本店の所在地
厳密に地番まで記載することもできますが、同一区域内で移転する可能性を考慮し、東京都〇〇区といった最小行政区域までの記載にすることも可能です。

4.設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
会社設立後の資本金に相当するものであり、会社法第34条によって出資履行が義務付けられています。

5.発起人の氏名又は名称及び住所
会社法第26条で定めた発起人に関する氏名や住所を記載する旨が定められています。設立登記する際に本人確認書類として住民票や運転免許証の添付が必要となりますが、定款に記載された発起人の住所と本人確認書類の住所が一致している必要があります。

絶対的記載事項の定款への具体的な記載事例

絶対的記載事項記載事例
目的当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
(1)xxの製造及び販売
(2)yyの輸入及び販売
(3)前各号に附帯する又は関連する一切の事業
商号当会社は、〇〇株式会社と称する。
本店の所在地当会社は、本店を東京都〇〇区に置く。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金〇〇万円とする。
当会社の成立後の資本金の額は、金〇〇万円とする。
発起人の氏名又は名称および住所発起人の氏名、住所及び設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引き換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
東京都〇〇区〇〇1-2-3
発起人 〇〇〇〇 〇〇株 金〇〇万円

相対的記載事項

相対的記載事項とは定款に記載することによって効力を生じさせる事項をいいます。相対的記載事項の記載がなくても定款そのものの効力は有効となりますが、相対的記載事項を定款に記載しないと法的効力が認められないことになります。

会社法の中で「定款により別段の定めをすることができる」と定められているものは相対的記載事項であると解釈されていますが、相対的記載事項のなかでも「変態設立事項」と呼ばれる4項目は、会社法第28条によって明確に定められています。

・現物出資
・財産引受け
・発起人の報酬・特別利益
・設立費用

現物出資は金銭以外の手段によって出資する方法であるため、現物出資した資産の価値が正しく評価されていないと、他の株主とのあいだで不平等な問題が発生することになります。
そのため現物出資できる株主は発起人に限定されている点と、現物出資された資産を正しく評価するための検査役による調査が必要となる点で注意が必要です。

財産引受は、会社成立後に譲渡される予定の資産に関する契約をいいます。
譲渡される資産を固定資産として計上する場合は、無償で譲渡されたとしても時価金額を受贈益として仕訳を起こす必要があります。
ちなみに譲り渡した法人は、寄附金として仕訳を起こすことになります。

相対的記載事項(変態設立事項)の定款への具体的な記載事例

変態設立事項記載事例
現物出資当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額及びこれに対して割り当てる株式の数は、次のとおりである。
(1)出資者 発起人 〇〇〇〇
(2)出資財産及びその価額
パーソナルコンピューター(○○株式会社平成〇〇年製、xx-xxxx、製造番号○○○)1台 金20万円
(3)割り当てる株式の数 20株
財産引受け発起人〇〇〇〇は、株式会社×××との間で、当会社の成立を条件として、次の財産を譲り受ける契約を締結した。
(1)目的財産及びその価額
東京都〇〇区〇〇3-2-1に所持する土地
(2)譲渡人の氏名 株式会社×××
発起人の報酬・特別利益発起人〇〇〇〇に対する報酬は金××万円とする
設立費用当会社の設立費用は、会社がこれを負担する。

変態設立事項以外の相対的記載事項には、

・異なる種類の株式を発行する旨の定款の定め(会社法第108条)
・株券を発行する旨の定款の定め(会社法第214条)
・累積投票による取締役の選任(会社法第342条)

などが挙げられます。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、定款に記載しなくても効力は生じますが、定款に記載することによって規定内容を明確にする効果を期待できる事項をいいます。

任意的記載事項を定款に記載することによって明確性が確保されることになりますが、記載事項に関して変更するために定款変更手続き(株主総会の特別決議)が必要になります。

任意的記載事項は会社法第29条によって記載できる旨が定められています。

会社法第29条
第二十七条各号(絶対的記載事項)及び前条各号に掲げる事項(相対的記載事項)のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。

任意的記載事項の定款への具体的な記載事例

任意的記載事項記載事例
公告の方法当会社の広告は電子公告により行なう。
定時株主総会の開催時期当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に招集する。
取締役会の招集権者取締役会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役社長が招集し、議長となる。

発起人についての注意点

「現物出資」に関して、設立時に現物出資できる者は、発起人だけとなる点で注意が必要です(会社法第33条、34条、63条)。現物出資とは、金銭以外の資産を出資金として充てることであり、具体的な資産として不動産や有価証券、自動車などがあります。

たとえば発起人が500万円相当の資産を現物出資し、1株10万円の株式が50株割り当てられた場合、実際の価値は250万円程度しかなかったとしたら、他の出資者よりも5万円安い価額で株式が割り当てられたことになります。

そのため、現物出資や財産引き受けなどに関して検査役の調査が必要となるだけでなく、出資された財産の不足額を支払う義務が発起人に課せられます(会社法第52条)。

発起人になるための資格はなく、欠格事由もないため、外国人や外国法人が発起人になることも認められています

また、会社設立には「発起設立」と「募集設立」の2種類ありますが、どちらの設立方法を選択したとしても、発起人は会社設立時の発行株式を最低でも1株以上引き受けなければなりません(会社法第25条)。そのため、発起人が1株も引き受けなかった場合は会社設立無効の原因となるため、提訴される恐れがあります。

実際に会社設立を企画していない人であったとしても発起人として署名して定款を作成した場合は、発起人としての責任を負うことになります。

発起人としての責任には上記で述べた「設立時株式の1株以上の引き受け」以外にも、以下の内容が挙げられます。

・定款の作成責任
・創立総会の開催責任(募集設立の場合)
・会社不成立時における費用負担責任
・出資財産価額が不足した場合の財産価額填補責任
・設立における任務を怠った場合の損害賠償責任

定款認証における2つのポイント

作成した定款に法的な効力を与えるためには、公証人による認証を受ける必要があります。作成した定款に認証を与えることを「定款認証」といいます。ここでは定款認証について知っておきたい「定款認証はどこで受けることができるのか」「定款作成に関する公的な相談機関」という2つのポイントを説明します。

定款認証を行なう機関とは

定款認証は、「公証役場」で受けることができます。公証役場は全国に約300箇所の拠点があり、公証役場では法務局や地方法務局に所属する約500名の「公証人」が公証事務を行なっています。

公証人のほとんどは裁判官や弁護士、検察官といった経歴を持っており、法律に精通している者しかなることができません。
公証人になる前のキャリアがそのままに物語っているように、公証人はさまざまな紛争を法廷内外から携わってきたという豊富な経験があります。発生してしまった紛争を事後的に解決してきた実務経験があるからこそ、あらかじめ法的なリスクを発生させない予防司法としての公証事務を行なうことができるのです。

「定款認証」は公証事務のなかの1つであり、公証人は定款認証だけでなく土地や建物に関する賃貸借契約や遺言公正証書といった、さまざまな公正証書を作成しています。

定款認証を受けるということは、提訴された場合において法的な根拠を以て主張する手段となるため、結果として紛争を抑止する効果を発生させることができます

公証役場で公証事務を行なう公証人は、法務大臣から指定された管轄区域を担当することになっており、自分の所属する法務局外の業務には関与することができません。そのため、定款に記載された本店所在地によって、定款認証する公証役場が異なる点で注意が必要です。

たとえばA市に本店を構えるつもりで定款認証を受けたあと、創立総会において法人税が優遇されているB市に本店を構えることが決定した場合、既に定款認証を終えているとしても、A市で認証された定款で法人登記をすることができません。そのため本店所在地をB市とした定款を新たに作成し、再度公証人による定款認証を受ける必要が出てくることになります。

定款作成における公的な相談機関とは

定款を作成するだけであれば、テンプレ―トや記載例を元に誰でも簡単に作成することができます。しかし定款が持つ法的な効力を意図するのであれば、記載しておくべき事項に関して熟考すべきものであると考えることができます。

定款に記載する事項について相談したいときに利用できるのが、定款認証を行なう公証役場です。公証役場では定款認証を行なうだけでなく、定款を作成するための相談機関としても活用することができます。

定款認証や定款作成に関する相談やアドバイスまでが公証役場の範囲となり、登記に関しては法務局が管轄となります。定款認証は公証役場、登記申請は法務局が所管事務となるため、間違えないようにしましょう。

公的な相談機関はあくまで一般的なアドバイスに留まることが多く、個別具体的なアドバイスや改善案の指摘を受けたい場合は専門家である行政書士に相談すると、スムーズに開業することが可能です。

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電子定款による認証

従来の紙の文書に代えて、データ形式による電子定款でも届け出ることができます。しかし、どのようなデータ形式でもよいわけではなく、電子定款の作成や認証の方法は細かく定められています。手続きは専門家に依頼するのが一般的ですが、自分で手続きする場合は、事前にその方法をよく理解しておかなければなりません。

電子定款とは

定款をパソコンの文書作成ソフトで作成して、CD-RやUSBメモリなどの電子媒体に記録したものを、電子定款といいます。電子定款には電子署名をし、電子定款に対応している公証人による認証を受けます。

印紙税法上、定款の原本1通に4万円分の収入印紙を貼ることが義務付けられていますが、電子定款は紙に印刷した文書ではないため、収入印紙を貼る必要はありません

会社設立登記は電子データで受理されますが、金融機関の手続きでは紙に印刷したものの提出が求められることが一般的です。手続き終了後に紙に印刷した謄本を何通か取り寄せておくとよいでしょう。

電子定款の作成手順の概要

電子定款の作成の流れをご紹介します。パソコンの文書作成ソフトで入力して、CD-RやUSBメモリなどの電子媒体に記録するだけでは、電子定款としては認められません。個人を認証するために、電子証明書による電子署名が必要になります。

定款をPDF形式で保存する

パソコンの文書作成ソフトで作成した定款を、PDF形式で保存します。PDF形式に変換するときは、電子署名に対応したソフトを使用しなければなりません。

上記で説明したとおり、定款に記載すべき事項は法律で定められています。PDF形式に変換すると修正が難しくなるので、PDF形式に変換する前に定款の記載内容が法的要件を満たしているか確認することをおすすめします。

定款に電子署名する

電子署名をするためには、電子証明書が必要です。電子証明書にはいくつか種類がありますが、ここでは「公的個人認証サービス」の電子証明書についてご紹介します。

電子証明書は市区町村の窓口で発行されます。電子証明書の発行のためには、法人の代表者のマイナンバーカードまたは住基カードが必要です。マイナンバーカード(住基カード)のICチップに電子証明書が記録されます。

公的個人認証サービス対応のICカードリーダーをパソコンに接続し、マイナンバーカード(住基カード)から読み取った電子証明書を定款のPDFファイルに挿入します。

電子定款の認証の方法

作成した電子定款は、公証人による認証を受ける必要があります。認証手続きはインターネットを通じて行いますが、認証された電子定款を受け取るためには、公証役場に出向かなければなりません

電子定款を公証役場に送信する

まず、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で「申請者情報登録」をして、「申請用総合ソフト」をダウンロードします。

電子定款を送信する前に、所轄の公証役場に連絡して、認証されたデータを受け取る日時などを打ち合わせしておきます。その後、「申請用総合ソフト」を使って公証役場に電子定款を送信します。

認証された電子定款を受け取る

認証された電子定款は、事前に打ち合わせした日時に、公証役場に出向いて受け取ります。定款の認証は対面で行うことが公証人法で規定されているためです。CD-R、CD-RWまたはUSBメモリなどの記録媒体を持参して、電子定款のデータを保存します。定款認証の手数料は5万円ですが、謄本を請求するのであればさらに手数料がかかります。

電子定款の注意点

電子定款は印紙税が課税されないというメリットがあるものの、電子署名に対応したソフトやICカードリーダーを準備する必要があり、作成から認証までには労力もかかります。そのため、電子定款の作成や認証の手続きは、専門家に依頼するのがベターです。どうしても自分で手続きをしてみたいという場合は、関連するサイトで情報収集してから取り組むことをおすすめします。

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こんな場合は専門家にご相談下さい

・定款の内容に不安がある
・電子定款を認証してほしい
・会社設立の必要書類に記載すべき内容がよくわからない
・事務手続きの手間を削減して本業に集中したい
・事業契約や資金調達、補助金・助成金申請の相談に乗ってほしい
・とにかく節税したい
・決算や申告まで、まとめてお願いしたい
・社会保険事務、給与計算、年末調整等もアウトソースしたい
・クラウドサービスを活用して安価にバックオフィス業務を効率化したい

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