• 更新日 : 2023年11月17日

電子契約とは?契約方式やメリット、注意点を徹底解説!

電子契約とは?契約方式やメリット、注意点を徹底解説!

従来の波に加えて、コロナ禍によるリモートワークの普及などを経てますますデジタル化が推進されています。以前は紙で作成していた契約書も現在では電子化して作成することも多くなっています。しかし、改めて考えてみると、「電子契約と書面での契約と何が違うのか」「電子契約の場合でも証拠能力が認められるのか」など、わからないことも多いのではないでしょうか。また、電子契約システムを提供する会社も多岐にわたります。そこで今回は、電子契約の概要や電子契約のメリット、電子契約システムなどについて解説します。

電子契約とは?

電子契約とは、電子的に作成した契約条項についてインターネット等を用いて相手に送付し、電子署名等を施すことによって締結する契約のことです。

すべてのケースで通用する明確な定義はなく、実務が先行する形で導入されています。ここからは電子契約と書面契約の違い、電子契約の証拠能力、電子サインなどについて見ていきましょう。

電子契約と書面契約は何が違う?

電子契約と書面契約の最大の違いは、物理的な「紙」があるかどうかです。書面契約は紙に印刷し押印して締結しますが、電子契約では紙は存在せず、電子データのやり取りのみで契約を締結します。

もちろん電子契約の契約書も印刷することはできますが、ディスプレイとプリントアウトの違いであって、印刷されたもの自体は契約書ではありません。契約書を電子化すると、紙代や印刷代を削減できるといったメリットを享受できます。詳しくは、次項「電子契約のメリット」で解説します。

電子契約は「紙」ではなく「電子データ」を利用して契約するため、オンラインで契約ができることも大きなメリットです。書面契約の場合は印刷や製本、郵送、確認、返送という作業が必要になるため時間がかかりますが、電子契約はオンラインで契約を締結できるため、迅速に手続きを進めることができます。

電子契約に証拠力はある?

民法上は、契約の締結に契約書は必須ではありません。それでも実務において契約書が作成されるのは、後日トラブルが発生しないように証拠として残すためです。それでは、電子契約書に証拠力はあるのでしょうか。

電子契約にも証拠力は認められますが、そのためにはその電子契約が当事者の意思によって締結されたことを証明する必要があります。電子署名法第3条では「当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と規定されているため、相手方から反証がない限り、相手方本人が作成した文書であると認められるのです。

ただし、借地借家法上の事業用定期借地権設定契約など、一部の契約では書面での契約書の作成が義務付けられています。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索

電子契約の有効性を示す電子サインやタイムスタンプ

電子契約の有効性を示す上で重要な要素に「電子サイン」と「タイムスタンプ」があります。電子サインにはメールや指紋認証などさまざまな種類がありますが、タブレットなどにスタイラスによって手書きで署名するものが一般的です。電子的なものですが、手書きによって本人が署名したことを証明できます。

電子サインは本人の意思によるものであることを、タイムスタンプは書類がいつ作成されたのかを証明します。いつ作成されたのかを明らかにすることで、その時点で存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明することができます。

タイムスタンプは信頼性が求められることから、第三者である時刻認証局によってなされます。電子サインと併せることで、電子契約の有効性を担保しています。

電子署名とは

電子サインと似た言葉に「電子署名」があります。電子署名とは、電子データ上で署名・捺印を行うことです。広い意味ではメールを介して契約書に署名捺印を行うものも指しますが、本章では電子データ上で行うものについて説明します。

電子署名は電子サインの一種であり、電子署名法という法律で認められたもののことを一般的に電子署名と呼びます。

電子署名の仕組み

電子署名を行って文書を相手方に送る際には、国が認めた第三者機関である認証事業者に電子署名の利用登録を申し込まなければなりません。申し込みを行った後、電子証明書と公開鍵、秘密鍵が交付されます。電子証明書は電子署名が本人のものであることを証明するためのものであり、印鑑登録証明書のような役割を果たします。公開鍵と秘密鍵は、暗号化された文書データを人の目で見える状態に復元するためのパスワードのようなものです。

電子契約では文書データに電子署名と電子証明書を付与した後、公開鍵を使って一旦暗号化し相手に送ります。受け取った人は電子証明書を認定事業者に照会して、この文書が本当に相手によって作成されたものかどうかを確認します。その後、秘密鍵を用いて文書データを復元します。公開鍵と秘密鍵はセットになっています。秘密鍵でデータが復元できれば、公開鍵で暗号化されたデータと一致していることになり、同じ文書をやり取りしていることになります。

複雑に思われるかもしれませんが、電子契約システムを使えば、これらの手続きを簡単に行うことができます。

電子署名の仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

電子署名には法的効力はある?

前述のとおり、電子署名とは電子署名法で認められた電子サインを指します。同法では電子署名を「電子文書ファイルに別途付加された署名データで、作成者が表示されており、改ざんが行われていないかどうかを確認できるもの」と定義しています。これを満たしている電子サインを用いれば、その文書については実印による押印や自筆の署名と同様、信用性や正当性を担保していると見なされます。

前項でも説明したとおり、電子署名においては公開鍵と秘密鍵を用いて文書をやり取りし、国から認可を受けた認証事業者が発行した電子証明書によって本人確認を行うことで、電子署名法上の要件を満たすことができます。

電子署名法の要件を満たしていない一般的な電子サインは認印、高い本人性と非改ざん性が担保されている電子署名は実印、とイメージするとわかりやすいでしょう。

電子署名の仕組みや法的効力については、以下の記事でも詳しく解説しています。

電子契約の契約方式

これまで説明したとおり、電子契約は電子サインやタイムスタンプを使い、書面契約に代わって電子的に契約を行うものですが、多くの人が利用しているネットショッピングも電子契約の一種です。注文者が商品をカートに入れて、決済すれば商品が送られます。これも電子契約による売買です。

これまで、高額な商品を買う場合やビジネスで売買を行う場合は契約書を作成するのが一般的でしたが、これも電子的に行われるケースが増えています。その場合の電子契約には押印に代わって、電子サインや電子署名が用いられます。電子サインと電子署名は名前が似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか。次項で説明します。

電子サインと電子署名の違い

電子サインと電子署名は包含関係にあり、電子サインの中に電子署名があります。具体的に、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

電子サイン

電子サインは、これまで書面で行っていた署名や押印に代わるものです。電子契約では紙がないため署名や押印ができず、その内容が本人の意思によるものなのかどうかの確認が難しいという問題があります。そこで、本人の意思によるものであることを明らかにする電子サインが生まれました。

印鑑に認印と実印の区分があるように、電子サインにも簡易的なものと証明力の高いものがあります。簡易的なものは、タブレットなどに手書きでサインをするものです。紙がタブレットに変わっただけで、手書きによって本人性を明らかにする点は同じです。

ただし、この方法では遠隔で契約する場合に、本人が手書きしているかどうかを確認できません。したがって、効力は印鑑でいうところの「認印」程度になります。

電子署名

簡易な契約であれば、書面による契約でも認印が押印されることがあります。電子契約においても、簡易な契約を電子サインによって締結したとしても問題はないでしょう。

しかし、高額取引などの重要な契約を締結する場合は、より慎重な対応が求められます。書面による契約では、実印の押印と印鑑証明書の添付が求められるケースもあります。「電子署名」は電子契約において証明力の高い署名方法で、紙の契約における「実印」に近いものです。電子署名は第三者である認証局が本人確認を行うため、本人性が担保されます。

具体的には署名者が「秘密鍵」を使って暗号化し、それを相手方に送付して、受け取った側は「公開鍵」で復号します。

ただし、事業者署名型の電子署名では本人確認などの厳格な手続きが必要になるため、負担が大きいというデメリットがあります。そのため、取引内容に応じて電子サインと電子署名を使い分けると良いでしょう。一方、当事者署名型であれば電子署名でもICカードなどは不要なので、比較的容易に署名ができます。

当事者署名型と立会人署名型(事業者立会型・クラウド型)との違いについては、次の章で説明します。

電子署名における当事者署名型と立会人署名型の違い

電子契約システムに使われる電子署名には、「当事者署名型」と「立会人署名型(事業者立会型・クラウド型とも呼ばれる)」があります。

当事者署名型はその名のとおり、当事者が情報を暗号化する秘密鍵を購入する方法です。秘密鍵はICカードなどに入れて保管し、契約書データはパソコンのハードディスクやサーバーなどに保存します。

ちなみに、当事者署名型の中で秘密鍵をICカードなどに保存する形式のものを「ローカル型電子署名」、秘密鍵をサーバー上に保存するものを「リモート型電子署名」と呼びます。リモート型電子署名であれば、ICカードを保管する手間を省けますが、秘密鍵を当事者が用意しなければならない点は同じです。

一方、立会人署名型は契約書をクラウド上に保存してやり取りします。秘密鍵もクラウド事業者が立会人として用意するため、当事者が購入して保管する必要はありません。立会人署名型のサービスでは本人確認などの厳格な手続きが必要になるため導入時に手間がかかるデメリットがありますが、それさえ済ませれば、秘密鍵を用意しなければならない当事者署名型と比較するとスムーズに契約を締結することができます。

電子契約を導入するメリット

電子契約も法的に有効ですが、書面契約を電子契約にすることのメリットは何でしょうか。

電子契約にすることの主なメリットは、以下のとおりです。

  1. 収入印紙や郵送代、人件費などの削減につながる
  2. 押印・製本・郵送などの手間を省ける
  3. 契約の締結・更新・解約漏れを防げる
  4. 契約に関するデータの紛失を防げる

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

収入印紙や郵送代、人件費の削減につながる

書面契約では紙に印刷しなければならないので、紙代と印刷代がかかります。また、契約書に押印して相手方に郵送し、相手方はそれに押印して返送する必要があります。そのため、双方に郵送代がかかります。さらに、契約書の種類によっては印紙税法で定められた課税文書となり、その場合は収入印紙を貼付する必要があります。契約金額が大きい場合は収入印紙の金額も高くなるため、負担が大きくなります。これらの作業は人が行うことになるため、人件費もかかります。

それに対して電子契約では、紙代や印刷代、郵送代、印紙代がかかりません。電気代や通信費は発生しますが、既存の業務で使用していれば新たな費用は発生しません。ただし、電子契約サービスを導入する必要があるので、その費用が発生します。

押印・製本・郵送の手間を省ける

書面契約はコストの面だけでなく、手間の面でも負担が大きいといえます。契約書は、印刷して製本する必要がありますし、契約書が複数枚になる場合は袋とじ、あるいはページがまたがる部分に契印を押印する必要があります。さらに封筒に宛名を書いて封入し、投函しなければなりません。これらの作業を行っている間は、他の業務ができなくなります。

それに対して電子契約では、電子契約サービスに加入していればそのフローにしたがって進めるだけなので、簡単かつ迅速に手続きが完了します。簡易な契約であれば契約書を送信するだけなので、数秒で終わります。

契約の締結・更新・解約漏れを防げる

契約は一度締結したら終わりではなく、内容を変更したり、更新時期を迎えたら作り直したりすることがあります。自動更新でない場合に更新を怠ると、契約の効力が失われます。そのようなことを防ぐためにも、電子契約は有効です。

書面契約の場合は契約書をファイリングし、キャビネットなどに保管する必要があります。更新時期ごとに分類したり、パソコンで別途管理したりすることもあるでしょう。

一方で電子契約は電子データで管理できるため、ファイリングやキャビネットでの保管は不要で、契約締結日や更新日の管理も容易です。パソコンで契約内容を閲覧できるため確認も容易であり、更新や解約漏れを防ぐこともできます。

契約に関するデータの紛失を防げる

書面契約の場合は契約書が2通作成され、それぞれが1通ずつ保管するのが一般的ですが、契約書は物理的なものなので紛失するリスクがあります。また厳重に管理していたとしても、自然災害や火災などで破損・汚損・消失するリスクもあります。このような場合は相手方に事情を説明して、写しをもらうといった対応が必要になります。

一方で電子契約サービスを使用していた場合は、電子契約で使用したデータはクラウド上にあるので破損・汚損することはなく、基本的には紛失・消失することもありません。自然災害が多い日本では、紙で保存するよりもクラウド上に保存するほうが安全といえるでしょう。

実際に電子契約システムを導入して変わったこと

株式会社マネーフォワードでは、2021年に「マネーフォワード クラウド契約」を導入しました。

2012年の会社設立以降、マネーフォワードでは紙ベースで契約業務を行っていました。上場の準備を進める上で社内のデジタル化が進み、2018年に契約業務において他社ツールを導入。しかし、社内稟議のためのワークフローシステムが別に存在していたため、、業務フローに課題感を抱えていました。複数のツールを行き来する手間がかかり、人為的なミスが発生しやすい状況でした。

「マネーフォワード クラウド契約」の導入により、社内稟議から契約の締結・保存・管理までを1つのサービスで完結することができています。

実際、マネーフォワードで法務部門としてのインフラを支え、契約業務などを行う「法務知的財産本部 アドミニストレーショングループ」では、契約書の確認を担当するメンバーへの通知が「マネーフォワード クラウド契約」の管理画面に集約されるようになりました。他にも、「契約書を郵送する必要が減った」「押印のために出社する必要が減った」などの変化も見られました。

昨今、企業だけでなく行政機関や自治体でも契約業務の電子化が進んでいます。紙の契約書が増える可能性は限りなく低いでしょう。たとえ自社が紙の契約書ベースで進めたくても、相手側が「電子契約でないと締結できない」と紙での対応を断るケースが増えることも予想されます。早めに電子契約への対応準備を進めておくことで、契約方法による機会損失の防止に繋がると言えます。

反対に、相手側が「紙でないと締結できない」という場合でも、社内稟議や契約書の保管などにおいては電子契約システムを活用できます。たとえば「マネーフォワード クラウド契約」は契約書の作成から申請、承認、締結、保存、管理までをカバーできる、電子契約・契約書管理サービスです。紙の契約書と電子契約をシステム上で一元管理できるので、保管した契約書を探す際も簡単に検索ができます。

代表的な電子契約システム9選

電子契約システムは、月額利用料を支払い有料で利用できるものと、月額利用料のかからない無料で利用できるものとがあります。有料のものでも新規登録無料や試供版無料などの無料サービスで利用できるものもあります。

■有料サービス(無料体験があるサービスも含む)

  • マネーフォワード クラウド契約
  • ドキュサイン
  • クラウドサイン
  • 電子印鑑GMOサイン
  • Adobe Acrobat Sign
  • freeeサイン
  • SMBCクラウドサイン

■無料で利用できるサービス

  • みんなの電子署名
  • 電子契約くん

電子契約サービスを選ぶ際のポイント

電子契約を導入する場合は、電子契約サービスを提供している会社を選定する必要があります。電子契約サービスを提供している会社はたくさんあるので、自社の目的に適合するサービスであるかどうかを調べて選びましょう。

電子契約サービスを比較する際のポイントは、導入実績や使いやすさ、料金、サポート体制などです。一定期間無料で試せるものも多いので、複数のサービスを試して使いやすいものを選ぶと良いでしょう。

また、電子帳簿保存法に対応しているか」「電子契約と書面契約が混在している場合に両者をカバーできるか」といったことも重要です。

それぞれについて解説します。

電子帳簿保存法に対応しているか?

電子契約を導入する際、電子契約サービスを提供している会社が電子帳簿保存法に対応しているかどうかは重要なポイントになります。税務関係の資料は紙で保存するのが原則ですが、保管にかかる事務負担やコストを軽減するため、一定の要件を満たす場合は例外的に電磁的記録による保存が認められています。

また電子取引については、2022年1月1日以降は電子データで保存することが義務付けられています。電子帳簿保存法の要件を満たさない電子契約サービスを利用した場合、2023年12月31日以降は法律違反になる可能性があるので注意が必要です。

参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁

電子契約と書面契約が混在している場合に両者をカバーできるか

電子契約を導入することになっても、取引先が電子契約に同意しない、特定の様式が求められるために電子契約ができないといったことが想定されます。そのような場合でも、紙の書類をスキャナーなどで取り込み、電子契約と一緒に管理することができれば非常に便利です。したがって、書面契約も同時に管理できるかどうかも重要なポイントといえます。

電子契約サービス導入の流れ

電子契約を利用するためには上記に挙げたような電子契約サービスを申し込み、導入することになりますが、導入に際しては、各サービス会社の比較検討をするだけでなく、どのサービスが自社のニーズにマッチするかという観点からも検討する必要があります。

電子契約システムは基本的に契約当事者双方のメールアドレスがあれば契約を締結できます。当社側のメアド、契約相手役のメアドをそれぞれ用意して締結のデモをすると、使用感を確かめられます。無料で試用できる範囲でも良いので社内で締結作業を行ってみて、自社の業務フローに合うかどうかを試してみると良いでしょう。

なお、マネーフォワードでは電子契約システムを導入するにあたって、「電子化のリスクが少ないところから始める」というアプローチを取りました。お金のやり取りが発生しないNDA(秘密保持契約)などから電子化し、徐々に範囲を広げていきました。その際に他部署に向けて電子契約マニュアルやサポート体制などを準備するなど、社内への浸透をよりスムーズに行う工夫も合わせて行いました。

電子契約の導入における注意点

電子契約を導入する場合は、どの電子契約サービスを採用するかを検討することになります。一般的には電子契約導入の担当者を決めたり、検討チームを編成したりしてベンダーを選定します。その上でリスクの洗い出しや、導入スケジュールの検討などがなされます。

電子契約を導入するにあたって特に注意すべき点は、以下の3つです。

  1. 業務フローの変更が必要なこと
  2. 電子契約については取引先の合意が必要になること
  3. 電子契約に対応していない契約もあること

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

業務フローの変更が必要

紙での契約を電子契約に切り換える場合は、業務フローが変わるケースがほとんどです。紙の契約書の場合は、各部門が作成した契約書を法務部などがチェックして、契約の重要度に応じて異なる決裁プロセスを経て承認されるのが一般的です。

電子契約を導入すると契約書をデジタルデータとして管理するため、同時並行的な処理が可能になります。これにより、多くの場合は業務フローを適切に変更する必要があります。決裁規程などがある場合は、それも改定しなければなりません。

電子契約を導入すると現場の職員が戸惑うことも想定されるので、事前に研修を行うなどしてスムーズに導入できるよう準備しておきましょう。併せて、マニュアルやQ&Aなども作成しておくことをおすすめします。

電子契約については取引先の合意が必要

BtoBの取引においては取引先と契約を締結することになりますが、電子契約を導入する場合は相手方の合意を得る必要があります。紙で管理をしている事業者もあるため、すべての取引先と電子契約ができるわけではありません。

検討段階で電子契約について取引先に説明し、対応の可否を確認する必要があります。対応できる取引先にはマニュアルを配付するなどして、電子契約をスムーズに行えるよう準備しておきましょう。対応できない取引先については、これまでどおり紙での契約も可能であることを伝えた上で、電子契約の導入に向けた支援ができないか検討することも重要です。

電子契約に対応していない契約もある

多くの契約は電子契約で締結できますが、一部の契約は対応していないものもあります。
従来は、以下のような契約書等は紙で作成する必要がありました。

  1. 定期借地契約
  2. 定期借家契約
  3. 宅建業者の媒介契約書
  4. 不動産売買における重要事項証明書
  5. 訪問販売等で交付する書面

これらは、権利関係の明確化、あるいは消費者保護の観点から、紙の書面で作成することが法律上の義務でした。しかし、2021年のデジタル改革関連法の改正に伴い、借地借家法、宅地建物取引業法、特定商取引法等の各法律が改正され、上記各書面は電子化することが可能となりました。

ただし現在でも、以下のような書面は紙で作成しなければなりません。

  • 任意後見契約書

※2023年6月時点の情報です。今後、法改正により、変更となる可能性があります。

任意後見契約書については公正証書の作成が義務付けられており、公証人の面前で署名する必要があります。

このように従来は紙のみが認められていたものでも法改正により電子化が可能となっているケースもあります。取り扱っている契約について電子化が可能かどうか、現在の法制度を確認しておいたほうが良いでしょう。

電子契約に関する法律

電子契約に関わる法律には、「民法」「民事訴訟法」「電子署名法」「電子帳簿保存法」「e文書法」「IT書面一括法」などがあります。

民法では第552条で契約の成立には当事者同士の合意が必要であること、民事訴訟法では第228条で文書の成立について定められています。これは電子契約に限らず、すべての契約における前提となるので必ず押さえておきましょう。

電子署名法は、電子署名の効力について規定しています。電子帳簿保存法は、国税関係書類(帳簿や領収書請求書、注文書など)や電子取引に関する書類を電子データで保存することを認め、その方法について規定している法律です。電子契約サービスを導入する際は、これらの法律に対応したものを選ぶ必要があります。

さらに、e文書法では契約書などの文書を電子データで保存する際に守るべきルール(見やすさや機密性など)について、IT書面一括法では電子メールなどでの書面の交付や手続きに関する規定について定めており、電子契約を行う際はこれらの法律も遵守しなければなりません。

他にも、業種によっては借地借家法や宅建業法、特定商取引法、下請法などの関連法案に沿って電子契約を締結する必要があります。

電子契約に関わる法律については、以下の記事で詳しく説明しています。

電子契約の早期の導入を検討しよう

今回は電子契約の概要やメリット、注意点などについて解説しました。デジタル社会の進展によって、今後電子契約はさらに普及すると考えられます。コスト削減と業務効率化も図れるため、早期の導入をおすすめします。

導入をスムーズに進めるためにも、電子契約に関連する新しい法律の制定や改定をチェックしておきましょう。

よくある質問

電子契約とは何ですか?

電子的に作成した契約書を、インターネット等を用いて相手に送付し、電子署名等を施すことによって締結する契約のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

電子契約と書面契約の違いは何ですか?

電子契約と書面契約の大きな違いは、物理的な「紙」があるかどうかです。電子契約の場合は、PDFなどの電子データになります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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