• 作成日 : 2016年7月21日

「公益目的事業(公益事業)」に認定されるために知っておくべき3つのポイント

公益法人として会社を立ち上げるためには「公益目的事業(公益事業)」として認定される必要があります。
公益目的事業として認定されるためには、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、認定法)別表各号に定められている23種類の事業分野に該当するとともに、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」と認められなくてはなりません。
ここではこの2つの条件についてそれぞれ解説します。
※なお、公益事業という呼び名は旧制度におけるものであり、制度の改正によって公益事業は公益目的事業という呼び名に変更されました。ただし、公益事業と公益目的事業は厳密に同じ事業を指すわけではありません。
公益目的事業は、基本的には公益事業を踏襲したものではありますが、細部の規定に若干の相違があります。便宜上、本稿では公益事業と公益目的事業を同様のものとみなし解説をします。

23種類の「公益目的事業」の事業分野に該当するか?

「公益」とは何か?

公益目的事業の事業分野について見る前に、そもそも「公益」とは何を意味するのかを理解しておきましょう。
公益の本来の意味は「公共の意味」「広く社会一般の利益」ですが、具体的に「こういうものこそが公益である」ということは言えない複雑な概念となっています。そのため法律や使う場面によってニュアンスが変わります。
認定法においては「民間の団体が自発的に行う公益」というような使われ方がされていることから、行政や政府目線ではなく、市民目線での「公益」というニュアンスで使われていると考えられます。
またこのように単独で「公益」と書かれることは少なく、認定基準や行政監督基準の中では使われていません。

23種類の「公益目的事業」とは?

では「公益目的事業」はどのように定義づけられているのでしょうか。認定法第2条第4項には次のように定義されています。

学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。

(引用元:認定法第2条第4項)
この「別表各号に掲げる種類の事業」が以下の23種類の事業分野です。

一 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
二 文化及び芸術の振興を目的とする事業
三 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
四 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
五 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
六 公衆衛生の向上を目的とする事業
七 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
八 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
九 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
十 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
十一 事故又は災害の防止を目的とする事業
十二 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
十三 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
十五 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業
二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
二十一 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
二十二 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

(引用元:認定法別表(第2条関係))
公益目的事業に認定されるためには、まずこの23種類の事業分野のいずれかに必ず該当する必要があります。その上でもう1つの条件「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」を満たさなくてはなりません。

「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与」しているか?

認定法における「不特定多数性」とは?

認定法における「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」は、「公益性」と言い換えることができます。
このような言い方をするには歴史的な背景があります。旧制度の根拠法である改正前民法では公益法人の設立許可は、主務官庁の自由裁量とされていました。
そのため公益性が認められる場合にも「公益法人にふさわしくない」という理由で設立を許可しないこともできたのです。そこで現行法では客観的な基準とするために、「公益性」を「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」という不特定多数性に置き換えました。
この場合の不特定多数性は「目的における公益性」と考えることができます。認定法において不特定多数性が認められるには、次の2つの条件を満たしていなくてはなりません。

・社会全体に対して利益が開かれている。
・受益の機会が、一般に開かれている。

「事業区分ごとの公益目的事業のチェックポイント」とは?

ではこの2つの条件を満たすためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
これについては内閣府公益認定等委員会が公表している「公益認定等ガイドライン」(以下、ガイドライン)に詳しく説明されています。ガイドラインには次の17の事業区分とそれぞれのチェックポイントが示されています。

1.検査検定
2.資格付与
3.講座、セミナー、育成
4.体験活動等
5.相談、助言
6.調査、資料収集
7.技術開発、研究開発
8.キャンペーン、○○月間
9.展示会、○○ショー
10.博物館等の展示
11.施設の貸与
12.資金貸付、債務保証等
13.助成(応募型)
14.表彰、コンクール
15.競技会
16.自主公演
17.主催公演

それぞれのチェックポイントは2個〜6個あり、事業区分の性質に従って変動します。例えば「11.施設の貸与」では当該施設の貸与において不特定多数性が確保されているかという点と、公益目的による貸与をそれ以外の貸与よりも優先する仕組みを設けているかという2点だけです。
対して「13.助成(応募型)」では、不特定多数性のほかに応募の機会が一般に開かれているか、助成した対象者や内容を公表しているかなど6点が設けられています。

チェックポイントの共通点

事業区分によってチェックポイントの数や内容は変動しますが、これらは概ね以下の2点で説明できます。
(1) 事業目的(趣旨:不特定多数でない者の利益の増進への寄与を主たる目的に掲げていないかを確認する趣旨。)
(2) 事業の合目的性(趣旨:事業の内容や手段が事業目的を実現するのに適切なものになっているかを確認する趣旨。)

ア 受益の機会の公開(例 受益の機会が、一般に開かれているか)
イ 事業の質を確保するための方策(例 専門家が適切に関与しているか)
ウ 審査・選考の公正性の確保(例 当該事業が審査・選考を伴う場合、審査・選考が公正に行われることとなっているか)
エ その他(例 公益目的として設定した事業目的と異なり、業界団体の販売促進、共同宣伝になっていないか)

(注)(2)(事業の合目的性)ア~エは例示であり、事業の特性に応じてそれぞれ事実認定上の軽重には差がある。
(引用元:公益認定等ガイドライン)
例えば事業目的として「富裕層向けの高級車の販売」をあげていれば公益目的事業の認定は受けられません。
スポーツ振興のためにスポーツ助成金事業を運営することを事業目的としていても、助成の選考に専門家などが参加していなければ「事業の合目的性」を欠いているとみなされます。
なお17の事業区分にこれから設立しようとしている会社の事業が当てはまらない場合も、前掲の23の事業分野に当てはまり、かつ上記の2つの条件に当てはまれば、公益目的事業として認定を受けることが可能です。

まとめ

公益法人として認定されるためには公益目的事業として認められる以外にも認定法5条が定める基準を満たし、かつ6条が定める欠格事由に該当しないことが必要になります。
ここで見たポイントをよく理解し、これから立ち上げる会社を公益法人として設立するか否かを判断するところから始めましょう。

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