• 更新日 : 2021年11月29日

「社会保険」に加入すると会社負担の額は実際いくら?

「社会保険」に加入すると会社負担の額は実際いくら?

経営者もサラリーマンも、日本人であれば誰もが切っても切れない社会保険

しかし、「社会保険とは?」と聞かれても、制度の詳細や具体的な負担金額について説明できる方は多くないでしょう。会社勤めの場合、給与から天引きされているケースが大半のため、それは顕著ではないでしょうか。

また、昨今スタートアップと呼ばれるIT系ベンチャーの起業が増えてきていますが、そうした設立間もない企業の場合は、社会保険の加入についての知識が不足しているケースも見受けられます。

そこで本記事では、これから社会保険への加入を考えているスタートアップ経営者・起業家の皆様向けに、社会保険制度の仕組みや加入対象者、具体的な負担金額について説明していきます。

社会保険の仕組み

それでは、まず社会保険のからくりについて説明します。

社会保険とは

そもそも社会保険とは、社会保障の1つの分野のことを指し、国や地方公共団体などの公の機関が管理・運営しています。日本では具体的に以下5種類の保険を指します。
 

  1. 年金保険
  2. 雇用保険
  3. 医療保険
  4. 介護保険
  5. 労災保険

社会保険は一定の基準を満たした事業所(法人)、個人事業主、個人は必ず加入しなければなりません。テレビCMなどで目にする「生命保険」や「がん保険」は任意加入ですが、皆様もご存知の通り、これら社会保険は強制加入となります。なお、社会保険料は、基本的には事業主(法人、個人事業主)と、個人でそれぞれ負担することになります。

なお、社会保険料の負担は公的負担、事業者負担、本人負担の3種類があり、法人として社会保険に加入する場合の費用は、企業と個人でそれぞれ負担することになります。

法人の加入は必須?

起業家や起業希望者とお話していると、「起業したばかりですが、社会保険へ加入しなくてはならないのでしょうか?」という質問をよく頂きます。

回答としては「基本Yesですが、ケースによってはNo」です。その理由を、健康保険と厚生年金保険の加入条件を元に説明していきます。

健康保険と厚生年金保険は、事業所を単位として、加入が義務づけられる「強制適用事業所」と、任意加入の「任意適用事業所」の2種類に分類します。任意適用事業所に該当すると、加入義務が無いのです。

それでは、それぞれの違いについて説明していきます。

任意適用事業所

  1. 従業員が5人未満の個人事業所
  2. ※任意適用事業所の認可を受けるには、その事業所の従業員の半数以上の同意を得なければならない。同意があれば、加入を希望しない従業員も含めて全員に適用することになる。

  3. 個人事業主が運営する従業員5名以上の事業所(かつ、以下の業種に該当する事業所)
  4. 農林水産業、畜産業、旅館、料理飲食店、接客業、理容業等、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、神社、寺院、教会等

強制適用事業所

  1. 法人事業所(株式会社などの会社組織)
  2. 個人事業主で従業員数が5名以上の事業所
  3.    ただし任意適用事業所に指定される業種以外の事業所が対象

   *詳細はこちらをご覧ください。

ということで、スタートアップのような比較的従業員数が少ない組織であっても、株式会社等の法人事業所であれば強制適用が義務付けられています。

強制適用事業所なのに加入しないとどうなるの?

強制適用事業所に該当するにも関わらず、社会保険へ加入しない場合には当然罰則があります。

  • 雇用保険  :6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 健康保険  :6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 厚生年金保険:6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 労災保険  :6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

万が一摘発された場合、現状最大2年間に遡って加入する必要があり、保険料を徴収される可能性があります。くれぐれもそのようなことがないようにしましょう。

社会保険へ加入する方法

次は加入手続きについて簡単にご説明します。

必要書類は日本年金機構のサイトを確認の上、準備・作成し、管轄の年金事務所または日本年金機構に郵送するか、窓口に持参してください。これだけで社会保険に加入できます。

企業の負担金額はどれくらい?

ここまでは、社会保険の仕組みについて説明してきました。次に、特にスタートアップ経営者や起業家の方が気になるであろう企業側の負担金額について見ていきます。

今回は、カシオ計算機株式会社が提供するシミュレーションツールを利用し、健康保険料(介護保険料含む)、厚生年金保険料がどの程度なのか計算してみました。

なお、法令や料率の更新のタイミング、加入する健康保険によって結果が異なりますので、あくまでも参考数値を把握するためのものとなります。

以下のURLをご参照ください。
参考:健康保険料の計算|ke!san
   厚生年金保険料の計算|ke!san

例えば50歳、事業所は東京都、月収50万円、年収600万円(※賞与なしと仮定)の方を雇用する場合、上記のサイトで試算すると、令和3年9月時点の事業所負担は毎月76,650円、年換算だと919,800円に及びます。

1人でもこれだけの負担を強いられますので、社員全員となると、その金額は膨大なものとなります。採用計画を立てる際には、これらの費用が追加で掛かることも忘れないようにしてください。

事業所:東京都の場合

年齢30歳
月収30万円の場合
年齢40歳
月収40万円の場合
年齢50歳
月収50万円の場合
全額
健康保険料
29,520円
47,724円
58,200円
厚生年金保険料
54,900円
75,030円
91,500円
児童手当拠出金
1,080円
1,476円
1,800円
うち本人負担額(折半額)
健康保険料
14,760円
23,862円
29,100円
厚生年金保険料
27,450円
37,515円
45,750円

↓      ↓      ↓

個人負担
42,210円/月
61,377円/月
74,850円/月
事業所負担
43,290円/月
519,480円/年
62,853円/月
754,236円/年
76,650円/月
919,800円/年

社会保険への加入は会社の責務

高齢化社会に移行する中、企業の社会保険の負担額は年々増加すると言われています。
たしかに会社にとっては大きな負担となる社会保険ですが、企業として社会への最低限の責務を果たす上、加入しているおかげで従業員も安心して働くことが出来ます。

スタートアップ経営者、起業家の皆様は、ぜひ社会保険に加入することで健全な会社運営をしていきましょう。社会保険についてお悩みの際には、お近くの社会保険労務士事務所に一度相談してみることをお薦めいたします。

よくある質問

社会保険と何ですか?

医療保険や年金保険、介護保険などのことです。詳しくはこちらをご覧ください。

法人は必ず社会保険に加入しなければいけませんか?

原則、加入が必要です。 詳しくはこちらをご覧ください。

強制適用事業所なのに加入しないとどうなりますか?

最悪の場合、懲役刑や罰金刑になります。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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