確定給付企業年金とは?制度の基本と特徴を解説

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確定給付企業年金は企業が運用し、場合によっては不足分を企業が穴埋めするという企業年金制度です。現在日本で最も採用している企業が多く、企業ごとのルールを反映しやすいというメリットがあります。

ここではこの確定給付企業年金の基本的な考え方と、「規約型」と「基金型」という2つの確定給付企業年金について解説します。

確定給付企業年金の基本

確定給付企業年金の基本的な仕組み

確定給付企業年金は2013年3月時点で約800万人が加入する日本で最も利用されている企業年金制度です。

規約型にしろ基金型にしろ、企業が元となるお金を出すところから(拠出)、その運用・管理、退職後の給付までの責任を一貫して負うのが特徴です。一度拠出したお金は企業の外部で管理され、退職時及び年金給付時にだけ使えるお金として保全されます。

そのため従業員は確実に年金を受け取ることができるのです。

確定給付企業年金のデメリット

確定給付企業年金の制度のデメリットは企業側の負担が大きい点です。

掛け金は従業員の同意があれば1/2を上限として本人に負担させることもできますが、事業主が負担するのが原則となっています。年金資産が少なかったり、年金を運用するための積立が十分にできない企業には導入が認められないケースもあります。

また企業の規模が小さい場合は実質的に導入できないというデメリットもあります。基金型の確定給付企業年金を運用する場合は原則従業員が300人以上という要件が定められており、人数要件のない規約型でも従業員が100名以上いることが目安になっているからです。

確定給付企業年金のメリット

確定給付企業年金のメリットは「従業員の安心感」です。昭和54年までに退職した人に適用されていた「退職一時金制度」には企業側の積立義務がなかったため、企業が倒産した場合に支払いが不十分になるケースもありました。

対して確定給付企業年金は2002年4月に施行された確定給付企業年金法に基づいて計画的に拠出・積立を行うので、確実な退職金・年金の支給が可能です。また国が運用する厚生年金とは違い、会社独自のルールを設定しやすいという点もメリットの1つです。

確定給付企業年金「規約型」の特徴

確定給付企業年金「規約型」の特徴

規約型の積立・管理体制

確定給付企業年金の形式の1つ「規約型」は、生命保険会社や信託銀行などの受託機関と契約を結ぶことで掛け金の外部積立体制を作ります。

掛け金の管理・運用は受託機関が行うため、企業の経営状況によって退職金及び年金の支給額の変動を防ぐことができるのです。

支給を行う際は退職後の従業員が企業に支払を請求し、これを受けた企業から受託機関に指示がされて、受託機関から従業員に支払が行われるという仕組みになっています。基金型よりも導入のための要件が緩やかなので、中小企業でも導入しているところの多い確定給付企業年金制度です。

適格退職金制度との違い

確定給付企業年金の規約型は2012年3月末まで運用されていた適格退職金制度の廃止に伴い、その受け皿として登場した制度です。

適格退職金制度は受託機関との契約によって外部積立体制を作る点や、厚生年金よりも運用ルールの自由度が高い点、導入のための要件が緩やかな点などは規約型と同じでした。

しかし制度運営を国が監督するための法規制が不十分だったため、企業が本来必要な積立金よりもはるかに少ない金額しか積立てていないというケースも多く見受けられました。この問題を改善する目的で施行されたのが確定給付企業年金法なのです。

規約型における労働組合のあり方

規約型の場合、確定給付企業年金を監視する理事会や代議員の設置が不要です。そのため企業の一存で制度運用がされてしまう可能性があります。

労働組合は制度運用に関する情報に入手する仕組みを整えるとともに、状況に応じて要求を行うなど、積極的な関与が必要です。

確定給付企業年金「基金型」の特徴

確定給付企業年金「基金型」の特徴

基金型の積立・管理体制

企業年金基金と呼ばれる特別法人を設立し、この法人において管理・運用・給付までを行うのが確定給付企業年金の基金型です。基金は企業とは独立した法人となるため、中立的な制度運営をすることができます。

退職後の従業員が企業へ請求することで支払が行われる規約型に対し、基金型の場合は請求が行われるのは基金です。導入のための要件が厳しいため運用している企業は大企業が多くなっています。

厚生年金基金との関係

基金型はかつて厚生年金基金を運用していた大企業が、より自由度の高い確定給付企業年金に移行する際の受け皿として設けられた制度です。

本来国が行うべき厚生年金の運用を企業に代行するのが厚生年金基金制度ですが、この制度に基づくと積立不足が負債として計上されるため企業イメージを損なう可能性があります。これを嫌った大企業が基金ごとのルールが適用できる確定給付企業年金の基金型に移行していったのです。

このような背景から厚生年金基金を確定給付企業年金の基金に移行するケースが多く、新規に基金を設立するケースはほとんどありません。

基金型における労働組合のあり方

基金型の場合、確定給付企業年金を監視する理事会や代議員の設置が必要となります。この理事・代議員は企業側・従業員側から同数ずつ選出しなければなりません。

労働組合が積極的に制度運用に関与しなくてはならない規約型に比べ、基金型ではあらかじめ従業員側が制度運用に関わる仕組みが設けられているのです。

まとめ

確定給付企業年金には導入のための要件が厳しい基金型と緩やかな規約型がありますが、どちらにせよ一定の企業規模が必要となります。また従業員にとってはメリットが大きい反面、企業側の負担が大きいというデメリットもあります。

自社の企業規模と制度運用に必要な要件をあらかじめ把握したうえで、導入の可否を検討するようにしましょう。

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