• 更新日 : 2024年2月26日

賞与・ボーナスの所得税の計算方法!高いと感じるのはなぜ?

賞与・ボーナスの所得税の計算方法!高いと感じるのはなぜ?

賞与の所得税の源泉徴収額は、【(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×源泉徴収税額】で計算されます。

賞与から控除される所得税は、給与とは異なる方法で計算されます。ここでは、賞与から控除される所得税の計算方法を、計算例もあわせて解説します。

賞与は給与よりも支給金額が高いので、所得税が正しく計算されているかどうか気になるものです。賞与の所得税の計算方法を知っておくと、賞与の明細を見ながら自分でチェックすることができます。

賞与・ボーナスで天引きされているものは?

賞与(ボーナス)は、源泉所得税と、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料など)が天引きされています。具体的には、賞与が支払われる際、従業員の受け取る金額からこれらの税金や保険料が差し引かれた後の金額が手元に支払われます。

そのため、賞与の手取りを確認したい場合は、源泉所得税と社会保険料の控除(天引き)金額を確認する必要があります。

賞与計算をカンタンに!/

1.賞与から天引きされる所得税の計算

所得税の計算上、賞与とは、毎月の給与とは別に支払われるものを指します。
たとえば、ボーナス、賞与、夏期手当、年末手当、期末手当などの名目で支払われるものが当てはまります。

源泉徴収額=(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×源泉徴収税額

賞与に対する所得税等の金額は、賞与支給月の前月の給与をもとに、次の手順で計算されます。

①社会保険料等の金額を差し引く
まず最初に、賞与を支給する月の前月の給与額から、社会保険料等の金額を控除して、計算の基準にする金額を求めます。
②源泉徴収税額の算出
次に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用意します。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に、上記1で求めた基準となる金額と扶養親族等の数を当てはめ、賞与に乗ずる税率を算出します。

※「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出している従業員については「甲欄」を、そうでない従業員については「乙欄」を使って所得税等の金額を求めます。

賞与に対する所得税等の金額

引用:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)|国税庁

③源泉徴収される税額を求める
税率は、所得税と復興特別所得税をあわせたものです。次の算式で、源泉徴収される税額を求めます。

源泉徴収額=(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記2で求めた税率

給与や賞与から社会保険料等を差し引いた金額は、給与明細で「課税対象額」として記載されている場合があります。もし、明細に課税対象額の欄がなければ、自分で計算します。

賞与計算の簡単なシミュレーション例

より簡単に理解してもらえるように、具体例をもとに賞与の所得税の計算方法を説明します。

【例】Aさんの12月の賞与と前月(11月)の給与が次のとおりであった場合、12月の賞与から源泉徴収される税額を求めます。
  • 12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額):80万円
  • 11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額):30万円
  • 扶養家族等の人数:3人
  • Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しています。

11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額)30万円と、扶養親族等の人数3人を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、賞与の金額にかける税率を求めます。

Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しているので、甲欄を参照します。
表を参照すると、賞与にかける税率は4.084%であることが読み取れます。

12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額)80万円に税率の4.084%をかけた、32,672円が賞与から源泉徴収する所得税の額となります。

(計算式)800,000円×4.084%=32,672円

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前月の給与がなかった場合

賞与支給月の前月に給与の支払いがなかった場合には、賞与から源泉徴収する所得税の計算は次のように行います。

  1. (賞与から社会保険料等をマイナスした金額)÷6 の金額を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」と照合して賞与額にかかる税額を求めます。
  2. 1の税額を6倍した金額が、賞与から源泉徴収する所得税になります。

賞与の対象期間が6カ月を超える期間の場合は、上記の計算方法1の「÷6」のところを「÷12」に、計算方法2の「6倍」のところを「12倍」に、それぞれ置き換えて計算します。

賞与が前月の給与の10倍を超える場合

前月の給与が極端に少ないなどの理由で、賞与の額が前月の給与の10倍を超える場合、賞与から源泉徴収される所得税の計算は次のように行います。なお、10倍を超えるかどうかは、前月の給与と賞与のどちらも社会保険料等を差し引いた後の金額で判定します。

  1. (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6 +(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)で求めた金額を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を求めます。
  2. 1の税額-(前月の給与から源泉徴収された税額)で求めた金額を6倍した額が、賞与から源泉徴収する所得税の額になります。

賞与の計算期間が6カ月を超える場合は、上記の計算方法1の「6」を「12」で、続く計算方法2の「6倍」を「12倍」で、それぞれ計算します。

2.賞与から天引きされる社会保険料の計算

賞与から控除される健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の金額も、通常の給料と異なる計算方法で行われます。

健康保険料の計算方法

賞与から控除される健康保険料は、標準賞与額と健康保険料率を用いてめます。標準賞与額は、賞与支給額を1,000円単位にした金額です。所得税(源泉徴収税)を控除する前の賞与支給額の1,000円未満を切り捨てた金額が標準賞与額になります。

賞与から控除される健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率

健康保険料率は、賞与も給料と同じ料率で、全国健康保険協会の場合は都道府県別に定められている率が用いられます。健康保険料を計算する際に使用する標準賞与額には上限金額が定められていて、4月1日から3月31日までの年間累計額573万円が上限とされます。

介護保険料の計算方法

40~64歳までの従業員には、介護保険料の負担義務があります。賞与にも給料と同じように介護保険料がかります。料率も対象者全国一律の18.2/1000(令和5年度)を用いて計算します。

賞与から控除される介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率(18.2/1000)

介護保険料は健康保険料と一緒に計算するため、上限金額についても同じ取扱いになります。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料率は183/1000で、賞与から控除される厚生年金保険料は、標準賞与額に厚生年金保険料率をかけて求めます。

賞与から控除される厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率(183/1000)

厚生年金保険料を計算する際に使用する賞与額の上限金額は、1カ月あたり150万円です。

雇用保険料の計算方法

賞与から控除される雇用保険料は、賞与総支給額に雇用保険料率をかけた金額です。

賞与から控除される雇用保険料 = 賞与支給額 × 雇用保険料率

令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度と同じで、以下の表の通りです。

雇用保険料率
従業員負担分会社負担分
一般の事業15.5/1000
6/10009.5/1000
農林水産・清酒製造の事業17.5/1000
7/100010.5/1000
建設の事業18.5/1000
7/100011.5/1000

出典:雇用保険料率について|厚生労働省

1円未満の端数については以下のように処理します。

  • 50銭以下:切り捨て
  • 50銭1厘以上:切り上げ

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「賞与の所得税が高い」と感じる理由

賞与やボーナスの所得税が高い(=手取り額が予想よりも少なく感じられる)主な理由は、賞与が通常の給与よりも高額になるため、源泉徴収される税金や社会保険料もそれに伴い大きくなるためです。

賞与の所得税は額面のボーナスから社会保険料を差し引いた金額に対して、所得税率を適用して計算されます。この税率は、前月の給与額と社会保険料を差し引いた金額に基づいて、国税庁の定める表により決定され、税率は所得の多さによって変動します。

つまり所得が多ければ多いほど(前月の給料が高いほど)、また扶養家族が少なければ少ないほど税率は高くなります。

賞与の所得税が通常の倍になることはある?

賞与の源泉所得税が「倍になる」という状況は、対比する期間にもよりますが、人によってはあり得るでしょう。

昨年比で「賞与の所得税が高くなっていないか?」と思った場合のよくあるケースとしては、前月の残業時間が増えており、それに伴って前月の給料が(比較対象月と比較して)高くなっているケースが挙げられます。これは、賞与の所得税が、前月の社会保険料控除の金額と扶養控除の人数で決まるためです。

ただし、最終的に所得税の金額は年収で決まるため、年末調整をすれば還付されるケースも多いです。

令和6年分所得税の定額減税は賞与も対象

 年分所得税の定額減税のしかた6令和

引用:給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた|国税庁

改正法案が成立した場合、令和6年6月1日から実施される所得税の定額減税制度では、給与や賞与などに関連する源泉徴収税額から一定の減税額が控除されます。

控除は、その月に支払われる給与等の前に計算された税額から行われ、完全に控除しきれなかった場合は、年内に続く給与支払いで順次控除されます。

また、年末調整を受ける給与所得者に対しては、年末調整において計算される所得税額から年調減税額を控除します。この控除後の金額に基づいて、最終的な年間の税額が計算されます。

制度の詳細や注意点などは、国税庁のサイトをご確認ください。

参考:給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた令和6年分所得税の定額減税Q&A

賞与の源泉徴収税額の求め方を理解し正しい計算を

賞与から源泉徴収される所得税は、前月の給与を基準にして税率が決まるなど、給与の場合とは異なる方法で計算されます。

多くの場合、賞与から源泉徴収される所得税の額は正しく計算されていることでしょう。しかし、賞与は金額が大きいだけに、間違えると誤差も大きくなってしまいます。

もし、賞与の所得税の額が間違っているのではないかと心配になった場合は、ここでご紹介した計算方法をもとに、自分でチェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、給与等支給時に徴収される源泉所得税額(復興特別所得税を含む)と年税額との過不足は年末調整にて精算(還付又は追徴)されます。

よくある質問

給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は同じですか?

いいえ、給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与の源泉徴収税額は、どのように求めますか?

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与によって源泉徴収税額の求め方が違うことはありますか?

前月の給与がなかった場合や賞与が前月の給与の10倍を超える場合などは、計算方法が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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