立替金と仮払金|2つの違いを比較して解説

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立替金と仮払金は「後で」返したり「後で」精算したりするなど、一度仕訳を起こした後でもう一度仕訳を起こす必要がある点で共通しています。

ここでは立替金と仮払金それぞれの使い方を解説しながら、相違点を顕著にしていきます。

立替金とは

立替金とは、本来支払うべき人に代わって支払いを行なったときに用いる勘定科目です。

具体的な内容を例示すると、
・本来取引先が支払いを行なうべき費用や手数料を会社が代行して出費したケース
・本来従業者が支払いを行なうべき雇用保険料や労働保険料を会社が代行して支払ったケース
などで活躍します。

それでは上記2つの事例を仕訳にするとどうなるのか説示していきます。

本来取引先が支払いを行なうべき費用や手数料を会社が代わりに現金で出費した場合に起こす仕訳は、

借方科目金額貸方科目金額
立替金0,000現金0,000

となります。

立替金を返してもらった時点で、逆仕訳を起こします。

借方科目金額貸方科目金額
現金0,000立替金0,000

本来従業者が支払うべき雇用保険料を会社が代わりに支払った場合、従業者が負担する分(30,950円)は立替金、会社負担分(68,740円)は法定福利費を用いて仕訳を起こします(所得税や社会保険料、通勤費などは割愛しています)。

借方科目金額貸方科目金額
立替金30,950現金99,690
法定福利費68,740

そして従業者給与や賞与から雇用保険料を控除(天引き)していくことで、会社が立て替えた従業者の雇用保険料は、本来支払いを行なうべき従業者が支払うことになります。

借方科目金額貸方科目金額
給与250,000現金預金248,000
立替金1,200

雇用保険料や労働保険料のように会社が労働局などへ一括して支払った後で従業者へ毎月支給する給与から天引きする場合は「立替金」を使用しますが、健康保険料や厚生年金保険料のように給与から控除(天引き)してから会社が健康保険組合などへまとめて支払う場合は「預り金」を使用する点で注意を要します。

仮払金とは

一方仮払金とは、何がどれくらいかかるかわからないけれど、取り敢えず支払いを行なった場合に適用する勘定科目です。

具体的に例示すると、出張に際して最終的に幾ら経費がかかるかわからないけれど、ひとまず現金を従業者に支給した場合などが考えられます。

従業者に旅費交通費を含めた出張費用として現金60,000円を支給した場合の仕訳は、

借方科目金額貸方科目金額
仮払金60,000現金60,000

となります。

出張後に、受領証を以て精算作業を実行します。

旅費交通費が28,700円で会議費が18,600円だった場合の仕訳を起こしてみましょう。

まずは、旅費交通費28,700円と会議費18,600円を借方に置きます。

次に仮払金60,000円を貸方に置くことで、出張前に手渡した仮払金60,000円の使用用途を明白にします。

最後に余った現金12,700円を借方に置き、仮払金の精算が完結します。

借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費28,700仮払金60,000
会議費18,600
現金12,700

では出張前に手渡した仮払金では足りず従業者の手出し分がある場合は、どのような仕訳を起こすのでしょうか。

まずは使用した費用(旅費交通費38,700円と会議費28,600円)を借方に置くところまでは一緒です。次に仮払金60,000円を貸方に置きます。最後に不足分である7,300円を貸方に置きます。

借方科目金額貸方科目金額
旅費交通費38,700仮払金60,000
会議費28,600現金7,300

今回の出張は合計67,300円が必要であったため、前もって手渡した仮払金60,000円では7,300円が不足していたことがわかります。

立替金と仮払金の決定的な違い

立替金と仮払金は「一時的に支払う」という主旨で共通点があるため、どちらの科目で仕訳を起こせばいいのか戸惑ってしまう人が多いのではないかと思います。

しかし、立替金と仮払金には決定的な違いがあります。それは、「立替金は金銭債権である」という事です。

先ほど立替金の例で挙げた「従業者の雇用保険料を会社が代行して支払った」というパターンでは「従業者の雇用保険料」が金銭債権となっているため、会社が従業者に対して「立替金の返還を要求する権利」が発生するのと合わせて、従業者が会社に「立替金を返済する義務」が生じます。

立替金に関する権利と義務を相殺した効果として、現金で回収したり給与から天引きしたりするなどの仕訳を起こす事になります。

もし出張旅費を仮払金ではなく立替金で仕訳を起こすと出張旅費が金銭債権となってしまうため、会社が従業者に対して出張旅費の返還を要求する権利を有することになります。

また、立替金と仮払金のもう一つの違いは、「仮払金は利益を生み出すために必要な経費(である)」という角度から捉える事が可能です。利益に直結した経費は、必ず受領証といった証拠証憑を元に精算作業をすることが原則となるからです。

仮払金は利益を生み出すために必要な経費であるため「旅費交通費」や「会議費」などで後日精算しますが、従業者の雇用保険料は回収するに留まり通常は精算作業を要しないため、仮払金ではなく立替金を適用することになります。

立替金仮払金
使用する時期本来支払うべき人に代わって立て替え払いをしたとき概算金額を、一時的に出費したとき
見極め基準(1)金銭債権が発生する金銭債権は発生しない
見極め基準(2)会社利益とは直接関連性がなく、予め支払う内容が特定されている利益を生み出すための必要な経費として後日精算することを前提に立て替え払いをしている

まとめ

立替金と仮払金は「一時的に支払う」という点で類似した性質があるため仕訳を起こす際に当惑しがちですが、「返済してもらうことを前提に支払ったか(=金銭債権)」「利益を生み出すための経費として後日精算することを前提に支払ったか」という判断基準があれば、立替金か仮払金かすぐに区別がつきます。

全ての取引が上記基準に該当する限りではありませんが、基礎的な考え方として参考になればと思います。

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