電子帳簿保存法⑤~効率的な導入方法~

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効率的な導入方法

経費精算を効率化する際には国税庁が規定した要件を満たさなければなりません。
では紙の原本を電子データとして保存する、国税関係書類のスキャナ保存導入にあたって、企業側はどういった手順で進めていけばよいのでしょうか?具体的にみていきましょう。

申請する書類の決定

紙の原本を電子データとして保存する際には、どの書類を電子化するか定めなければなりません。この申請する書類は、書類全てではなく一部の書類であっても申請することができます。
ただし、社内においてどういった業務から発生し、その部署においてどのような過程を踏んでどこに保存されるのか明確にする必要があります。

関係書類の確認

スキャナ保存の要件として関係する規程等を備え付ける必要があります。具体的な内容は以下となります。なお、国税庁のHPにおいてこの規程等の雛形が載っています。

事務処理規程

この規程は「業務サイクル後速やかに入力方式」「適時入力方式」で入力する際に求められる要件であり正しく備え付け、運用することが求められます。

内容としては、書類の作成又は受領からスキャニングし、原本と電子データの確認を行いタイムスタンプの付与、そして書類の保存から破棄まで一連の過程を詳細に定めておきます。
また、法令の要件通りにスキャニングが行われるよう各過程において誰が担当し、誰が監督するのかあらかじめ入力スケジュールを作成する必要があります。

ただ、実務上は下記の適正事務処理規程が事務処理規程の内容も包括して規定されることが一般的です。

適正事務処理規程

この規程は申請する書類が重要な書類である場合のスキャナ保存にあたって、求められる要件であり、上記同様正しく備え付け、運用することが求められます。

内容は適正事務処理要件に対応した社内の規程であり、書類の作成又は受領からタイムスタンプ付与までを二人以上の体制で行わなければいけないためその内容に関する規程、また定期的な検査と不備があった場合の改善体制についての規程が必要となります。

業務フローの作成

業務フローとは実際にスキャナ保存するにあたり、書類の発生する場所や各業務ごとの手順をフロー化して見やすくしたものであり、これを詳細に作成することが必要です。
したがってこの規程は書類が重要であっても、重要でない場合であっても税務署への申請にあたり添付することが必要となります。

具体的な業務フローの作成にあたっては事務処理規程で定めれた事項に基づき各手順が網羅されているかどうか確認し、また入力者が違う場合等全ての手順の業務フローが作成されているかに注意し作成していきます。

入力機器の選定

入力機器は平成28年税制改正に伴い「スキャナは原稿台と一体になっているものに限る」という要件が廃止されたため、デジタルカメラやハンドスキャナ、スマートフォンがスキャニングする機器として認められるようになりました。

しかし、書類の解像度は200dpi、赤・緑・青の各色256階調と定められています。また、一般書類はグレースケールとしても認められており、入力方式に応じて書類の大きさに関する情報が必要となってくる場合もあります。

そこで、連続してスキャニングする場合などは連続式のスキャナ装置が適していますし、証憑など台紙に貼付されている場合は複合機などフラッドヘッド型のスキャナ装置が便利です。このように、書類の重要度や入力する方式に応じて適切な入力機器を選定する必要があります。

見読可能性の確保

スキャニングされた電磁的記録はディスプレイ・プリンタなどで整然とした形式及び明瞭な状態を保ち出力できるようにしておくこと、と定められています。

具体的には国税関係書類に係る電磁的記録の保存場所に電磁的記録を出力できるようなパソコンと画面表示ができる14インチ以上のカラーディスプレイ。そして、カラープリンタ(適時入力方式なら白黒でも可)並びにそれらの操作説明書を備え付ける必要があります。

対応システムの導入検討

電子帳簿保存法においては、システムの導入により対応要件の多くを補完できます。
システム要件とユーザー要件
したがって、上記の申請する書類の決定・関係書類の確認・入力機器の選定が定められた後、電子帳簿保存法に対応しているシステムの導入を決定すればすぐに導入が可能となります。

ここまで、国税関係書類のスキャナ保存申請件数が少なかった要因の一つとして、法令に対応したシステムが少なかったことがあげられます。自社で開発するといった手段もありますが、時間と費用がかかります。しかし、平成28年税制改正で要件が緩和されたことにより法令に対応した製品・サービスが販売されるようになってきました。

したがって、現在はスキャナ保存導入を検討してもよい段階になってきたことは間違いないでしょう。

小規模事業者の特例

スキャナ保存において小規模事業者(おおむね常時使用する従業員の数が20人「商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人」以下の事業者)の場合、税理士が事後検査を代行することで企業側の負担を軽減することができます。

適正事務処理要件の体制については従業員数が少ない小規模事業者にとって厳しい条件である場合もあります。そこで、税理士が検査の一端を担うことによりその要件を満たすこととなります。

具体的には書類を作成または受領する人とスキャニングする人は企業側が行い、事後の定期的な検査を税理士に委託するという形です。この特例により、従業員が少ない企業においても導入が可能となります。

まとめ

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存に対応するためには

  • 申請する帳簿書類の決定
  • 関係書類の確認
  • 入力機器の選定
  • 対応システムの導入検討

また、小規模事業者においては税理士が検査の一端を代行することができます。

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