実は最先端の「ベンチャー国家」だった!知られざるイスラエルの魅力を探る

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古代から文明が栄え、今も3つの宗教の聖地として知られる中東国家・イスラエル。ビジネスのイメージを持つ人は少ないかもしれませんが、実は最近、設立間もないにもかかわらず大きな成長が期待できるスタートアップ企業に対し、国家として積極的な支援を始めています。

今回はそんなベンチャー国家・イスラエルの最先端を行くビジネス事情について紹介しましょう。

そもそもイスラエルって…

israel
引用元 Pixabay

イスラエルとはどんな国なのか?

イスラエルは地中海と紅海に面し、中東のパレスチナに位置する国家です。国土は日本の四国ほどの面積で、人口は2014年3月時点で817万人。そこに大阪府の人口と同じくらいの人が住んでいます。

気温は日本と同じかやや高いくらいで、日本人になじみやすい温暖な気候と言えるかもしれません。ただし、イスラエルの北側では比較的雨が多く、反対に南側では雨がほとんど降らずに砂漠が多いという気候の差があります。

イスラエルの経済状況は?

日本貿易振興機構(JETRO)の発表によると、2013年の実質GDP成長率は3.3%でした。2012年は3.4%だったので、内需主導で堅調に推移していると見てよいでしょう。

貿易を見ると、2013年の輸出は前年比5.8%増の667億8800万ドル、輸入は1.5%減の720億ドル。前年の99億7600万ドルから貿易赤字額は大幅に縮小しています。

さらに、イスラエルの国際収支統計から直接投資の動きを見てみると、2013年の対内投資は118億400万ドルと前年比24.5%増まで拡大しています。

出典 JETRO イスラエル

知っておきたいイスラエルの3人の有名人

その1:ギッル・シュエッド(Gil Shwed)

Gil Shwed
引用元 Forbes

インターネットのセキュリティ分野では欠くことのできないファイアウォール技術の「生みの親」的存在とも言えるイスラエル企業、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ。その創業者で、今も会長兼CEOに就いているのが、ギッル・シュエッド氏です。

エンジニア型CEO」と言われている彼が、今も世界の最前線に立ち、情報保護のためのシステム構築に取り組んでいることは容易に想像がつきます。全世界でインターネットによるサイバー攻撃が問題視される現代社会において、インターネットの「番人」としてのその存在感は、今後ますます高まっていくことでしょう。

その2:ヨッシ・ヴァルディ(Yossi Vardi)

Yossi Vardi
引用元 ISRAEL INNOVATION CONFERENCE

ヨッシ・ヴァルディ氏は、1996年に世界で初めてWindowsユーザー同士が直接交信できるチャットサービスを始めた『ICQ』に出資したイスラエルの投資家です。『ICQ』は後に、5000万人のユーザーを有する大手オンラインサービス『AOL』に買収されることに。しかし、その際に彼は巨額の資金を得ることに成功しました。

現在は、将来の大きな成長が期待される「スタートアップ」を支えるエンジェル投資として活躍中。日本のビジネス界からも、「会場に着いたらビジネスに効果のある出会いのチャンスを増やすために廊下を歩く」などの会議活用法が注目されています。

その3:シムカ・ブラス(Simcha Blass)

simcha blass
引用元 Simcha Blass with Eric Johnston(画像右)

シムカ・ブラス氏はイスラエル出身の水理技術者です。ゆっくりと土に浸み込む水滴が目覚ましい植物の生育をもたらすことを発見し、1959年にはパイプやホースを利用した多孔管法(またはドリップ灌漑)を確立。砂漠の多いイスラエルにおける農業効率を飛躍的に向上させました。

数十年に及ぶ彼の試行錯誤が実を結び、1965年に設立されたネタフィム社は、翌年に世界初の点滴潅水システムを上梓。現在も、最先端の技術を駆使した点滴技術やマイクロ灌漑技術を用いて、世界中の農業発展に貢献しています。

イスラエル発の革新的なプロダクト3選

赤ちゃんの無呼吸を発見して命を守るベビーセンス

hisense
ベビーセンス(Baby Sense)とは、赤ちゃんのための呼吸モニターです。元々は、イスラエルの軍事機材を元にした製品なのだとか。センサーとなる板状の機材を赤ちゃんが眠るマットの下に置くと、赤ちゃんの呼吸を感知。一定時間止まった場合にアラーム音とランプで警告を発します。

新生児期を除く乳幼児の死亡原因のひとつでもある乳幼児突然死症候群(SDIS)の防止策として、今では世界中でベビーセンスが活用されています。

足の不自由な人が歩けるようになるReWalk

rewalk
ReWalkとは、イスラエル企業Argo Medical Technologies社が開発した下半身麻痺者用の歩行アシスト装置です。2012年にヨーロッパで認証を受け、またアメリカ食品医療品局(FDA)でも2014年に認可を受けて、アメリカ国内の一般家庭向けに販売されています。

日本では、安川電機がアジア地域も含めてReWalkの独占販売権を取得。現在は病院やリハビリ施設で、試験運用の実施や販売を行なっています。日本の一般家庭向けには、2015年から販売されるようです。

バスケットボールの練習に!インテリジム

intelligym
インテリジム(IntelliGym)とは、バスケットボールのトレーニング用に開発されたプログラムです。様々なレベル・年齢のプレーヤーが使ってみた結果、1回約30分、週に1~2回の使用を数週間継続すると、バスケットボールプレーヤーに必要な瞬時の判断力、集中力、予測能力などが向上しました。

見た目はゲームのようですが、効果はまさに絶大。一時は世界中のニュースや雑誌でも大きく取り上げられ、今も多くのバスケットボールプレーヤーに愛用されています。

イスラエルと日本との関係

イスラエルへの日本企業進出

近年は、イスラエルのベンチャー企業から見た日本企業の印象は、かなり良好のようです。

2013年8月には、バイオブースト・武田薬品工業・ジョンソン・エンド・ジョンソンによる共同出資でベンチャー育成施設(インキュベーター)を設立すると発表がありました。また、2014年2月に楽天がモバイル・アプリケーション・ベンチャーのバイバー・メディアを買収すると発表したニュースも、まだ記憶に新しい人が多いでしょう。

今後も、日本企業とイスラエルのベンチャー企業との関係は強まり、出資や買収なども促進していくものと思われます。

イスラエルと日本政府との関係

日本の経済産業省は、イスラエル経済省との間で2014年7月に「日本国経済産業省とイスラエル国経済省との間の協力覚書MOC)」を締結しました。その中では、日本企業とイスラエル企業の共同研究を促進するために、プロジェクト形成の促進や資金支援の枠組み構築を行うことについて規定を設けています。

また、MOC締結に基づき、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)及びイスラエル産業技術研究開発センター(MATIMOP)の間で覚書(MOU)を締結。これにより、日本企業とイスラエル企業の共同研究開発やプロジェクトの公募・審査・助成など、支援の実施方法が具体的決まりました。

イスラエルには、優秀な人材と次世代技術をもつベンチャー企業が多くあります。また、日本も技術大国として世界の最先端を走ってきた実績を持っています。その両国がMOCを締結したことで、産業に大きな影響を与える研究開発分野の技術革新は更に進化していくものと期待されています。

まとめ

このように、ベンチャー国家・イスラエルと日本とは、国家間レベルでも結び付きが年々深まっています。日本は技術大国だと言われていますが、世界の有能な人材や技術から学ぶべき点はたくさんあります。

地理的には遠くても、日本にとって近い存在になりつつある国・イスラエル。双方が価値ある学びを提供し合い続けることで、更なる相乗効果と好循環が生まれるでしょう。その成果をもって両国が世界を牽引できる国になることが今、期待されています。

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