菊池雄星も挑むメジャーの金銭事情 NYで登板すると「税金が高くなる」ってホント?

埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手が、ポスティングシステム(入札制度)を利用してメジャー挑戦することを表明しましたね。過去の例としては松坂大輔投手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平投手らが有名です。

海外FA(フリーエージェント制度)を使うことも可能ですが、FA権を取得するには出場選手登録後、最低でも9年はかかってしまいます。選手としてのピークが過ぎてしまう可能性もあり、若い選手はポスティングによる移籍を目指すのでしょう。

一方、ソフトバンクなど一部球団はポスティングを認めていないため、どちらの制度も選手にとって悩ましいものですね。今回は、そんなメジャー移籍にまつわる金銭事情をみていきましょう。(執筆者:公認会計士・税理士 國井隆)

ポスティングの移籍金は「球団の収入」になる

まずは中日での復活劇が話題を呼んでいる松坂投手の場合。2006年オフにボストン・レッドソックスと契約を結び、その時の落札金額はなんと約5,111万ドル(当時約60億円)と報じられました。

松坂投手は“60億円の男”の異名を取りましたが、この移籍金は球団、つまり当時所属していた西武の収入になります。当然、日本の法人税の対象になりますね。

実際に西武ホールディングスの2007年3月期の有価証券報告書をみると、連結損益計算書の特別利益に「ポスティングに係る入札額受入益」として60億4,000万円が計上されています。

ダルビッシュ有投手の場合は、テキサス・レンジャーズによる落札金額は約5,170万ドル(当時約40億円)といわれました。所属していた日本ハムの2012年3月期の有価証券報告書には、連結損益計算書の収益の欄に「プロ野球選手移籍金」として40億1,700万円が計上され、増益効果と報じられましたね。

入札金額が高騰する批判を受けて、2013年以降は上限2,000万ドルとする新しいポスティングシステムに変更されました。

大谷翔平投手は新しい制度を使いメジャー球団に挑戦。日本ハムの2018年3月期の有価証券報告書の連結損益計算書では、その他の営業費用及び収益の下に「プロ野球選手移籍金」として22億7,300万円が計上されました。ダルビッシュ投手や松坂投手と比べると、米メディアが伝えたとおり「大谷はバーゲン」ですね。

メジャー契約交渉のカギを握る“代理人”

ポスティングでメジャー球団と日本の球団が契約を締結したとしても、メジャー球団との契約は選手自身がしなければなりません。メジャーリーグでは代理人制度があり、膨大な英語での契約書を進めていくには、やはり代理人は必須といえるでしょう。その報酬はいかほどでしょうか?

実は、代理人報酬は年俸の5%が上限となっており、一定の歯止めがかかっています。菊池投手の代理人は、松坂投手と同じスコット・ボラス氏。大型契約を勝ち取るその交渉術から、「吸血鬼」といわれる敏腕代理人ですね。

また、過去にポスティングで移籍した田中将大投手は、当時の報道では総額1億5500万ドル(当時約162億円)の7年契約とされており、代理人の功績も大きいでしょう。

NYで登板すると税金が高くなる!?


米国の税制は、連邦所得税のほかに、州税、市税がありますが、州によっては州所得税(個人)がないところもあります。フロリダ州、テキサス州、ワシントン州は州所得税(個人)がない代表的な州ですね。つまり、マイアミ・マーリンズ、テキサス・レンジャーズ、シアトル・マリナーズの本拠地では、個人には州税を課さないことになっているのです。

ただし、米国は住所地ではなく稼働した州で州税を課すので、メジャーリーガーはどの州で試合をしたかによって報酬を按分計算する必要があります。各球団は選手ごとの報酬を帯同した試合数で按分し、州税の源泉所得税を計算しているのです。細かい作業ですね……。

もちろん、半分程度は本拠地で試合をするので、州税がない州を本拠地にしているチームの方がトータルの税金は安くなりますね。日本人にも人気の高いヤンキース(ニューヨーク州)やドジャーズ(カリフォルニア州)などは税金の高い州に本拠地を置いていますが、州税は3%から10%程度まで幅がありますので、結構な額になりますね。

税金の差で球団を選ぶ選手は聞いたことがないのですが、ヤンキースなどの人気球団の資金力はメジャー球団の中でも桁外れですから、税金の差以上に年俸が多くなることもあると思います。当然ながら、ニューヨークは税金が高いから、ニューヨークで登板したくないなんて言う選手はいませんね。

メジャーの試合日程は、日本よりも試合数が多く、試合間の移動距離も日本とは比較になりません。食事や言葉の違いもありますので、柔軟な対応力が必要になると思います。今回、メジャー挑戦を表明した菊池投手にも、米国の地で暴れてもらいたいと願っています。

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執筆:國井隆(公認会計士/税理士/行政書士/公認システム監査人/FP)

税理士法人オフィス921代表社員/一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構理事
1965年生まれ、東京都出身。筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻前期博士課程修了。1988年に早稲田大学卒業後、旅行会社勤務を経て、1991年に公認会計士2次試験合格。同年に青山監査法人/プライスウォーターハウス入所。1996年に公認会計士・税理士國井事務所設立及び株式会社オフィス921設立。
スポーツ関係では、公益財団法人日本オリンピック委員会加盟団体審査委員会調査チームメンバー(2012年)、 公益財団法人日本スポーツ仲裁機構「スポーツ団体のガバナンスに関する協力者会議」委員(2014年~2015年)、新国立競技場整備計画経緯検証委員会(第三者委員会)委員などを歴任し、メジャーリーガー、ブンデスリーガなどはじめ数多くのプロスポーツ選手の税務・ファイナンシャルプランニングを担当している。



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