手ごわい“陰陽契約”…ファン・ビンビンさん脱税「見抜くのが難しい」理由

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この記事は1年以上前に公開されたものです。法律・制度などに関して、現在とは異なる内容が含まれている可能性があります。

ちょっと前の話ですが、中国の人気女優ファン・ビンビンさんの脱税疑惑が浮上するとともに消息不明になるという騒動がありました。

「人気女優が脱税! 失踪!」というのも相当インパクトがありますが、個人的に一番のパワーワードだったのは「陰陽契約」です。

陰陽とは、「宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陰と陽の二つのカテゴリに分類する思想」だそうで。税金の話で宇宙規模のスケール感。素敵です。(執筆者:税理士 高橋創)

税金の世界では一番やっちゃダメなやつ

しかしこの「陰陽」、語感はかっこいいですが、「契約」というものとは絶対にくっつけちゃいけない組み合わせな気はします。物事をはっきりさせるための契約に「陰」と「陽」の両サイドがあってはいけませんからね。

この陰陽契約による脱税というのは、要するに「陰」と「陽」の2つの契約書を作成し、「陽」だけをベースに税務申告をする作業です。「陰」はその名の通り、日陰の存在として隠し通されます。

と、ややこしく言ってみたものの、要は売上の一部を抜いて申告しているだけの単純な手口ですね。お手軽な手法ですが、税金の世界では一番やっちゃダメなやつです。

「陰陽契約」は見抜くのが難しい

しかし、ファン・ビンビンさんの脱税を見抜くのはなかなか難しいところ。

そもそも「陰陽契約」は、ガチガチに固められた“表の契約書”がちゃんと用意されているわけです。その一部だけを抜かれても、もう一つの“裏の契約書”のありかが知られない限り、裏契約の存在はないも同然です。

その上、ちゃんと賢いブレーンはついているだろうし、振込の形跡からバレるような単純なことではないだろうし。「中国の税務当局、優秀だ……」と思っていたら告発した人がいたんですね。

色々世間を騒がせた結果、ファン・ビンビンさんは23億円ほどの脱税をして、146億円ほどの追徴税額と罰金を支払うことになりました。脱税額もすごいですが何をどうしたら146億円になるかは謎。恐ろしい話です。

日本でも「ない話」ではない?

これをワイドショーなどでみると遠い世界の特殊な事情のように感じられますが、日本でも「税金の世界」ではない話でもありません

もちろんこれほどの額ではありませんけれど、架空の経費をでっち上げてでも税金を減らしたい会社が「契約書だけ整えておけば税務署は何も言えないだろう!」と考えて、適当な契約書を私たち税理士のところにお持ちになることもないわけではありません。

契約書ではなく都合の良い数字の帳簿を作ってしまう「二重帳簿」(陰陽契約に比べると言葉のインパクトは弱いですね)という手口も存在します。これらは特定の業種に限った話ではなく、どの業種でも起こりうる話です。まあ絶対ダメなんですけどね。

日本で“税の不正”はこうしてバレる

しかし、そういった契約書の偽装や架空の経費計上はどうやってバレるものなのでしょうか。

税金のことに限らず、自分が悪いことをしている自覚がある方は、概ね慎重です。できる限りのアリバイ工作をして完全犯罪を目指します。契約書や領収書と言った書類はちゃんと整えますし、通帳から足が着かないように現金でやりとりをしたりもします。

にもかかわらず発覚してしまうのはどういうときなのか。税務署には水谷豊さんや沢口靖子さんがスタンバイしているのか。

契約や支払は相手あってのことです。架空の相手先をでっち上げているのだとすれば、ちょっと調べてみて相手が存在していなければ簡単にバレますよね。仮に存在していても、まったく別の商売をしているようであれば疑われても仕方ありません。

昔立ち会った税務調査では、一人だけ報酬の支払いタイミングがずれているホステスさんが怪しまれ、しっかり調べられた結果、それが架空の経費だと発覚したことがありました。

事前にそこに気づけなかった私がボンクラだったという話でもありますが、賢い経営者の方が本気を出して様々な工作をし、私も税務署もまとめて騙そうとした場合には、そのすべてを見抜ける自信は、10年以上税理士を続けてきた今でも正直ありません。お手柔らかにお願いしたいところです。

ファン・ビンビンさん、失踪から一転

ファン・ビンビンさんの話に戻りますが、人気女優が完全犯罪を目指したら、過去に恨みを持たれた男からその犯罪を暴露され失踪。その後自分の非を認め、イケメン彼氏と一緒に罪を償っていく。

なにこの2時間ドラマ作れそうなエピソード。スターはどこまでいってもスターですねぇ。

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※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:高橋 創 (税理士)

高橋創税理士事務所所長
1974生まれ。東京都立大学卒業後、学校法人大原学園の所得税法講師として5年間勤務。その後、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。新宿ゴールデン街の酒場「無銘喫茶」のオーナーでもある。



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