e-sportsってどれぐらい稼げるの? プロゲーマーに聞く「日本の寂しい賞金事情」

今や遊びの枠を飛び越え、スポーツ競技として注目を集めるe-sports。“e-sports大国”と呼ばれる韓国や中国をはじめ、アメリカ、ヨーロッパなど世界中の盛り上がりに比べると日本のe-sportsはまだ発展途上です。しかし、今年8月にジャカルタで開催された「第18回アジア競技大会」では、人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン 2018」の大会が行われ、日本代表が金メダルを獲得しました。

今回は、その日本のウイイレ界をけん引してきた「からあげ選手」に、プロゲーマーとしての活動や収入事情などをお伺いしました。

会社員と二足のわらじ 遅咲きのプロゲーマー

<プロフィール>からあげ(@Karaage_Torino
会社員として働く傍ら、e-sportsのプロチーム「SCARZ」に所属するウイニングイレブンのプロゲーマー。ウイニングイレブンの世界大会「PES LEAGUE WORLD TOUR」に出場した経験もある実力者。


――早速ですが、からあげさんが感じるe-sportsの魅力はなんでしょうか?

e-sportsは画面の向こうに対戦相手がいる競技性の高いゲームです。そこに大きな魅力を感じています。時間をかけて、練習や研究を積まないと勝ち続けることは難しいですし、相手の心情を読み合う心理戦でもあります。

一方、正解がない頭脳戦でもあり、どこか将棋に通じる奥深さがあるところも魅力のひとつだと言えますね。

――からあげさんは昔からゲーマーだったのですか?

中学から高校までは部活のサッカーが大変でゲームどころではなかったです。転機となったのは、大学に進学し、一人暮らしを始めたことです。

今から7年ほど前のことですが、大学に入ると少し時間ができるようになったので、暇つぶしにプレイステーションとウイイレを買ってみたんです。それからオンラインで全国にいる相手と戦うようになって、そのレベルの高さにびっくりしました。

とにかく勝てないことが悔しくて、僕の闘志に火がつきました。大学生のときは毎日最低5時間、長いときは10時間近くやることも。ウイイレは一試合が約20分で終わるので、10時間やれば、30試合もできちゃうわけです(笑)。

――からあげさんの勝率は?

2012年の作品でデビューして、その年のオンラインでの勝率は約6割。翌年からは8割ぐらい勝てるようになりましたね。今は9割ぐらいの勝率です。

大学卒業後は、今も在籍している三重で半導体メーカーのエンジニアとして就職しました。もちろん、学生時代に比べると時間は取れなくなりましたが、時間に制約がある分、集中して練習に取り組めています。

――ちなみに、どうやってプロゲーマーになったのですか?

スポンサー企業がついているプロスポーツチームに自分から応募するパターンと、チームから声が掛かるパターンの2つがありますが、僕の場合は後者でした。

e-sportsの代表格である格闘ゲームの選手はプロチームに所属する人がほとんどですが、ウイイレのプロゲーマーはまだ黎明期という段階で、日本では僕が2人目でした。今年2月に契約を結んだばかりです。

これには僕なりの使命感みたいなものがあって、自分がプロ契約を結ぶという「先行事例を作る」ことによって他のチームにもウイイレのプロゲーマーが増えればいいなと思っていました。それによって、「ウイイレコミュニティ」を盛り上げたかったんです。

e-sportsってどれくらい稼げるの?


――からあげさんは、どうやって稼いでいるのですか?

会社員として働いているので会社からのお給料が主な収入源です。大会は週末をメインに行われることが多いので、そういった大会に出場して優勝した場合には賞金が手に入ります。他にもウイイレのゲーム解説のお仕事もしていますね。いわゆる「副業プロゲーマー」みたいな立ち位置でしょうか。

――他のプロゲーマーの方はどう収入を得ているのでしょうか?

プロゲーマーの中には、実業団選手のようにスポンサー企業から固定給をもらって活動する「月給プロゲーマー」もいますし、僕のように固定給はもらわず、チームから「単発のお仕事を紹介してもらうスタイル」の選手もいます。

月給プロゲーマーの中には、ゲームの練習施設となる「ゲーミングハウス」という一軒家に、住み込みでトレーニングをしている選手もいますね。e-sportsの中でも「阿吽の呼吸」のように、チームプレーが求められる競技もあるので、生活を共にして息を合わせる目的で同居をしているチームもあります。


――海外では優勝賞金が10億円を超える大会もあるのに、日本では高額の賞金大会は開催されません。何か理由はあるのでしょうか?

海外に比べて日本のe-sports大会では「高額賞金を出せない」という法的な問題があるからです。日本国内では、高額賞金をゲームメーカーなどが提供することについて、景品表示法の観点から自社商品の売り上げにつながりかねないこと、刑法(賭博罪)の観点からも問題になることが指摘されています。

これに関しては、ゲームを販売していない第三者的な会社や団体が賞金を出すなどの回避策が講じられていますが、「日本のe-sportsでは高額賞金が出せない」という暗黙のルールが根付いてしまっているのが現状です。

――日本のe-sportsの大会の賞金は、いくらぐらいなのでしょうか?

だいたい10万〜30万円ぐらいです。というのも、先ほどの景品表示法の観点から、ゲーム会社が主催する大会のほとんどは、賞金に関するルールとして「上限10万円、もしくはゲーム代金の20倍までの賞金額」「複数の事業者で開催するイベントの場合は上限30万円」となっています。ちなみに海外で開催されるウイイレの世界大会は優勝賞金2,000万円でした……。

――失礼ですが、からあげさんは年間でどのくらい賞金を獲得しているのですか?

具体的な金額はお伝えできませんが、会社員の「ボーナス」が一つ増えたような感覚はあります。2017年からぼちぼち賞金を獲得するようになり、今年に入ってからは中国での大会で優勝するなど結構勝てているので、確定申告が必要になるぐらいの金額は優に超えている感じですね。ただ、普段は会社員なので確定申告は来年が初めて。何から手をつけていいかわかりません……。

――来年は大変になりそうですね。確定申告についてどんなことが知りたいですか?

初歩的なことから教えてもらえると嬉しいですね。例えば、以下のようなことでしょうか……。

◆収入がいくらになったら確定申告が必要になる?
◆プロゲーマーの経費の対象になるものは?
◆中国の大会で獲得した賞金は、どこで納税すべき?
◆初めての確定申告。見落としがちな点は?

※後日、からあげさんの質問を税理士に聞いてみました! 回答はこの記事の後半で。

プロゲーマーの社会的認知向上を。そして目指す世界制覇


――世界の流れを見ていると、日本でもプロゲーマーを目指す人は増えていくのではないかと思います。これからチャレンジしたい方はどうすればいいでしょうか?

たかがゲームと思われる人もいらっしゃるかもしれません。でも、プロゲーマーは常に結果が求められるため、想像以上に厳しい世界です。固定給を貰っている選手ですと、スポンサーからお金を出してもらっているので、プレッシャーとの戦いもあります。他競技ですが、良い成績が残せず契約打ち切りになってしまった選手もいると聞きます。もはや「プロアスリート」と同じですよね。その辺の厳しさを覚悟できるなら、ぜひとも飛び込んでみてほしいですね。

そうしたプロアスリートとしての自覚のほかにも、プロゲーマーはスキル以上に人間性が問われます。いくらゲームがうまくても、マナーや礼儀がなっていない人には難しい世界かなと思います。e-sportsはほかのプロスポーツ同様、応援してくれるファンあっての競技であり、プロゲーマーになればスポンサーや所属チームなどと契約するわけですから、決して遊びではないということです。

――最後に今後の目標についてお聞かせください。

まずはウイイレの世界大会に出場すること、そして世界制覇ですね。前回は日本代表を争う大会で負けてしまった悔しさもあるので……。海外の方にも知られるような存在になりたいです。

そして今後、e-sportsがオリンピックの正式種目になることが期待されているので、ぜひオリンピックに出場したいですね。賞金うんぬんではなく、ひとりの選手としてとにかく出てみたい。ウイイレが競技に採用されることが必要ですが、そのとき、一線で活躍する実力があって日本代表に選ばれるように、これからもさらにレベルアップを目指していきたいと思います。

初めての確定申告! からあげさんの疑問を税理士が解説

からあげさんのインタビューの後、公認会計士で税理士の深堀宗敏さんに確定申告にまつわる質問に答えていただきました。

◆収入がいくらになったら確定申告が必要になる?

「会社員としての給与」と「それ以外の収入」がある人を前提にすると、一般的には、給与以外の収入から経費等を差し引いた金額が20万円を超える場合は確定申告が必要になると考えてください。

◆プロゲーマーの経費の対象になるものは?

収入を得るためにかかった原価や経費は、全て経費として落とすことができます。裏を返すと、「領収書さえあれば確実に落とせる経費」というものは存在しません。

具体的には、収入を得るために必要なものだと証明する「領収書」と「その領収書の用途」があれば経費として認められます。用途についてはメモなどで残っていれば大丈夫です。

プロゲーマーであれば、次のようなものが経費になると考えられます。

コントローラ:
練習や大会のため、すなわち収入に必要なものと考えられるため、経費として認められるでしょう。ただし、プライベートで使うものは認められません。

ゲーム仲間との食事:
交際費については、活動する上で直接必要なものは認められます。ゲーム仲間との食事で行われる情報交換等が、プロゲーマーとしての活動に必要であれば、経費として認められます。

家賃や光熱費、携帯料金等の通信費など:
これらの費用は、自宅を拠点としている場合には、プロゲーマーとしての活動によるものかプライベートでの利用かを、領収書等で明確に区分することは難しいと思います。その場合には、費用のうちプロゲーマーの活動費用として一定の金額を経費とすることができます。

一般的に家賃については、家の総面積のうち、ゲームの練習をしている場所の面積の比で按分する方法があります。例えば50㎡の家で、15㎡の部屋をゲームの練習場所としている場合は、家賃×(15/50)が経費として認められます。

光熱費については、ゲームの練習等で使った分が明確にわかればいいのですが、光熱費の明細に業務かプライベートかの内訳が書かれているわけではありませんよね。何らかの方法で使用割合を算定して、業務にかかる光熱費を計算しなければなりません。例えば、自宅で業務(プロゲーマー活動)をしている時間とプライベートの時間の比率を求めて、その比率で按分するといった方法が考えられます。

◆中国の大会で獲得した賞金は、どこで納税すべき?

原則として、日本に住んでいる場合は日本で納税する必要があります。ただし、中国で源泉徴収されている可能性があるので、その場合は日本で納税する際に、中国で納税した金額を控除することができます。その際、中国での賞金額や納税額がわかる資料が必要になるので保存しておきましょう(※中国での納税については別途確認する必要があります)。

◆初めての確定申告。見落としがちな点は?

個人事業の「開業後」に領収書を取っておくことは一般的に知られていますが、「開業前」と「開業時」にやっておくと良いことはあまり知られていません。

まずは開業前の話ですが、開業前にかかる費用も、事業に必要であれば開業費や固定資産として開業した年以降の費用として処理することができます。開業にかかった備品等の費用についても領収書等の資料を取っておくことが必要です。

次に開業時には、税務署に所定の申請・届出手続が必要になります。

【必須の手続き】
◆個人事業の開業届出・廃業届出
・開業した場合、税務署に開業した旨の届け出が必要です

個人事業主が開業するために必要な書類とは?
個人事業主が事業を廃業する場合の手続き

【届出すると節税になる可能性がある手続き(任意)】
◆青色申告承認申請書
・青色申告の特典(青色申告特別控除等)が受けられます
・開業から2カ月以内に申請書が必要です

青色申告承認申請書の書き方

◆消費税課税事業者選択届出手続・消費税簡易課税制度選択届出手続
・開業当初に、建物等の多額の支出をしている場合は、届け出ることで消費税が返ってくる場合があります
・開業した年末までに届出書の提出が必要です

消費税の課税事業者の条件と提出書類まとめ

開業時の手続きについては期限が定められているものが多く、タイミングを逃すと適用できない、あるいは適用が1年遅れてしまうため注意が必要です。

【取材協力】深堀 宗敏(ふかほり むねとし)@FukahoriTax
公認会計士・税理士/深堀宗敏税理士事務所
PwC税理士法人にて申告書作成業務、M&A、オーナー企業の事業承継対策等に関する会計・税務コンサルティング業務に従事。深堀宗敏税理士事務所を開業。現在、税務実務経験とシステム開発の経験を生かし、クラウドサービスについてのアドバイスを会社のみならず、会計事務所に対して多数行なっている。

(文・サムライト)

BIZ KARTE編集部

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