コミケ作家にチラつく「税金の闇」 現金商売なのに申告漏れがバレる理由

先日、ある漫画家さんと「税金の漫画を作りましょう!」という打ち合わせ(という名の雑談)をしていました。地味な業界でも漫画やドラマになるとイメージが変わることがありますし、税金や税理士のイメージを変えるためには是非実現したいところです。

そのときは「どこかで連載を!」というお話だったのですが、私の密かな野望として、世界最大規模の同人誌即売会である「コミケに参加したい!」というものもあります。半分はお祭りに参加したいというミーハー心、もう半分は時々ネットで目にするコミケ作家についての「税金の闇を見てみたい」という税理士としての好奇心です。(執筆者:税理士 高橋創)

申告漏れがバレて地獄のような追徴課税?


今年の夏のコミケが終わった後、やしろあずきさんという漫画家さんのこんなツイッター投稿が話題になりました。

「真面目だからコミケ終わったら即税理士に連絡して色々してもらってるんだけど、最近過去のイベントとかの売り上げを申告してなかったのがバレて地獄のような追加課税くらってる作家がかなり多いらしいので、兼業でも本業でも作家はマジでしっかり確定申告をしたほうがいいと思う」
「税金関係、フリーランスになったら全く無知の状態でフィールドに放り出されて無知のまま稼いでると突然やってきた税務署にボコボコにされるので義務教育である程度教えておくべきだと思う」

これに対するリアクションを見ていると、悪気はなくても税知識がなかったために、結果的に申告漏れになっていた作家さんは少なくないようです。

コミケでの作品の売買は現金で取引されます。銀行の履歴やレジといった証拠が残るものではありませんので、「ちょっとくらいごまかしても……」という出来心も生まれがちです。記録がないわけですから、場合によっては申告しなくてもバレないような気がしてしまうかもしれません。

実際、私も新宿のゴールデン街でレジもないような小さなバーをやっているのですが、そこでの売上も「これ、ごまかせるっちゃごまかせるよな」と思いながらカウンターに立っています。小心者なのでやりませんが。

現金商売なのに…申告漏れはこうしてバレる


しかし、記録に残らないからといってごまかしを許してくれるほど税務署は優しくありません。私のところにもちょこちょこ「ずっと申告をしていなかったら急に税務署から問い合わせがきたのだけれど、どうしたら良いでしょう?」というようなお問い合わせがきます。

なぜバレないだろうと思っていた現金商売がバレるのか。問い合わせがきた段階で税務署はある程度のネタを握っているわけですが、そのネタの入手経路としては以下のようなものが考えられます。

①印刷屋さんなどから情報が回っている場合
作品を大量に販売するためには印刷屋さんにお願いする必要があります。印刷屋さんがちゃんと申告している場合には印刷屋さんの帳簿に記録が残っていますので、その印刷屋さんに税務調査が入った場合には芋づる式にばれてしまうことがあります。
ちなみに飲食店の税務調査の際は仕入れ先の酒屋さんが情報源になることが多いです。

②SNSから情報を得ている場合
SNSは情報の宝庫です。それを税務署がまったくスルーするわけがありません。宣伝のためにSNSを活用する方が多いご時世ですが、届けたい相手だけが情報を見ているわけではないということは認識する必要がありそうです。昨年私のところに税務調査が来た際にも「ツイッターを拝見しましたが、先生はだいぶお酒が好きなようですね」といきなり言われてゾッとした記憶があります。

③誰かからのタレコミがあった場合
申告漏れが発覚する原因としてタレコミは相当に多いと言われています。特に統計などが出ているわけではありませんが、昔から言われている話ではありますのでそれなりに信憑性はあるのではないかと思います。有名になると周りからやっかまれるのは仕方がないことではありますが、「有名税」が本当の「税」に直結しては洒落になりません。

税務署の指摘が入った場合、税金が高くなるカラクリ


さて、質問です。
同じ売上があるとして、自分で申告をしていた場合と突如税務署から指摘が入った場合、どちらの方が税金は安くなるでしょうか? もちろん罰金は別として。

本来同じ条件の下であれば税額は同じになるはずですが、実際には後者の方が多くの税金を納めることになる場合がほとんどです。

申告をする方は資料の保存等の準備を整えていますので、領収書等もしっかり用意して、できる限り経費を多くできるような対策をしています。資料がしっかり用意されていれば税務署も簡単には経費を否定できません。

これに対して申告していない方は全くノーガードなわけですから資料を保存していないことも多く、税務署の言いなりの税額を払わされてしまうことが多くあります。税務署側は「この業種だったら経費はこれくらい」という統計的な数値に基づいて計算をしてくることが多いのですが、特に資料がなければこれを覆すことは相当に困難です。この場合には税金を減らすような工夫が入る余地など全くありませんので、ちゃんと申告をしている方よりも割高になってしまうわけです。

確かにばれなかった時には税金分が丸得にはなりますが、「ばれるかも」と言う気持ちを抱えているだけでも不安ですし、もしばれてしまったら数年分の(しかもちょっと割高な)税金が罰金とともに一気に襲ってくる恐ろしさを考えれば、ちゃんと申告することをおすすめします。

クリエイターの方が税金に興味を持ってくれると税金をネタにした創作物ができる可能性も増えますし、その結果、「世間の嫌われ者」である税金がもう少し愛される存在になる、なんてことが起きると良いなと思っています。

高橋創税理士の記事一覧

■2018年6月6日掲載:
 仮想通貨の「億り人」はたったの331人 億万長者たちが幻に消えた理由
■2018年7月3日掲載:
 ざわつく税理士業界… はれのひ元社長が言う「税理士のミス」はありえるのか

執筆:高橋 創(たかはし はじめ)

税理士/高橋創税理士事務所
1974生まれ。東京都立大学卒業後、学校法人大原学園の所得税法講師として5年間勤務。その後、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。新宿ゴールデン街の酒場「無銘喫茶」のオーナーでもある。



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