日大アメフト部の影響? 東大・慶大の運動部で「一般社団法人」設立が相次ぐワケ

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大学運動部に「法人設立」の波が押し寄せています。2016年に京都大学アメフト部が一般社団法人を設立して以降、2018年に入ってからは東京大学アメフト部と慶應大学ラグビー部が相次いで一般社団法人の立ち上げを発表しました。
日大アメフト部の悪質タックル問題で、旧態依然な在り方が問題視されている大学スポーツ界。運動部の一般社団法人設立が増える背景に、何の狙いがあるのか探りました。
※画像はイメージです

運動部のままでは「銀行口座も作れない」

部員180人を数える東京大学アメフト部は、2018年8月に一般社団法人「東大ウォリアーズクラブ」を設立します。代表理事の好本一郎さんは狙いをこう説明します。

「チームを強くするには、計画的なマネジメントガバナンスの強化が不可欠でした。

社会的問題になっているとおり、大学スポーツは様々な問題を抱えています。その一つが日大アメフト部の件で露見しました。

歴史的に日本の大学は『運動部はあくまで課外活動』と認めているだけで、安全対策や健康管理、資金管理、用具管理などは大学ではなく部員やOBらに委ねられています。ここで運営体制が甘いと一部の人が利権を握る私物化が進んだり、組織力の低下を招いたりするのです。

法令にもとづいた組織運営と内外からの監視強化により、ガバナンスレベルを上げることが必要でした。その最適な手段として法人設立を決めました」(好本さん)

また、「お金の面でも課題があった」と好本さんは言います。

「アメフトはお金がかかるスポーツです。安全で発展的なスポーツ活動を行うには相応の投資も必要です。ウォリアーズの運営は部費だけでは足りず、スポンサー企業やOBの支援を受けています。

しかし、そもそも運動部は任意団体なので銀行口座を作れません。これまでは監督の個人口座を使用していましたが、当然ながら企業は個人口座への協賛金の振り込みを避けます

企業との間で契約が必要になっても、法人格がない任意団体では契約の主体として契約を結ぶこともできません

ですが、法人設立で法人口座を作れますし、契約の主体にもなれます。さらに、予算や事業計画などの透明性を担保し信用力を高めることで、さらなる資金獲得につなげられるのです」(好本さん)

一般社団法人設立は「お得」なのか

慶應大学ラグビー部も、2018年3月に一般社団法人「慶應ラグビー倶楽部」を設立。目的も資金獲得とガバナンス強化と、東大アメフト部と意を共にしています。

同法人のウェブサイトでは市瀬豊和専務理事が「任意団体では税務面などが甘くなりがちなので、今よりさらに襟を正すという意味で法人を設立する」とも話しています。

税務への言及がありましたが、運動部の法人設立で税制面は得になるのでしょうか。一般社団法人の制度や税務に詳しい、税理士の高橋和也さんに聞きました。

「任意団体は、法人税法上は『人格のない社団等』に分類されます。人格のない社団等は、物販業・不動産貸付業・請負業などの収益事業を行っていなければ、法人税を課税されません

なので、税負担を考えると任意団体の方が目先ではお得と言えるかもしれませんが、一般社団法人設立により組織の信頼度が高まり、資金調達力や人材を惹きつける魅力が高まることで、中長期的に安定した組織運営ができますね」(高橋さん)

一般社団法人の税率はどれほどでしょうか。

「一般社団法人の法人税率は、所得が年800万円以下なら15%、年800万円超なら23.2%になります(※平成30年4月1日以後開始の事業年度)。これは資本金1億円以下の株式会社と同じ税率です」(高橋さん)

寄附金は課税対象になるのでしょうか。

「一般社団法人の場合、法人税法で規定する『非営利型法人』であれば寄附金に法人税は課税されません。そうでない場合は、寄附金にも法人税が課税されます。

ですので、寄附金収入が多い任意団体が一般社団法人化する場合には、『非営利型法人』の要件を満たすように法人設立するのが一般的です。

ちなみに任意団体が受け取る寄附金には、法人税は課税されません」(高橋さん)

変わる大学スポーツ

つい先日も、スポーツ庁が、全米大学体育協会(NCAA)をモデルにした、大学スポーツ統括組織「日本版NCAA」の設立準備委員会の初会合を開きました。この機運もあり、前出の好本さんは日本の大学運動部の一般社団法人設立の動きは活発化すると予想します。

「スポーツ先進国のアメリカを参考に、部員の学習機会の確保やガバナンスの強化、マーケティングへの取り組みなど、日本の大学スポーツ界では改革が起きています。これに伴い、運動部の法人設立の流れも加速するでしょう」(好本さん)

「私たちは、アメリカンフットボールというスポーツを、心から愛しています。しかし今、そのフットボールが、かつてないほどの危機を迎えています」――日大アメフト部の諸問題の後に出された、関東学生アメリカンフットボール共同宣言では、関係者らの切実な思いがつづられています。安全で公正な組織運営に向け、大学スポーツは今変わろうとしています。

参考|法人税の税率(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/5759.htm

取材協力:高橋 和也(税理士)

税理士/高橋和也税理士事務所
1974年、兵庫県加古川市生まれ。大阪市立大学法学部卒業後、株式会社クボタに入社し住宅建材の営業職に従事。その後35歳で会計業界に転身。2017年に43歳で税理士登録・開業。営業経験を活かしたフットワークの軽さで、都内から関西、四国、九州まで幅広いエリアのお客様をサポート。一般社団法人や公益法人などの非営利法人を得意とし、最近では大学運動部が設立した一般社団法人のサポートも行っている。共著に『一般法人・公益法人の理事・監事・評議員になったらまず読む本』(忘羊社)



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