創業期の事業を「早く」「大きく」する『財務』のチカラ 6.資金調達力の育て方

起業家は、「財務」を知ることで、もっと事業を発展させることができます。この連載では、起業家が創業からもつべき「財務」の視点・考え方について、シリーズでお伝えしていきます。
第4回第5回で、事業投資の大切さ、事業投資をすることで事業が「早く」「大きく」なっていくというお話をしました。一方で、旺盛な事業投資を行うためには、その反面で、資金の調達力が必要になってくるということも、第5回の終盤でお話ししました。

今回は、「資金調達力の育て方」をテーマに、第2回「資金調達って、どんな方法があるの?」でも紹介した資金調達方法の中で、最もよく使われる「融資」を受けられる会社になるためには、どうしたらよいのかをお話をしていきます。(執筆者:公認会計士・税理士 萩口義治)

創業融資を受けるべき4つの理由

資金調達力を「早く」育てるために、創業期に創業融資を借りておくことが重要です。創業期は事業資金を借りるのが怖かったり、自己資金だけで創業できるから融資は必要ないと思ったりするかもしれません。

それでも創業融資を借りておくことで、以下のメリットがあるのです。

1.金融機関との取引実績になる

金融機関は、新規のお客さんにいきなり多額の融資をしてはくれません。だとすると、できるだけ早く金融機関と取引を開始し、既存客になっておくことで、実績ゼロのスタート地点から1歩前に進んでおくことができます。

たとえば創業3期目に、急に到来したチャンスをつかむため多額の資金が必要になった時に、新規顧客では金融機関からの融資もそこまで多くを望めません。創業時に既存客となり、返済実績を積んでおくことで、金融機関に事業の中身を理解してもらい、有事の際に支援してもらいやすくなるのです。

2.創業時は借りやすい

創業時は、国の制度を利用すると決算書などの実績資料なしで借りることができるため、ある意味では融資を受けやすいのです。1期目が終わって、大赤字の決算書をもっていって融資をお願いしても、その時には、金融機関はなかなか貸してはくれないでしょう。

であれば、1期目の結果が出る前に、自己資金の金額や、自己の経験に基づいて、借りられるだけの資金を借りておいた方がよいです。

3.借りた資金が創業期の不確実性から事業を守る

事業資金は、用意した自己資金だけで十分だと想定されていたとしても、創業期は不確実性が高いです。思い通りにいくことなんて、そんなに多くはないのです。創業融資を借りていれば、下ブレした場合の資金余力となり、立て直すだけの時間を与えてくれます。

4.借りた資金が、事業投資の源泉となる

事業資金は、使い道の決まっている自己資金だけでも足りるような気がするものですが、実際に預金残高が100万円を切ってくると、精神的には余裕がなくなり事業投資に回すことが難しくなります。事業には、一定の残高が必要なのです。

創業融資をして、現金残高が十分な状況があってはじめて、チャンスをつかみに行くための事業投資も可能になるのです。

よい決算と、返済実績が与信を育てる

創業融資によって、金融機関の既存客となった会社が、その後、調達力を高めるためにすべきこと。それは、「よい決算」と「返済実績」を作ることです。

創業経営者に貸した資金を、経営者がどう生かし、どう事業を発展させたのか――お金を貸した金融機関はそれを見ています。とはいえ、銀行の担当者が、毎日企業に足を運んで調査するわけではありません。結果的には、「決算書」で判断されるのです。

ここで、貸した資金を食いつぶし、赤字決算をしているようでは、次の追加融資は得られません。黒字決算をして、納税をして、内部留保を積み上げている会社には、この会社にはもっと貸しても返済してもらえそうだと金融機関に見なされ、追加融資をしてくれるようになります。

前提条件としては、返済が滞りなく行われていることが大前提です。返済は残高不足や支払い遅れが1回あるだけでも、良いことではありません。しっかりとした債務観念を持ち、返済を送れずきっちりする会社と、金融機関は取引したいのです。

本質的ではないですが参考までに、金融機関との「お付き合い」ということも求められる場合があります。それは、金融機関によってですが、「売上の入金口座として使ってほしい」「預金残高を多くしてほしい」「積立してほしい」「ちょっ金融商品買ってほしい」など考えられる要望はさまざまですが、交渉力が弱いうちは、金融機関とうまく付き合いながら進めることになるでしょう。

プロパー融資の獲得

取引が浅い段階では、金融機関の「保証人」となる信用保証協会の審査が通れば金融機関が融資してくれるという「保証協会付き融資」の場合もあります。しかし、「よい決算」と「返済実績」を積み上げることで、金融機関がその企業に対していくらまで貸せるかという「与信」が育っていきます。そのうち金融機関が自らのリスクでお金を貸す「プロパー融資」が借りられるようになるのです。

一つの金融機関からであってもプロパー融資を受けているとなれば、それは、他の金融機関に対しても信用できる会社であるという一定の証拠になります。

プロパー融資を受け、その後も「よい決算」「返済実績」を積み上げていけば、複数の金融機関から、「うちからも借りてほしい」と依頼される日も近くなってきます。

ここで大切なのは、プロパー融資に消極的な金融機関と、積極的な金融機関があるということです。創業当初などは、基本的には「信用保証協会」の保証付きでなければどの金融機関も貸してくれないと考えるべきですが、将来的に「プロパー融資」も含めて支援してくれる金融機関なのかどうか、金融機関選びも大切な要素になるのです。

調達力の強化は、長期的で継続的な活動である

このように、資金調達力の強化は、「一朝一夕」で出来るものではありません。資金需要がある時も無い時も、取引実績を作るための融資は重要な戦略ですし、日々の事業活動、そして、決算申告を健全に行っていく必要があります。ですので、調達力は長期的に、継続的に育てていくものであるという認識をもってほしいと思います。

実際には、お金を借りたい時になって、にわか仕込みで借りようとする会社が大半です。お金を借りたい時に借りようとしても、思うように借りられるかどうかはわかりません。日ごろから、調達力を高めるという見地から事業活動を続けていけば、借りたい時でも借りなくていい時にでも借りておけるのです。

お金さえあれば、会社は倒産しません。長期的な見地から、資金調達力を強める事業活動を意識していくことで、いざとなった場合の調達力は確実に変わってくるのです。

まとめ

資金調達力を高めるには、「よい決算」「返済実績」を作ることが重要。
次のサイクルをたどり、時間をかけて資金調達力を高めましょう。

①金融機関との取引実績をできるだけ早く作る
②取引がはじまったら、「返済実績」を積み、「よい決算」で事業を進める
③そのうち、「プロパー融資」を獲得することで、信用力はレベルアップする
④資金調達力は短時間に身に着くものではなく、長期継続的に育てていくものである

次回は、「現預金残高を増やすことの重要性」についてお話したいと思います。

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監修:萩口 義治 (公認会計士 / 税理士)

株式会社HG&カンパニー / はぎぐち公認会計士・税理士事務所 代表
中小企業から上場企業まで支援するキャリアを経て、大きくなる事業に必要なものは「財務」であるという。「税務」最適は経営最適と一致しないことが多く、税務だけでなく、財務・経営の視点から起業家の事業成長を支援することをミッションとする。本人自らも積極的な事業投資によって、事業を拡大中であり、常時人員を募集中である。



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