税理士に聞く、2018年度の税制改正で押さえるべきポイント

政府は2017年12月、2018年度税制改正大綱を閣議決定しました。今回の税制改正にともない、個人では基礎控除や給与所得控除等の見直し、法人では賃上げした場合の法人税の税額控除の改正、経営者にとっては事業承継税制の大幅な見直しが必要になるなど、個人・法人・経営者それぞれに影響する項目が多いようです。とはいえ、「これまでと何が変わるのかいまいちピンとこない」と感じる方も多いでしょう。そこで今回は、首都圏の優秀な税理士を紹介するサービス「ビズサポ」から3名の若手税理士を招いて、2018年度の税制改正でおさえておくべきポイントを聞いてみました。

高山亜由美
2008年にPwC(プライスウォーターハウスクーパース)税理士法人に入所、法人・個人の税務申告業務を経験。2010年にパートナーズ綜合税理士法人へ転職し、おもに資産税の業務を行うとともに、相続に関する相談窓口である「一般社団法人相続・事業承継しえん協会」の相談員を兼務。2015年に独立開業。現在は日本全国で年間100件近いセミナーをこなす相続セミナーと相続スキルの第一人者。

 

尾崎晢也
2007年より大手税理士法人にて、日系企業及び外資系企業に対する税務申告業務、事業承継等の税務コンサルティング業務に従事。また、三井住友銀行の富裕層向け、事業承継・相続対策担当部署に出向経験があり、法人オーナーだけでなく、資産家向け相続対策の経験も豊富。2014年以降は税理士事務所の代表社員として、法人は地域の商店から上場企業まで幅広い会社の税務顧問として活動中。

 

片山武蔵
2007年3月慶應義塾大学経済学部卒業。2007年PwC税理士法人に就職。主にオーナー系上場企業をめぐる会計・税務業務に従事。2012年野村證券会社に出向。オーナー系上場企業のプライベートバンキングサービスに従事。2015年にやまと総合会計事務所を開業。専門家が推奨する優秀な税理士を厳選して紹介するサービス「ビズサポ」を運営。

家なき子特例が改正された

——今日はよろしくお願いします。早速ですが、今回の税制改正のポイントを、皆さんが携わっている業務に絡めて教えてください。

高山氏(以下、高山):私は相続や事業承継のコンサルをメインに担当しています。会社の税金だけを見るのではなく、個人の所得税、将来の相続税(事業承継)も含めた「全体の絵」としてベストな状態をつくるご提案をしなければなりません。

とくに今の時期は、2018年度の税制改正で、個人課税が見直され、法人課税や事業承継税制が緩んでいるなどの情報をもとに、相続・事業承継対策の見直しをするお客さまが多い印象です

——具体的にどんな見直しをされるのですか?

高山:個人の所得税に関しては、高所得のため所得税負担が大きい方は、資産管理会社を検討するケースが非常に多くなっています。これまでも同様のご相談はありましたが、2018年の税制改正を踏まえて動き始めたお客さまが5件ほどいらっしゃいますね。

また、経営者に関しては、事業承継について、「事業承継税制」を前提として進めていくのか、それとも、まだ事例が少ないことやリスクが残るなどの理由から、その他の対策を進めていくのか、という議論もよく上がります。

他にも、今回の税制改正では、個人の相続税に影響する「小規模宅地等の特例」が厳しくなりますね。いわゆる、「家なき子の要件の改正(※)」が行われます。これにより、相続税額が変わり、相続対策全体を検討し直すことになってしまったお客さまもいらっしゃいます

※家なき子特例の改正:家なき子特例とは、故人と同居をしていなくても小規模宅地等の特例が使える特例。以下2つの条件を満たした場合、書類の記載・提出等により、小規模宅地等の特例の適用が可能。
(1)故人の配偶者及び同居相続人がいない
(2)故人の自宅の土地を相続する相続人が、相続開始前3年以上、借家住まいである
今回の改正により、遺贈や、不動産の名義を変えることにより、「家なき子特例」を使う対策が塞がれた。

——社長、会社、個人の全てを考えて、どうすれば一番得するかをアドバイスするということですね。

高山会社の顧問税理士が専門でない場合、まずは事業承継対策の部分に限定してご相談をいただくことが多いです。その流れで、個人の所得税、会社の法人税、将来の事業承継(相続税)全体として、最善策を検討していくケースが多いです

——会社と個人のお金の流れで、どんなことに気をつけたらいいですか?

高山:所得税を支払ってストックした預貯金は、将来、相続税の対象になるわけなので、二重に税金を支払うことになります。いつ、どのように、いくら個人の手元にキャッシュを持ってくるのが税金上有利なのかは、一度見直しをしてもいいかもしれませんね。

——ちなみに、中小企業の経営者からよくある相続まわりの相談ってどんなものがありますか?

高山:事業承継対策のセミナーに来られる方の中にも、ご自身が所有する株式が相続税の対象になることを知らなかったり、株式の評価額を把握していなかったりする経営者の方もまだまだ多くいらっしゃいます。

——そうなんですね……。ところで、株価って何から算定されるんですか?

高山:配当や利益、資産などをもとに計算するイメージですね。非上場株式は、財産評価基本通達に基づいて評価するのですが、あまり細かい部分まで経営者の方が勉強する必要はないと思っています。

ご自身の会社の株式がどのような要素によって上下するのか、また、どういったときが株の移転時期としていいのか、そのあたりを把握していれば十分です。あとの細かい点は、私たちのような税理士をうまく使っていただくことで、効率的に対策を進めていただけると思っています。

最後に……誰に相談していいか分からない、という声をよく聞きます。税理士も「人」なので、相談できる専門家を探されている方は、例えば、数人お会いになってみて、ご自分と合う方を見つけることも、対策を始めるうえで重要なポイントになると思います!

所得税の課税所得金額に影響はない

——尾崎さんは普段、どのようなお客さんに何をアドバイスをしているのですか?

尾崎氏(以下、尾崎):私のお客さまは、従業員数でいうと5〜10人くらい、売上だと1〜2億円くらいの中小企業が圧倒的に多いです。私がクライアントの社長によく話すのが、「売上を上げて無駄な費用を使わないことが一番の税金対策」ということ。

たしかに、売上を上げれば税金は増えるけど、税金を抑えるために支出をして費用を計上するなんてことはしない方がいい。結局、先にお金が出ていってしまうので。それでも税金を払いたくないという人もいますが、その場合は経営セーフティ共済や小規模共済に加入する方が効果的だと思います

——税金対策でやりがちな支出にはどんなものがあるのですか?

尾崎:ほぼ100%保険ですね。よく保険の営業マンが持ってくる提案書を見ると、「返戻率90%、税効果考慮後返戻率110%」と書いてありますが、よく分からず加入してしまう社長も結構多くて……。

——付き合いで加入している経営者も多そうですよね。

尾崎:そうかもしれません。でも、解約して保険金を受け取ったときのことは考えてないし、結局、お金は毎月出て行くのでもったいない。だから、経営セーフティ共済とか、若い方ならiDeCoやふるさと納税をおすすめしています

——たしかに、「iDeCoって何?」ってよく聞かれますよね。

尾崎:iDeCoとは、簡単に言うと、自分年金の積立のことなんです。例えば、私たちのような親世代に身近な話で言うと、子ども手当、市の病院代が無料になるかどうかは、所得で判断されることが多い。でもそれは、iDeCoや小規模共済の積立額を引いた所得が基準になるので、同じ給与でもiDeCoや小規模共済に加入している人の方が子ども手当を満額もらえたりするんです。

——iDeCoの金額を控除した後の所得額で子ども手当の判定をしてくれるのですね。

尾崎:そうですね。幼稚園の補助金などは住民税で判定されますが、それもiDeCoや小規模共済に加入していれば下げることができます。こんな話をすると喜んでくれるお客さまも結構多いんですよ。

——ちなみに、今回の税制改正で給与所得控除の改正があるようですが影響はあるのですか?

尾崎:正直ないですね。給与収入が850万円までの人は給与所得控除と基礎控除はセットでプラマイゼロなので。給与所得控除は一律10万円下がり、基礎控除が一律10万円上がるという改正は入ることが予定されているので。基本的な所得税の課税所得という意味では増減はありません

あと、マイナンバーが導入され、税務署から扶養控除に関する問い合わせが多くなって、今年も2〜3件問い合わせがありました。というのも、保険医療控除申告書の「所得」という記載事項を書くときに、収入金額を書いてしまう人が多くて。奥さんがパートをしている場合は給与所得から控除額を引かないと配偶者控除が取れない。

だから、私がお客さまにお願いしたのは、従業員の配偶者がパートで働いている場合は、「収入ではなく給与所得を書いてください」という説明書きを保険料控除申告書と一緒にその従業員に渡すということ。結果的に取引先の従業員は間違えて収入金額を記入することがなくなったし、私たちも間違えることがなくなりました。

——たしかに……。大きい会社ほど間違えて記載して、配偶者控除を取れていない人が多そうですね。

尾崎:あと、2018年1月から配偶者控除の対象になる配偶者の年収が103万円超から150万円超に引き上げられることになったんです(世帯主の年収が一定金額以下の場合に限定されます)。ただ、結局、配偶者がパートで年収130万円を超えてしまうと、子ども手当の計算をする際の扶養から外れてしまいます。なので、配偶者控除が拡大されても妻の収入を増やしてしまうと子ども手当がもらえなくなってしまう可能性があるんです

——子ども手当を気にする人は配偶者控除の拡大に引っ張られない方がよさそうですね。

税務・会計も大事だけど、経営者は本業に専念してほしい

——片山さんは若手経営者の支援実績が豊富と伺っています。

片山氏(以下、片山):そうですね。私のお客さまは自分と年齢の近い若手経営者が多いです。成功している若手経営者の目の付け所、マーケティング方法を逆に勉強させてもらっています。そのおかけで僕自身もマーケティングや最新ビジネスについて学ぶことが多い。両親も経営者なので、幼い頃から経営について学ぶ機会がありました。だから、僕の場合は経営ノウハウの蓄積とお客様へのコンサルティングがメインで会計・税務はおまけみたいなイメージですね。もちろん、節税対策などの相談も多いです。

——クラウドサービスの導入支援もしているとか?

片山:そうですね。マネーフォワードさんと組んだり、いろんなところでクラウドサービスの情報を仕入れたりして、「こんなツールがあるらしいですよ」「実際にこのソフトを使ってみたんですけど、使いやすかったですよ」「このソフトを導入するともっと楽になりますよ」という感じで、お客様には費用対効果や使い勝手がいいと思ったものをオススメするようにしています。とくに私の事務所には、Youtubeなどの動画ビジネスや、「せどり」といった転売ビジネスなど、今どきの商売で成功しているお客様が多いので、最新ビジネスの成功ノウハウが蓄積されていくんです

そうすれば、いろんな相談に応えられるようになるので、お客様からは「どうやって成功したんですか」っていうのをなるべくヒアリングするようにしています。税金には直接関係ないけど、成功のノウハウを貯めておけば、絶対にいろんなところで活かせると思っています。

——具体的にクラウドの導入とはどういったものなのでしょうか?

片山:私の場合は「お客様の日々の取引ごとに、入力ルールをいくらの入金の場合はこういう仕分け仕訳をする」みたいな雛形をマネーフォワード クラウドでつくってあげて、取引があるごとにそのルールから簡単に数字だけを打ち込むだけでいいように、日々の業務を効率化したりします。そうすることで、会計業務や日墓の煩わしい業務にかかる時間を大きく削減することが可能です。社長にはやっぱり本業に集中してほしいので。

——クラウドだったら、入力が間違っていても元データまで辿りやすいからチェックしやすいですよね。

片山:そうですね。属人的な処理方式ではないので、間違えることは少なくなります。もし、何かあったらはじかれますし。経験則で計算することはいいことでもあるけど、それって本当に今の時代にマッチしているのかは疑問です。楽できることは全部ルール化して、基本的には可能な限り、ネットバンキングやクレジットカードなどを使用すれば、最終的に社長や経理の仕事はだいぶ削減されるはず。こうした提案をお客様にすると、会計や税務の提案以上に喜ばれます。

——なるほど、今日はとても勉強になりました。みなさま貴重なお話をありがとうございます!

まとめ

・不動産の名義を工夫して相続税を大幅減額させる意図的な「家なき子特例」が適用外に。
・給与所得控除と基礎控除の改正はプラマイゼロで所得税の課税所得に増減はない。
・配偶者控除の対象となる配偶者の年収が103万円超から150万円超に拡大したが、配偶者の年収が130万円を超えてしまうと子ども手当などの扶養概念から外れてしまうので注意が必要。
・マーケティング、クラウドサービスの導入支援、相続、事業承継など、税理士によって得意領域が異なる。特に若手の税理士は今どきのビジネスで成功している若手経営者の成功ノウハウをナレッジとして貯めていることが多い。

 

BIZ KARTE編集部

「BIZ KARTE Powered by MFクラウド」は株式会社マネーフォワードが運営している公式メディアです。
MFクラウドに関係する会計や経理などのバックオフィス業務をはじめとしたビジネスに役立つ情報を更新しています。



【おすすめ】会計・経理業務でお困りの方へ

マネーフォワード クラウド会計なら

  • 面倒な作業はすべて自動化
  • 会計情報をリアルタイムで経営に反映
  • 他の会計ソフトからの乗り換えも簡単!
マネーフォワード クラウド会計を無料で試してみる

「マネーフォワード クラウド」シリーズのサービス資料