経理マンの業務効率化〜ミスをしない・させないための「失敗学会」のアプローチ

言うまでもなく、経理マンの仕事にとって「ミス」は大敵です。
自分のミスはもちろん、例えば経費精算の書類を上げてくる人たちのミスも、あなたの時間を奪う要素になり得ます。その対策として編集部が注目したのは、アカデミックなアプローチ。『失敗学』で高名な畑村洋太郎氏とともに『失敗学会』を運営してきた、スタンフォード大学工学博士・飯野謙次さんに聴きました。その根底にある考え方、そしてあるべき未来の姿が見えてきます。

1.経理のミスは、なくならない

先日、奈良県天理市のシャープミュージアムを訪れました。長らく日本のオフィスを下支えしてきた同社のミュージアムだけあって、数多くの歴史遺産が展示されていて大変懐かしく感じました。その中でも、「あった、あった」と感激したのが、電卓付きそろばんです。「電卓を信用しない人の検算用」と、笑い話になっていますが、足し算、引き算はそろばん、掛け算、割り算は電卓という使い方が主流だったようです。

今では、四則演算や合計など、エクセルを使う人がほとんどでしょうが、ちょっとした計算には、手軽な電卓が便利です。私の場合も、社内の経理に触れる人が、私と経理担当の2人だけという体制なので、経理作業はエクセルで行います。しかしエクセルはエクセルで、気づかずに数字を書き換えてしまったり、行を挿入するやり方を間違えて、数式をずらしてしまったり、大変な間違いを起こす可能性を秘めています。世の中には、経理計算のために開発された経理ソフトが多数あり、私も経理データを触る人がもっと増えたら、データベースアプリを開発するでしょう。

ただ、経理ソフトやデータベースアプリを導入することで、ミスを回避できるとは言えません。領収書や他の書類、他のアプリケーションやネット画面から数字を転写する作業はマウスの操作で済めば数字そのものは間違えません。
しかし、未だに手で打ち込みをしている人が多いように思います。ただ、領収書の数字を、エクセルやデータベースアプリケーションのフィールドに打ち込むのは機械的な作業なため、いろいろある事務作業でも比較的ミスが少ないと言えますが。

それに対して、頭で考え、判断をしながら数字や文字列を打つ場合は、はるかにミスが起きやすいものです。

ちょっとしたミスから大事件に発展したのが、2005年12月の東京証券取引所システムを使っていたみずほ証券の誤発注事件です。担当者が、1株61万円の売り注文のつもりで、誤って61万株1円の売り注文を入力してしまったのです。東証システムのバグやとっさの対応のまずさで、損害額は400億円にも上りました。入力があったときに警告も出たのですが、警告メッセージは読まないで、マウスクリックや、Enter キーを押してしまった。これは人間の特性です。

この証券誤発注事件は極端な例ですが、整然と並んだ入力フィールドに、頭で何か考えながら入力をすると、とんでもない間違いをしてしまうことがあります。
たとえば、インターフェースが何円の値段フィールドの文字が、株数フィールドの数倍の太文字で表記される、入力された金額を合成音声で読み上げるなどしていれば、防ぐことができたのかもしれません。人と機械(ソフトウェア)のインターフェースが未熟であることが、一つの大きな要因として挙げられます。

2.「注意せよ!」は無策に等しい。ならば……

事務作業でミスをすると、すぐに気がつけばいいのですが、放置されたまま、他の作業に影響を及ぼし、気がついたときには、データに基づいた決定が大きく誤っていたなんてことになりかねません。そのようなことがないように、何らかの対策を打たなければならないのですが、「注意せよ!」というのは、無策に等しいと失敗学では考えます。

「注意」は、いわゆる精神論ですが、人間の注意力は100%の状態で持続させることはできません。特に急いでいるとき、急かされているとき、何か仕事とは離れたプライベートで気になることがあるときはもちろん、自分では100%の注意力で集中しているときでも、ミスは起こります。そのようなミスが起こらないよう作られるのが優れたユーザーインターフェースです。
ユーザーインターフェースとは、あでやかなカラーで派手に作ればいいと思っている人が未だにいるのは閉口します。そうではなくて、誤入力にすぐ気づくような工夫、あるいは誤入力ができないような仕組みが今では可能になっており、そのようなシステム開発が進められています。

この記事を執筆中に、ちょうどそのテーマのニュースが発表されました。経産省と東芝テック、そしていくつかの小売業者が提携して、「電子レシート」の実証実験を実施する、というものです。レジでスマホを提示すれば、自動的に経理ソフト側に取り込むことができるようです。

東芝テック、町田市で電子レシートプラットフォームの実証実験を開始
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1106295.html
(2018-02-14 アクセス)

これならば、転記も入力も必要ありません。これは言ってみれば、「ミスが起こりえない仕組みを考える」ということです。そういうインターフェースを設計する、ということです。

このような新しい仕組みを考えることを創造設計と言います。
シリコンバレーに数多くの起業家を送り込んできたスタンフォード大学では、創造性の教育に非常に熱心です。創造設計とは、世の中の不便を敏感に感じ取ることから始まり、その不便さを取り除く、「今までにない」からくりを考え出すことです。

経理の処理もその他の事務も、創造的に、こうした自動化を進めていくのがベストです。しかしそれができない場合にはどうするか。マニュアルを作るのもひとつの手段です。
例えば、社員のかたが使う経理書類のひな形にマニュアルを添付しておけば、経理担当者の負担は減るのではないでしょうか。今は、マニュアルは業務と離れた書棚に鎮座していることが多いのですが、ソフト系のマニュアルは、困ったときに答えを示してくれるようになって来ました。マニュアルも、静的に置かれただけでは人の記憶に頼っており、あまり役に立ちません。事務仕事だけではなく、製造や保守など、すべてのマニュアルが、現場で必要なときに、すぐアクセスできるように世の中は変わっていくでしょう。

3.これからの経理

現代を生きる私たちは、情報革命の真っただ中にいます。速度、容量の成長と低価格化により、世の中がどんどん変わり、少し前は考えもしなかったことが次々に実現しています。その中で、経理等の事務作業が置きざりにされているのは、世の中のインフラが追いついていないからに他なりません。いずれ、経理に必要な情報は、オンラインで直接会計システムに取り込まれ、領収書というものさえ姿を消してしまうでしょう。

しかしそのときが来るまで、私たちが使用を余儀なくされている様々な合理化システムは、成長半ばです。誤入力や、不正が可能であるのは未熟である証しです。ツール産業が未熟であることは、様々な選択肢が豊富にあり、それらが切磋琢磨しているものの、いずれは産業の成熟とともに、成長が足りないものは淘汰されることを覚悟しなければなりません。そのときは、日付も金額も書かない領収書などというものは世の中から駆逐されているでしょう。

執筆:飯野 謙次 (いいの けんじ)

東京大学機械工学修士、スタンフォード大学機械工学・情報工学博士。ゼネラルエレクトリック社原子力発電部門等で活躍。2000年サイドローズ社設立。2002年NPO法人失敗学会設立、副会長就任、現在事務局長兼任。著書に「仕事が速いのにミスしない人は何をしているのか?」(文響社)など。



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