定款の作成例と注意すべき点

会社を設立するためにしなければならないこととして、定款を作成する作業がありますが、「定款」という文書がどのようなものであるかがわからなければ作成することはできません。

定款作成例を具体的に掲げながら、

・定款へ記載しなければならない事項
・定款へ記載する事項の順番
・定款を作成するうえで注意すべきポイント

といったことを確認していきましょう。

定款の作成例(取締役1人、監査役非設置の小規模会社を前提)

定款に記載する事項は以下の6つに大別されます。

1.総則
2.株式
3.株主総会
4.取締役
5.計算
6.附則

第1章 総則

1の総則では、会社名である商号や、事業目的、本店所在地などを規定します。

定款

第1章 総則

(商号)
第1条  当会社は、○○株式会社と称する。

(目的)
第2条  当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
 (1)  ○○の製造及び販売
 (2)  ××の輸入及び販売
 (3)  前各号に附帯又は関連する一切の事業

(本店所在地)
第3条  当会社は、本店を東京都○○区に置く。

(公告方法)
第4条  当会社の公告は、電子公告により行う。
ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、〇〇新聞に掲載する方法により行う。

総則に記載する「商号」「目的」「本店所在地」は絶対に記載しなければならない事項となっています(会社法第27条)。

「公告方法」は必ず記載しなければならない事項ではありませんが、旧商法では必ず記載しなければならない事項であったことから、旧法の流れを受けて記載することが一般的となっています。

作成例では、原則として電子公告により行うが、やむを得ない場合に限って新聞へ掲載する方法を採用しています。

第2章 株式

2の株式では、発行可能株式総数や株券の発行有無、株式の譲渡制限などについて規定します。

第2章 株式

(発行可能株式総数)
第5条  当会社の発行可能株式総数は、〇〇〇株とする。

(株券の発行)
第6条  当会社の発行する株式については、株券を発行するものとする。

(株式の譲渡制限)
第7条  当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合は、承認をしたものとみなす。

(基準日)
第8条  当会社は、毎年〇月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
  2  前項のほか、必要があるときは、あらかじめ公告して、一定の日の最終の株主名簿に記載又は記録されている株主又は登録株式質権者をもって、その権利を行使することができる株主又は登録株式質権者とすることができる。

(株主の住所等の届出)
第9条  当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、住所、氏名及び印鑑を当会社に届け出なければならない。
  2  前項の届出事項を変更したときも同様とする。

参照:日本公証人連合会

株券は原則として発行しないものとされているため、株券を発行する場合には定款に記載することによって株券発行会社として成立することになり、上記作成例では株券発行会社である旨を第6条によって定めています。

また株券発行会社として会社を設立した後に、株券発行を廃止するよう定款変更することも可能です。
ただし株券不発行会社にするために定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要となるだけでなく、株主への通知や公告しなければならない点で注意が必要です。

第3章 株主総会

3の株主総会では、株主総会の開催時期や招集方法を記載します。

第3章 株主総会

(招集時期)
第10条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後〇か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に招集する。

(招集権者)
第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役が招集する。

(招集通知)
第12条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の〇日前までに発する。

(株主総会の議長)
第13条 株主総会の議長は、取締役がこれに当たる。
2 取締役に事故があるときは、当該株主総会で議長を選出する。

(株主総会の決議)
第14条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。

(議事録)
第15条 株主総会の議事については、開催日時及び場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

参照:日本公証人連合会

株主総会の招集権者は会社法第296条第3項の規定により取締役であることが定められていますが、代表取締役を招集権者として定めた場合は代表取締役が招集権者となります。

定款で定めた招集権者に事故があった場合に備えて代行措置を記載しておくことによって、招集権者をより明確にすることができます。

第4章 取締役

4の取締役では、会社の意思決定を行なう取締役に関する内容を規定します。

第4章 取締役

(取締役の員数)
第16条  当会社の取締役は、〇名とする。

(取締役の資格)
第17条  取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。

(取締役の選任)
第18条  取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の〇分の〇以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。

(取締役の任期)
第19条  取締役の任期は、選任後〇年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとする。

参照:日本公証人連合会

株式会社には、最低でも1人以上の取締役が必要となります(会社法第326条)。

取締役の人数は定款に必ず記載しなければならない事項ではありませんが、記載する場合は「〇名以内」と上限を設定する方法や「〇名以上」と下限を設定する方法、「〇名以上〇名以内」と上限下限の双方を定めるといった、さまざまな方法から選択して記載します。

作成例では「〇名とする」と人数を限定しているため、人数を確保するために補欠の選任をする必要があります。

第5章 計算

5の計算では、事業年度や決算期について規定します。

第5章 計算

(事業年度)
第20条  当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。

(剰余金の配当)
第21条  剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。

(配当の除斥期間)
第22条  剰余金の配当が、その支払の提供の日から〇年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払義務を免れるものとする

参照:日本公証人連合会

事業年度や決算期は定款に必ず記載しなくてもよい事項ですが、株主への利益配当の時期を明確にするために記載したほうがよいとされています。作成例では4月1日から3月31日までを1事業年度とし、3月決算であることが規定されています。

第6章 附則

6の附則では、本章に記載すると変更によって配列バランスが崩れてしまう可能性のある事項を、まとめて記載します。

第6章 附則

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第23条  当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金〇〇〇万円とする。
  2  当会社の成立後の資本金の額は、金〇〇〇万円とする。

(最初の事業年度)
第24条  当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成○○年〇月末日までとする。

(設立時取締役等)
第25条  当会社の設立時取締役は、次のとおりである。
   設立時取締役  ○○○○

(発起人の氏名ほか)
第26条  発起人の氏名、住所及び設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
 東京都○○区○町○丁目○番○号
    発起人  ○○○○   〇〇株  金〇〇〇万円

(現物出資)
第27条  当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額及びこれに対して割り当てる株式の数は、次のとおりである。
 (1)  出資者 発起人 ○○○○
 (2)  出資財産及びその価額
  ○○○○(○○株式会社平成○○年製、○○○○、製造番号○○○)1台
  金○○万円
 (3)  割り当てる株式の数
  〇〇株

(法令の準拠)
第28条  この定款に規定のない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。

 以上、○○株式会社設立のためこの定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
     平成○○年○○月○○日
         発起人   ○○○○   (印)

参照:日本公証人連合会

「設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額」と「発起人の氏名または名称および住所」は定款に必ず記載しなければならない事項となっています(会社法第27条)。

また、会社設立時の現物出資は発起人のみに限定されており、定款に記載しないと効力が認められない事項となっています(会社法第28条)。
現物出資は金銭以外の資産を出資することをいい、土地や建物、自動車、機械、有価証券、特許などがあります。

会社法第28条で規定されている定款に記載しないと効力が認められない事項には、作成例で挙げた現物出資以外にも、

・財産引き受け
・発起人の報酬・特別利益
・設立費用

があります。

特に現物出資と財産引き受けに関しては金銭以外の資産を出資するため、適切に評価される必要があります。
そのため原則として検査役による調査が必要となりますが、以下の場合は調査不要となります。

・定款に記載された金額が500万円を超えない場合
・市場価格のある有価証券を資する場合
・定款に記載された資産を弁護士や公認会計士、税理士、不動産鑑定士の鑑定評価などによって証明を受けた場合

定款を作成する上で注意すべき点

定款作成例で挙げることのできなかった注意点をまとめました。

住所は正しく記載する

発起人の住所を記載する箇所では、ハイフンなどで省略せず、正しく表記しなければなりません。
×東京都〇〇区〇〇1-1-1
〇東京都〇〇区〇〇1丁目1番地1号

また、発起人の氏名や住所の記載が、印鑑登録証明書と相違ないことを確認するようにしましょう。

「または」や「および」の使用方法

また、会社設立時の現物出資は発起人のみに限定されており、定款に記載しないと効力が認められない事項となっています(会社法第28条)。

たとえば公告方法は確定的かつ断言しなければならない性質の事項であるため、「電子公告または〇〇新聞」という記載方法は認められないことになります。

「AおよびB」という表現は、AもBもどちらもという表現手段であるため、どちらも必ず実行する確約がなければ使用することはできません。

先ほどの公告方法を例にあげて説明すると、「電子公告および〇〇新聞」とした場合、列挙したすべての方法で公告しなければなりません。

まとめ

定款作成例をもとに必ず記載すべき事項や注意すべき点を解説しましたが、具体的な記載内容を確認することによって定款に対する理解が深まったのではないでしょうか。

定款は公証人による認証を受けることによって法的な対抗手段となり、会社設立後に定款を変更する場合には、株主総会の特別決議が必要となります。

会社規模や社会情勢に応じて定款変更する場面も出てくるかもしれませんが、設立時の定款は細部まで手を抜かずに作成するように心がけましょう。

監修:加賀爪 優作 (司法書士)

税理士法人ゆびすい
ゆびすいグループは、国内8拠点に7法人を展開し、税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士など約250名を擁する専門家集団です。
創業は70年を超え、税務・会計はもちろんのこと経営コンサルティングや法務、労務、ITにいたるまで、多岐にわたる事業を展開し今では4500件を超えるお客様と関与させて頂いております。
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