原価計算を正しく行う! 全部原価計算と直接原価計算の違いとは

IT化によって、売上以外のさまざまな数字を管理して経営戦略に活かしていく企業が増加してきました。しかし、事業の中の多くの数字を追っていくことも重要ですが、企業活動の中で最も基本的な数字である「原価」の計算を正しく行うことはできていますか?

今回は、原価計算の重要性や経営分析のための原価計算として全部原価計算と直接原価計算の違いについてご説明していきます。

その原価計算は正しいですか?

テクノロジーの進歩により、ビジネスのあらゆる事象を数値化して管理することができるような環境になりました。そのなかで、製造業や飲食業だけではなく、サービス業などのさまざまな業種で原価管理が行われています。

しかし、その「原価」とは何でしょうか。商品の生産やサービスの提供に関わるすべての費用が原価なのでしょうか。

この原価の考え方をしっかりと定義しておかなければ、正しい原価計算は実現しません。そこで、「全部原価計算」「直接原価計算」という二つの原価計算を通じて「原価」の定義の仕方の違いや、どちらを原価計算の方法として採用すべきなのかを確認していきます。

全部原価計算と直接原価計算の違いとは

全部原価計算の場合

まずは、商品の生産やサービスの提供に関わるすべての費用を原価として考える全部原価計算について、簡単な具体例を使ってご紹介します。

事例 
商品販売代金@10,000円
商品材料費@5,000円
人件費200,000円

この全部原価計算の場合は、人件費も商品の生産に関わるものとして、原価に含めます。

したがって、例えば商品を100個生産した場合の原価計算は、商品1個あたりの人件費が20万円÷100個=@2,000円となるため、商品1個あたりの原価は材料費と合わせて7,000円(原価率70%)になります。

ところが、この商品の生産数が200個になると人件費が20万円÷200個=@1,000円となるため、商品1個あたりの原価は材料費と合わせて6,000円(原価率60%)に下がるということになります。※1
※1 生産数が多くなると人件費も増加しますが、完全に商品生産量に比例することは考えにくいため、今回は変動しないという例で説明しています。

これでは、生産数によって原価率が変動するため、正しい原価計算を行うことは困難になります。

さらに、この生産した商品が売れずに棚卸商品に計上されたらどうなるでしょうか。

この人件費は、すでに給与として支払っていたとしても、商品原価に含まれているため、その商品が販売される来期以降に費用化されることになるのです。

したがって、全部原価計算では、商品の生産数によって原価率が大きく増減し、さらに商品が売れなかった場合には、期末棚卸商品の計上を通じて当期の人件費が来期以降に繰り延べられて、当期の利益が多く残ることになります。

直接原価計算の場合

では、直接原価計算について見ていくことにします。直接原価計算では、費用を変動費と固定費に区分して、そのうち変動費を原価として原価計算を行います。

直接原価計算における変動費は、商品やサービスの売上(生産)に直接かかる費用のことを言います。そして、固定費は売上(生産)に関係なく毎期一定金額が発生する費用になります。

分かりやすい例としては、商品の売上(生産)の増加とともに発生する原材料費は変動費であり、どれだけ売上や生産量が増加しても毎期一定の地代家賃やリース料などは固定費に分類されます。

では、人件費はどうでしょうか。人件費は基本的には固定費に分類されます。(売上が0でも雇用している人がいる場合には、給与を支払う必要があります)。

しかし、商品の生産に直接関わる人や、売上の増大した時期の残業に関わる人件費などは変動費用として扱います。

それでは、人件費を固定費として考えて、先ほどの例で変動費と固定費を区分する直接原価計算の場合を見ていくことにします。

まず、変動費は原材料だけですので、生産数にかかわらず商品1個あたりの原価は5,000円(原価率50%)で常に一定です。人件費は商品原価に含まれないので、棚卸商品に計上されず人件費は支払った期間で費用化されますので、利益が多く残ることもありません。先ほどの全部原価計算の問題点は解消されることになります。

さらに、この直接原価計算は損益分岐点売上を算出しやすいというメリットもあります。損益分岐点売上の算出方法は、固定費 ÷ 粗利率(100%-原価率)であり、今回のケースであれば

固定費(人件費) 20万円 ÷ 粗利率 50% =損益分岐点売上 40万円

というように損益分岐点売上を算出することができます。

つまり、今回の具体例では、人件費の20万円を賄う(まかなう)ためには40万円の商品売上が必要であり、売上が40万円を超えると利益が残るということになります。

このように、企業の継続のために最低限必要な売上はいくらなのか、さらには目標となる利益を得るためにはいくらの売上が必要になるのかを逆算して求めることができるということになります。

以上の点から、商品の製造などにかかるすべての費用を原価に含めて原価計算を行う全部原価計算よりも、変動費と固定費を区分して、そのうち変動費のみを原価として計算する直接原価計算を用いて原価計算を行う方が良いと言えます。

まとめ

最後に、今回のポイントについてまとめておきましょう。

・商品の生産やサービスの提供に関わるすべての費用を原価として考える全部原価計算では、生産数によって原価率が大きく変動し、当期の費用が繰り延べられて利益が多く残る可能性がある

・変動費と固定費を区分して、そのうち変動費のみを原価として計算する直接原価計算は、全部原価計算の問題点が生じず、さらに損益分岐点売上の算出などを容易に行うことができる

直接原価計算を企業の目標売上の設定や具体的な事業計画の作成などの経営戦略にも活かしてみてはいかがでしょうか。

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監修:緒方 康人 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
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