中小企業の売上高の統計からわかること

中小企業庁は、毎年「中小企業白書」をとりまとめ、中小企業がおかれた現状や中小企業が抱える課題について分析しています。

この記事では、中小企業白書をもとに、中小企業の売上高の近年の推移を確認し、その要因について考えます。次に、売上高に関連した指標をもとに、比較的収益力の高い中小企業の投資行動についてお伝えします。

中小企業の売上高の推移を見る

中小企業の売上高は2007年がピーク

2016年版の中小企業白書では、最近10年間の企業の売上高の合計が集計されています。グラフは、企業の売上高の合計の推移を大企業と中小企業に分けて表したものです。

中小企業の売上高は2007年第4四半期に161兆円に達したのち、リーマン・ショックの影響により大きく落ち込みました。

その後、中小企業の売上高は大企業を上回る勢いで回復し、2011年第1四半期には154兆円に達しました。しかし、東日本大震災の発生を経て、再び大きく落ち込むことになりました。

2013年以降は、緩やかな回復を見せているものの、リーマン・ショックの直後を下回る120兆円程度の水準で推移しています。

売上高の推移
(出典:平成27年度(2015年度)の中小企業の動向|中小企業庁)

大企業に比べて回復に弱さがみられる

先ほどのグラフで示されているように、大企業と比較すると、中小企業の売上高の回復には弱さが見られます。

次のグラフは、2009年から2015年の売上高の増減を、大企業と中小企業で業種別に分解したものです。大企業と中小企業の間で、売上高の増減に違いがあることが明確に表わされています。

売上高業種別分解
(出典:平成27年度(2015年度)の中小企業の動向|中小企業庁)

大企業では、すべての業種で売上高が増加しています。一方、中小企業では、震災復興事業との関連が深い建設業の売上高は増加したものの、建設業以外の業種では売上高が減少しています。

売上高の増減に違いがみられる要因

大企業と中小企業の売上高の増減に違いがみられる要因を、中小企業が直面している経営上の問題点から考えます。

代表的なものとしては、大企業の進出による競争の激化で中小企業が不利な状態に置かれていることがあげられます。小売業では「購買力の他地域への流出」を問題点にあげる企業が多く、大型ショッピングセンターの出店により地域の商店街が衰退したこととの関連がみられます。

稼ぐ力のある中小企業の投資行動

全体として中小企業は大企業に比べて不利な状況に置かれています。しかし、従業員一人当たり売上高や売上高経常利益率をみると、大企業の平均を上回る実績を上げている中小企業も存在します。

このような稼ぐ力のある中小企業は投資に積極的な傾向があり、さらなる成長が期待できる側面を持っています。

従業員一人当たり売上高の分布

企業の稼ぐ力を測る指標の一つに、売上高を従業員数で割った「従業員一人当たり売上高」があります。「従業員一人当たり売上高」は、従業員の労働生産性を表す指標として知られています。

グラフは、従業員一人当たり売上高の分布を大企業と中小企業に分けて示したものです。大企業の平均額は8,000万円ある一方で、中小企業の平均額は4,500万円にとどまっています。

しかしながら、中小企業のうち10.9%の企業は、従業員一人当たり売上高が大企業の平均額(8,000万円)を上回っています。

一人当たり売上高の分布
(出典:中小企業の稼ぐ力を決定づける経営力|中小企業庁)

売上高経常利益率の分布

もう一つ、企業の稼ぐ力を測る指標として、売上高に対する経常利益の割合を示した「売上高経常利益率」についてとりあげます。売上高経常利益率は、突発的な要因を除く経常的な営業活動の利益率を表しています。

売上高経常利益率の分布に着目すると、大企業の平均値は4.34%である一方、中小企業の平均値は3.48%にとどまっています。

しかし、グラフからわかるように、大企業と中小企業の間で売上高経常利益率の分布に目立った差異は見られません。また、中小企業のうちおよそ3社に1社は、売上高経常利益率が大企業の平均値を上回っています。

売上高計上利益率の分布
(出典:中小企業の稼ぐ力を決定づける経営力|中小企業庁)

稼ぐ力のある中小企業の投資行動

売上高経常利益率が大企業の平均を上回る中小企業は、そうでない中小企業に比べて売上高に対する固定資産取得額の割合が高くなっています。このことから、稼ぐ力のある中小企業は、固定資産に対する投資に積極的であると考えられます。

また、固定資産ほど顕著な差があるわけではないものの、人材育成投資や情報化投資にも積極的な姿勢がみられます。

稼ぐ力のある中小企業は、収益を得ることで投資に積極的になり、さらなる成長の機会につなげるという好循環を生み出していることがうかがえます。

まとめ

中小企業の売上高の推移を見ると、2007年をピークにリーマン・ショックと東日本大震災による2度の大きな落ち込みがありました。近年は回復傾向にあるものの、大企業に比べると回復に弱さが見られ、リーマン・ショック直後を下回る水準にあります。

全体として中小企業は大企業に比べて不利な状況に置かれていますが、中小企業を個別にみると、大企業の平均を上回る成績をあげている企業もあります。こうした稼げる中小企業は、固定資産だけでなく人材育成や情報化にも積極的に投資することで、さらなる成長につなげています。

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監修:三井 啓介 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
ゆびすいグループは、国内8拠点に7法人を展開し、税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士など約250名を擁する専門家集団です。
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