退職給与引当金

今回は、退職給与引当金の意味から具体的な計算方法、さらには税務的にはどのように取扱われているのかを紹介していきます。

退職給与引当金を計上する意味は?

まずは、退職給与引当金の意味について確認しましょう。退職給与引当金とは、将来支払われる退職金のうち、現在までに発生している分を見積もり計上するための勘定科目です。

そもそも引当金とは、発生主義に基づいて、当期に発生したと認められる費用を見積計上することです。引当金の計上については、4つの要件を満たしているかどうかで判定されます。

・将来の特定の費用または損失である
・その発生が当期以前の事象に起因する
・発生の可能性が高い
・その金額を合理的に見積もることができる

では、退職金は本当に引当金として計上する必要があるのでしょうか。

退職金については、「将来の特定の費用」であり、これまでの労働によって生ずることから「その発生が当期以前の事象に起因」し、退職金の制度を整えている会社は「発生の可能性が高い」ことに加えて、退職金の計算方法も規定で定めているため「金額を合理的に見積もることができる」この4つの要件に当てはまるため、退職金に対して退職給与引当金として引当金を計上する必要があります。

退職金に関しては、その退職金が支払われた際に費用化されると、退職者がいる事業年度と退職者がいない事業年度で企業の損益が大きく変わってしまいます。

しかし、退職金の原因となる労働は毎期発生しているので、毎期その労働分で費用化する方が企業の損益を正しく表すことができます。そのために退職給与引当金という科目を使うということなのです。

ところが、そもそも退職金制度がない企業では、将来発生する退職金を見積もって計算することはできません。ですから、この退職給与引当金の計上については、就業規則に基づいた退職金制度がある企業が対象となります。

事例で確認! 退職給与引当金の計算方法は

次は、退職給与引当金の計算方法について考えていきましょう。退職給与引当金は、退職給与債務(将来支払う退職金のうち、当期まで発生した分)から年金資産(外部に積立をしている退職金の原資)を差引き、さらにそこから変更時差異を加減して算出します。

退職給与引当金=退職給与債務−年金資産±変更時差異

退職給与引当金については見積計上ですので、必ずしも予測していた数字通りにはなりません。その予測額と実際額の差異(変更時差異)については、一度に修正をするとその事業年度の損益計算書や貸借対照表に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、一定の期間にわたって修正します。

では、具体的に見ていきましょう。

事例:退職給与引当金の計算を行う。

・期首時点の退職給与債務 800万円
・期首時点の年金資産 300万円
・当期の勤務費用(当期の労働によって発生した退職金)50万円
・割引率 5% 年金資産運用利回り 5%
・当期中に、退職金の支払いのために30万円の掛金拠出した
・前期に年金資産の運用利回りが、予測よりも上回ったため、15万円の差異(貸方差異)が生じた。これを当期から5年で処理を行う。

退職給与債務の計算

(1)前期の退職給与債務 800万円

(2)当期発生分
1.勤務費用 50万円
2.利息費用 800万円×5%=40万円
小計 90万円

(3)当期末時点の退職給与債務
(1)+(2)=890万円

まずは、退職給与債務の計算から行います。前期までの退職給与債務に対して、当期の労働として発生した退職金を表す勤務費用と、前期退職給与債務に割引率をかけて算出した利息費用を加算することで計算します。

今回は、退職者がいないケースですが、退職金の支払いがある場合は、この退職給与債務は減少します。

<年金資産の計算>
(1)前期の年金資産 300万円

(2)当期発生分
①掛金拠出 30万円
②期待運用収益 300万円×5%=15万円
小計 45万円

(3)当期末時点の退職給与債務
(1)+(2)=345万円

次に、年金資産の計算を行います。前期までの年金資産に対して、当期の掛金拠出分と、前期までの年金資産に年金資産運用利回りをかけて算出した期待運用収益を加算することで計算します。

今回は、退職者がいないケースですが、退職者に対して年金給付があった場合は、この年金資産を減少させます。

<変更時差異の計算>
15万円÷5年=3万円

前期に発生した変更時差異です。年金資産に15万円加算するのではなく、5年間にわたって徐々に修正していきます。

<退職給与引当金の計算>
退職給与引当金=退職給与債務−年金資産±変更時差異

890万円(退職給与債務)−345万円(年金資産)−3万円(変更時差異)=542万円

以上が、退職給与引当金の計算になります。実務的には、退職給与債務や年金資産の算出などについては複雑ですので、ソフトでの計算や保険数理人に委託する形になります。しかし、経理として処理する上では、この程度の計算方法は把握しておく必要があります。

退職給与引当金の税務的な取扱いは?

最後に、退職給与引当金の税務的な取扱いを確認しましょう。実は、退職給与引当金については、損金に算入されません。しかし、退職金が損金に算入されないという意味ではありません。

退職金は、税務的には支払われた時に、損金に算入されることになります。ですから、会計上の費用と税務の損金に計上のタイミングのズレがあるということですね。

もともとは、退職給与引当金も損金算入が認められていましたが、平成14年の改正により、損金不算入となりました。その改正の際に、経過措置として、これまでの退職給与引当金の取崩を10年にわたって処理することが決定されました。

しかし、平成25年度の法人税の申告で処理が終わっていることになりますので、現在は法人税としては、退職給与引当金の残高は残っていないはずです。

また、企業が確定拠出型退職給付制(中小企業退職金共済制度や小規模企業共済制度)による退職金の積立を行っている場合は、これらの掛金は損金に算入が認められているため、退職金にかかる当期分の費用を税務的にも損金にしたいという場合は、こちらの制度を利用すると良いですね。

まとめ

最後に、今回のポイントをまとめておきましょう。

・就業規則に基づいた退職金制度がある企業については、会計的には退職給与引当金の計上が必要である。
・退職給与引当金=退職給与債務−年金資産±変更時差異
・退職給与引当金は損金として認められない。ただし、確定拠出型退職給付制を利用することで、当期に発生した退職金に係る費用を損金として処理することもできる。

退職給与引当金については損金算入されないこともあり、計上をしない中小企業も少なくないです。

しかし、企業の財政状態や経営成績を正しく表すという会計的な役割としては、計上が必要な勘定科目です。計算方法や経理処理方法はしっかりと押さえておきましょう。

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BIZ KARTE編集部

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