法人税の実効税率の引き下げ始まる!「平成 28 年度税制改正」の概要を解説

平成28年3月31日に公布された平成 28 年度税制改正には、法人税の実効税率の引き下げが盛り込まれたほか、外形標準課税や減価償却制度、欠損金繰越控除制度などについても改正されています。

ここではそれぞれの改正内容の要点を解説します。

法人税の実効税率と外形標準課税

法人税の実効税率引き下げ

法人税の実効税率引き下げは税制改正の主要項目の1つです。平成27年の標準税率適用法人の法人実効税率32.11%に対し、平成28年と29年で29.97%、平成30年には29.74%と法人実効税率を20%台に引き下げる方針となっています。

実効税率とは企業が負担する実質的な法人税率を指しますが、これを引き下げるために国は様々な法人税を調整しています。

まず国税である「法人税」を現行の23.9%から平成28年度に23.4%、平成30年度には23.2%に引き下げる予定です。

地方税」である法人住民税を現行の12.9%から平成29年度に7%へ引き下げる方針です。法人住民税の引き下げに伴い地方法人税を4.4%から10.3%に引き上げることで、都道府県の税収のバランスを図ります。

さらに法人事業税は平成29年度以降、地方法人特別税の廃止に伴って事業税全体として税率を引き上げることになっています。これらによって国・地方の法人税の実効税率が20%台にまで引き下げられるというわけです。

閣議決定によればこれは「成長志向の法人税改革」であり、企業の収益性や競争力を高めるための施策です。改正に伴い設備投資や賃上げなどによる「経済の好循環」が期待されています。

外形標準課税の拡大

単純に法人税の実効税率だけを下げてしまうと、財源不足になってしまいます。これを補うための施策の1つが外形標準課税の拡大です。外形標準課税とは法人事業税のうち「付加価値割」と「資本割」の部分を指します。

前述した通り法人事業税率は平成29年度以降、地方法人特別税の廃止に伴って事業税全体として税率を引き上げることになっていますが、その内訳は以下の通りです。

・付加価値割は現行の0.96%から1.2%へ引き上げ。
・資本割は現行の0.4%から0.5%へ引き上げ。
・所得割は現行の1.9%から0.7%へ引き下げ。

外形標準課税は所得割とは異なり、赤字でも発生する税金です。したがって外形標準課税の拡大は黒字企業の税負担減と赤字企業の税負担増につながるのです。国はこの影響を緩和するために、平成28年度の付加価値額が一定額以下の企業に対しては軽減措置を講じています。

減価償却制度および欠損金繰越控除制度

減価償却制度の定額法への一本化

平成28年4月1日以後に取得する建物付属設備及び構築物の減価償却方法が、今回の改正で定額法へ一本化されます。

減価償却制度は減価償却資産の取得価額を一括して費用計上するのではなく、耐用年数に応じて費用配分する制度です。

代表的な減価償却の方法として定額法と定率法があります。定額法は毎期の減価償却費が均等であるのに対し、定率法は初期に多額の減価償却費を計上します。この違いから、定額法の方が定率法より取得初期の費用に計上できる額が減り、税負担が増えます。この制度の改正もまた、実効税率引き下げによる財源不足を補てんするためのものなのです。

この改正に伴い、初期の税負担が上昇し、場合によっては設備投資計画の修正も必要となります。

欠損金繰越控除制度の見直し

欠損金繰越控除制度は企業の過年度の赤字を利益が出た事業年度に繰り越して費用として計上できる制度です(9年間の繰越期間の制限あり)。

平成27年度の改正では控除される欠損金の控除限度割合を2段階で50%まで引き下げられることになっていました。

しかし今回の改正で企業への影響を考慮して、平成27年4月1日開始事業年度の場合に65%、平成28年4月1日開始事業年度の場合に60%、平成29年4月1日開始事業年度の場合に55%、平成30年4月1日開始事業年度の場合に50%と5%ずつ引き下げる方針に変更となっています。なお、欠損金の繰越控除制度は事業年度開始の日で判定することに留意が必要です。

なお、この制度は資本金1億円超の大法人に適用され中小法人には控除限度割合の制限はありません。

また、繰越控除期間についても平成29年4月1日開始事業年度以降は10年間の予定でしたが、適用を1年延長し、平成30年4月1日開始事業年度以降の繰越期間を10年にする措置がとられています。

雇用促進税制および消費税制

雇用促進税制の縮小

雇用促進税制とは雇用者の数が増加した場合に受けられる税額控除制度です。今回の改正でこの制度が適用される増加雇用者数に、次の限定条件を付け加えることになっています。

・地域開発促進法の同意雇用開発促進地域内の事業所。
・無期雇用かつフルタイムの雇用者。
※「地域開発促進法の同意雇用開発促進地域」とは地方を中心とする28道府県102地域(平成28年5月1日現在)

また適用期限を平成29年度まで延長し、地方における安定的な雇用を重点的に促進する方針です。

消費税改正への対応(閣議決定により延期)

平成28年税制改正では消費税率の引き上げが予定され、消費税の軽減税率制度を導入することとされていましたが、閣議決定により消費税率の引き上げ及び軽減税率制度の導入は平成31年10月1日に延期される予定となりました。

また、軽減税率が導入された場合には、仕入税額控除の方法として「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」が導入されます。

「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」導入まで区分経理への対応について経過措置が設けられる予定ですが、適用税率・税額を請求書に記載しない従来の「請求書等保存方式」から、適用税率・税額を請求書に記載する「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」へと経理体制を整備する必要があります。

まとめ

今回の改正に伴い、場合によっては経営計画の見直しを迫られたり、経営上の危機に陥る企業もあるかもしれません。

ピンチをチャンスに変えられるように、早め早めの準備・対策を心がけましょう。

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監修:加地 延行 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
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