雑損控除で災害後の税負担を軽くする方法

「所得控除」と聞くと、おそらく扶養控除や医療費控除、社会保険料控除などを思い浮かべる人が多く、雑損控除が第一に出てくる人は珍しいでしょう。しかし、実は、雑損控除は災害や盗難などの被害に遭われた人にとって、非常に心強い存在です。今回は、その中身についてご紹介します。

おさえておきたい基礎知識

そもそも「雑損控除」とは?

雑損控除とは、所得税法で定められている所得控除の一種です。予期せぬ災害やトラブルに巻き込まれてしまった場合に受けることができます。

災害やトラブルに遭ってしまったにも関わらず、被害を受けていない人と同じ納税額のままでは、明らかに不平等です。この格差を埋めるために、雑損控除という制度が設けられています。医療費控除などの他の所得控除と同じように、確定申告をすることによって納税額を抑えることができます。

「雑損」と聞くと、なんだか大したことのない内容のようにも思えてしまいますが、実は「弱きを助ける」素晴らしい所得控除です。では、どのような場合に雑損控除を受けることができるのか、見ていきましょう。

雑損控除の対象者になる人とは?

雑損控除が受けられる要件は、下記の通りです。

・生活上必要な資産に対してであること
・損失の発生原因が「災害」「盗難」「横領」であること
・保険金等を補てんしても超過してしまった支出があること

これらを満たす納税者および納税者と生活を一にする年間所得金額38万円以下の配偶者や親族が、雑損控除を利用することができます。

控除される額はどの程度なのか?

実際に控除できる金額がどれくらいなのかは、やはり気になるところです。算出方法は、以下の計算式となり、(1)(2)のいずれかの多い方の額が雑損控除額となります。

雑損控除額 =
(1)損失額(損害金額 + 災害関連支出)- 保険金などによる補てん金額 – その年の所得の10%
(2)災害関連支出 – 5万円

仮に、自然災害で損害を受けた人の総所得金額が200万円、損害金額(被害額)が246万円、該当の災害関連の支出額が4万円、保険金等で補てんした金額が10万円だと仮定します。

(1)の計算式に基づき計算を行うと、(246万円 + 4万円)- 10万円 – 20万円 = 220万円 となります。つまり、この人の場合はなんと220万円もの雑損控除を受けることができました。

このケースでは、所得金額よりも損失額の方が20万円多くなってしまいますが、その分は翌年度以降に繰り越して、3年間のうちに各年の雑損控除として使うことができます。

控除を受けるために必要な手続きは?

控除を受けるために必要な手続きは?
Photo by redspotted

給与所得を受けている人は会社で年末調整を受けているため、源泉徴収票があります。この源泉徴収票に書かれている金額と雑損控除の金額をもとに、確定申告書Bを作成して還付申告を行います。

給与所得者であっても、給与収入2,000万円を超える場合は年末調整の対象外となるため、確定申告書Bを用いて確定申告時に雑損控除を適用します。青色申告や白色申告事業者も、手続きはこれと同様です。

「災害」「盗難」「横領」に該当するケースとは?

雑損控除が受けられる要件のうち、どのような損失の発生原因が「災害」「盗難」「横領」に該当するのかを見ていきましょう。

自然災害

自然災害には「震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害」が該当します。東日本大震災で風評被害を受けた農業所得関係の損失は自然現象による直接的な災害ではないものの、間接的に受けた災害と考えることができ、特例的に雑損控除の対象になっています。

また、原子力発電所の事故に伴う風評被害に関しては、自然災害が起因している点や原子力損害賠償法の補償対象内である点などを満たせば、雑損控除ではなく震災特例法の適用を受けることが可能です。

人為的な災害

人為的な災害
Photo by Mike Schmid

人為による異常な災害として、「火炎、火薬類の爆発など」の災害が雑損控除の対象として挙げられています。実は最後の「など」という言葉もポイントです。自然災害のような予期せぬ被害であることを証明できれば、雑損控除として認められる可能性が高くなります。たとえば、赤の他人が車であなたの自宅に突っ込み、竜巻の被害と同じくらいの損害を被った場合などです。

しかし、被害を受けたのが自宅ではなく、事業所や店舗であった場合、残念ながら雑損控除の対象にはなりません。雑損控除の要件のひとつに「生活上必要であるもの」という内容があるからです。ただ、もしも1階が店舗で2階が住居だったら、雑損控除を受けられる可能性があります。

害虫などの生物による異常な災害異常現象

害虫によって生活に必要な住居に損害を受けた場合、害虫駆除やそのための家の修繕にかかった費用も、実は雑損控除として申告することができます。これは意外と知らない人が多いのではないでしょうか。

しかし、害虫の被害を予防するための費用は、雑損控除に含めることはできません。また、鳥インフルエンザの感染拡大を防ぐために殺処分した場合にかかった費用や損失においても、同様のことが言えます。なぜなら、家畜は生活に必要な資産ではなく、棚卸資産となるからです。

盗難

盗難
Photo by Christopher Michel

一言で「盗難」と言っても、自動車や現金、宝石や貴金属など、被害に遭うものは様々です。そして、盗まれたものすべてが雑損控除の対象に入るわけではありません。盗難されたものが生活上必要だと認められない場合は、雑損控除の対象外となります。

たとえば、毎日1時間かけて車通勤している人が自家用車を盗まれたら、控除の対象になります。一方、通勤時間は徒歩10分という住環境で、週末のレジャーでしか使わない車が盗難に遭ってしまった場合、雑損控除として認められる可能性は極めて低いと言えるでしょう。

横領

横領に関しては、実は所得税法には明確な定義がありません。そのため、民法や刑法に準じて解釈することになります。

必要な前提条件は、被害者と加害者との間に「委任関係」があることです。委任しているという具体的な契約や行為がなければ、横領として認められず、雑損控除を受けることはできません。

詐欺や恐喝は対象にならない?

詐欺は、自然災害のように予見できず不可抗力によるものではありません。相手から持ち掛けられた話に応じて、あなたの意思で契約したり金銭を支払ったりする行為を指します。

また、恐喝されて自らお金を差し出してしまった行為も、自然災害とはまったく別次元のものです。少なくとも、自分の意思によって損害が生じたという事実がある限り、雑損控除の対象にはなり得ません。つまり、本人の意思の有無が、雑損控除として認められるか否かのボーダーラインとなります。

まとめ

誰しも、災害やトラブルに巻き込まれずに「平和で安全に暮らしたい」と望んでおられるでしょう。しかし、万が一損害が生じてしまったときにも、「雑損控除」の存在を知っていれば、経済的な負担が軽くなり、精神的な安心にも繋がるのではないでしょうか。

監修:土屋 英則 (税理士)

税理士法人ゆびすい
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