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  • 作成日 : 2018年9月12日
  • 更新日 : 2020年9月17日

なぜ日本企業はAmazonになれないのか。誰もが知るべき「ファイナンス思考」とは

アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾン……。今や世界を牽引するのは、アメリカ発の巨大IT企業ばかり。一方、日本はここ数十年来、世界にインパクトを与えるようなイノベーティブな企業は現れていないと言ってもいい状況です。

この差はいったい、どこから生まれているのでしょうか。

ここでは、減収減益が続いていたmixiをわずか1年でV字回復させた立役者、朝倉祐介氏の話題の著『ファイナンス思考 日本を蝕む病と再生の戦略論』(ダイヤモンド社)から、企業だけでなく、個人としても、この変化の激しい環境で生き抜くための思考法を学んでいきます。

過去をつくった「PL脳」、未来をつくる「ファイナンス思考」

朝倉氏は、本書の中でバブル経済の崩壊以降、日本企業の成長が停滞している理由は「PL脳」にあると主張しています。

PL脳とは

本書でいう「PL脳」とは、「目先の売上や利益を最大化することを目的視する、短絡的な思考態度」のことです。

そもそもPLとは損益計算書のことで、四半期や1年などのある一定期間で「会社がいくら稼いだか」を示すもの。企業は売上や利益といった損益計算書上の数字から経営判断を下していきます。

しかし、PLの内容はあくまで「過去の一定期間における業績の結果」に過ぎません。この考え方では、基礎的な会計知識に基づいてはいるものの長期的視点に欠けます。そのため、近視眼的な思考に陥り、会社の成長よりも直近の業績を優先して、「目先のPLを最大化することが経営の至上命題」と考えてしまうのです。

一見、会社として、「売上や利益を引き上げることこそが経営の目的」というのは当然と思えるかもしれません。

しかし、「PL脳」では、目先の数字に捉われるあまり「大きな構想を描きリスクをとって投資するという積極的な姿勢を欠き、結果として成長に向けた道筋を描くことができない」(引用: pⅲ)という問題に直面せざるを得なくなります。現在の日本企業の多くはこの思考に陥ってしまっているのです。

ではなぜ、日本企業に「PL脳」が蔓延しているのでしょうか。その理由として、高度経済成長で華々しい飛躍を遂げた成功体験が関係していると朝倉氏は指摘します。

当時のように右肩あがりに直線的な成長を続け、将来のビジネス環境についての予測可能性の高い経済環境下では、昨年よりもよい業績を達成するために改善を続けようとする「PL脳」が有効だったのです。

しかし、経済が成熟し、かつてのような直線的成長が望めない今、その成功体験が足かせとなり多くの日本企業は大胆な次の一手を打つことができず、新たな成長サイクルに入ることが出来ないでいるというのです。

ファイナンス思考とは


朝倉氏は、現代を「技術革新のスピードがかつてなく速く、既存のビジネスが急速に陳腐化しかねない不確実な環境」(引用:pⅲ)と表現し、その状況下では、もはや「PL脳」は機能しないと言い切ります。

そして、成熟化した不確実な時代を切り拓く新たな思考法として提言するのが「ファイナンス思考」です。

本書で言う「ファイナンス」とは企業価値最大化のために、外部からの調達や事業を通じてお金を確保し、そのお金を事業への投資や資金提供者へ還元、これらの合理性をステークホルダーに説明する一連の活動のことを意味し、具体的には下記のような事柄を指しています。

■ファイナンスとは?

外部からの資金調達
事業に必要なお金を外部から最適なバランスと条件で調達する。増資や融資
事業からの資金創出
既存の事業や資産から最大限にお金を創出する
資産の最適配分
築いた資産 (お金を含む) を既存事業や新規事業に投資、買収、従業員または株主・債権者への還元に、最適に配分する
ステークホルダーとのコミュニケーション
資産配分の意志と経緯の合理性をステークホルダーに説明する

(引用: pⅺ)

そして「ファイナンス思考」とは、ファイナンスを扱う土台となる考え方「会社の企業価値を最大化するために、長期的な目線に立って事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方」(引用:p17)のことであり、より広く解釈すれば、「会社の戦略の組み立て方」であると説きます。

「ファイナンス思考」は単に会社が目先でより多くのお金を得ようとするための考え方ではなく、将来に稼ぐと期待できるお金の総額を最大化しようとする発想

この点で、ファイナンス思考は、「価値志向であり、長期志向、未来志向」(引用:p17)であると言えるのです。そして、この「ファイナンス思考」こそ、これからの日本企業や若い人たちにとって、必要な考え方であるというのです。

PL思考
売上や利益といった目先のPL上の指標を最大化しようとする、近視眼的思考態度のこと

ファイナンス思考
目先のお金だけではなく、未来に目を向けた思考態度であり「将来稼ぐお金を最大化する」考え方のこと

世界的IT企業“GAFA”も「ファイナンス思考」を持っていた

20世紀型の経営をアップデートする考え方とも言える「ファイナンス思考」ですが、世界的に大きな影響力を持つようになった“GAFA”(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる巨大IT企業も、この考え方に裏打ちされた経営により一気に成長を遂げました

この4社に共通するのは、「短期的にはPL上の数値には、ネガティブな影響が出る意思決定をし、将来の成長に向けて果敢に大きな投資をしていること」(引用:p17)であり、具体的には以下の3点があげられます。

・短期的なPLの毀損を厭わない
・市場の競争優位性の確保を重視し、極めて大規模な投資を行う
・投資の目線が長期的で未来志向である

(引用:p24)

主力であるEC事業に加え、AWSと呼ばれるクラウドサービスへの先行投資によって、市場のリーダーに踊り出たアマゾンなど、GAFA各社は、複数の事業展開による継続的な成長性が評価され、結果的に時価総額を大きく成長させることに成功しました。

「PL脳」の発想では、こうした意図的にリスクをとる大胆な意思決定は難しいのです。日本にGAFAのような企業が現れないのは、こうした考え方の違いが大きく影響していると朝倉氏は指摘します。

ファイナンス思考を身につけるために


企業を取り巻く環境がますます複雑になり、1年後の将来の見通しを立てることすら困難な時代。「ファイナンス思考」は、経営者や会社員、フリーランスなどの誰もが心がけるべき思考法だと言えるでしょう。

では、私たちはどのように日々の仕事に「ファイナンス思考」を取り入れていけばいいのでしょうか。

この問いに対し、朝倉氏は、これからの時代は「時間を掛けた検討よりも、すぐに行動することで仮説の成否を探ること」が有効であると説きます。

例えば、事業責任者であれば、事業の仮説を立て、少額の予算で小さく始めて短期間にテストを繰り返す。そこで市場性を探り、好機を見つけたら、一気にお金や開発人員を投じて拡大を図っていく。

こうした自ら「主体的」かつ「積極的」な姿勢で、目的地までの地図を組み立てていくビジネスの進め方が、「ファイナンス思考」的であり、これからの時代に求められる姿だと言えるのです。

まとめ

本書の後半で、ファイナンス思考とは「『態度』や『思想』の問題であり、究極的には『志』の問題である」(引用:p262)と朝倉氏は述べ、ファイナンスという一見難しい分野の、「考え方」を身につけ、実践していくことの重要性を説いています。

環境が目まぐるしく変わり、1年先ですら予想することが困難な時代においてこそ、「ファイナンス思考」が必要になってくるでしょう。

目先の利益に惑わされず、常に未来志向で、日々の選択や決断を行なっていくことが、この時代を生き抜く術となるはずです。そのために、まず「ファイナンス思考」という考え方から理解していく必要があるのです。(文・サムライト)

紹介した書籍

書名 :ファイナンス思考 日本を蝕む病と再生の戦略論
著者 :朝倉祐介
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2018/7/11
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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